IS インフィニット・ストラトス 獣の指揮者   作:ユキアン

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第17話

 

 

side ジェイル

 

 

公社での技術交流は順調に進んでいる。互いに技術を提供しあった後は個人個人で自習してそれを自分たちなりに発展させてレポートをおこし、それを共有して更に議論を重ねる。疑問があれば素直に尋ねて教えを乞い、逆の立場になれば教える。そうしながら互いの組織を何処まで信用していいのかを測って行く。そうして二週間が過ぎた

 

「さて、予定の半分が終わったのだがどこまで信じられる」

 

「個人間では問題無いと思う。それとここのトップまでは。現場はちょっと不安だね。あそこは個人の考えが強いから。あと、イタリア人にしてはガードは固いし真面目なのが多過ぎだ。連敗記録を軽く更新しちゃった」

 

「オレもラウと殆ど同意見だ。向こうの札を見てからでも判断は遅く無いと思うぞ。こっちの見せ札はネージュのナノマシンで良いよな」

 

「伏せ札はオレの身体だ。臭わせる所までは良い。期間は一週間だ」

 

「「了解」」

 

「それじゃあ、明日の休暇を楽しめ」

 

この二週間で互いに区切りの良いところまでの技術提供が終わったので一度休暇を取る事になったのだ。ラウは街にナンパに行く予定でユウダイは溜まっている仕事を片付けてから寝る予定だそうだ。オレはこの二週間まともに身体を動かしていないので久しぶりに身体を動かしたりする予定だ。草木も眠る午前2時にも関わらずオレは早速服を脱いでISスーツで野外射撃場まで全力ダッシュで走る。10kmほど離れているので普通は車などを用いるのだが準備運動とこの二週間でどれだけ体力が落ちたのかを測る為に全力で走る。30分かからずに射撃場に到着した。ここの使い方は既にシャルに聞いていたのでターゲットを用意して自分の銃を取り出す。愛銃であるベレッタに異常が無いかをチェックしてからマガジンを入れてスライドを引く。両手で構えて丁寧に一発ずつ照準を合わせる。続いて先程と同じ様に両手で構えて連射、片手で丁寧に、片手で連射する。

 

「相変わらず変な命中精度だよな」

 

命中率の低い順に両手で丁寧、片手で丁寧、両手で連射、片手で連射となる。更に今度は走りながら撃ったり、銃を変えて撃ったりとかなり大量に撃ちまくる。それが終われば突入訓練用の建物の内部で三角飛びや天井への張り付きを練習し、突入訓練も行なう。マスターキー(レミントンのグリップとストックを取り除いたもの。どんな扉の錠前でも破壊出来るという意味で)で扉を開けてMP7で制圧射撃を行ないながら突き進んで行く。ふはは、テンションがあがってきた。トリガーハッピーの気は無いが、銃を撃っていると高揚感に包まれる。調子に乗って撃ちすぎて掃除が大変だった。後片付けが済んだら再びダッシュで宿舎の方まで戻り、中庭の部分で筋トレを開始する。腕立て伏せの状態から飛び上がり、着地までの間に屈伸を行なってから腕立て伏せの状態で着地するのを繰り返す。かなりキツいのだが、道具を使わずにするとなるとこれが一番負荷をかけ易い。この身体になってから限界を感じた事がない。多少の怪我も10分と掛からずに完治する。擦り傷など5秒も掛からない。無理をして筋を痛めても2分程だ。腕や足がもげるとさすがに30分程かかる上に、筋力が落ちているので鍛え直す必要がある。相変わらずの化け物スペックにはもう慣れた。というか諦めた。考えてもきりがないがないからな。

しばらく筋トレを行なってからナイフを用意してアレクシア式ナイフ格闘術の型を確かめる。両手にナイフを逆手に構え、状況によっては投げつけたり手放して投げや締めにも移行する我流の型だがドイツ軍の正規の型よりもしっくり来てしまい、相手をしてもらったラウラが半日程落ち込んだ。その後シャルにまで負けて丸一日引き蘢っていたのを女性職員がお菓子やらで釣って機嫌を取っていた。誘惑に負けてふらふら~と部屋から出てくるラウラに保護欲をくすぐられてしまった。悪い大人に騙されそうで怖い。まあシャル達が守るだろうから大丈夫だろう。

しばらくナイフを降り続けて日が完全に昇った頃、私服のシャルが中庭に顔を出した。

 

「おはよう、お兄ちゃん」

 

「おはよう、シャル。今何時だ?」

 

「8時前だよ」

 

「何?もうそんな時間か」

 

「そんな時間かって、何時からやってるの?」

 

「午前2時、走って野外射撃場に行って3時間位撃ち回って片付けてから戻ってきてずっとだな」

 

「はぁ!?なんでそんな夜遅くからぶっ続けで訓練なんかしてるの!?今日は折角の休みなのに!!」

 

「この二週間ずっと缶詰でまともに身体を動かしてなかったからな。体力の落ち方が酷かった」

 

「もしかして今日一日ずっとそうやって過ごす気なの?」

 

「いや、さすがに丸一日と言う訳にも行かないな。書類をまとめたりするし、銃器の手入れもしたいし」

 

「ならラウラを預かっても良い?」

 

「ラウラを?」

 

「ちょっとこの前調子に乗りすぎて拗ねちゃってるから街でケーキを奢るって約束してるんだ。それから3期生のニコラとニコロ、二人の担当官のエレナさんも一緒に行くんだ」

 

「まあ構わないがテロにだけは気をつけろ。いざとなったらISも使用すれば良い。判断は任せる。ラウラにもそう伝えておいてくれ」

 

「うん、分かったよ。お土産期待しててね」

 

「良い豆があったら頼む」

 

「さすがにコーヒー豆の善し悪しは分からないから期待しないでね」

 

まあ、素人からしたら何が良いのか分からないからな。コーヒーは奥が深いからな。同じ味を出せる様になるまでかなり時間がかかった。

走り込みを再開してしばらくするとシャル達が街に出て行くようだったので手を振っておく。無視すると拗ねるからな。とりあえず満足するまで走った後にシャワーを浴びて書類に目を通しながら愛銃を分解整備していく。それも終わり少し早い昼食、いや遅い朝食か?まあ食事にしようとした所でラウラからISのプライベート通信が入る。

 

『街中で襲撃を受けた!!シャルとエレナが軽傷、二人を庇ってニコラ達が重傷、至急応援を頼む。敵の数は20前後、増えつつある。今はADのコンテナに隠れながら応戦している。ISを使う程では無いが急いでくれ!!』

 

報告の途中から既にオレは動き出している。宿舎の内線を使って作戦二課のオフィスに連絡を入れる。

 

「市内でテロだ、標的はウチかそっち!!ニコラ達が重傷、援軍要請だ!!」

 

続いてユウダイとラウに連絡をいれる。

 

「シャル達が襲われている!!敵の目的が何か分からない、十分に注意しろ!!」

 

連絡を終え、オレはISスーツの上に動き易い服を着込む。相手の目的は分からない。だが、最悪なら予想出来る。それを確かめる為にオレは野外射撃場に向かう。そしてその予想は当っていた。

 

「やはり、市内のテロは囮か」

 

「久しぶりね、元気にしてたかしらジェイル」

 

「お前を殺す為に強くもなったさ、レイン」

 

野外射撃場には本来居るはずも無いレインがISスーツ姿でオレを待っていた。

 

「派手に暴れて邪魔が入るのもアレだし、IS無しで戦ってあげるわ」

 

「オレも公社にも部下にも市内の方に目を向かせる様にしたからな、邪魔は入らないさ」

 

お互いに銃を取り出す。どうやら亡国機業にウチの製品であるカード型量子格納装置が渡ったのだろう。まあ予想通りだ。普通に売ってるからな。ISすら盗んで運用する組織が手に入れないはずが無い。

 

「じゃあ始めましょうか」

 

レインが空の薬莢を投げる。それが地面に落ちるのと同時に殺し合いが始まった。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

side ラウラ

 

 

ええい、数が多いし鬱陶しい。質はそこまで高く無いから苦労はしないし、弾薬の心配も無いが、私のティラミスとパフェを吹き飛ばした罪は重いぞ!!それにニコラとニコロの容態も不味い。普通に銃を構えて撃っているが、腹部からおびただしい程の血が流れている。応急処置で傷口を縫い付けて火で焼いてあるが、それでどれだけ持つだろうか。本人達は既に痛みは無いと言っているが、シャルロットが精神的に参ってしまっている。今も引き金を引いてはいるが、一発も当っていない。普段なら問題無い距離なのにだ。いや、そう言えばシャルロットは人を撃った事が無かったな。それも原因の一つだろう。狙えば殺さずに済む肩などを狙う余裕すらないので近くに牽制射撃を撃つ事しか出来ないのだろう。それは悪い事だ、と昔の私なら言うだろう。だが、今はそれで良いと私は思う。シャルロットは所長やユウダイの様にどこか冷たい場所を持っていない。どこまでも温かい存在だ。だから所長や私が守ってやらなければならない。

 

「二人がこんな便利な物を持っててくれて助かったわ」

 

頭に包帯を巻いたエレナがマガジンを交換しながら話しかけてきた。

 

「私は護衛だからな。いざという時の為の装備は欠かさん」

 

「いざと言う時でこれだけの重装備とか聞いた事無いわよ」

 

そうか?たかがADのコンテナ1個分に普通の歩兵の火器だけだぞ?これでは戦闘ヘリや装甲車の相手は出来ないし、ISやADなどもってのほかだぞ。

 

「それより、ニコラ達は大丈夫なのか」

 

「「問題無い」」

 

口ではそう言うが、訓練の時の様な素早さが感じられない。命中率もかなり悪い。早く治療しなければ不味いのが分かる。治療用のナノマシンを投与しようにも義体の事を考えると殆ど効果はないと思われる。所長がこの場に居ればネージュのナノマシンでの治療が可能だと思うのだが。

 

「今連絡が入ったわ。5分以内に本部に残ってたフラテッロ3組と課員が到着するわ。それまで耐えて」

 

「シャルロット、聞いての通りだから撃ちまくれ。近づけさせなければコンテナを抜く事なんて出来ん」

 

「分かってる」

 

もうすぐニコラ達を本部に連れて帰えれるとシャルロットに気合いが入る。しばらく応戦していると他の場所からも銃声が聞こえてきた。どうやら援軍が到着したようだ。敵もそうなると諦めたのか弾幕が薄くなる。

 

「無事ですか!!」

 

薄くなった弾幕をかいくぐって3期生の一人がコンテナの影に飛び込んで来た。名前は知らないが何回か顔は見かけたから間違いない。

 

「ニコラ達が重傷を負っているだけよ」

 

「エレナさん、どうしますか。ドメニコさんはエレナさんの指示に従えって」

 

「それなら、ロザリア、それは何?」

 

エレナが何かを疑問に思ったのかロザリアという義体の腹部を指差す。

 

「これですか?ドメニコさんが持っていけって」

 

ロザリアの腹部にはポーチが取り付けられていた。それだけを見るなら何も思わないのだが、私は嫌な予感がした。おそらくエレナもそう思ったのだろう。だからそれを指摘したのだろう。そして次の瞬間、何かが作動する音が聞こえると同時に強い衝撃を受けた。衝撃を受けながらISを展開してシャルロットを受け止める。周囲を見渡すと酷い事になっていた。ロザリアの身体がバラバラになって吹き飛び、エレナを庇ったであろうニコラ達が血溜まりに沈んでいる。庇われたエルザもコンテナに収容されていた銃火器の暴発で頭が吹き飛んでいた。シャルロットはISを部分展開したおかげでシールドに守られて怪我は無いようだが気を失っている。正直に言えば気を失っていて正解だ。これは見せられる様な状況ではない。そして犯人はドメニコだな。ロザリアの持っていた爆弾が爆発すると同時に今まで攻撃してきていた奴らが急に居なくなった。アレが合図だったのだろう。まだ息があるニコラ達とシャルロットを担いで社会福祉公社まで空を駆ける。移動中に連絡を入れたので中庭に義肢研究員が担架を用意して待っているのを確認した。それと同時に野外射撃場で銃撃音も検知した。この状況下で誰が、と思ったが一人だけフリーの状態の人物を思い出した。

 

「シャルロットは気を失っているだけだが、念のために検査を頼む」

 

それだけを告げて野外射撃場に全力で向かう。通信を繋げれば、それに気を取られる危険が有るのでステルスだけを起動する。そしてセンサーに集中しているのだが、どうやら所長の相手をしているのは一人で、お互いに生身での戦闘を行なっているようだ。なぜ所長がISやADを使わないのか分からないが、相手はかなりの強者だ。あの所長と撃ち合えている時点でその実力が分かる。

もう少しでハイパーセンサーの視界に入ると言う距離で今まで聞いた事の無い大きな銃声が聞こえる。登録されている銃声を照会すると対物ライフルのへカートⅡと一致する。

 

「生身相手に対物ライフルだと!?」

 

どちらが使ったのか分からないが生身相手に使う様な銃ではない。2km先の相手の上半身と下半身が千切れる様な銃なのだから。そしてハイパーセンサーに一機の反応が現れた。ラファール・リヴァイヴ先行試作型。昔トライアル後に奪取された機体だったはずだ。それが一気に野外射撃場から離れて行く。

 

「まさか所長が!?」

 

急いで野外射撃場に辿り着くとへカートで撃ち抜いたであろう壁の向こう側に所長が倒れていた。

 

「所長!!」

 

駆け寄って見ると腹部に大きな穴が開き、その穴から地面が見えていた。どう見ても死んでいる。

 

「ラウラか」

 

「所長!?」

 

その死んだと思った所長が目を開いて普通に話しかけてきた。

 

「大丈夫なのですか!?」

 

「あまり良くは無い。死にはしないがこのままでは当分動けそうに無いな」

 

そう言って両腕だけISを展開して腹部に押し当てる。

 

「レインの奴め、まさか対物ライフルで壁抜きをしてくるとは」

 

「知っている相手なのですか?」

 

「ラウラのオリジナルであるアレクシアを殺した奴だ。亡国機業の幹部でもある。あいつの殺す事がオレの生きる目的だ」

 

顔すら見えなかったが、アレが私のオリジナルを殺した化け物か。ADでISの搭乗者を殺すとか無茶をやるオリジナルを超える化け物。

 

「それで、そっちはどうなった」

 

そうだ、その報告を済ませなければ。

 

「シャルロットが頭を打って気を失っている。エレナと3期生のロザリアが死亡、ニコラとニコロが重傷。またロザリアの担当官のドメニコが亡国機業と思われます」

 

「すぐにドメニコを拘束しろ。ISを使って構わない。社会福祉公社の方にはオレから報告する。証拠となり得るデータをネージュに送ってくれ」

 

「ちょっと待ってくれ。音声データがあった。場所的に監視カメラもあったはずだから位置情報も一緒に」

 

「確認した。ではドメニコの拘束に移れ」

 

「だが、所長の護衛は」

 

「ネージュがある。奴とは一騎打ちでやりたかったから互いにISを使わなかっただけだ。エネルギーも十分にある」

 

そして私が近づいた事に気づいて対物ライフルで壁抜きをしたのか。

 

「とりあえずはこんな物か」

 

いつの間にか所長の腹部の穴が塞がっていた。うん、これと比べれば私は人間だと胸を張って言える。

 

「連絡も終わった。ドメニコの拘束も既に終わっているらしい。このまま戻る、いや、その前に着替えておかなければな。後ろを向いていてくれ」

 

「はい」

 

所長に背を向けるとすぐにISスーツを脱ぐ音が聞こえ、しばらくしてからまた着込む音が聞こえる。おそらく怪我を調べていたのだろう。野外射撃場にはかなりの量の薬莢が落ちている。私達並みに撃っている気がする。殆どが9mmだが稀に14ゲージや5.56NATO弾が落ちている。それから12.7NATO弾が1発。これを食らって生きてるって凄い事だな。普通は装甲車とかを潰す為に使われる弾丸だ。ISに使われる弾丸もこれをベースにしていると聞いた事がある。

 

「待たせたな。すまないが運んでくれるか」

 

「了解です」

 

ボヌゥールを展開して所長が肩に座る。落とさない様にバランスをしっかりとって空を飛ぶ。

 

「明らかに失敗した。結構風が寒い」

 

飛び出してすぐに所長がその事実に気が付き、背中の部分にだけネージュを展開してシールドで風を防ぎ始める。そして何か言い辛そうにしている。

 

「ニコラとニコロがかなりヤバいらしい。損傷が激し過ぎて予備の義肢が足りないそうだ。予備をかき集めても一人分にすらならない。覚悟しておけ」

 

「シャルロットは知っているのか?」

 

シャルロットはあの二人の事を気に入っていたのか良く一緒に行動していた。妹の様に二人の面倒を見ていたし、二人もそれを受け入れていた。おかげでシャワー中も気を抜けなかったが、私も楽しかった。同年代と接する事が無いからな。その二人を同時に失う事になればシャルロットはどう思うだろう?

 

「シャルはまだ気を失っているようだ」

 

「なんとか、ならないのですか?」

 

「難しいな。政治的な面でも技術的な面でもな。そして確実性も無い」

 

「でも、何とか出来るのですか?」

 

「出来るかも知れないと言うだけだ。大雑把にだが聞いてみるか?」

 

私はそれに頷いた。そして所長が話してくれた方法は確かに難しい物だった。予備の義肢とニコラとニコロの無事な部分で一人を救うのだ。そして足りない部分をネージュのナノマシンを使って無理矢理治療すると言うのだ。かなり穴がある上に成功しようが失敗しようがかなりの情報が漏れる事になる。そう簡単に頼める事ではない。だけど、それでも。

 

「なんとかしたいんだろう?」

 

「……はい」

 

「構わん。どうせADを対価に義体を何人か貰おうと考えていたからな。このまま技術提携してネージュのナノマシンを利用した4期生を開発する所までは考えていたからな。助かるのは一人だが、なんとかしてみせよう。だから急げ」

 

その言葉と共に戦闘出力まで一気にエネルギーを上げる。全身のスラスターを順に瞬時加速を発動させて高速で移動する。1分程で研究棟まで辿り着き所長が飛び降りたのでそれに付いて行く。

 

「ニコラ達の容態は?」

 

一番奥の処置室の隣にある部屋にいる研究員らしき男に所長が話しかける。

 

「本人達の意思もあり、ニコイチでどうにかしてはいるがたぶん無理だな」

 

「オレとしては彼女を助けたい。上には事後承諾になるが救える可能性がある方法がある」

 

「上の許可が下りないと何とも言えないね」

 

「なら上の許可を取ってくるから30分は保たせろ。金はオレに請求して構わん」

 

そのまま所長は踵を返して出て行くので私もそれに付いて行く。研究棟の隣にある職員棟に入り、ここの一番偉い人がいる場所を聞き出してそこに向かう。部屋に入ると同時に所長が個人で持ち込んだAD6機を展開する。

 

「時間が無いから率直に言う。この6機でニコラとニコロを売れ」

 

「……一体何事ですか?」

 

「時間が無いと言った。YESかNO、どちらだ」

 

「そちらの6機は例の?」

 

「そうだ」

 

「詳しい事は後にしますがYESで」

 

「分かった。ラウラ、ユウダイに事情を伝えて来い。オレはニコラ達の処置を施してくる」

 

「はい」

 

ユウダイさんに事情を話すために所長と別れる。今まで神など信じた事は無いが、もしいると言うのならニコラ達を救ってくれ。

 

 

side out

 

 

 

 

side シャルロット

 

 

つぅっ、頭が。ここは、何処だろう?確か街中で襲撃があって、そうだ、ニコラ達が。

身体を起こすと白い部屋に寝かされていた。窓から外を見ると公社に戻ってきているのが分かる。時間も殆ど過ぎていない。どうなったか聞かなくちゃ。

病室を飛び出して研究棟に向かう。確か義体の治療も研究棟で行なわれるって言ってたからあそこに行けばニコラ達の事も分かるはず。研究棟に向かうとお兄ちゃんが研究棟から出てきた。

 

「お兄ちゃん!!」

 

「シャルか、ようやく目を覚ましたんだな」

 

「え?」

 

「お前達が襲われたのは昨日だ。お前は丸一日気を失っていたんだ」

 

「そんな!?そうだ、ニコラ達はどうなったの」

 

「……着いて来い。色々と話す必要がある。だが、覚悟しろ」

 

そう言ってお兄ちゃんは研究棟に引き返す。お兄ちゃんの覚悟しろと言う言葉に最悪の事態を想定しながらも、真実を知る為に私は追いかけた。

 

「昨日の戦闘でニコラとニコロは重傷を受けてここに搬送されたが損傷が激し過ぎて予備の義肢が足りない状況だった。そこで二人の身体の無事な部分を合わせる事で一人だけを助ける事になった」

 

「……そ、それで」

 

「だがそれでも足りなかった部分が多かった。それをオレがAD6機で二人を買い取り、ネージュのナノマシンで無理矢理治療したことにより一人は助かった」

 

そこで一度、お兄ちゃんは話を切った。まだ何かがある、いや、こちらの方が大事なのだろう。

 

「知っての通り義体は薬物を使った洗脳を施している。記憶や感情も弄られているが、担当官の変更だけは出来ない。なぜならその担当官を中心に洗脳していくからだ。そして二人の担当官であるエレナは殉職した。何が言いたいか分かるか?」

 

「暴走した時のストッパーが居ないってことなの?」

 

「そうだ。そしてオレは買い取ってしまった。暴走した時の責任はサンクチュアリ側にある事になる」

 

「私が面倒を見ろってこと?」

 

「いや、更に重い。記憶を操作する際にエレナの部分をシャルと混ぜ合わせる。シャルはエレナであり、エレナはシャルであるとな。もちろんそれによって混乱して情緒が不安定にもなる。ナノマシンの影響か分からないが寿命も延びている。シャル、一人の命、お前に支えきれるか?」

 

最後の言葉に胸がわしづかみされた気がした。アレクシアさんにも尋ねられた事がある。アレとは違うけど、もの凄く重い言葉だ。

 

「なんで、私なの?」

 

「二人がシャルを思う気持ちとエレナを思う気持ちが似ていたからだ。出なければこんな事は出来なかった」

 

「もし断ったら」

 

「モルモットだろうな」

 

逃げれない。いや、逃げ出したくない。お兄ちゃんの事を結局アレクシアさんに告げる事が出来なかった。未だにお兄ちゃんに対する答えは出ていない。出会いが状況に流されてだったからだと思う。でも、ニコラ達とは自分で付き合って行くと決めたのだ。だから私の答えは決まっている。

 

「お兄ちゃん、私は支えてみせるよ」

 

「……分かった。なら、名前を決めてやってくれ」

 

「なんで?」

 

「言っただろう、二人の損傷が激しかったと。どちらが助かったのかが分からない上に生まれ変わったと言っても良い。だから新しい名前が必要になる」

 

名前か、それならすぐに決まる。ニコラとニコロ、それにエレナさんが生きていたと言う証。

 

「ニコル・シーレ」

 

この日、私に妹が出来た。

 

 

side out

 

 




これにて連投は終了です。
次回の投稿はIS学園入学直前までストックが出来たらします。
早く原作に行きたいけど、少なくともあと5話程は原作前にお付き合い願います。
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