ニセコイ Under Tale Color Wars 作:ゆうびん
あの人気投票なんだよ、面白すぎるだろww
そしてもっと頑張れ主人公
てなわけで第六話スタート~
第六話『ヨビダシ』
時は流れて昼休み。春は涼とポーラとの昼食を早々に済ませ一人先に教室を抜け出し、一宥が使っている空き教室へとやってきた。
「この手紙、藍川君のイタズラじゃないよね?」
そういって春がちらつかせた紙は、朝登校してすぐ鞄を置きに行った際に机に入っていた手紙と写真だ。内容は言わずもがな昨日の盗まれたギターを巡る一件だ。
「...そんな面倒なことしないよ。っていうか君のところにも入ってたんだ、その手紙」
「藍川君も入ってたんだ...、よく見ると写真も違うところを撮ってるね」
二つの写真を見比べる春。はっきり言ってよく見なくても分かるが、春の机に入っていたのはご丁寧にも春が木箱を武山にぶつけたとこ ろ、一宥の机に入っていたのはとどめのアッパーカットをヒットさせたところだった。
「...でも同じ角度から撮ってるみたいだ、俯瞰からってことはビルの上から撮ったものってことだろうな」
「あー、あのあたり無人のビルが多かったもんねー。って、そうじゃないよ!この手紙どうすればいいの?私たちどうしたらいいの?」
「...ちょ、落ち着いて!ゆっくり考えよう...」
「.........ハッ!...うん、そうだね」
戸惑いながら一宥に詰め寄ってくる春だったが、なぜか何かに気づいたように一宥から二、三歩後ずさり距離を空ける。
「...ど、どうしたの?...急に」
「別にー、油断してるとまた藍川君に胸揉まれるし。もうあんなヘマはしない!大体昨 日の件も私は許したわけじゃないから!」
「...あれは事故だったし、もう忘れようって言ったじゃないか!いつまでもしつこいな君は」
「乙女はしつこいのが甲斐性なんです!で、誰が手紙を入れたか分かったんじゃないの?あなたの昨日みたいな名推理聞かせてもらえるんでしょ」
ヤケクソ気味に言い放つ春、それを受けた一宥は忌々しそうに眼鏡をかけ直すと考えを述べる。
「...まぁ、どんなやつかなんて確証はないけど、教室の中にあったってことはこの学校の関係者だろう。仮に昨日の一件が警察にバレてたとしたらそこから学校側に連絡が入っていて、こういう場合対応に当たるのは担任とか副担任だろうと思う。...それで、そっくりそのまま俺たちの身柄を引き渡す のもそれはそれでややこしくなるから、前もって話しを聞いておこうってことでこの手紙が入ってたんじゃないかな、つまり...」
「つまり?」
「...昨日桃昇から話しを直接聞いた三川先生が入れたんじゃないかと思う」
「おお~!名推理!」
「...まぁ、予想だけど...」
「でも朝職員室に昨日のこと話しに行ったとき特にそんなこと話しもしてこなかったけど...、それに...」
「...それに?」
「昨日のこと...なんだか結局警察に言ってなかったみたい、戻ってきたから結果オーライみたいに言ってたけど」
「...そういえば誰がギターを戻したのかもわからないままだな...」
「で、放課後どうするの...、どうしたらいいのかな...私たち」
不 安そうに腕を抱き体を震わせる春。無理もない、もう関わりたくないと思っていたのに別の第三者に昨日の一件を見られていたのだ。
「...なんでこんなことになっちゃったんだろうって思ってる?小野寺」
「それは...思ってないって言えば...嘘だけど...」
「...じゃあ盗まれたままでもよかった?」
「そんなはずないよ!!...でも、やっぱり怖いし...」
「...わかった、じゃあこうしよう」
「どうするの?」
「...この呼び出しには俺が一人で行く、君は何も知らなかったことにしていればいい」
「...!?それって、私は関わらないでいいってこと?」
「...そうなるな。そもそも君も俺も巻き込まれただけなんだから、数つれてゾロゾロいくよりこっち の方が伝えやすいんじゃないかな」
「そうかもしれないけど...、もし予想が外れてたら藍川君も何されるか分からないし」
「...別に構わないよ、それで」
「え?何かされても構わないって...、藍川君そういう趣味持ってたの?うわぁ~...」
再び一宥から一歩後ずさる春。
「違う!!ただの物事の効率化だよ、それに...」
「それに?」
「...昨日の...その...触った件で...、まだ怒っているなら、詫びというか償いというか今日のこれでもうなかったことにしてくれるんなら、別にそれでいい」
「...!!そんな...こと。ううん、じゃぁそうした方がいいかな」
一宥が春の胸を揉んだことを引き合いに出されてお互い真っ赤になっていたが、不意に疲 れたような顔になった春は観念したかのように自分から折れた。
「...じゃ、これで俺と君はなんの関係も無かったってことで。明日会っても何も聞かなくていいし、もうこの部屋にも来ない方がいい。っていうより今日も入っていいなんて言った覚えもないし」
「ハイハイ、わかりました。じゃあね、返事しなくていいから」
一宥の突き放したような台詞を皮肉で応え、踵をかえし部屋を出て行く春。やや乱暴に扉を閉め後を去る。
(お礼も言わせてくれないなんて...バカ...)
最後に心の中で呟いた。
一宥の出した提案、それは自分一人が今回の罪を被るということと同義であった。相手の負い目も十分分 かっているだけにやりきれなさを抱えたまま教室に戻る春だったが、何やら教室が騒がしい。
「嘘じゃないよ!!でもちゃんと返ってきたからもう大ごとにしないって言ってるの!!」
「それこそ嘘なんだろ?軽音楽部潰れそうだからってホラ吹いてんじゃねーよ!!」
「ハハハハ」
教室では莉緒が男子数名と言い争っていた、というより一方的に詰め寄られていた。男子の先頭にいるのは余所のクラスの大澤という生徒、『頑張るだけ無駄』という後ろ向きどころかどこにも顔向けできないような腐りきったポリシーとそれを同じクラスの男子数名に伝播させる妙な発言力の強さを兼ね備えた生徒である。今回の事件の“学校に不審者が現れたこと”と、“莉緒のギターが盗まれたこと ”が曖昧で不透明に教師から伝えられ、尚かつ渦中のギターが何食わぬ顔で莉緒の手に戻ってきてることで彼はこの事件を莉緒が引き起こしたマッチポンプであると勝手に確信し、勝手に被害者にして犯人であると大勢の前で言いふらしたのだった。初めは顔を赤くして反論していた莉緒だったが、どう言い返しても初めから聞く気も持っていない大澤には寝耳に水であり、暖簾に腕押しであった。
「ねぇ風ちゃん、何あれ?」
「あ、お帰り春。それがね、桃昇さんのギターが盗まれたってウワサがあったでしょ?それをなんか勘違いしたみたいで文句というかイヤミ言いにきたの」
「ふ~ん...」
「グーグーzzz」
「桃昇さんも適当にあしらっとけばいいのに、ムキになるか ら相手が喜んじゃうんだよね」
「夢中になってやってるんだもん。私もお菓子作りとかバカにされるとイラッとくるし風ちゃんもそうでしょ?」
やや心配そうに莉緒を見る涼、彼女もよくカメラを携え親友の春をファインダーに収めている。好きだからゆずれないという気持ちも共感しているのだろう。
春はほんのすこし唇をかみしめ言葉を詰まらせる。ついでにポーラは寝ている
「オイ、迷惑がってるだろ!やめてやれよ」
見兼ねてこのクラスの男子の”維志剛”が止めに入るが、大澤は気にも留めず中傷を続ける。
「維志っち...」
「なに庇っちゃってんの?もしかしてこいつのこと好きなの」
「小学生みたいな煽りをするなよ...、けど強いて 言うならお前より好感度の低いやつはこの場に誰一人としていないぞ、神に誓ってもいい」
「ンだとてめぇ!!」
図星を言い当てられ怒る大澤だったが、教室中からクスクスと笑い声や自分を嘲笑するような視線に気づきこれ以上維志の相手をしていると自分の分が悪いと察したのか再び標的を莉緒に戻す。
「ケッ、お前もよかったなぁ!!一人でも心配してくれるやつがいて、作戦大成功だな!!」
ここにきてとうとう我慢が限界にきたのか莉緒はバンと両手で机を叩き立ち上がる。
「迷惑だって言ってるじゃん!!もう構わないでよ!!」
目に涙を溜めて叫ぶ莉緒、昼休みも終わりだというのに教室を出て行こうとする。
「ごめんね維志っち、ありがと 。気分悪いから保健室行くって先生に言っといてくんない?」
そういってそのまま小走りで走り去ってしまった。春は莉緒とすれ違いざまに彼女の目から涙が流れているのが見え思わず声をかけようとしたが涼に止められる。
「風ちゃん...」
「春、今はそっとしといてあげよ」
「うん...」
自分が何を言っても慰めにもならないだろうと思い、伸ばしかけた手を戻してしまう。
「おい!自分たちが何したか分かってるのか?わけの分からない誹謗中傷をして女の子を傷つけて...」
「何カタいこと言っちゃってんの?そうだ!あいつのカバン見てやろうぜ、作詞ノートとか入ってんじゃねーの?お前ら、そいつ抑えとけよ」
「おう!」
「 やりすぎだろ!お前らも離せ、こんなことして楽しいのかよ」
「いいんだよ!出てきたら貼り出してやろうぜ、俺なりの応援ってや、グエッ」
悪趣味な提案を述べながら莉緒のカバンに手をかけようとする大澤だったが背後から伸びてきた長くて青白い手に襟元を掴みあげられ息が詰まったような声を上げる。その手の主は末松、そう春達のクラスで一番...否この学校で一番身長が高いといっても過言ではない男子生徒だ。
末松はそのまま襟元を掴んだ手を吊り上げ、クレーンのように大澤をぶら下げる。
「さっきから黙って聞いてりゃ、お前ほどみっともないヤツもそうそういねぇなぁ」
「な、なんだてめぇ!!でけぇ図体しやがって、降ろせや!!」
「バカヤロー、肩 幅はそれほどでもねぇよ。維志ちゃんももうすこしバリッと決めようぜ」
天を突かんという長身に維志を掴んでいた大澤の取り巻きたちもビビッて手を離してしまう。そして大澤はようやく手を離してもらえたが尚も悪態をつく。
「勝手に出てきて話に割り込んでんじゃねぇロン毛のデカブツ」
「なにも無いところから勝手に湧き出てきたお前らに言われたくねぇんだよ、周りが迷惑してんの知ってんだろ」
ここで大澤は改めて周囲を見渡す、さっきまでの自分への嘲笑すらも消えうせいまや軽蔑の白い眼差しとなってしまっていた。
「ケッ、面白くねぇ。何だよ一所懸命頑張りやがって、いい笑いもんなんだよ!行くぞお前ら」
最後まで悪態をついて 出て行く大澤とその取り巻き、それを末松が呼び止める。
「ちょと待てお前ら、ひとつ覚えとけ」
「.........」
「一所懸命なヤツ笑い者にすんのは勝手だけだけどな、そんなことばっかやってると自分が頑張らなきゃいけないときに誰も応援してくれなくなるぞ」
振り向くことも返事もせずに大澤は教室を出て行ってしまった。
「末松、助かったよ、ありがとう」
「助かったのは桃昇ちゃんだろ、お前も大概人がいいよ」
「ああ...桃昇さん、大丈夫かな?彼女」
「大丈夫だろ、大事なモン一つのためにマジになれるんだから。群れてキズ舐めあってるあいつらとは違うよ」
ハハハと軽やかに笑う末松と維志。それを見ていた春は涼にこっそり耳打ちする。
「ねぇ風ちゃん、末松君って何者?」
「私も男子とあまり話はしないから詳しくは分からないけど、一学期あんまり学校来てなかったのあの人。来なくても頭いいからそんなに問題じゃないってウワサできいたけど、今のはまぁ煩すぎたから注意したってところじゃないかな?」
小首をかしげる涼とそれにうなずく春。
「さっきの人達もさすがに懲りたでしょ、もう来ないんじゃないの?」
「だったらいいけど」
「まぁ何があっても春は私が守るよ!」
「アハハ...ありがと」
「グーグーzzz」
涼のやや過激な発言に苦笑いで答える春、そしてポーラはやはり寝ている。
時は流れて放課後。春は今日の手紙の一件がやや心残りだったが帰宅することにし、姉の“小野寺小咲”、先輩の楽とその恋人役の“桐崎千棘”の四人で帰路を歩いていた。
「でさー......、それでね......」
「俺が...そんな......」
(うー...、会話が全然頭に入らない...)
手紙の件が気になりすぎて頭が真っ白になっている春、当然会話の中身も頭に入ってこない。
「...ちゃん、春ちゃん!」
「うわぁ!なんですか先輩!」
「いや、そんなに驚かなくても...春ちゃんボーっとしてたから、どうかしたのかなと思って」
「一条先輩にはなにも関係ありません!関わらないでください」
「そ、そこまで言わなくても...」
若干へこんだ楽だったが、代わりと言わんばかりに千棘が春の後ろから抱き着いてくる。
「じゃぁお姉さんにド~ンと相談してみなさい!!」
「ひゃぁ!桐崎先輩...、大丈夫ですよ!そんなんじゃないんで」
「春...ほんとに大丈夫?」
「お姉ちゃんも!そんな大げさにしないでよ、ちょっと考え事してただけ」
小咲や千棘の心配を掻い潜る春だったがやはり不安は消えず...
「...あの、一条先輩一ついいですか?」
「どうした春ちゃんやっぱり悩み事?」
「そんなんじゃないんですけど...あくまで仮定なんですけど善意でやったことが相手の人にとっても予想もしない方向に大ごとになったりしたらどうしますか?」
「何なのそれ?」
「こないだ読んだ本にそんなことが書いてあったんです、どういう反応とかするのかなみたいな...」
「う~ん、そうだな。途中でサジを投げるようなマネはしないよ、最後まで出来ることをさせてもらうと思うよ」
「ほ~んと、何にでも首突っ込んじゃうからね!ダーリンは」
「ふふっ、でも一条君らしいよね」
「損することはあったかもしれないけどモヤモヤとか後悔が残ったりしたことはないかな、それだけは確かだな」
(そうだよね...そういう人だもんね。先輩は)
呆れたような目で楽を見る春だったが、その目はすぐに優しく緩んだ。
(でもそんな先輩だったから私は...)
決心したように前を向くと春はその場に立ち止まる。
「どうしたの?春ちゃん」
「ゴメンナサイ、学校に忘れ物しちゃいました!!取りに戻ります!!」
「取りに戻るって...俺もついていこうか?」
「いえ、一人で行くので大丈夫です!ゴメンねお姉ちゃん!先輩何なら送ってあげてください」
「お、おう...」
「じゃあ、そういうわけで!サヨナラー!!」
砂煙を上げてすさまじい勢いで走り去る春、角を曲がり立ち止まりもと来た道をこっそりと振り返り見る。
(ついて来てないよね...)
楽達が帰っていったのを確認すると学校へと戻り始めた。
「結局...戻ってきちゃったなぁ、藍川君大丈夫だよね...?」</ div>
学校に戻りローファーから上履きに履き替え屋上へと階段を上がっていく春。後はこの戸を開ければもう目的の屋上へとたどり着く。
(もう全部片付いてますように!!神様お願いします!!)
春はごくりと息を飲んで戸を引く、初秋の涼しげな風が顔に打ちつけられる。
「...やっぱり...そう世の中うまくいかないよね...、藍川君ッ!」
春の視線の先には自分の仕事をすべて請け負うはずだった一宥がぐったりと力なく柵に背をつけて座り込んで息を荒げている。
「......ハァ......ハァ、小野寺...結局来たのか、来るなって言ったのに...」
「ねぇ!何でこんなことになってんの?藍川君、こうなること分かってたんじゃないの?」
傍まで行って 問答を続ける二人だったが、割って裂くようにもう一人の声が秋空に響く。
「来るの遅かったじゃな~い小野寺ちゃん。藍川ちゃんが素直に話してくんないから俺ら二人ず~っとここで睨み合ってたんだぜ」
「.........ッ」
ゾクリと背筋が冷たくなった春が後ろを振り向く、さっき自分が入ってきた屋上の入り口の屋根に昼休みに教室で見事な啖呵を切っていた長身痩躯の男子生徒、末松が秋風に長い髪を揺らしながら立っていたのだ。
末松は屋根から飛び降り音も無く着地すると春のほうに向かい歩いてくる。
「あ...、ああ...」
その威容に畏怖し、うまく言葉の出せない春の傍まで行くと末松は腰を曲げ、目線を小柄な春に合わせる。
「ちゃんと挨拶するの初めてだよね。俺は“末松臨太郎”、よろしく。そんじゃま、お近づきの印として昨日あったことゼ~ンブ話してもらおうか」
改行とか少し変えて見ました。
今までの少しクドかったな、反省。
感想、評価お待ちしております。次回もよろしくお願いいたします。