「痛い、全身が痛い、全身がすごく痛い!」
体を走る痛みに目を覚ますとそこは馬小屋のようだった。
「目が覚めたか。」
声のする方を振り向くとそこには長い黒髪をした美人が藁の上に座っていた。
このとき総治郎の抱いた感情は純粋な安堵だった。
「美人でよかった。筋肉だるまじゃなくてほんとよかった。」
「いや、そんなものと比較されても・・・」
「ところで、ここはいったい何処ですか?」
「・・・、ここは蛾理区村(がりくそん)という村の飯屋にある馬小屋の中だ。それよりもお前はいったい何者だ。」
「何者といわれましても。とりあえず名前は鎧戸 総冶朗といいます。」
「私は姓は関、名は羽、字名は雲長という。」
「関羽! 関羽ってあの関羽!」
「どの関羽かは知らないが私は今まで自分以外に関羽という名前の者を知らないぞ。」
(女の子の関羽、なるほど恋姫世界か。 んっ あれっ恋姫? 恋姫って、え、あれ。)
このとき総冶朗はひどく困惑していた。
なぜなら関羽の言葉を聞いきその容姿を見てすぐに、”なるほど恋姫世界か”と考えていたからだ。
しかし総治郎は恋姫について知らないはずである。
彼の元いた世界には恋姫無双は存在しなかったのだから。
歴史でも、ゲームでも、漫画でも有名武将が美少女となっている三国志など知るよしも無いのである。
しかし実際には具体的な内容こそ分からないもののそれがとんでも三国志っであることにまで思い至っている。
「どうしたのだ。何か不審なことでもあるのか?」
「あぁ、いえ、何も無いです。」
(美髭公、髭じゃなくて髪だから美髪公かな?)
「ところで、何故馬小屋にあなたまで居るのですか?」
「いやぁ~、村に着いたのは良かったが生憎持ち合わせがな、そんなことより お前は何故空から振ってきたのだ?」
「それが僕にもどう言うわけだかさっぱりで、自宅の近くで気を失って気づいたらここに。」
(さすがに筋肉だるまに落とされてここに来ていたなんてどう説明していいかわからないしなぁ)
「俄には信じがたい話だな。」
「嘘なんて言いませんよ、メリットないし。」
「メリット?」
「あ~、利点とか利益って意味です。」
「初めて聞く言葉だな。 いったい何処の言葉だ。」
「日本という極東の国です。 少なくとも漢王朝には属してません。」
「総治郎はよその国からきたのか?」
「そうなりますね」
「面妖な。 まぁ、詳しいことは明日聞くとして今日はもう夜も遅いので寝たほうがいい。」
「そうですか。それでは休みましょう。」
(いろんなことを少し一人で考えないといけないしね)
総治郎は今後のことに思いをはせながら徐々に意識を手放していった。