IS インフィニット・ストラトス 獣の指揮者   作:ユキアン

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久しぶりの更新
あまり期待しないで


第9話

 

 

side アレクシア

 

 

とうとうこの日がやってきた。今日は私達のアンジュ・デュ・ヴァンとラファール・リヴァイヴのトライアルが行なわれる。そこに多少無理矢理だがアンジュ・デシュを参加させる。だが、何か嫌な予感がする。トライアルに負けるとかそういう嫌な予感ではない。この場に居る誰かの命に関わる様な、そんな嫌な予感だ。やはり昔の仲間に声をかけておいた方が良かったかしら。今更後悔しても遅いわね。ならば今出来る最善を行ないましょう。

 

「ユウダイ、2号機の準備をしておいて」

 

「おいおい、いきなりどうしたんだ」

 

機体の最終チェック中だったユウダイを誰もいない部屋に連れ込んで命令する。

 

「今は何も聞かないで。嫌な予感がするのよ。何も無ければ良いのだけれど」

 

「穏やかじゃないな。それはどっちの経験からだ」

 

「私がドイツにいた頃の経験からよ」

 

「分かった、信じよう。コンテナの中身はどうする」

 

「全部バッテリーで良いわ。知っているでしょう、私の愛機の事は」

 

「了解だ。だが、アンジュ・デシュはアレクシアの愛機とは違う。左腕にマシンガンを装備させる。コレだけは退けないな」

 

「構わないわ」

 

「それなら良い。それらしい理由を付けて運び込んでおく」

 

「頼んだわ」

 

これが私の運命を決定付けた。それ自体に悔いは無いけど、ジェイルがどうなったのかだけが心配ね。

 

 

side out

 

 

 

 

side ジェイル

 

 

トライアル会場に到着すると同時にアレクシアを連れて一度観測室に向かう。そこには既にリヴァイヴプロジェクトの主任とスタッフ、計測スタッフが居るだけで社長も大統領もオレを確保する人員もまだ到着していなかった。

 

「これはこれはジェイル君ではないですか。どうです、調子の方は」

 

リヴァイヴプロジェクトの主任の、ええっと、名前はなんだっけ?まあどうでもいい奴だ。

 

「ええ、良いですよ。それはもう良い気分ですよ。まさに天に昇る様な、ね」

 

嫌みっぽく言ってやる。それが気に食わなかったのか表情が酷く歪む、醜いな。

 

「社長の子供だからと言って調子に乗るのもいい加減にしろ」

 

「社長の子供だからここに居るのではない。オレはオレの意思でここにしがみついているに過ぎない。それに調子に乗っているのはお前の方かも知れないな。リヴァイヴに自信があるか」

 

「あるに決まっている。お前達と違って私達はエリート集団なんだ。エリートが負ける訳が無い!!」

 

「自称だろ。真のエリートは自らをエリートとは言わないさ。それにオレ達の方は癖が強いだけさ。それを使いこなせなかった奴らが悪いだけさ。それを証明してやる」

 

自信満々で言い返してやる。これは事実だ。癖が強い分、能力もかなり高い。癖が強いけど。何回も言うが癖が強い。比較的普通なのがシャル位だ。その次にユウダイかラウ、イルヴァのチーフ陣。最後の方にオレとアレクシアが居る。それは置いておいて。

 

「その顔がどう歪んでくれるのか楽しみだ」

 

それだけを告げて観測室から出て行く。背後で何か掴む様な気配を感じ、頭をちょっと横に退ける。今まで頭があった位置に灰皿が飛んできたので右手でキャッチして投げ返す。この位、八双飛びに比べれば余裕過ぎる。背後で悲鳴が聞こえてきたが無視して格納庫に向かう。格納庫では既にヴァンとサマエルが搬入されて、チェックが行なわれている。別の格納庫ではリヴァイヴが同じ様にチェックを行なっているはずだ。

 

「総員傾注」

 

アレクシアの指示で格納庫に居る全員がオレに注目する。

 

「短い様な、長い様な。不思議な期間だった」

 

オレにとっては2年半近く、シャルにとっては2ヶ月、他の職員も期間はバラバラだ。

 

「何の因果かオレ達はここに集い、表面的には同じ目標に向かって共に歩んで来た」

 

好き勝手に研究したい奴、金が必要だった奴、仕事が欲しかった奴、誰かに認められたかった奴、ステータスが欲しかった奴、まさに様々だ。

 

「そして、その目標が今達せられる。先程リヴァイヴプロジェクトの主任に会ってきたが、随分と小物だったよ。こちらの偽のスペックを鵜呑みにしている。オレ達は向こうの偽の情報を暴いているにも拘らずだ」

 

何処からか我慢している笑い声が聞こえる。

 

「あいつはこう言った。『エリートが負ける訳が無い』」

 

途端に大爆笑が起こる。当然だ。あいつにも言ってやったが真のエリートは自らをそう言ったりはしない。言葉ではなく行動で示すのがエリートであり、それが集団で居ても、能力的に見れば一点特価の変人が集まっているサンクチュアリが負ける訳が無い。一頻り笑い終わった後で話を続ける。

 

「それでも万が一ということはあり得る。例えばこちらの機体に重大なエラーが発生するとかな。相手側ではなくこちら側で何か起こってだ。それは避ける必要がある。チェックは入念に頼む」

 

「「「「了解」」」」

 

「作業に戻ってくれ。オレは着替えてくる」

 

作業に戻る部下達を置いてロッカールームに向かわずにトイレに向かう。そこの個室でスーツを脱げば、それで着替えは終了だ。最初からスーツの下にISスーツを着込んでおいたから。シャルと同じデザインで色は白一色、それがオレのISスーツだ。それに加えてヘッドギアを装着する。コレはあの模擬戦後に開発された物で、簡単に言えばハイパーセンサーの補助装置と言った所だ。このヘッドギア単体でもハイパーセンサーの代わりになったり、手持ちの武装のスコープとリンクさせたり出来る代物だ。ついでに言えば鎮静剤や興奮剤などの投薬も可能である。

着替えを終えてトイレから再び格納庫に向かう。その途中、見知った顔に出会った。

 

「ジェイ?」

 

「リリィ?どうしてここに」

 

「お父様が今回のトライアルに招かれまして、私はそれの付き添いです。ジェイこそ、その格好は?」

 

なんというか悪いタイミングで出会ってしまった。もちろんリリィの傍にはオリヴィエが控えている。誤摩化すか?いや、あまり良い手ではないな。ここでオレが死守しなければならない情報はオレがISを起動させれるということだけだ。ならば正直に話せば良い。

 

「そのトライアルだが、オレもパイロットとして出ることになってるんだよ。最もISでは無いけど」

 

「ISではない?」

 

返事を返したのはオリヴィエの方だった。

 

「スペックは第1世代以上第2世代未満の、ISコアを持たないISと言った所だ。乗り手次第ではISを越えるし、いずれはISを越す」

 

「そんな物、有り得ない!?」

 

「有り得ないということは有り得ない。誰が言った言葉かは知らないが良い言葉だ。有り得ないと言えばISの存在自体が有り得ないだろう。白騎士事件が起こるまで、その存在は有り得ないものだったんだからな。そして、一人の天才に出来たことが変態の集団に出来ない訳が無い。疑うなら実物を見てみるか?」

 

「……自分たちが変態って認めて悲しくならないのか」

 

「さすがに性欲が強いという意味で使われれば悲しいが、頭のネジが緩んでいる、もしくは外れているという意味で使われれば、誰も否定出来ないから仕方ないと諦めた」

 

考えるだけ無駄なので二人を連れて格納庫へ向かう。

 

「所長、そちらの方は?」

 

扉の近くに居たラウがオレ達に気付いて声をかけてきた。

 

「今日のトライアルに招待されている「リリアーヌ・マクレです。ジェイの婚約者でもあります」

 

格納庫の音が一瞬にして無くなり、注目が集まった。

 

「……今なんて言ったんだい?」

 

ラウが代表して再度尋ねてくる。

 

「オレの婚約者だよ。最近になって決まったことだ」

 

「いや、うん、そうか。良かったと言えば良いのかな。ごめん、なんて言っていいか分からない」

 

「普通に祝福してくれれば良いさ」

 

「そうかい、ならおめでとう。打ち上げにはリリアーヌ様も来られますか?」

 

「打ち上げですか」

 

「ええ、我々サンクチュアリ一同はこのトライアルに負ける予定は無いので打ち上げの準備をしています」

 

「いつもの堅苦しいパーティーとは違って身内だけの気軽な物だ。もちろんオリヴィエも参加して貰って構わない」

 

「そうですね。お邪魔でないようでしたら」

 

「そうか。ラウ、ADの準備の方は」

 

「問題なく完了しているよ。コンテナは中身が一緒のを3個用意してある」

 

「3個?4個あるんだが」

 

「ああ、それは2号機の方の分だ」

 

「2号機ねぇ。組み立てが間に合ったのか」

 

「一応、予備として持ってきてるんだ。政府の方から寄越せと言われた時にすぐに渡せるしね」

 

オレに事後報告って、まあ良い。それがオレ達だからな。

 

「話し込むのは後にして最終調整をしなさい」

 

アレクシアが2号機のチェックをしながら叫んで来た。

 

「分かっている。こっちだ、傍で見てみると良い。オレの言葉が真実だってことをな」

 

二人を連れてオレの愛機の最終チェックを行なう。機体に身体を預けてヘッドギアと機体をリンクさせる。目の前に空間展開型のモニターが展開されるので一つ一つチェックしていく。問題がないことを確認してモニターを閉じる。

 

「少し離れていてくれ。起動させる」

 

二人が離れたのを確認してからサマエルに搭乗する。腕や足が固定され電流が走る。未だにコレは改善されていない。耐えられないことはないので我慢している。装甲が閉じ、眼の部分が光を放つ。固定具を解除し立ち上がる。

 

「まさか、本当だったとは」

 

「嘘は言わないさ。それより、思っていたより時間が経っているな。そろそろ戻らないと不味いぞ」

 

モニターの中にある時計に眼を向けると、あと10分位でトライアルが始まる時刻を示している。

 

「もうですか。それではまた後ほど」

 

二人を見送りながら背中にコンテナを装着する。取り出しに問題がないかを確認してカタパルトに向かう。カタパルトには既にシャルが待機していた。

 

「シャル、調子はどうだ?」

 

「き、緊張してきたよ?」

 

「落ち着け、いつも通りやれば良いんだ。それに最初は向こうからだ。それを見れば多少落ち着くさ」

 

「で、でも」

 

「なら、信じろ」

 

「何を」

 

「オレ達を、そしてヴァンを。ISコアには意思があると言われている。ヴァンを信じれば、ヴァンは必ず力を貸してくれる」

 

ISコアが量産出来ない理由はそこにあるとオレ達は考えている。そもそも自己進化を行なう時点で意思を持っている証拠だろう。

 

「自分と共に空を駆ける相棒を信じろ」

 

「……相棒を信じる。うん、もう大丈夫」

 

「そうか。そろそろ始まるぞ」

 

カタパルト付近に設置されているスピーカーからトライアルの説明が行なわれる。ルールは決められたコースを移動しながら障害物をくぐり抜けるというオーソドックスなものでそれぞれの障害物での評価とタイム、機体の特徴によって勝敗が決められる。その後、最終評価をする為の模擬戦が行なわれる。トライアルの順番は最初にリヴァイヴで次にサマエル、最後にヴァンの順番だ。

 

 

 

 

『3、2、1、トライアル開始』

 

リヴァイヴがオレ達とは逆のカタパルトから発進する。そこそこのスピードを出しながら問題なく移動している。そしてリヴァイヴは最初の障害物であるターゲットドローン群に突入する。アサルトライフルを取り出し、弾丸をバラまいてドローンを落としていく。12秒程で20機のターゲットを破壊して次の障害物に向かう。

トライアル中、お偉いさん達の為に開発チームが機体の特徴等を資料を使いながら説明していく。リヴァイヴのデータを呼び出しながらその説明を聞いておく。自信満々に説明している主任の声がことあるごとにこちらを貶してくるのでうざいが、そこそこの評価を得ているようだ。まあ、第2世代だけで比べれば量産機としては傑作機と言っても良いスペックと操作性を持っているからな。

続いての障害物は8カ所からの銃撃をくぐり抜けるものだ。スピードを落として確実に躱しながら40秒程で通過する。最後に機雷群に突入する。ここでは武装を使わずに早く抜ける事が求められる。リヴァイヴは瞬時加速を使って大きく迂回する行動に出る。合計タイムは5分42秒。

 

「シャル、アレを見て負ける気がするか?」

 

「全然。アレなら楽勝だよ」

 

だろうな。さて、次はオレか。

 

『我々、サンクチュアリは今回のトライアルに当初予定されていた機体以外にもう一機、別の機体を用意しました』

 

おっ、アレクシアが説明に入ったか。

 

『この二機は全く別のコンセプトで製作され、両方が採用される自信がある傑作機であります。まずは予定外の方のサマエルから始めさせていただきます』

 

ふむ、行くか。

 

「ジェイル・デュノア、サマエル、出るぞ!!」

 

カタパルトによって押し出されてフィールドを最大推力で駆ける。最初の障害物であるターゲットドローンの射撃ポイントに着く前にリニアアサルトライフルを両手に構える。ポイントに着くと同時に各ライフルから10発の弾丸を撃ち放ち、次の障害物に向かう。弾丸は寸分違わずにターゲットを撃ち抜いている。時間にして2秒だ。続いての銃撃をくぐり抜ける所は簡単だ。全速で飛びながら射線を見切ってすり抜ける。時間は23秒かかったか。最後の機雷群はコンテナをパージして展開し盾にして真直ぐ突き抜ける。コンテナは半壊したが7秒でくぐり抜ける。合計タイムは3分29秒。

 

『さて、本機の最大の特徴ですがそもそもこの機体はISでは無いという事です。つまり完全に量産が可能な、男性でも扱う事が出来、ISにも対抗出来る新しい戦闘用パワードスーツという事です』

 

サンクチュアリのメンバー以外が驚いている声が聞こえてくるがこれ以上聞く必要は無いので通信を切って格納庫に戻る。

 

「お帰り」

 

「ただいま。微妙なタイムだったな。シャルとヴァンに期待してるぞ」

 

「うん、見ててね。皆を信じて、皆が信じてくれる私達の力」

 

しばらく待っていると、観測室での混乱がようやく収まったのかシャルの番がやってくる。

カタパルトから押し出されると同時にシャルは瞬時加速で一気に加速しターゲットドローンの射撃ポイントを通り過ぎる。もちろんエール・ド・ラ・リュミエールを射出してだ。射出されたエール・ド・ラ・リュミエールが全てのターゲットを破壊して回収されたのは銃撃をくぐり抜けた後だった。機雷群をスピードを一切落とさずに綺麗にくぐり抜けてゴールする。合計タイムは1分41秒。

風の精霊の名に負けない素晴らしい動きだった。

 

「ただいま。私、ちゃんとやれたよね」

 

「ああ、最高の出来だ」

 

戻ってきたシャルを笑顔で出迎える。これで余程の事が無い限り、オレ達の機体が採用される。そうなればオレがいなくともアレクシアの夢は叶う。そうなればリリィにもシャルにもアレクシアにも心配をかけなくてもすむ。歪かも知れないけど、今ならまだ普通の人らしく生きていけるはずだ。まあ、常識を覚え直したりする必要があるから苦労はするだろうけどな。

二人で一度格納庫に戻り機体の整備を受ける。と言ってもオレのADは破損したコンテナを新しい物に換装すれば補給が完了するし、ヴァンに至ってはエネルギーの補給だけで終わる。5分と経たずに補給が完了する。暇なのでラウがハッキングしたリヴァイヴ側の格納庫のカメラを覗いてみる。面白い位にお通夜ムードが流れている。端の方では主任が喚き散らしているが誰も対応しようとしない。まあ見下していた相手が実は自分たちよりも遥か上の方に居たのだから仕方ないだろう。

 

「ジェイル」

 

「うん?どうかしたのか、アレクシア?」

 

観測室に居るはずのアレクシアが格納庫に入ってくる。

 

「全員集合」

 

アレクシアの号令で所員が集合する。

 

「先程のトライアルのみでADとヴァンの採用が決定したわ」

 

「「「「よっしゃあああああああ!!」」」」

 

「それで模擬戦はキャンセルになったんだけど、大統領が直々に私達を賞賛してくれる事になったわ。ある程度の身支度をしてアリーナに集合する様に。ADとヴァンもアリーナ内に配置する事になったわ。写真とかも撮るみたいよ」

 

「それじゃあ、オレとシャルは先に行っておいた方が良いか?」

 

「そうね。そうしておいて頂戴。後でジャケットは持っていくから」

 

「了解だ。行こうか、シャル」

 

「うん」

 

シャルと共にアリーナに引き返し、中央で機体を固定して降りる。シャルも隣で同じ様に機体を固定して降りてくる。

 

「良かったね。ADとヴァンが採用されて」

 

「ああ、これで夢に一歩近づいた」

 

一歩どころか夢までの動く床に乗った感じだ。ここまで駆け足で来ただけの事はある。

 

「あっ、そうだ。採用が決まったって事はこれで少しは纏まったお休みが取れるかな?」

 

「残念だが、もう少しデータ収集とかをするだろうからもう一月は待ってもらう必要があるな。何かしたい事でもあるのか?」

 

「うん、ちょっとね。お母さんに報告しに行きたいんだ。私は元気にやってるって」

 

「そうか。なら頑張って少しでも早く報告に行ける様にしよう」

 

「うん。あれ?」

 

「どうかしたのか?」

 

「なんだか向こう側が騒がしくない?」

 

シャルに言われてリヴァイヴ側のカタパルトの方をヘッドギアの望遠機能を使って見てみる。特に変わった様子は、何かが壁に飛び散ったな。望遠倍率を更に上げて壁に付着した物を見る。赤い液体が、まさか血!?

それを確認すると同時に格納庫からリヴァイヴが飛び出し、こちらに向かってミサイルを撃ってくる。ADに搭乗する時間は無い。

 

「シャル!!」

 

シャルだけでも助けようと突き飛ばす。少しでも助けれる確率を上げる為にADとヴァンとシャルの間に立つ。ミサイルがADとヴァンに着弾し、爆風に煽られる。オレは耐えきれずに吹き飛ばされ、背中から腹部に何かが突き刺さる感覚を味わう。そこでオレの意識は途切れる。

 

 

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