IS インフィニット・ストラトス 獣の指揮者   作:ユキアン

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オリジナルはキツい。
早く原作に行きたいけどここでじっくりと設定を固める必要があるから仕方ない。
そもそもISの設定って曖昧すぎませんか?おかしな部分が無いように設定を一から組み立てながらやってるんですけど、
そもそもエネルギーは電気で良いのか?
ジェネレーターを積まずにバッテリー方式だと考えていいのか?
第3世代はイメージ・インターフェイスを搭載しているのが条件だけど、操縦がそもそもイメージじゃなかったっけ?
後付武装ってどうやって保存してるんだ?
なぜ容量を簡単に増やせない?
最強の兵器と言う割には火力が低すぎないか?
絶対防御ってどこまで過信していいの?

疑問が全く尽きない今日この頃。
誰か私に教えて下さい。


第3話

side アレクシア

 

 

「あれからジェイルの様子はどう?」

 

先日のパーティから既に一週間が過ぎている。私は今まで警察で事情聴取の為に拘束されていたので、ジェイルにはあの時別れてから会っていない。研究所に戻ってきた私は偶々出会ったユウダイに確認する。

 

「なあ、ジェイルは本当に人を三人も殺ったのか?恐ろしい位にいつも通りだ。休んだ方が良いと言っても問題ないの一言で済ませるんだぜ」

 

「夜に魘されていたりする様な気配は?」

 

「全く無い。気になって部屋に隠しカメラとマイクを仕掛けてみたが、普通に寝てやがる」

 

普通にね。あり得ないわ。そういう教育を受けていたならともかく、普通に育ってきたジェイルがそんな反応を取れる訳がない。もう少し詳しい情報が欲しいわね。

 

「それはここに帰ってきてからかしら?」

 

「ああ。それよりもそっちはどうだったんだ?」

 

やはり、あの時の少女に話を聞かないと駄目かしら。

 

「問題ないわ。あの日のテロリストは全員死亡。背後にあった組織もほぼ壊滅したわ」

 

「うへぇ~、さすがドイツの「それ以上喋るなら……分かるわね」へいへい。オレも自分の命は惜しいからね。それはさておき、ジェイルの事は任せても良いか?」

 

「当たり前よ。安心して良いわ」

 

こんな所で潰させるわけにはいかない。あそこまで純粋な子には幸せになる権利がある。

 

「今は何処に居るの?」

 

「ISを置いてある部屋だ。本組みも終わったから最終チェックをしている」

 

「ありがとう。行ってみるわ」

 

入り口から一番近い格納庫に向かう。そこには4人の作業員に紛れて手元の端末を弄っているジェイルが居た。

 

「ジェイル、今戻ったわ」

 

声をかけると端末を横においてジェイルが振り返る。

 

「お帰り、アレクシア」

 

「人を殺したそうね」

 

いきなりの直球に格納庫の空気が硬くなる。

 

「ああ、殺した。オレはまだ死ぬわけにはいかないから」

 

ジェイルの眼はどこまでも真直ぐなままだ。何故?

 

「後悔してないの?」

 

「いや、だけどそれ以上に大事な事を見つけた。オレはアレクシアの夢をかなえる為にAD産み出そうとしている。だけど、自分の意志で産み出さなければならない理由を見つけた」

 

人を殺めた事以上に大事な事か。ならジェイルが曲がったり折れる事は無いでしょう。

 

「そう、それが聞けたなら良いわ。だけど、辛かったら周りに頼りなさいよ」

 

「分かっている。それより、アレクシアはISを扱えるか?」

 

「急にどうしたの?」

 

「開発スタッフを集める事ばかりに気が行っていてテストパイロットの事を忘れていた」

 

呆れて物も言えなくなる。

 

「残念だけど適正値はDよ。最低限の動きをするだけで限界」

 

今の私にはそれが限界。昔はそんな事無かったのにね。原因は私にあるんだけど。

 

「仕方ない。親父に報告して一人回してもらうしかないな。作業終了。元に戻して一旦休憩だ。終わったらADの方の作業に移れ」

 

作業員が出て行くのを見送りながらジェイルと話し続ける。

 

「それしか無いわね。ADのテストパイロットはどうするの?」

 

「一応はオレが試すつもりだ」

 

何を馬鹿な事を言っているのかしら?

 

「却下。貴方はここの所長でしょうが。万が一の事があったらどうするのよ。ADに関しては私が乗ります」

 

「いや、ADには男が乗らないと意味が無い。女性が乗ればISだと思われる」

 

「それでも貴方が乗る理由にならないわ」

 

女性が乗れない理由には納得出来るわ。だけど、他のスタッフを使えば良いだけの話。ユウダイやラウなら喜んで乗るでしょう。

 

「できればオレもそうしたかったんだが、そうもいかない理由がある」

 

「理由?」

 

「オレが集めたこの研究所にいるスタッフはどいつも癖のある奴ばかりだ」

 

癖が強くないのなんてここには一人も居ないわね。

 

「そうね。他の部署からの厄介払いで来たのが殆どね」

 

「その癖なんだが、何も性格に限った事だけじゃないらしくてな」

 

嫌な予感がしてきた。もし、私の予想が正しければおそらく

 

「まさか、扱えるだけの体力や技量が無いの?12歳の貴方より」

 

「半分正解。一番多い理由が高所恐怖症。5m程で駄目だそうだ」

 

5m、建物で言えば3階位ね。

……情けない。

 

「さすがに乗せれんだろう」

 

「ええ、そうね。分かったわ。妥協案として最初に私が乗るわ。それで安全が確認されてから貴方が乗る。私が退くのはここまでよ」

 

「十分だ。それから個人的に頼みがある」

 

頼み?ジェイルが個人的に何かを頼むなんて珍しいわね。

 

「何かしら?」

 

一呼吸置いてからジェイルの眼が、いえ、全身から感じる覇気が変わる。まるで私のお願いを聞いたときの様に。

 

「銃の、いや、武器全般の取り扱い方を教えて欲しい」

 

「……何故私に、何の為に?」

 

「オレは人を殺した。その時に分かったんだ。この世界の歪みに」

 

歪み、か。確かに歪んでいるわね。色々と。ジェイルはどの歪みに気付いたのかしらね。

 

「銃で人を殺して、一番に感じたのは、手応えの無さだった。あんなちっぽけな拳銃一つで命を奪える事を初めて理解した。それなのにそれより強力な兵器でもあるISに乗っている彼女達は殆ど理解していない。理解せずにスポーツの道具として勘違いしている。取り返しの付かない事になった時、止めれる抑止力が無いこの世界に抑止力になり得る物をオレ達は産み出そうとしている。だけど、それ以上にオレは自分の力でこの歪みを破壊する力が欲しい」

 

「それが何故武器の取り扱い方に繋がるの?」

 

「……アレクシア、オレがどうやってこの開発チームを集めれたか考えた事があるか?」

 

それは……そう言えば変ね。社長の息子で優秀だと言っても、まだ10歳だったジェイルにここまでの予算と色々な許可を与えるなんて、いくらデュノア社が大きいと言ってもあり得ないわ。

 

「オレが自由に動けるのはこのプロジェクトが完了するまでだ。それが終わり次第モルモットにされる運命が待っている」

 

「モルモット?」

 

「そう、世界で最も貴重なモルモットだ」

 

そう言うとジェイルは待機状態のISに身体を預ける。

そして、あり得ない事にISが起動する。

 

「そんな、まさか!?」

 

「理由は分からないが、既に政府には知られている。この研究チームの予算のほとんどは政府からの物だ。直で回されると気付かれる為にデュノア社を経由しているがな。だから、生涯をモルモットにする代わりに好きにさせてもらっているんだ」

 

自分の生涯を代償にしてまで私の願いを叶えようとするジェイルに怒りを覚える。だけど、それだと今の頼み事に繋がらない。怒りを横に一度退けて冷静になる。

 

「それで、何故武器の扱いを覚える必要があるの?モルモットにされる以上は少しでも余計な真似はさせないはずよ」

 

「そうだな。だが、どれだけ秘密裏に実験を行なおうとも、何れはオレの存在が知られるだろう。予想では15歳前後で。いや、もしかしたら最初だけ内密にし、十分なデータが揃った所で他国に売るかもしれないな。まあ、そうなればオレはIS学園に送り込まれる。そこでオレは兵器の危険性を同世代の者達に知らしめる」

 

「まさか、貴方、在学中に人死にを出す気なの!?」

 

「さすがにそこまではするつもりは無い。だが、恐怖を味わってもらう。それで気付ければ少しは世界に疑問を持つ様になるはずだ」

 

「それが貴方の言う歪みを破壊する力なの?」

 

「いや、これはただの切っ掛けだ。オレが言う歪みを破壊する力、それはADだ」

 

「何故それに繋がるの」

 

「ADが認められればオレのモルモットとしての価値は低くなる。なにせISにこだわる必要がなくなるからな。ある程度協力すれば、後は自由なはずだ。そこからはADの開発とパイロットを続けていくつもりだ」

 

「だからと言って、今必要があるとは思えないわ」

 

「……アレクシア、気付いているんだろう。ADが世界に受け入れられる為には、絶対に避けて通る事が出来ないイベントがある事を」

 

「ええ、分かっているわ。だけど」

 

「力が要るんだ。世界を歪めた元凶を討つ為に。篠ノ之束を殺す為に」 

 

現在、最も有名な人物とも言えるISを産み出した存在、篠ノ之束。

その篠ノ之束が起こした各国の上層部は事実を知っていながらもそれを隠蔽している悪事。

通称『白騎士事件』と呼ばれるその事件は、ISを認めさせる為だけに起こしたマッチポンプのテロ行為だった。

各国の軍事基地にハッキング、2341発以上のミサイルを日本に向けて発射させ、それをIS『白騎士』で迎撃する。その後、白騎士を捕獲もしくは撃破しようと各国の大量の戦闘機や戦艦を無力化する。発表では死者は皆無とされているが、それは民間人に限った事だけで、軍人には死者は出ている。また、五体満足と言えない者も多数出ている。

各国はこれを知りながらも迂闊に手を出す事が出来なかった。あの力がこちらに向けられるのではないかと恐怖したからだ。

そして、それを討つというのなら並大抵の力では不可能だろう。現に篠ノ之束の行方を見失っている。私の予想では、宇宙に拠点を構えている可能性が最も高い。それは横に置いておいて。

 

「本気なのね」

 

「今のオレがあるのはアレクシアとの約束があるからだ。その為ならオレはどんな手段でも努力でもするさ。それに必要なのが武器の扱いだ」

 

「貴方自身が討つ必要は無いはずよ。貴方を王として軍を率いても良いはず。いえ、ADを世に放つだけでも良いのよ」

 

「いや、オレが篠ノ之束なら確実に元凶を叩きにくるはずだ。つまりオレはどう足掻いても闘争から逃れる事は出来ない。ならば抗うだけの力が必要だ」

 

否定出来ないわね。ジェイルはこの先、どうあっても戦う事を強いられる。それは確定事項だ。なら、私がしてあげれるのは技術を教える事だけ。この身に叩き込まれた技術を。

 

「分かったわ。ただし、やるからには手加減なんてしないわ。ADも全てユウダイ達に任せなさい。それが条件よ。もちろん、それ以上に重大な用件があればそっちを優先すること。いいわね」

 

「ああ、それで構わない」

 

「じゃあ、明日から始めるわ」

 

「よろしく頼む」

 

さて、宣言通りに手加減なんてせずにやりましょう。軍隊仕込みの地獄の特訓を。

 

 

side out

 

 

 

 

side ジェイル

 

…………

 

「あ~、ジェイル。生きているか」

 

ユウダイの声が聞こえたので右手を軽く上げて、すぐに降ろす。

 

「生きてはいるみたいだな。一応、ADの中間報告とマルチロック機能についての報告だ。何か疑問があれば反応してくれ」

 

もう一度右手を上げて、すぐに降ろす。

 

「再設計が終了。これからパーツの精製に移り始める。設計図の方に計算ミスがあって多少性能の低下が認められる。それを補填する様にパーツの精度を上げる事で補う事になった。それから初期の設計と大きく違う点ではブロック方式による精製が提案されている」

 

そこで手を上げる。

 

「え~っと、今の反応は説明を求めるってことで良いのか?良ければ右手、違うなら左手で反応してくれ」

 

右手を上げる。

 

「これは将来を見越しての事なのだが、オレ達の目的を達成する為にはおそらくADのライセンスを売るだろう。ただ、これだと発展機を作るのに一からの開発が必要になってくる。一応ISのサイズを大きくすれば対応出来る様にはしてあるんだが、それでも時間がかかる。なら、各パーツを企業が分担して精製、それを組み立てるという方式をとれば種類が増えると考えた。また、組み合わせによっては思いもしない様な機体が出来上がるという点と、整備性の向上という点から採用に至った」

 

疲労で回らない頭を酷使して考える。

予算的には変化は見られないはず。むしろ下がったか?

整備性が向上したのならそれはそれで問題ない。

発展性も見込める。

問題は中枢部分のみブラックボックス化する必要がある位か。

 

「これでいいなら右手を、駄目なら左手を上げてくれ」

 

右手を上げて、左手も少し上げる。

 

「ふむ、概ねはOKで一部変更しろと」

 

右手を上げる。

 

「少しだけ待ってくれ。何処を変更する必要があるか考える」

 

しばらく沈黙が続き、思い至ったのかユウダイが口を開く。

 

「中枢部分をブラックボックス化でいいか?」

 

やはり優秀だよなと思いながら右手を上げる。

 

「次にマルチロック機能だが、案外簡単に完成してしまった。あまりにもあっけなさ過ぎてBT兵器に手を出したんだが、こっちも部下の一人が趣味で作っていた玩具を元に開発の目処が立った。おそらく2、3ヶ月で完成する。どっちを搭載する。マルチロック機能なら右、BT兵器なら左」

 

少しだけ考えて両方を上げる。

 

「両方とも搭載するのか?」

 

その言葉に両手をかき混ぜる様に動かす。

 

「混ぜ合わせろと。一応そう指示しておくけど、どうなるか分からん。保険として別々のマルチロック機能の方を用意してから取り掛かるけど良いよな」

 

右手を上げて答える。

 

「了解した。報告は以上だ。とりあえず、後で栄養ドリンクと消化に良い物をを持ってきてやるから大人しくしていろよ」

 

右手を上げて返事をする。

説明が遅れたが、現在オレは研究所内にある寮として使用している一角にある自室のベットで倒れている。先日アレクシアに頼み事をして武器の扱いを教わる事になったのだが、武器を扱う基礎を作り上げる為に筋トレや格闘術を叩き込まれている。文字通りに。食事と寝ている時以外は常に身体を動かし続け、身体は青痣だらけになっている。それでも骨折や肉離れは一切無く、アレクシアの指導の巧さがよく分かる。オレの身体が持つかどうかは別にして。

とにかく今は休もう。明日の訓練を生き残る為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練を始めて二週間が過ぎ、ようやく地獄から解放された。別に訓練が終了した訳ではなく、ついていける様になっただけでメニューに銃器の整備方が追加された。分解して掃除して組み立てるだけの聞くだけなら簡単な訓練だ。ただし、オレの場合はイルヴァ達が開発した初見の銃器でやらされる。最初は自信があったが、今はそんな物はなかったと豪語出来る位に複雑な銃器を分解している。

そんなある日、オレに面会したい者がいると本社から連絡が入った。

 

「誰だ?」

 

「先日のパーティの際に保護した娘よ。何でも直接会ってお礼がしたいとか」

 

手渡されるプロフィールを見てみる。

リリアーヌ・マクレ、12歳

パーティの主催者であるマクレ家の令嬢。

その他に何処の学校に通い、どんな事をしてきたのかが書かれている一枚の書類。それを読んで思った事は

 

「これが普通なんだよな」

 

「そうね。貴方とは大違いね」

 

その隣にある遊びで持ってこられたオレのプロフィールの書類を見てそう思ってしまう。リリアーヌ・マクレの書類が一枚なのに対してオレのは三枚ある。主に経歴がびっしりと書かれているその書類をみると自分が化け物の様に見えてしまう。どうでもいいことだが。

 

「とりあえず会わないという選択肢は無いな。顔の青痣が隠せる位に引く頃の時間を伝えておいてくれ」

 

「なら二日後の午後に入れておくわ」

 

「頼む」

 

 

 

 

 

 

 

約束の日、オレはスーツに着替え研究所の前でマクレ嬢を待っている。本社の方で会うのだと思っていたのだが、こちらに来るそうなので待機している。見つかるとヤバいのでADは隠してISを、そう言えば名前を決めていなかったな。あとで適当に決めるとするか。

そんな事を考えていると一台のリムジンが遠くに見えてくる。外向けの思考に切り替えて笑顔を作る。よし、大丈夫だ。

目の前にリムジンが止まり運転手と助手席からメイドが降りてくる。運転手の懐が妙に膨らんでいる所からすると護衛も兼ねているようだ。おそらくメイドの方も何かしらの武器を携行しているはずだ。今日まで会いにこなかったのは心配されていたからだろう。運転手がドアを開け、メイドの手を取り、少女が降りてくる。身長は平均よりは高そうだが、オレよりは低い。特徴的なのはその髪だろう。綺麗な、まるで金糸のような長い髪を腰まで伸ばしている。あの時はそんな事を気にする余裕は無かったが、改めて見ると中々可愛いと思う。

 

「ようこそお越し下さいました。リリアーヌ様」

 

「急な訪問にも関わらず時間を割いて頂きありがとうございます。ジェイル様」

 

「立ち話もなんですから中へどうぞ」

 

「ええ、ありがとう」

 

応接室までリリアーヌ嬢とメイドを案内し、お互いがソファーに座った所で執事服を着たアレクシアがお茶を持って入ってきて、メイドと交戦を始める。お互いに顔を確認すると同時に隠し持っていたナイフで武装して切り結ぶ。オレとリリアーヌ嬢が挟むテーブルの上で。

呆気にとられ反応が遅れてしまったが、すぐに気を取り直して叫ぶ。

 

「止めろ、アレクシア!!」

 

「それは相手に言って頂戴。今、手を抜くと命に関わるわ」

 

「オリヴィエ、退きなさい!!」

 

「ですか、お嬢様!!」

 

「命令です。退きなさい」

 

「……はっ」

 

リリアーヌ嬢の命令でオリヴィエと呼ばれたメイドが下がる。

 

「オリヴィエ、これは一体どういう事ですか」

 

「奴は危険です。お嬢様を守る為にもここで排除する必要が」

 

「黙りなさい。今の行動は私の顔に泥を塗る行為だと知りなさい」

 

「申し訳ございません。お嬢様」

 

「謝罪する相手を間違えているでしょう。先程の一件は貴方から動いているのは分かっています」

 

そうだったのか。オレの位置からでは背後のアレクシアがどのタイミングで動き出したのが分からなかったからな。それにしてもこれはどういうことだ?

 

「アレクシア、知り合いか?」

 

「ええ、ちょっとした仲よ」

 

「ちょっとしただと!!お前にはそうだったかもしれないが、私には全てだったのだぞ。それをお前は」

 

「オリヴィエ!!」

 

「くっ、申し訳ありません」

 

アレクシアの過去か。興味はあるが別に聞く必要は無いな。それよりも部外者にここに長時間居られる方が面倒だ。

 

「アレクシア、第3格納庫と装備、模擬弾を貸す。話を付けて来い」

 

「それは」

 

「このままでは話にならん。リリアーヌ様もそれでよろしいでしょうか?」

 

「私は構いません。オリヴィエ、あちらの方が気に食わないというのなら思う存分やってきなさい。ただし、その決着に文句は一切付けないこと。勝負は一度きり、それでも良いのならさっきの事は不問にしてあげる。どうする?」

 

「しかし、それでは護衛が」

 

「ジェイル様が私に危害を加えるとでも」

 

「いえ、先日の様な事があっては」

 

「今日の為に警備員を増員してある。さすがにISは無いが二人がこちらに戻ってくるまでは問題は無い」

 

「ならば、こいつと決着を付けるまでです」

 

「結構だ。ただし、人死には避けろ。こんな私闘でオレ達のプロジェクトにケチを付けられたくはないからな」

 

「分かっているわ」

 

「オリヴィエもです」

 

「了解しました」

 

綺麗な敬礼をするメイド。うん、シュールだわ。

 

「くすっ、馬鹿正直な所は変わっていないみたいね」

 

「貴様ーー!!」

 

アレクシアの安い挑発に乗り、二人で部屋から駆け出していくのを見送る。

応接室の状況はこのまま話し合いを続けるにはふさわしくない。仕方ない。一応用意しておいた物が役に立とうとは思いもよらなかった。

 

「少しだけお時間を頂けますか?」

 

「ええ、元はと言えばこちらの責任ですし」

 

「ありがとうございます」

 

床に落ちて割れているティーセットに手を翳す。

 

「まあ」

 

次の瞬間には光の粒子となって消え去る。その後は多少歪んでいるテーブルを真直ぐにして、足跡のついているクロスを先程のティーセットと同じ様にする。そして、今度は新しいクロスを敷き、新しいティーセットを取り出す。

 

「今のは、一体どういう物なのですか?」

 

「道具さえ用意すれば誰にでも出来る魔法、といった所ですかね」

 

実際の種はスーツの内ポケットに入れている少し大きな一枚のカード。親父に頼まれた拡張領域を増やす為のパーツをユウダイが勝手に改造した代物で、内臓のバッテリーで約12時間、有効距離1m、50立方cmまで物を収納して展開出来る代物だ。今回はこの中にティーセット、クロス、護身用の銃、予備の弾丸が収納されている。

 

「……ISの後付武装の技術を流用した物かしら」

 

先程の一件からもそうだったが、彼女の聡明さには眼を見張る。あの時の様な弱々しい雰囲気が感じられない。あの事件で彼女も成長したのだろう。

 

「さすがです。実物はお見せ出来ませんが、後付武装の技術を流用した物です。それも個人で携帯出来る程に小型化させた」

 

「すばらしい技術ですね」

 

「ええ。冷めないうちにどうぞ」

 

ティーセットから紅茶を注ぎリリアーヌ嬢に差し出す。

 

「ありがとうございます」

 

自分の分も入れて飲む。個人的にはコーヒーの方が好きなのだが、これはこれで良い物だ。

カップをソーサーに戻した所でようやく今日の本題に入れる。

 

「まずは謝罪を。部下の者がご迷惑をおかけしました」

 

「いえ、彼女はやはりあの事件の後から?」

 

「いいえ、2年程前からです。あの日もお父様の傍に居たのですが、私にあのような事があったので私の専属になりました。それから、あの時はありがとうございました」

 

深々と下げられる頭を手で制する。

 

「あれは運がよかっただけの事です。偶々私とアレクシアが逃げそびれてあの会場に居て、偶々アレクシアが護身用の銃を持っていて、偶々アレクシアがそれを扱いきれるだけの技術を持っていて、偶々逃げる道に人が少なくて、偶々私が撃った弾が当たり、偶々怪我も無く逃げ出せただけのことです」

 

「ですが、貴方には最初の時点で私を見捨てるという選択があり、その後も私も一緒に連れて行く必要性は無く、何より……人を殺す選択をしたのは貴方自身」

 

痛い所を付かれる。確かにそうだ。見捨てる事も出来たはずなのに、オレはその選択をしなかった。理由は分からない。ただ、見捨てたら自分の何かが終わると感じたから。銃を撃ったのは死にたくなかったからだからだがな。

 

「だからこそ、そのような決断をして下さった貴方に感謝をさせて下さい。ありがとうございます」

 

「そこまで言われると受け取らないわけにはいかないな。私からも一つ言わせて欲しい」

 

「なんでしょうか?」

 

「ありがとう、また会えて嬉しい」

 

一人目を殺したときの醜態を思い返してみると、他人から見れば異常者に見えるだろう。例え、その人物に助けられたとしても会いたいという気持ちはそこまで強くないはずだ。それでもオレに直接会って礼を言いたいと会いに来てくれた彼女にオレは感謝する。

 

「……やっぱり、お父様に頼んで正解でした」

 

「何か?」

 

小声で何かを呟いていたが生憎聞き取れなかった。

 

「何でもありません。それより、色々とお話しませんか?」

 

「二人共まだ帰ってきそうにありませんしね。私で良ければ「オレ」はい?」

 

「これからは外向けの喋り方じゃなくて普段の喋り方でね。わたし、あんまり堅苦しいのは嫌いなの」

 

口調にあまり変化は見られないが、やや硬さが取れた感じのする声になる。

まあ、いいか。

 

「分かったよ。それじゃあ、どんな話をしようか?この研究所にいるスタッフは癖の強い奴ばっかで話のネタには困らないからな」

 

「うん、そんな感じでお願い。それじゃあ」

 

それから二人でたわいもない話を続け、幾らか話した後にアレクシアが戻ってくる。日が暮れる頃にようやくオリヴィエが身体を引きずる様に部屋に帰ってきた所で時間切れのようだ。中々に有意義な時間だった。身体も休める事が出来たし、これで明日からの地獄にも耐えられる。

 

 

side out

 




あっ、次回シャル登場。
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