IS インフィニット・ストラトス 獣の指揮者   作:ユキアン

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第15話

 

 

side シャルロット

 

 

今、私の目の前には過去を私と同じ状態のラウラが倒れている。フランスに戻ってきて三日目、身体測定で限界まで肉体を酷使したラウラは完全に意識を手放している。私はそんなラウラを背負って医務室まで歩いていく。お兄ちゃんは片付ける前に鍛え直すと言ってあの測定を行なっているから後で様子を見に行かなくっちゃ。それにしてもラウラは軽いなぁ。鍛えてるから筋肉が硬い部分もあるけど、それでも女の子らしい柔らかい部分の方が多い。たぶん、私も似た様なものだと思う。お兄ちゃんは服の上から見る限りでは優男に見えるけど、今のラウラみたいに倒れた時に背負ってもらった時に触った限りではがっしりとした身体だったな。今のお兄ちゃんは触ろうとも触らせてもくれないだろうけど。

 

お兄ちゃんの身体の7割はネージュが精製したナノマシンに置き換わってしまった。人に限りなく近く、限りなく遠い存在に。気付いたのはドイツから戻ってきた初日に身体に違和感を覚えて検査を行なった事からだった。検査結果を知っているのは私とチーフ陣のみ。もしかしたら婚約者のリリアーヌさんには伝えてるかも知れないけど。検査結果を見たお兄ちゃんは諦めた様に溜息をついて自室に戻っていったきり、その日は出て来なかった。なんとなくだけど、あの姿は私の一つの未来だったかも知れない。お兄ちゃんがいなかったら、私はあんな姿になっていたと思う。お兄ちゃんは復讐という信念があるからすぐに立ち直れた。けど、私にはそこまでの信念が無い。私はこのままで良いのだろうか。

 

「……むぅ」

 

「あっ、目が覚めたみたいだね」

 

「シャルか。私は?」

 

「身体測定で倒れたんだよ。ここに居る皆はアレで倒れてるから気にしなくていいよ」

 

「……アレは何なのだ?軍でもあそこまで過酷な物をした事は無い」

 

「アレクシアさんの特製だからね。生き残る為に自分で設計して鍛えていたらしいよ。機体班のチーフのユウダイさんから聞いたんだけど、アレクシアさんのISの性能ってそこまで高い物じゃなくて、単一仕様能力も攻撃系じゃない上に隠密作戦ばかりだからドイツ製の武器は使えないなんて多くの制限を受けてたらしいんだ。だから腕でカバーする為にアレだけの事をこなす必要があったらしいんだ」

 

「私のオリジナルは化け物なのか?」

 

「皆口には出していないけどそう思ってるはずだよ」

 

医務室に着いたのでベッドにラウラを寝かせて備え付けの湿布を全身に貼っていってあげる。

 

「明日は確実に筋肉痛で動けないだろうからお休みだよ。私は復帰に三日掛かったし、お兄ちゃんも二日、サンクチュアリの皆は三日から一週間は復帰に時間がかかったね」

 

「ならば私は一日で復帰してみせる」

 

「無理したらお兄ちゃん本気で怒るから気をつけてね。たぶんまたアレをやらされるから」

 

「……やっぱり二日にしておく」

 

「うん、それが懸命だよ」

 

湿布を貼り終え、毛布をかけてあげる。

 

「何か消化に良い物を持ってきてあげるね。それを食べたらあとはゆっくりと休むと良いよ」

 

「すまない」

 

「気にしなくて良いよ。サンクチュアリは逸れ者が身を寄せあって助け合っていく所だから。まあ、逸れ者同士気が合うから何とかやっていけてるだけなんだけどね」

 

「逸れ者同士、か」

 

「……ここにいる皆はね、個性が強すぎるから周りに溶け込めなかった人や、私やお兄ちゃんの様に特殊な事情がある様な何かしらの欠点を抱えてるの。自分が悪いのも理解している。だから、他人を受け入れる事が出来る。淋しいのは耐えられないから」

 

「淋しいか。私が軍で感じていたのはそういう気持ちなのだろうな。街に出たのは昨日が初めてだった。色々な服を着せられたりしたのも、ケーキを食べたのも初めての事だった。今まで感じた事が無いが、あれが楽しいと言う感覚なんだろう」

 

「楽しい事なんてまだまだたくさん有るよ。辛い事や悲しい事もあるけど、楽しい事や嬉しい事はもっとたくさん有る。二人なら楽しい事や嬉しい事は2倍で辛い事や悲しい事は半分で済むって言葉すらあるしね。だからこれからも一緒に頑張って行こうね」

 

「そうだな……軍から、連れ出し、てくれて……ふわぁ、ありが……とぅ……」

 

「寝ちゃったか」

 

付けっぱなしになっている眼帯を外してあげて傍のテーブルにおく。

 

「ありがとう、か。それは私じゃなくてお兄ちゃんに言うべきだよ。私もお兄ちゃんのおかげで笑えているんだから」

 

一度だけラウラの頭を撫でてから医務室を後にする。医務室を出て整備室の方に歩いて行くと反対側からラウさんがやってきた。

 

「あっ、シャルちゃん。所長が何処に居るか知らない?新しい機材が到着したから設置したいから許可を取りたいんだけど」

 

「今度はどんな機材を取り寄せたんですか?」

 

「今回のは無重力の状態でしか精製出来ない金属を精製する為の装置だよ。ユウダイの所とイルヴァの所が共同で購入した物さ。ネージュのナノマシンとの親和性をあげる為に必要らしいんだ」

 

「そうなんですか。それからお兄ちゃんなら、今は第3格納庫でアレをやっている途中ですよ」

 

「あ~、なら後回しだな。食堂で張り付いてるから、倒れてたら連絡だけ貰えるかい?」

 

「分かりました」

 

そう言って食堂の方に向かうラウさんを見送ってから再び整備室に向かう。お兄ちゃんの限界まではまだまだ時間があるしね。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

side ジェイル

 

 

「はぁ~~~」

 

呼吸を整えながら汗を拭き、時計を確認する。

 

「タイムが更に縮まったか」

 

測定中、気になった事を確認する為に八双飛びの部分に向かう。リモコンで仕掛けを動かし、全てのボールの軌道を見切って身体を傾けて躱す。

 

「ハイパーセンサーらしき機能が身体に追加されてるな。やはり、オレはISに浸食されているのか。後どれだけの間、オレは人間でいられるんだ」

 

先日の検査で既に身体の7割がナノマシンで形成されてしまっている。肉体の疲労はほとんど無く、汗も驚く程少ない。呼吸もすぐに整い、食欲や睡眠欲すらも少なくなってきている。自分がこの先、どこまで正常でいられるのかが分からずに不安で堪らない。だからこそ、日記を付けていて良かったと思う。日記に書いてある事と、同じ感情ならオレはオレであると言える。それがあればオレは修羅の道を歩める。その先に待つのが破滅でも構わない。

 

「あっ、お兄ちゃん。今大丈夫?」

 

入り口の方を向くとシャルがこちらに向かって手を振っていた。

 

「大丈夫だ。何かあったか?」

 

「ラウさんが新しい機材が入ったから設置の許可を頂戴って」

 

「分かった。今片付ける」

 

格納庫の入り口に設置されているコンソールを操作して器具を格納する。

 

「シャワーを浴びてから向かう。ラウは何処に居るんだ?」

 

「食堂で待ってるって。また誰かを口説いてるんじゃないかな」

 

シャワーを浴び、着替えてから食堂に行くとシャルの予想通り、ラウが女性所員を口説いていた。

 

「相変わらずぶれない奴だな」

 

「それが僕だからね。それより話は行ってる?」

 

「ああ、例の重力制御に必要なパーツが入ったんだろう。基本は第3格納庫を使う様に伝えておいてくれ。報告は以上か?」

 

「あ~、それとは別にちょっと相談があるんだけど」

 

「相談?」

 

「ちょっとここじゃ不味いから」

 

「分かった」

 

食堂から離れて所長室に向かう。

 

「それで、相談とは?」

 

「うん、それなんだけどね。最近、ここのデータベースにちょっかいをかけてきているのが居るんだ。今までは様子見だったみたいなんだけど、今日は危険を感じて外付けのHDDのバックアップ以外全部破棄したんだ」

 

「何!?」

 

「逆探知も仕掛けておいたんだけど、途中で撒かれてね。分かったのは中継ポイントが南米って言う位だね。しかも複数のポイントを中継してるんだ。これがそのデータ」

 

貰ったデータを確認して行くと、イングランドからアイスランド、ニューヨーク、パナマを経由した後に南米のあちこちのポイントを渡ってきている。どこかでこのポイントに見覚えがあったのだがそれが思い出せない。

 

「撒かれたのはアマゾンの奥地か」

 

「そこから先は分からないんだ。ただ、予測としてはハッキングを仕掛けてきた相手は高速で移動していると思うんだ。おそらくは太平洋上を移動中だと思う」

 

「何故そう思う?」

 

「南米に入るまでのサーバーは調べられてるんだ。そこは一般に開放されている物なんだけど、南米に入ってからは個人のサーバーなんだろうね。特定が出来なかった。そして何カ所も経由している理由はおそらく施設としてはただの中継用なんだろうね。そこまでの規模は無いんだ。だから南米のこの経由はアマゾンを目指している物なんだ。そしてアマゾンから太平洋上に通信を飛ばしている」

 

なるほど、理屈は通っている。だが、少しだけ惜しいな。やろうと思えばチリの地点からでも十分なはずだ。つまり答えは

 

「相手は太平洋軌道上を静止しているんだろうな」

 

「太平洋軌道上?」

 

「相手は篠ノ之束だな。オレかADの事に勘づいていやがるな。正確には何かがあるとは確信している」

 

「どうするんだい!?」

 

「簡単な事だ。篠ノ之束は天才ではあるがコミュ障で、社会不適合者だ。ADに関してはISとして誤摩化せる。オレについての情報を固めろ。そうすればオレの方に食い付いてくるだろう。人の考えが分からないからあんなマッチポンプを考えるんだよ。あいつが初めてISのプレゼンをした時の映像を見たが、あれじゃあどうやったってISが採用される事は無かったさ」

 

「ああ、それなら見たことあるよ。自慢ばっかで相手を見下した発言ばかり。あれじゃあ採用なんて無理だよ。性能自体には皆気が付いていたけど、あれで採用したら面子は丸つぶれだからね」

 

「だからこそこんな初歩的な事で引っかかって満足してくれる。というわけで防諜の方は任せるぞ」

 

「了解。早速データを再構築して所長の情報を固めておくよ」

 

「頼むぞ。出来る限り抵抗したと見せかければ良い。どうせそろそろオレの事を公表するつもりだからな。既にEUの3割がオレ達の計画に乗ってくれている。この調子なら1年程でオレは表舞台に立つだろうな」

 

「1年か。それだけあればAIの慣熟も終わるだろうね。ジャケットアーマーも何種類か出来てるだろうし」

 

「予算も少しは増えるだろう。今度は食いつぶすなよ」

 

「分かってるよ。今度は自重するって」

 

そう言って所長室から出て行く。これから徹夜でデータベースを復旧するのだろう。後で何か差し入れでも持っていってやるか。

ラウを見送ってからついでとばかりに書類の決済を始める。面倒だが、これも復讐の為に必要な事だと割り切る。しばらくの間書類に目を通しているとプライベート用の端末にメールが届く。

 

「一夏からか」

 

内容は姉の織斑千冬が何の説明も無く1年間ドイツに出張に向かったと言う物だった。これからの生活の不安と姉の不審な行動への困惑が短い文に込められていた。やはり織斑千冬に取って一夏は……

嫌な予想を振りさって返信する。1年間の出張はこの前の出来事の借りを返す為で、説明が無かったのは一夏が自分の所為だと思わせない為だと。一応、納得出来ない事も無いだろう。

それにしても1年間、ドイツに出張か。おそらくはISの教官として招いたのだろうな。ふむ、1年後にラウラと織斑千冬に鍛えられた部隊の誰かと模擬戦を行なわせると楽しそうだな。嫌がらせで専用機とは別にラファールでも用意しておこうか。ラウラが育てば意趣返しにはなるだろう。結局表向きにはラファール・リヴァイヴが販売される事になったが、開発チームは解散している。残ってたのは武装部門だけで、リヴァイヴの販売も予定より少なく、機を見てアンジュシリーズの販売を行なう事が決定している。量産に伴いある程度のスペックダウンを施したアンジュ・デュ・ヴァンを機動性、エネルギー量、操作性、格納領域の4種類に特化させたヴァン、ソレーユ、ヌアージュ、シエルと名付けた。シャルのヴァンはカスタム機という扱いだ。ビット兵器であるエール・ド・ラ・リュミエールはオミットされ、別売りで販売する。一番資金が掛かっている上に未だにどの国でも第3世代兵装の開発は難航している。そこに武装と管制プログラムを本体とは別売りにすれば大抵の国は食い付くはずだ。研究用として試しに購入し、有用なら追加で発注が入るだろう。そう簡単にコピーされる物でもないからな。

スケジュールには余裕があるが予算はギリギリのラインだな。人員も欲しいし、また何処かの国に赴いて裏取引を行なうしか無いな。イタリアの方で面白そうな情報を魔導師に聞いたからな、行ってみるか。イルヴァの知り合いも居るみたいだから声を掛けに行きたいしな。ラウラの訓練が完了して専用機の準備ができたら行くか。基礎フレームの設計だけは済んでいるみたいだけど、今はコンセプトをどうするかで朝から会議を続けているみたいだ。際物になる可能性は低いが、用心だけはしておかないとな。

 

 

 

side out

 

 

 

 

side ユウダイ

 

 

「最終候補はこの2つで良いな?」

 

「「「はい」」」

 

「ならば設計者は所長相手のプレゼンの準備を。間違っても開発に手を出すなよ。これ以上給料を減らされたく無ければな。というか既に借金をしている身の者も何人か居るだろう。誰とは言わないが」

 

視線をわざとらしくそらす数人を無視して話を続ける。

 

「話はここまでだ。次にADの生産ラインの方はどうなっている」

 

オレの隣に居るネリーが答える。

 

「先日ドイツに提供した簡易型のラインは既に3本が稼働中です。今月中に800機が生産される予定です。資材があれば」

 

「資材の方は諦めろ。これ以上増やしたら嗅ぎ付けられる。本社と国の方で古い工場を買収してそこに生産ラインを移す計画が練られているからな。ラインのパーツ自体はどうなっている」

 

「組み立て前の物が4つですね。あくまで最低限の基礎部分のラインですから。もっと増やします?」

 

「保留だ。コンテナのラインはどうなっている」

 

ネリーちは逆側に座っている男が立ち上がって答える。

 

「稼働中は1つも無いぞ。コンテナ自体も10個ほど残っているだけで後は全部ドイツ行きだ。ラインの組み立ては3日で1本だな」

 

「パーツは?」

 

「パーツは今の所5本分だな。増産するのか」

 

「10本分に増やしてくれ。パーツのままで良い」

 

「了解した」

 

「最後、サンクチュアリ産AD、サマエルだが、正式採用が見送られた」

 

「「「えええええええっ!?」」」

 

会議室に居た全員が驚いて席から立ち上がってオレに詰め寄ってくる。

 

「どうしてなんですか班長!?」

 

「今から説明する。だから席に戻れ」

 

その言葉に渋々と言った形で席に戻って行く。

 

「政府としてはADを秘密裏に販売する事を既に決めている。その為には需要以上の供給を先に用意しなくてはならない。色々と見積もった結果、供給が上回るのが2年~3年と行った所だ。試作品は各国に提供されるがそれはあくまでもすぐに戦力化出来る様にする為の研究用だ。ここまでは分かるな?では尋ねるが、今のサマエルを量産して3年後でも通用すると思うか?」

 

その言葉に全員が言い淀む。

 

「つまりはそういうことだ。サマエルはこのまま研究用と、各国への提供サンプル分のみ生産する形となる。既にラインは政府の方に回してある」

 

「相変わらず仕事が速いですね。それじゃあ我々の仕事はどうなるのですか?」

 

「当分の間はISだけだ。マテリアル系の予算は下りてきているが、余裕は一切無い」

 

「了解しました」

 

「ADの件は以上だ。何も無ければ今日は解散だ」

 

「「「お疲れ様でしたー」」」

 

「お疲れ」

 

会議室からそのまま全員で食堂に向かう。既に規定の時間は過ぎているので料理の出来る奴が適当に大人数で食べれる物を作り始める。オレも母親の実家から調味料が届いたので久しぶりに鍋を作る事にする。

 

「班長、その料理って何ですか?」

 

ネリーが自分の分の料理を作りながら問いかけてきた。

 

「これはオレの国の男の一人暮らしに持って来いの料理、鍋だ。材料を切ってスープにぶち込んで煮込むだけの簡単料理だ」

 

「ご、豪快ですね。それじゃあその隣に有るビンは一体?」

 

男の一人暮らしの食生活なんてそんな物だ。美味い物が食いたければ店に行けば良い。

 

「こっちは実家から送って貰った醤油だ」

 

味噌はまだ残っているが醤油はセイヤの爆発事故の際に良く割れるからな。市販されているペットボトルの物で良いと思うのだが、母親の実家が送ってくるのは近所で昔ながらの製法で作っている個人店の物なのだ。おかげで瓶詰めで送られてくる。

 

「スープの素の一つだ。軽く舐めてみるか?」

 

小皿に醤油を少しだけ入れて差し出し、指に付けて舐める様に言う。ネリーはオレの言う通りに醤油を舐める。

 

「凄く辛いですね」

 

「だから大量の水で割る。薄めればこんな物だ」

 

今度は鍋の方のスープを小皿に寄そって渡す。

 

「独特の風味があっておいしいですね」

 

「万能調味料だからな。これと味噌があればオレは大抵の物が無くても食事には満足出来る」

 

最悪味噌を湯でとかした味噌汁さえ啜れればそれで良い。白米もあれば良いんだけどな。あと、漬け物。久しぶりに食べたくなったな。一度母親の実家に戻ろうかな?ここ2年程顔も見せてないし。

具材が煮えた所で火を止めてテーブルに置いておいたガスコンロまで持っていき、弱火にかけて食べ始める。他に二人程が興味があったのかオレの鍋に手を伸ばしてくるがそこそこの量を作っておいたので問題無い。足りなければカロリーブロックもあるし。

 

「ほぅ、鍋か。珍しい物を見たな」

 

「あれ、所長は鍋を知ってるんですか?」

 

いつの間にか所長が食堂にやってきていた。

 

「ああ、一度だけ食べた事がある。良い素材を使って丁寧に灰汁抜きをしただけのシンプルな物だったが、良く覚えている」

 

「そんなのがこっちで食えるのか?所長って欧州から出た事って無いんでしょう」

 

「まあな。店がある街は、魔導士が住む街だ。というか魔導士がやってる店だ」

 

「げぇっ、魔導士の奴、何で店なんてやってるんだよ」

 

「趣味だそうだ。かなり家庭的な人だぞ、魔導士は。炊事洗濯掃除に裁縫、出来ない事の方が少ないらしい。一人暮らしが長かったらしいし。意外と可愛い物好きだしな。エプロンにひよこのアップリケを付けてるし」

 

「一気にイメージが崩れ去ったぞ。篠ノ之束以上に不気味な存在が一気に気の良いおっさんになっちまったぞ!!」

 

「実際気の良い人だからな。敵対しなければ」

 

「結局はそこに落ち着くんだな」

 

呆れながらも食事を続ける。一通り食べ終わった後は炊いておいた米を鍋に放り込んで溶き卵を入れておじやを作って食べる。やはり鍋の最後はおじやに限る。うどんなど邪道だ。

 

 

side out

 

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