IS インフィニット・ストラトス 獣の指揮者   作:ユキアン

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第8話

 

 

side シャルロット

 

 

長かったアレクシアさんとの生身での格闘訓練が一段落し、その後も生身での射撃訓練が追加され、それも一段落した所でとうとうISでの模擬戦を行なう事になった。場所は新しく作られた地下試射場。地下なのに十分な広さが用意されている。ハイパーセンサーで計測した所、縦横高さ全てが35m、それから壁の何カ所かにカメラと、それを守るシールド発生機を確認する。

 

『さて、それでは今日のシャルちゃんの相手に登場して貰うわ』

 

アレクシアさんから通信が入り、私が入ってきた逆の扉が開き始める。

現れたのは普通のISよりも大きな全身装甲の黒い機体。大きくなった分、足や胴体が少し太くなっている。腕は平均と同じ位かな?足にはローラーが装備されている。あれで移動するのかな? けど、一番気になるのは背中だ。身体の半分より大きな、棺桶に見えるコンテナを担いでいる。

もしかして、これがラファール・リヴァイヴ?

確かに強そうには見える。おにいちゃん達の競争相手ならコレ位なのかもしれない。だったら負けられない。私のせいでおにいちゃん達の全てが決まるんだったら絶対に成功させるんだ。

 

『二人とも準備は良いわね。それじゃあ、今回の模擬戦のルールを説明するわ。制限時間は30分で特に禁止事項は無いわ。実弾は使用せずにペイント弾で、ビームも最低出力に設定してあるわ。ダメージはこちらで計算した物を自分の分だけ分かる様にして送るから。それからこちらに送られる情報を元にして、被弾による機体の不調も再現する様になっているから注意していてね。どちらかのエネルギーがゼロになるか、行動不能になるか、開始から30分でブザーを鳴らすわ』

 

どう動こうか。見た目的には鈍重そうに見えるけど、そんなのはPICでどうとでもできる。でもそれだと足に付いているローラーが説明付かない。とりあえず距離を置いて様子を見よう。

 

『カウントを始めるわ。5、4、3、2、1』

 

ブザーが鳴ると同時に右手にリニアアサルトライフルを展開する。それを握った次の瞬間、目の前に相手が飛び込んで来ていた。慌てて銃口を向けようとしたけど、左手で掴まれて押し上げられてしまう。そして右腕から突き出たナイフで突かれる。ライフルを諦めて手を放し両手に高周波ナイフを展開して振るう。相手は私のライフルを盾にして攻撃を躱すと左手からもナイフが飛び出して斬り掛かってくる。

 

「くぅっ、エール・ド・ラ・リュミエール!!」

 

私の声に反応して背中の翼の一部が切り離れて独立した砲台になる。初期の設計とは異なり、完成したエール・ド・ラ・リュミエールは砲台になるガンビットと断面にビームを灯したソードビットが組み合って一枚の翼を形成している。

 

「シュート!!」

 

エール・ド・ラ・リュミエールからビームが放たれる直前に相手は素早く後退する。まるで最初から分かっていた様な行動にこちらの情報が漏れている事を認識する。なら、隠している意味も無いかな。

残っている翼も機体から離れて、断面にビームが灯る。そして空に舞い上がり指示を出す。

 

「行け!!」

 

8つの銃口と8つの剣が一斉に襲いかかる。私も新たにアサルトライフルを取り出して引き金を引く。相手はスモークを張って姿を隠して回避しようとする。だけどシールドのエネルギーがセンサーに反応していて何処に居るかは分かった。反応がある場所にエール・ド・ラ・リュミエールを集中させると被弾している音が聞こえてくる。しかも反応が動いていない事からPICに致命的なダメージでも負ったのかな?これはチャンスだよね。多少は動いているみたいだけど、それ位は誤差として問題なく狙える。武器を次々と持ち替えながら撃ち続けていて、違和感を覚える。いつまでもスモークが解けない。それに反撃が一切来ない。

射撃武器を持っていない?あり得ない。それなら大量の近接武器がある。それを投げれば牽制位にはなる。なら何故そうしない? まさか何か特殊兵装を搭載しているのかな?確認する必要がある。

一度銃撃を止め、エール・ド・ラ・リュミエールを背中に戻して後ろに下がる。いつでも相手の行動に対処出来る様にスモークに意識を集中する。そして、背後から強烈な一撃を受ける。受け身を取りながらスモーク内に飛び込み、ステータスを確認する。エネルギーが2割持っていかれた上にエール・ド・ラ・リュミエールが使用不能にされた。

一体どんな武器が使われたの? とにかく体勢を立て直さないと。邪魔になったエール・ド・ラ・リュミエールをパージして盾とサブマシンガンを取り出す。そこでまた背後から銃撃が加えられ、衝撃で盾もサブマシンガンも落としてしまった。

いつの間に後ろを取られたの!? そんな事よりも早く相手を確認しないと。

スモークから飛び出すと、目の前に大剣を振り下ろしている相手が居た。少しでもダメージを軽減しようと両腕をクロスさせて受ける。けれど、相手はそんな物関係ないとばかりに叩き伏せられる。絶対防御が発生してエネルギ-が大量に無くなる。そして、倒れた背中に銃が突きつけられる。ブザーが鳴り響き、突きつけられていた銃が退けられる。

 

「まだまだ甘いな」

 

「えっ?」

 

顔を上げるとそこにはおにいちゃんの顔があった。なんで?

 

 

side out

 

 

 

 

side ジェイル

 

 

当初の予定より遅れているが、ようやくアンジュ・デシュが完成した。既にアレクシアによるテストも終了した為、本日よりオレの愛機になる事が決定した。そしていきなりだが、シャルとの模擬戦が行なわれる事になった。製作に関わっている時点でオレの方が圧倒的に有利な上、シャルにはラファールの事もアンジュ・デシュの事も一切知らせていない。もしかしたらアンジュ・デシュを見てラファールと見間違う可能性もある。まあ、それなら対抗意識を見せてくれるだろう。

とりあえずコンテナに詰める武器を選ぼう。主武器は高周波の大剣で良いだろう。それから牽制用にリニアアサルトライフルを一丁にハンドガンを二丁、後はスモークを詰めれるだけ積んでおこう。

 

「ジェイル、調子の方はどうだ?」

 

隣で最終チェックをしているユウダイが話しかけてくる。

 

「問題ない。多少は緊張しているがな」

 

「だろうな。まあそのままでも良いんじゃないか?初の試みなんだし。ついでに聞くけど勝算は?」

 

勝算ね。あると言えばあるし、無いと言えば無い。まあ考えつく限りでは

 

「一回限りの奇襲。二度目は無いな。そうなると二度目からはぼろ負けだな。ある程度食い付くので精一杯と言った所だろう」

 

「性能差から言えばそれが当然か。アレクシアが乗ればまた変わってくるんだろうけどな」

 

「アレと一緒にするな。テストで関節部を全部破壊する様な動きをするなんて予想外にも程があるぞ」

 

アレがアレクシアの本気なのだろう。あの動きを人間大に変換したとしても普通の人間ではない動きを見せるはずだ。まるで映画や漫画に出てくるヒーロー並みの動きを。

 

「ああ、アレは驚いた。ある程度予想はしていたがアレは予想外だ」

 

「前々から思っていたんだが、ユウダイはアレクシアの過去を知っているのか」

 

「少しだけな。本人に聞いたんじゃなくて偶々知っていただけだから、そんな拗ねた顔をするな」

 

拗ねた顔?

アンジュ・デシュの磨かれた装甲に顔を映す。

確かに子供が拗ねた顔をしているな。ということはやはりオレは壊れたままのようだな。このまま悪化する事が無い事だけを祈ろう。

 

「この話は終わりだ。それよりチェックは済んだか」

 

「問題ない。いつでも行ける」

 

「なら始めるか」

 

アンジュ・デュ・ヴァンと同じ様に装甲を開いているアンジュ・デシュに身体を預ける。そして同じ様に腕や足を固定される。もちろん電流が流れて痛みが走る。固定が終わると次は装甲が閉じ、一瞬の暗闇の後に視界が広がる。

 

「ハイパーセンサー、及び各部に問題はあるか?」

 

表示されている情報にざっと眼を通す。特にコレと言って問題は無いようだ。

 

「問題ない。コンテナを頼む」

 

「了解。コンテナの換装だ、急げ!!」

 

ユウダイの指示で部下が機材を操作し、背中にコンテナが装備される。取り出しに問題が無いかを確認して元に戻す。

 

「各部に問題は無い。これよりデータリンクを始める」

 

「了解。リンクした。分かっていると思うがヤバい様ならこちらから投薬を行なうからな」

 

「分かっている。アレクシアに合図を出せ」

 

その指示と同時に全員が離れていく。しばらくすると試射場への扉が開く。向こう側にはシャルが駆るヴァンの姿が見える。アレクシアのルール説明が行なわれている間、静かに精神を切り替える。ここからは情を一切捨て去り、マシンとなる。

仕合の開始を告げるブザーが鳴ると同時に瞬時加速を使い、懐に飛び込む。右手に銃火器を出すのは分かっているので左手で相手の右手を掴み押し上げる。そして右腕に内蔵されているナイフを装甲と装甲の継ぎ目に突き立てる。

少しでもダメージを稼ぐにはコレしかない。こちらはISと比べるとエネルギー量が遥かに少ない。出来るだけの事はしたが400、それが限界だ。それに対してヴァンのエネルギーは1120、約三倍の差が存在する。まともに戦えば勝ち目は無い。

一撃を入れた所で相手はライフルから手を放し、両手に高周波ナイフを装備し斬り掛かってくる。回収されるのも嫌なので相手のライフルを盾にして初撃を躱しこちらも左腕のナイフを展開して斬りあう。

 

「くぅっ、エール・ド・ラ・リュミエール!!」

 

まずい!!ビット攻撃が来る。

形振り構わず後退してスモークの準備を始める。四対の翼から十六の羽が飛び去る。半分が砲台、残りがソードビットだ。そしてこれが奇襲を仕掛ける最良のタイミングでもある。スモークを展開してそれに紛れる。次にコンテナから大剣とリニアアサルトライフルを取り出して、コンテナを切り離して囮にする。リニアアサルトライフルを背中にマウントし、大剣を持ったままスモークに紛れて移動を開始する。出力をハイパーセンサー以外最低限まで落とし静かに相手を背後まで移動する。相手はコンテナに対して攻撃を続けている。コンテナのステータスを確認すると多少の罅が入っているだけで他に異常は見受けられない。さすがに硬いな。これなら最後まで囮の役を果たしてくれるだろう。もう少し、もう少しだけ隠れる必要がある。エール・ド・ラ・リュミエールを使用不能にする為には一度背中に戻した所をやるしか無い。スモークが切れるまであと2分はある。それまでに戻ってくれれば良い。そして、反撃が来ない事を不審に思った相手がエール・ド・ラ・リュミエールを背部に戻す。それを確認すると同時に瞬時加速で背後から斬り掛かる。弐の太刀を考えない正真正銘の本気の一撃でエール・ド・ラ・リュミエールを制御する部品を破壊する。落ちていく相手をすぐにでも追いたかったが想像以上に身体への負担がかかっている事に気付く。出力を抑えた対G用のPICでは鍛えた身体でも瞬時加速のGに耐えきれないか。追撃が出来ずにスモーク内に隠れられてしまった。

 

「だが、油断したな」

 

コンテナに残されているハンドガンでの射撃を命令する。おおよその位置は見ていたので問題なくスモーク内から炙り出せる。飛び出してくると思われる方に先回りし、大剣を振りかぶっておく。相手がスモークから飛び出してくると同時に大剣を振り下ろす。腕をクロスさせてダメージを押さえようとはしたみたいだが倒れてしまえばそこまでだ。背中にマウントしているライフルを背中に突きつける。

 

『アレクシア、これで終わりだとオレは判断するが』

 

『そうね。今ブザーを鳴らすわ』

 

ブザーが鳴り仕合が終了したのでライフルを横に退ける。精神を切り替えてマシンから人に戻る。

 

「まだまだ甘いな」

 

「え?」

 

顔の部分の装甲を開けて倒れているシャルに手を差し伸べる。

 

「おにいちゃん?」

 

「おう。正真正銘シャルの兄のジェイルだ」

 

「じゃあ、その機体が」

 

「アンジュ・デシュ。ISという名の天使から聖域を奪う為に産まれた堕天使」

 

手に捕まったシャルを起こして共に試射場から格納庫に向かう。

 

「この糞所長が、オレの傑作のエール・ド・ラ・リュミエールをぶっ壊しやがって」

 

格納庫に入ると同時に眼鏡をかけた細身の男が怒鳴り込んで来た。

 

「セイヤか。確かにそれは悪い事をした。だが、お前の仕事はキチンと評価する。この前の事故の借金の減額と追加予算、どっちが欲しい」

 

「追加予算でお願いします」

 

セイヤ・ウリバタケ。

武装班副班長の32歳。趣味は開発。腕は確かだが予算を勝手に趣味につぎ込む為に“ゴミ箱”に送られていたのを拾い上げた。部下の信頼は厚い男だが、時折作品が暴走、爆発を起こす。今の所は人的被害は出ていないが色々と被害は出ている。シャルが来た初日の爆発とか、その三日後の爆発とか、スパイの処理中の爆発とか。とにかく色々だ。被害は全てセイヤの借金だが、それの減額よりも追加予算を欲しがるのか。

 

「イルヴァの方に追加予算を回しておく。許可が下りない事に使うなよ」

 

「そんな殺生な」

 

「知らん。それよりエール・ド・ラ・リュミエールの修理を頼む。それに関しての予算は好きにさせてやる」

 

「ううう、了解。また徹夜かよ」

 

セイヤを見送り、ハンガーに機体を固定して降りる。シャルもヴァンをハンガーに固定して降りてくる。

 

「二人とも、お疲れ様」

 

タオルとドリンクを持ってアレクシアがやってくる。

 

「データの方はどうだ?」

 

タオルで汗を拭いながら聞いてみる。シャルはドリンクを受け取って口にしている。

 

「短時間にしては濃いデータが取れてるわ。どっちの機体にも欠点が見えてきたから、改良案が明後日には提出されるはずよ」

 

「そうか。大きなバグは見つかっていないんだな」

 

「ええ、今のままで問題は無いわ」

 

「なら明日は久しぶりに街に出よう。たぶんこれがトライアルまでの最後の休みになるだろうからな。シャルも一緒にいくか?」

 

「良いの?」

 

「ああ、問題ない。それで一緒に来るか?」

 

「うん、楽しみにしてるよ」

 

心の底から楽しみなのか、偶々見ていた全員が見とれてしまう位の笑顔をシャルが見せる。それを見て、オレの何かにまた罅が入る。

限界が近づいているのがはっきりと分かる。

気付かれるわけにはいかない。気付かれれば、止められる。それが余計に悪化させる原因になるとも分からずに。それだけは回避しなければならない。

この身は全て、アレクシアの願いに捧げたのだから。

 

 

 

side out

 




次回はトライアルかな?
ちょっと更新が遅れそうですけど、2週間以内には更新したいと思ってます。
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