いつもの半分位なんですが、週1投稿の為にたぶんこれからもこの量が基本になるかと......
原作まで行けばある程度の量にまで増えるとは思いますが、力量不足で申し訳ない。
side シャルロット
おにいちゃんと別れた後、アレクシアさんに連れ添われて部屋に戻った私はベッドに座って膝を抱えている。私がおにいちゃんの妹だと言った後、おにいちゃんは何も言わなかった。もしかしたら拒絶されたのだろうか。おにいちゃんはあの男どころか母親との仲すらも良くないと聞いている。そのことから家族自体か、血の繋がりを嫌っているのかもしれない。そうだとしたら終わりだな。私にもあの男の血が半分流れている。血の繋がりを嫌っていたらそれで終わり。どんなに頑張ったとしてもあの温もりを得る事は出来ない。良くてもここのスタッフの人たちと同じ位かな?先程の事が無ければそれで満足出来たと思う。でも今の私は満足出来ないだろう。
『全職員に告ぐ、パターンイエローアルファ。繰り返す、パターンイエローアルファ。ゴム弾、麻酔弾での発砲を許可する。状況によっては班長の許可で実弾の使用も認める。情報を漏らすな』
急にそんな放送が流れた。パターンイエローアルファが何なのかは分からないけど、その後の発砲という単語から何か緊急事態が起きているのだけは分かる。どうするか考えようとした所で銃を持ったアレクシアさんが部屋にやって来た。
「アレクシアさん、一体何が起きているんですか」
「簡単に説明すれば産業スパイが居る可能性があるの。サンクチュアリには秘匿しなければならない物が多いの。その内の一つが貴方の存在。だから私が守りに来たのよ」
「私があの男の隠し子という事ですか」
「ええ、それを知られるとサンクチュアリではなく本社の方が揺れるわ。そうなると色々と問題が出てくるの。そして、それを解決する為におそらくジェイルが矢面に曝されるわ」
「おにいちゃんが?」
「理由は話せないわ。これは国の最高機密で、本来なら私も知らないはずなの。でも、ジェイルは私には話してくれた。ジェイルの信頼を真に得られた時か、世界に知らしめられるその時まで知る事はできないわ」
おにいちゃんの信頼を真に得られた時、か。私には無理そうだ。
「暗い顔をしてどうかしたの?閉じ込められていた時にジェイルに何かされた?」
どうしようか少しだけ悩んで、素直に相談してみようと決断する。
「ふふっ、そう。ジェイルがねぇ」
「何で笑うんです!?」
「ごめんなさい。お詫びに一つだけ教えてあげるわ。ジェイルはね、どうして良いか分からなくなると考え込む癖があるの。その間は無口になるわ。もしシャルちゃんが嫌われているなら、ジェイルは適当にその話を流してるわね」
それってもしかして
「急に妹が出来てどうして良いか分からないだけよ。たぶん、今夜にでも直接どう接したらいいか話し合いにくるわ。話したと思うけど、ジェイルは両親にも育ての親にも恵まれなかったから、家族という物がどんな物なのかを知らないの。だから真正面からどうしたらいいのかを聞きにくるわ。それの答えはシャルちゃんが好きに答えれば良いわ」
「私が好きに?」
「この件は他人が関与出来る事はないわ。嘘をついてジェイルを操るも良し、適度な距離を取って家族にならないのも良し、全てはシャルちゃんとジェイルが決める事よ」
「いやいやいや、明らかに最初の選択肢がおかしいですよ」
「あらそうかしら?赤の他人との接し方、上司部下との接し方、友人との接し方、異性との接し方、全てが同じかしら?産まれたばかりの子供ならいざ知らず、シャルちゃんはそんな事無いでしょう。これって嘘をついていると言えないかしら」
「確かにそう取れるかもしれませんけど、明らかにおかしいっていうか普通はそんな所まで考えませんよ」
「そうね。ならもう一つだけ、お詫びとして教えてあげるわ。この世にはね、全く嘘をつかずに生きている人間も居るってことを」
一瞬、アレクシアさんの眼が暗い物になった。それもすぐに元に戻ってしまう。
「この話はここまで。イエローアルファが解かれるまではまだま」
アレクシアさんは何かに気付いたのか銃の弾倉を取り外して別の弾倉に入れ替える。それと同時にキッチンの床下から物音が聞こえて来た。その物音目掛けて銃を撃つ。その弾は床を貫通して、って実弾!?
「ちっ、逃げられたわね」
「今のは」
「産業スパイかパパラッチね」
そう言いながら内線電話をとって何かのボタンを押し始める。
「館内放送。パターンレッドガンマ。侵入者を確認、一部職員は下水に回りなさい。最優先秘匿が破られた可能性があるため射殺も許可するわ。同時に下水の隔壁を閉鎖しなさい。これが囮である可能性も考えて、作業工程が遅れても良いからADを量子格納して情報を漏らさないで。もちろんパーツ全てよ。シャルちゃん、ここから移動するわよ」
放送を終えると同時に手を引かれる。それに逆らう事無く付いて行く。少し進んだ所の部屋からおにいちゃんが銃を片手に出てくる。
「アレクシアか」
「私はこのまま地下に向かうわ。シャルちゃんをお願い」
「気をつけろ」
「分かっているわ」
走り去っていくアレクシアさんを見送る。
「すまんな、いきなりこんな事に巻き込んで」
おにいちゃんが私を見て頭を下げる。
「折角歓迎会の準備をしていたのだが、どうやら流れそうだ。その内やり直すから待っていてくれ」
「えっ!?気にするのはそこなの!?」
「うん?それ以外に、ああオレ達の関係か。それに関しては夜にでも時間を取ってゆっくり話そう。正直言ってオレ一人で解決出来る事ではないからな。二人で話し合う必要がある」
「うん。じゃなくて、いや、それも大事なんだけど今のこの状況に関しては何も言う事が無いの!?」
「別に武器を持っていない状況でフロア一帯を爆破されて武装したテロリストがやって来た時に比べればこれ位は大した事無いな」
「普通はそんな状況に追い込まれる方が難しいから!?」
「今までならともかくこれからはそんな状況に追い込まれる可能性があるってことだけは覚えておいた方が良い。ISに関わるとはそう言う事だから。その内コレの扱い方も覚えてもらう事になる」
そう言いながらおにいちゃんは手に持っている銃を軽く振って存在を強調する。
「……そうなんだよね。ISに乗るってことは武器を持つってことなんだよね」
「……嫌なら、辞めるか?まだ契約を結んでいない。今なら引き返せるし、生活の事は気にしなくても良い。雑用とかをしてくれればそれで良い。誰もそれを咎めたりはしない」
「……おにいちゃんはなんで慣れてるの?怖くないの」
「怖いさ。怖いけど、オレの目的の為に必要だというのなら向き合うしかない。オレは引き返す気は無いからな」
その眼はどこまでも真直ぐで純粋な物だった。
例えどんな苦難が待ち受けようともおにいちゃんは倒れるまで、いや、倒れようとも這って、力つきようとも誰かに託してでも目的を達する。
そう、誰かが止めようともしても止まらず、誰かが道を邪魔するなら排除して、誰かが道を壊すなら自ら作ってでも突き進む。
その姿は遠目に見る分には美しく、共に進む仲間からは頼もしく、敵対する者には恐ろしく、傍で見守るには辛いものになる。
「それがどんなものなのかおにいちゃんは理解してる?」
「ああ、理解した上で止まれないし止まらない」
やっぱりか。ごめんなさいアレクシアさん。今の私では、おにいちゃんを見守るのは無理です。先に私が耐えられなくなる。それが分かってしまいました。
side out
side ジェイル
「アレクシア、最終報告を」
「侵入者は全部で3名、いずれも発見次第射殺。死体はレーザーライフルで処理済みよ。施設の方の被害は既に修理済み。情報が漏れた可能性はゼロだけど、注目度は一気にMAXね。当分はADの作業は無理ね。早い所だともうこっちに眼を付けて取材を申し込んで来ているわ」
「却下、って訳にはいかないんだろうな」
「そうね。一応警備を強化するしか手の討ち様が無いわ。最悪、取材中に裏では銃撃戦をやっていると考えていて」
うわぁ~、考えたくもないな。
「人数を増やせば施設外でやれるか?」
「いいえ、それよりも侵入を地下限定に持ち込んだ方が処理も楽なの。ヴァンも使って確実に葬るわ」
ふむ、どこぞの誰かの人命よりも情報の方が大事だからな。
「ならば地下の一部を改造しよう。屠殺場みたいな場所に」
「そうね。ユウダイ達には悪いけど不慣れな仕事を任せるしかないわね」
緊急時における予算から一部を施設の改造費に振り分ける。ついでに試射場にしてしまうか?今みたいに格納庫を利用するよりも被害が少ない気がする。案外良い案だな。
「それより、シャルちゃんとはどうなの?」
「とりあえずは夜に時間を取って話し合う方向になった。けどな」
「……退かれたのね」
それが当たり前と分かってはいるが辛いな。やっと手に入れる事が出来たかもしれない家族が手に入れれそうにない。
「すぐに分かった分、傷が浅い。すぐに元通りだ」
浅いと言っても元が薄いオレには重傷だったりするが諦めよう。
「致命傷にはなってないみたいね」
「ぎりぎり重傷ですんでる」
「ぎりぎり致命傷にならなかっただけでしょうが、今日はコレ位にして休みなさい。明日もよ」
「了解」
普段なら断る所だが、断れない位にオレは弱っている。今更ながら打たれ弱いことを実感する。所長室を後にして自室に戻り、ベッドに倒れるとすぐに睡魔が襲ってくる。肉体的にも精神的にも疲れきっていたオレは抵抗も出来ずに眠りに落ちた。
ふと、誰かの気配が傍にある事に気付いた。疲れもあるが、それ以上に敵意が無かった為に気付かなかった。このまま二度寝をするのもどうかと思い起きる事にする。
「……シャルロット?」
何故かシャルロットがオレの顔をのぞいていた。
「あっ、やっと起きた」
やっと?時計に眼をやると既に短針が8を指している。4時間程眠っていたようだ。
「すまん、待たせたか」
ベッドから立ち上がりキッチンまで歩く。とりあえずシャルロットにはイスを勧めて、コーヒー豆を挽く。これがオレの唯一の趣味だったりする。
「シャルロットもコーヒーで良いか?というかコーヒーしか無いが」
「う~ん、コーヒーって飲んだ事無いんだ」
まあ普通だろうな。さて、他に何かあったか?水と、カフェオレ用のミルク、あとはチョコか。生憎砂糖は置いてない。いきなり砂糖無しのコーヒーは無理だろう。ホットチョコは面倒だからパス。ということでホットミルクに決定。
「一応ミルクがあった。温めるから待ってろ」
「あ、うん」
ミルクを温めながら、サイフォンに先程挽いたコーヒーをセットする。あとは水を温めるヒーターのスイッチを入れるだけだ。本当は昔ながらのアルコールランプ式のものが欲しいのだが、あれは時間がかかるので時間に余裕ができるまで諦める事にした。
棚からマグカップを2つ取り出し、片方にコーヒーをもう片方にホットミルクを入れてシャルロットに手渡す。コーヒーを一口飲んでから本題に入る。
「それで、これからの付き合い方なんだが」
「うん」
「どうすれば良いか分からないんだ」
「どうすればって」
「世間一般で言う家族ってものをオレは経験した事が無い。一番古い記憶でも仕事だから付き合ってくれていた奴しかオレは知らない。両親と一緒に過ごした記憶はない。オレは一人でしかなかった。そしてアレクシアと出会った。オレにはアレクシアに縋るしか道がなかった」
オレが今ここに生きているのはただの偶然だった。それこそリリィと同じだ。あの時アレクシアに拾われたからこそオレは生きている。
「だからオレは家族とどう接すれば良いのかが分からない。教えてくれ、家族とはどんなものなんだ?」
side out