ニセコイ Under Tale Color Wars   作:ゆうびん

1 / 9
初投稿です、よろしくお願いします。

一つ年下のキャラ達が多く登場する予定です。

がんばって投稿続けて行きたいです。


第一章:小野寺春のある日のホウカゴ
第一話『キッカケ』


二学期が始まって早々の一大イベントである文化祭が終わって数日。空は快晴、お饅頭のような雲がそよそよ流れ、心地よい夏の風が吹く昼休み。ここ一年の教室には三人の少女が卓を囲んでいた。

 

 

「え?新しい自分を探したい?」

 

「うん!」

 

「.........ムニャムニャ」ZZZ

 

 

そういって空っぽになったお弁当を包んでしまい込んだ少女《小野寺 春》は、力強い笑みを浮かべて頷いた。

 

 

「ど、どういった心境の変化があったの?やっぱりこの前のミスコンのせい?」

 

「ミスコンのことはいい経験だったと思ってるよ、まぐれでも優勝できたのはホントにうれしかった。何よりお店の宣伝もできたしね。それは風ちゃんのおかげだって思ってるよ。ありがとう風ちゃん」

 

「そ、そりゃどうも...、ってじゃなくて!」

 

 

思わずテレ突っ込みをかました少女《彩風 涼》は、自身もお弁当を仕舞い込みながら親友の突然の宣言に目を丸くしていた。

 

 

「よくよく考えたら私がここに入学したのもお姉ちゃんとくっつけるのをやめさせようとしたからっていうのもあって、先輩が悪い人じゃないって分かってからそれも無駄になっちゃって」

 

「.........」

 

「私が好きになるより、お姉ちゃんとくっついて貰った方が私も嬉しいなって、それがこの間のミスコンで気づいたんだ」

 

 

なんということだ、と涼はひとり心の中で拳を地面に打ち付けた。まさか後押しするつもりが明後日の方向に優雅に羽ばたかせる切っ掛けになってしまうとは...、中学の時に知り合ってからいつも自分が相談に乗っていた。かけがえの無い友達だから。それが今回は見事に裏目に出てしまった。

 

 

「それでもう一つ気づいたことがあって、私男の人が苦手で、クラスの男子ともまともに喋れて無いんだよね...そこも直さなきゃっておもって」

 

(春が幸せになってくれればいいって思ってお膳立てしたけど、もうその必要もないってことなのか...少し寂しいけど、嬉しいよ!春)

 

 

そういってお互い微笑み合う二人、新しいスタートである。

 

 

「ふわ~ぁ、よく寝たぁ」ノビ~

 

 

ここで一緒に卓を囲んでいた少女《ポーラ・マッコイ》が目をこすりながら伸びををして微睡みの世界から戻ってきた。

 

 

「あ、ポーラさんやっと起きた、食べてすぐ寝ると体に悪いよ」

 

「きゅ、休息は優れたヒットマンには必要不可欠なのよ、必要なエネルギーをすぐに使えるようにね」

 

「あはは...、そうだ、ポーラさん、春が何か新しいことに挑戦したいんだって、何かオススメでもある?」

 

「え?和菓子屋潰れるの?じゃぁ買い溜めしとかないと」

 

「「ダメだこりゃ」」

 

「はぁ、アハハ、まぁ、ゆっくり探してみようかな」

 

「そうだね、頑張ってね。春」

 

「ふぁ!そうだ、次の時間移動じゃん。涼、ちょっと早いけど行っとこ」

 

「いいよ、じゃぁ後でね、春」

 

「うん、またあとでね」

 

 

昼休み空けの次の授業は選択教室、春は教室で授業を受け、涼とポーラは移動である。

 

 

一人になり一息つく春、そんな彼女に迫る影がひとつ。

 

 

「春っち、新しいこと始めたいんだって?ウチと一緒に楽器やんない?」

 

「ひゃぁ!と、桃昇さん、びっくりしたぁ~」

 

 

拍子抜けする春の背後に、肩に手を回すように手を回したのは同じクラスメートで、一年生で唯一の軽音楽部の少女《桃昇莉緒》だ。

 

 

「桃昇さん、また今日も楽器弾いてたの?」

 

「うん!」

 

 

そういって莉緒ははにかんだ笑みを見せて背中に背負った黒いギグバッグを撫でる。

中に入っているのは勿論愛用のエレキギターだ。

 

 

「ウチの相方が寂しがるからさ~、外の空気吸わせてあげてるの」

 

「いつも弾いてるもんね、そのギターカワイイよね~」

 

「わかる!?さすが春っち、ミス凡矢理が入ってくれれば話題性も抜群だよ~。ウチと一緒に世界獲ろうよ!」

 

 

目を爛々と輝かせて春の手を握る莉緒。

だが、教室の空気がほんの少しさめたような、どんよりしたような空気になった。

 

 

「世界だって、相変わらず言うことだけはデカイよなアイツ」

「部員一人で崖っぷちのくせに、小野寺さんを引き込もうとするなんて身の程知れよな」

「ちょっと可愛いからって、一学期の頃はあんなに目立たなかったのに」

「よせよ、そういうこというの」

 

 

教室から嘲笑が聞こえる。

 

 

確かに莉緒は客観的に見て小柄で可愛い少女だ、春は彼女がギターを弾いてるところを何度か見せて貰ったが見れば見るほど楽しんでやっている姿が伝わってきた。

春自身はギターについては何ら専門的な知識は持ち合わせていない。ギターは弦を撫でて弾く、ドラムは太鼓を叩いて鳴らす。そんな程度だ。

一般的なアーティストについての素人同士の会話ならこの程度で十分だ。だが、そこから一歩踏み出せばたちまちマイノリティの世界に迷い込む、他人が到底立ち入れない領域に変わってしまう。

 

 

そして他人をディープな世界に引き込むには莉緒一人という存在ではあまりにも小さすぎた。小さくも主張を続ける存在とはマジョリティの世界にとって異端でしかなく、結果、“カワリモノ”“ギターオタク”というレッテルと共に同調圧力から弾き出された“ソレ”を浮上させた。

 

 

「.........」

 

「と、桃昇さん...、大丈夫、私気にしてないから。お誘いには乗ってあげられないけど...」

 

「.........」

 

「ご、ごめんね。なんかヘンなことになって、その...」

 

 

春自身はクラスの人間関係の機微に聡い方ではなかった。楽器関係ではあまり目立つところのない莉緒にどうフォローをいれていいかもよくわからなかった。

 

 

「も、もー春っち、そんなウチに気を遣わないでよ、いつもみたいに軽く笑い流してくれれば良かったんだからぁ」

 

 

悔しそうに俯いて唇をを噛んでいた莉緒は明るい顔で無理して作ったような笑みを浮かべ春に話しかける。

 

 

「いちいちそんなこと気にしてたら世界どころか教室からも出られないって。言いたいヤツには言わせとくのがウチのポリシーなんだって」

 

「そ、そう...そうだね!」

 

「それより、なにか始めたいんだよね、そういうの詳しい人ウチ知ってるよ」

 

「ホントに!誰?どんな人?」

 

 

無理矢理話題を変えた莉緒に気づきながらも、あえてそのまま話に乗る春。

明るく話してた莉緒だが突如バツの悪そうな顔になり...

 

 

「あ~、でもそのひと男子なんだよね。春っち男の人苦手だったよね」

 

「う、うん...でも、とりあえず教えてよ」

 

少しでも馴れるようにしなければ!といつも以上に踏み込む春。

 

「お、勢いいいね春っち、入り口の方で話してるタレ目のショートの男子いるじゃん」

 

「うん」

 

「あの子が維志っち、今年出来た室内...、なんとか同好会の部長やってるんだって、慰問やったりとかいろんな趣味持ってて、表彰されたこともあるんだって」

 

「へぇ~」

 

「それからオンラインゲームも得意なんだって、ウチはやんないけど」

 

その紹介された男子と目が合い、手を軽く振る莉緒。それを見て相手も手を振り替えしてきた。

遠くで話しているだけなのに突然の男子からのコミュニケーションに春は思わず目をそらしてしまう。

 

「...ッ!」

 

「は~るっち!やっぱりまだ抵抗ある?」

 

「ま、まぁ少しは...」

 

「維志っちは男女問わずあんな感じだから深く考えなくてもいいよ、あと他には...」

 

 

次の人物を捜そうと辺りを見回す莉緒、その目線を同じく目で追う春。そのとき鈍い衝突音と共に低い呻き声が教室中に響き渡る。

何事かと春と莉緒が音の出所の方を向くと一人の男子生徒が額を押さえて立ったまま悶えていた。

 

 

「何あの人...、デッか...」

 

 

そこには身長2メートルに迫ろうかという長身痩躯の男子生徒が居た。“異様”という言葉で片付けられないのはその長身だけではない、長身に見合うだけの手足の“異様”な長さ、肩胛骨辺りまで伸ばした“異様”に艶のある黒い長髪、そしてこの学校の男子生徒全員が前を開けているであろう学ランを律儀に一番上までキチッと留めた“異様”な姿。とにかく目に映る姿全部である。

 

 

「何...、あれ...人?」

 

「そうそう、あの人がもう一人の詳しい人、末松っちだよ」

 

 

さっきの衝突音はその長身で額が入り口の引き戸のレール部分にぶつかった音である。

 

 

「あの戸、建て付け悪いって先生言ってたでしょ?たぶんあれが原因だよ。1日1回はぶつかってるもん」

 

「へ、へぇ~、そうなんだ」

 

 

口角を引き攣らせながら莉緒の方を向き直す春。

 

 

「身長高くてスポーツスゴイ出来るらしいよ、運動会とかでも活躍しまくってたし。実家がお金持ちのボンボンだとか地元で数え切れない伝説作ったとか、あとどっかの会社の社長やってるって聞いたこともあるよ」

 

「しゃ、社長!?それはいくらなんでも...」

 

「う~ん、ウチもよく分からないんだ。でも部活の設立とか書類の作り方はスゴイうまいんだって、維志っちの部も作るとき世話になったって言ってた。それにウチも...」

 

「いろいろ聞かされて気疲れした...、もう座ってようかな。...ッ!」

 

 

莉緒の話を途中で止め、丁度予鈴も鳴った事だし、とクラクラする頭を振り払って机に座ろうとしたとき、ドンと体が何かにぶつかった。

 

 

「...何よ今度は...、ヒィッ」

 

 

すこし怒り気味に語気を荒げたが、そのぶつかった相手を見て春は思わず悲鳴を小さく上げた。先の末松という男子生徒も特異な外見をしていたが、こちらの男子生徒もそれに負けずとも劣らない。顔にかかった前髪と眼鏡のせいで表情は伺いしれないが、何よりも目を引くのはその頭髪、外ハネでボサボサ気味の頭は真っ白で、所々黒いところが残っている程度だ。ポーラのように生まれつきの美しい髪色というわけではなくどこか歪さを感じさせる、そんな髪型だ。

 

 

「............」

 

「...あ、ご、ごめ...」

 

 

悪気がなかったとはいえ曲がりなりにもクラスメイトに悲鳴を上げてしまったのだ、とりあえず謝っておこうとする春だが、そこは生来の男性恐怖症、なかなか言葉が出せない。見かねて莉緒がフォローを入れる。

 

 

「春っち、大丈夫? 藍川っちももう馴れてるでしょ、初見で驚かれるの。早く行かないと授業始まっちゃうよ!」

 

「.........」

 

 

藍川という男子生徒を急かして移動教室へ行かせようとする莉緒、向こうもぶつかってしまったことに申し訳なさを感じたのか無言で頭を下げそのまま教室を出て行ってしまった。

 

 

「春っち、そのリアクション半年遅いよ!藍川っち入学したときからあの髪型であんなに無口なんだよ。今更そんなリアクションしたら少しかわいそうだよ」

 

「そうなんだ...、そうだよね...」

 

 

突然あんなに男子に接近されたのもそうそう無かった為かクラクラしていた頭がさらにクルクル回る春。

 

 

「じゃ、ウチもう席にもどるね。バイバイ」

 

「...バイバイ」

 

 

フラフラと手を振って自分の席に戻る春、席に着き、とてつもなくデカイため息をつく。

 

 

「はぁぁぁ~...。私...、いままで何見てたんだろ...」

 

 

心の声をこぼすのだった。




投稿した話でもちょいちょい編集することもあると思いますが、これからもよろしくお願いします。

誤字などの指摘、感想などお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。