IS インフィニット・ストラトス 獣の指揮者   作:ユキアン

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第11話

 

side ジェイル

 

アレクシアの葬儀から6週間が経ち、結局サンクチュアリを去ったのは機体班3名、ソフト班4名、武装班1名の計8名となった。当初は抜ける者は居ないと思われた武装班の1名は妻に泣きつかれ止むなく辞表を出してきた。残念ではあるが本人は妻を大事にしたいと意志は固いため少し色を付けた退職金を渡して別れた。当初の予定の6名は他の部署への転属という形でサンクチュアリを去って行った。残りの1名だが、ラウが数え忘れていた植物状態の1名だ。作業効率が下がる結果になったがこればかりは仕方ない。補充の当ては社内にはもう無いので諦めた。

現在はオレの相棒である試作実験用ISの装備の開発が行なわれている。

 

「こうして見ると、やはりデカイな」

 

「所長の設計とコンセプトを元にオレ達なりに再設計した結果だ。それにしても良いのか?本当にこのままで開発を進めて」

 

「ああ、予算は取れるだけ取ってきた。足りなければ幾らかの技術を放出してパテントを取る許可も毟り取ってきた」

 

「それなら良いんだけどよ、なんかイルヴァ達がラウ達も巻き込んで凄い物を作ってるらしいぞ。オレ達は再設計やら製造に時間が取られてるから向こうの方が何をやってるのか知らないんだけどよ」

 

「何か不安になる様な事があるのか?」

 

「不安と言えば不安なのかな?所長の元にもたぶん書類が上がると思うんだけど、なんか有給休暇をとってアフリカに行くとか言ってるんだが」

 

「……普通のバカンスだよな?」

 

「あのめんどくさがりやなイルヴァが態々アフリカになんか行くか?それなら部屋で一日中ゴロゴロしてるだろう」

 

そうだよな。じゃあ、何故アフリカなんかに。

 

「なんかラウの奴も付き合わされるらしいけど、どうするつもりなんだ?」

 

「どうするも何も、機体班に比べればソフト班も武装班も忙しくはないからな。普通に許可を出すしか無いだろう。出来れば何事も無ければ良いんだが」

 

「そうだな。それより、そろそろ時間じゃないのか」

 

腕時計を確認すれば次の予定まであまり余裕が無かった。

 

「すまんが、また数日戻れそうにない。その間のサンクチュアリのことは任せたぞ」

 

「分かってる」

 

部屋に戻り作業着を脱ぎ捨てて、シャワーを浴びる。それが終わればISスーツの上にスーツを着込む。あのテロ以降、危機管理の為にもISスーツを常に着込んでいる。いざというときはISらしき物を展開する為にも手放せなくなってしまった。さすがにヘッドギアは装着する事は出来ないのでカード型の格納領域に入れてある。着替えを終えて外に出ると時間通りに迎えの車がやってくる。それに乗り込み、官邸に向かう。車内では所員が上げた報告書を処理していく。ユウダイが言った様に確かに武装班の何人かとソフト班の大半が2週間の休暇届を出していた。問題が無いので許可を出す。次の報告書は、サンクチュアリへの侵入者が増加しているのでそれに対しての対策案の草案か。簡単に説明すれば以前と同じく侵入は地下からに限定させて地下で処理するのは同じだが、更にルートを選定したりしてトラップによる殲滅を優先する方針に変更してはどうかという案だ。これからサンクチュアリは以前以上に忙しくなる。一々侵入者の処理を行なうのは面倒だという事でこの案が上がってきているのだ。とりあえずこれは大統領に情報秘匿のためということで侵入者の処分の許可を貰う必要がある。まあ降りるだろうから詳細を詰めてプレゼンする様に返答しておく。後は基本的な報告書だったのでさっと目を通して行く。シャルのリハビリが長引いている以外は問題は無いみたいだな。書類を全て片付けてもまだ目的地である官邸に到着しないので運転手に一声かけて眠る事にする。予想では20分程で到着するはずなのでアラームを15分後にセットして眠りに着く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

どれだけ眠っていたのかは分からないが、それほど時間が経っていない状況で異音と異臭を感じISを展開して車を破壊して飛び出す。オレの身体を覆う様に白い装甲が出現する。ISのサイズ的には最も小さいオレの相棒、ラパン・デ・ラ・ネージュ。

空中で体勢を立て直して状況を確認する。まずは場所だが、本来のルートを離れている事が分かった。この時点で運転手は黒と判断。そして、相手は

 

『あらあら、やっぱり失敗したみたいね』

 

「レインか」

 

姿は見えないが通信を繋げてきた相手はアレクシアの仇であるレインだった。

 

『あっ、ちなみに私は今日非番だから関係ないわよ。見学してるだけ』

 

「そうかい、そいつは良かった。今のオレじゃあ勝ち目は無いからな。無駄死にするわけにはいかない」

 

突如ISが街中に現れた事でかなり注目を集めている。面倒だが、一度サンクチュアリに戻った方が良さそうだ。街中で戦闘をする訳にも行かないので一番近くにあるマンホールをこじ開けて下水からサンクチュアリを目指す。

 

「ユウダイ、応答しろ」

 

『どうした』

 

「亡国機業の襲撃を受けた。現在そちらに向かっている。今の所追手は、不味い、ISを1機持ってきやがった。未完でもかまわんからジャケットアーマーを地下試射場に用意しろ」

 

戦闘力、防御力ともに最低限しか備わっていない相棒の為の装備、それが現在開発している試作型ジャケットアーマー。大きさが特撮ヒーローと変わらないラパン・デ・ラ・ネージュが纏う鎧であり、武器であり、ADとも共有出来る装備だ。まだ一つも完成してないけど。

 

『なんだってこんな時に!!クソ、なんとか時間を稼ぎながら帰ってきてくれ。当初の予定とは違うが、間に合わせてみせる』

 

「30分後に到着予定だ!!急げ!!」

 

追い付かれていない今は出来るだけ距離を稼がなければならない。下水道の地図は無いので普通の地図を見ながらルートを予測しながら全力で飛ぶ。武装は最低限しか搭載されていないのでまともに戦闘を行なう事が出来ないのだ。その分、エネルギー量には自信がある。というかエネルギー量と前身であるシュヴァルツェ・ハーゼの単一仕様能力しか自信が無い。シュヴァルツェ・ハーゼの単一仕様能力、それはエネルギーを消費し、各種ナノマシンを精製する能力。オレの身体が完全な生身で無くなった理由はこの能力が原因だとは分かっている。サルベージしたログを見る限り、本来なら修理用ナノマシンと治療用のナノマシンしか精製しないはずだった。だが、オレの治療の際のログには治療用のナノマシンと謎のナノマシンが精製されオレに投与されている。それと同時にコアがオレと融合を果たしている。もう一度そのナノマシンを精製しようとしてみたが不可能だった為、これ以上の調査は無理だった。

話は戻すが、性能としてラパン・デ・ラ・ネージュはジャケットアーマー無しでは第1世代にすら劣る性能しか持っていない。追手との距離が段々と狭くなってくる。このままでは確実に追い付かれるな。どうやって距離を稼ぐかが問題だな。色々と考えた結果、最も博打の手段を取る事にする。さて、どうなることやら。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

side 追撃者

 

 

楽な任務だと思っていた。態々、ISを使わなくても移動中の車で隙を見てガスを使えばすぐに拉致出来ると思っていたが噴射する際の音と臭いですぐさま車を破壊してまで逃げるとは思っても見なかった。だが目標が使用しているISは未完成なのか大した性能は持っていないようだ。このままならすぐにでも追い付ける。それにしても下水なんて汚い場所に逃げ込むなんて、臭いが取れなくなったらどうしてくれようかしら。どうやってあのガキを嬲ろうかと考えていると急に反応が消えた。ステルスモードで隠れたのか?まあいい、とりあえずは反応が消えた所まで行けば分かるだろう。

そこまで行った所で私は困惑した。反応が消えた場所はちょうど分岐地点で東西南北へ水路と、更には非常時の際に使用される地上への扉、更には通常のマンホールがある。ご丁寧にも扉もマンホールも開けられた跡が有り、私がここまで来るのに利用した東からの道以外に壁を擦った様な跡が残され、下水の中に飛び込んだ様な跡さえ残っている。確立で言えば6分の1、ステルスモードを起動しているのなら速度はそれほど出せないはずだ。ここは運に賭けるより、確実に何処に逃げたかを判断しなければならない。他の部下は既に撤退したか逃亡用のルートを抑えている為に手分けして捜す事は出来ない。少しずつ考えれば分かるはずだ。

まず、地上に出たというのは無いだろう。あのガキは迷わず地下に潜った。おそらくは一般市民を巻き込まない為か、目立ちたくないから。ならば東以外の三つのルートと、下水の中で身を隠しているか。とりあえず見える範囲にアサルトライフルを叩き込んでみる。当った気配はないという事は下水に飛び込んだ跡はフェイクだったか。これで3分の1にまでなった。さて、ここからはあのガキの気持ちにならなければならない。私があのガキならここからどうするか。未完のISのせいで戦闘は出来る限り避けなければならない。だからこそ、ここで少しでも時間を使わせ無ければならない。そしてマンホールを開けたりして悩ませる。それでも稼げる時間はそれほど多くない。優先するのは逃げ切る事。相手の戦力が分からない以上は戦闘を極力避ける必要がある。ならば最短コースを使うはず。下水道の地図を呼び出して最短コースを割り出し、絶対に通らなければならない地点を見いだす。

 

「鬼ごっこは終わりだ」

 

side out

 

 

 

 

 

side ジェイル

 

 

「次の道を左に曲がってそのまま真直ぐ郊外に向かってくれ。掴まらない程度に急いでくれ。料金は倍払うから」

 

「はい」

 

下水から外に出て既に10分が過ぎている。どうやら賭けには勝ったようだ。オレはあの分岐地点で細工を施した後、普通にマンホールを潜って地上に戻ってきた。ラパン・デ・ラ・ネージュは待機状態に戻してある。そして普通にタクシーを拾ってサンクチュアリを目指している。サンクチュアリに戻り次第、ジャケットアーマーに換装して戦闘を行なえば良いだけだ。そんな事を考えているとユウダイから通信が入った。

 

『生きてるか』

 

『ちょっとだけ賭けに出たがな。今はそっちにタクシーで向かっている』

 

『そうか、一応大統領の方にも連絡を行なった。護衛に軍が来るそうだ』

 

『放っておけ、それよりもちょっと他の事も頼みたいが、できそうか?』

 

『何をするつもりだ』

 

『各国に交渉に行く時に手土産なんか有った方が良いだろう?』

 

『所長、まさか』

 

『亡国機業のISを確保するぞ。リミッターを解除しろ。それからジャケットアーマーの方はどうなっている』

 

『所長……いや、何でも無い』

 

ユウダイは何も聞かずに報告してくれる。ISを確保する、言葉にすればこれだけの事だがこれにはもう一つ意味がある。相手の搭乗者を殺す。

さらにはリミッターの解除。先日のトライアルや模擬戦とは違い、リミッターを解除したISの武装本来の威力での戦闘は全く異なる。予備のバッテリーの複数用意し、武器に回すエネルギーも倍以上、つまりは威力も倍以上だ。1対1の戦闘であろうと、そこは戦場となる。ISが世に現れる前の戦場と何ら変わらない光景を高が2機で作り出してしまう。それがISの本来の力だ。

 

『ジャケットアーマーは現在色々なジャケットのパーツを組み合わせてとりあえずなんとか形だけにはなっている。今はラウ達が最終調整中だ。火器管制は所長が居ないからちゃんと調整出来ないから若干のズレが発生すると思うから気を付けろだとよ』

 

『了解だ。それから下水道の地図を回してくれ』

 

『下水の地図?少し待て、確か地下を改装した時にネリーが間違えて市内全域のを、有った』

 

『今から送る座標でサンクチュアリに行く為に必ず通らなければならない地点の住民を避難させる様に大統領に伝えてくれ。ありのままを報告してくれれば良い』

 

『良いのか?事が知れれば国際手配物だぞ』

 

『ユウダイなら知っているだろう。既にこの身はオレの物じゃない。それに相手はこっちがリミッターを解除している事を知らない。一撃だ。一撃で事をすませれば問題無い』

 

そう、連絡もさせずに一撃で破壊してしまえば良いのだ。それが出来る武器はあるのだから。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

side ユウダイ

 

 

一撃で決めると所長は言った。絶対防御があるISを一撃で決めると。つまりは

 

「アレを……使うのか?」

 

『使う』

 

即答する所長に絶句する。

 

「本当に良いんだな?」

 

『構わん。覚悟は出来ている』

 

「あ~、一応使用上の注意事項を言っておくけど、仕留めたと思ったらすぐに使用を中止する様に、最悪自爆させる事。絶対に死なないでくれよ。準備はしておく」

 

『了解した。オレはこれから気を落ち着かせる。緊急事態が有れば再度連絡しろ』

 

そこで通信が途切れる。オレは大声を出して武装の準備をしているイルヴァに大声で指示を出す。

 

「所長からのオーダーだ。敵を一撃で仕留めるからアレを用意しろだとよ」

 

その言葉に慌ただしく動いている所員の動きが止まる。

 

「封印、解いていいの?」

 

「解け。調整も急げ」

 

イルヴァと何人かの武装班が格納庫の端に置いてあるコンテナに走って行く。格納庫の片隅に置かれているコンテナは黒色と黄色の縞模様で、ご丁寧にドクロマークまで描かれている。あの中には趣味で作ってアレクシアか所長に封印する様に言われた作品が眠っているコンテナ。新たな封印物が入れられる時のみ開けられていたそれが今解放される。

その中から取り出されたのは巨大な鉤爪が表面に取り付けられた大盾。その盾を機材を使いジャケットアーマーの背中に取り付ける。それと同時に作業が再開される。

 

「まさか、使う事になるとはな」

 

セイヤが頭をかきながら調整を始める。

 

「提案しといて言うのもなんだが、完成させた事に驚いた」

 

「そうは言っても原理を再現出来ただけでとてもじゃないが兵器としては使えないぞ。今の所長じゃなかったら絶対に使わせない所だ。それでも使わせたくはないけどな。特攻兵器だぞ、コレ」

 

仮称すら付けられていないこの兵装はまさしく特攻兵器。本来なら敵のみを一撃で殺す武器だったが、何処でどう間違えたのか使用者すらも道連れにする特攻兵器になってしまった為に封印された代物だ。

 

「試合でも絶対に使えない。手加減なんて出来ないからな。そう言えばコレってISコアまで破壊しないよな?」

 

「さあ?ISコアがどれだけ硬いかによるな。たぶん大丈夫だとは思うけど、後は所長の腕次第としか言えんな」

 

調整が終了したのかタブレットを横に置きながらセイヤが答える。

 

「やりすぎずに済むと思うか?」

 

「さあな。過程と結果次第じゃ、オレはここを離れるよ。どっかの田舎で電気屋でもやるさ。かなり居心地が良かったんだけどな。ユウダイはどうするんだ」

 

「オレは離れないさ。放っておいたら今すぐにでも死にに行くぞ、今の所長は」

 

「大分悩んでたからな。人を初めて殺したときはあんなにもすぐに割り切ってたのに」

 

「だからこそ、まだこれだけの人数が残ってるんだろうが」

 

所長は知らないだろうが、アレクシアの葬儀の後の一ヶ月はチーフを除いた全員がかなり荒れていた。自分たちの成果が目の前で壊され、まとめ役だったアレクシアを失い、所長はサンクチュアリに近寄ろうとしなかった。その事に全員の不満や苛立が募り続けていた。ソフト班の一人の男が爆発した。所長個人のネットワークに侵入し、中身を全てコピーしたのだ。設計の大本は全て所長が行なっている。それを手に入れて他の企業にでも持ち込めばそこで好きに出来る。そう考えての行動だった。そして、偶々見てしまったのが日記データだった。書き始めはアレクシアとの出会った事から始まり、ほぼ毎日書き込まれていた。その中でも目を引いたのが、葬儀の前日と葬儀の当日。そこには所長の生の感情が綴られていた。他のとは違い、これからの方針の悩みや自らに起こった異変への不安、アレクシアの仇に対する憤怒に神への呪詛といった生の感情だ。その方針への悩みの大半は自分たち所員の処遇だった。本当に巻き込んでいいのか、判断は間違えていなかったのだろうかというのが葬儀の当日から延々と記されていた。それが書かれなくなったのは、サンクチュアリが再稼働した翌日だった。それを男はラウに見せ、ラウからサンクチュアリを離れると予想される6人以外に見せた。その内容にひとまず不満は収まった。

 

所長が変わり始めている。

 

誰もが気付いた事だ。だが、どう変わろうとしているのかが分からない。ならば様子を見ようという風に意見が纏まった。今までの結束とは違い、何時離ればなれになるか分からない。それが今のサンクチュアリの現状なのだ。

ちなみにサンクチュアリから去って行った6人は元から自分に箔を付ける為だけにサンクチュアリに来た人間だ。噂だと転属した部署では既に煙たがられているそうだ。当たり前だ。ここにいる所員は元から普通の職場に適応出来なかった人材なのだから。普通ではないサンクチュアリだからこそ真価を発揮出来るのだ。もし、ここを離れるのならセイヤの様に個人の店を構えるか、自分を殺して周りに適応するしかない。前者ならともかく後者を行なうには並々ならぬ覚悟が必要になる。それが出来なかったからここに居るのだから。

 

「出来れば減らないでいてくれるとありがたいんだがな」

 

これ以上忙しいのは勘弁だ。

 

 

side out

 

 

 

 

side 追撃者

 

 

おかしい。奴が来ない。気付かれたか?

仲間に連絡を取れば居場所を知られる為に連絡を取れない。私の推測は外れたのか?何処を読み間違えた?まさか地上に出たのか?それしか考えられない。時間的に完全に逃げ切られた。作戦は失敗だ。今すぐに撤退しなくては。最短コースは、センサーに反応!?速い!!

気付いた次の瞬間、凄まじい衝撃と何かに掴まれた感触がする。そのまま壁に叩き付けられる。

 

「大人しく投降しろ。さもなくば命はないと思え」

 

ハイパーセンサーで捉えた敵の姿は一面銀色の大盾。そしてそれに取り付けられた鉤爪が私を拘束している。

 

「もう一度言う。投降しろ、絶対防御を貫ける、いや、無視出来る程の武器をこちらは搭載している」

 

絶対防御を無視する武器だと?脅しのつもりか。

 

「これは脅しではない。こちらにはマイクロ波加熱システムを搭載している武装がある。分かり易く言えば巨大で強力な電子レンジだ。一定範囲内の水分を加熱、沸騰させ水蒸気爆発を引き起こす。内側からの攻撃には絶対防御も意味をなさない。投降するつもりがあるのならISを解除しろ」

 

「残念だが、それはできない」

 

どうやって監視していたのかは分からないが、どうやら組織はこの状況を上手く利用するようだ。ならば最後の最後に囁かな反抗をさせて貰おう。データの送信の用意をして、暴れる。

 

「くっ、クソが!!」

 

身体の体温が急激に上昇しているのを感じる。先程言っていた武器はこの盾だったか。だが、僅かな時間が残っている。用意しておいたデータを転送し目を瞑る。産まれてから今までの事が瞬時に過ぎ去っていく。これが走馬灯か。亡国機業に関わってからクソみたいな人生だったが、まあ悪くはなかったか。

 

 

side out

 

 

 

 

side ジェイル

 

 

くっ、予想以上に安定しない。なんだ?何かのデータを受信した。この状況で?考えるのは後だ。効果は既に十分のはず。機能を停止させて離脱しなくては。

 

「右腕ウェポンラックパージ」

 

盾を外す様に指示を出す。それに帰ってきたのはエラーの文字。

 

「なっ!?溶けて引っ付いているだと」

 

このままではオレも死ぬ。急いで左手に高周波ブレードを展開して右腕を切り落としにかかる。右肩部分の装甲を格納し生身の部分を一瞬で断つ。切断面を抑えながら後ろに下がり盾の自爆装置を起動させる。こちらは問題は無く作動し、すぐに爆発する。

 

「ちっ、本当に化け物だな」

 

切断面の血は既に止まり、少しずつだが元の形を取り戻していく。それを見ながらISコアを回収する為に残骸に近づく。ついでに先程受信したデータを確認する。

 

「何!?これはどういう事だ」

 

受信したデータの中身は亡国機業に関する物だった。送って来た相手が知り得る全ての情報らしきそれは、幾つかの拠点に極少人数の幹部クラスの者の個人情報、それと亡国機業が構成員に使用している脱走防止用ナノマシンの簡単なデータ、最後に口座と暗証番号に住所と簡単な遺書だった。送って来たのは先程殺した奴だ。

 

「最後の最後は自由を手にしたんだな」

 

肉片になってしまっている名も知らない女に声をかけ、残骸からISコアと罅割れたロケットを回収してサンクチュアリへの帰路に着く。いずれはオレも悲惨な死を遂げるだろう。それまであの世で待ってな。

 

 

side out

 

 

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