ニセコイ Under Tale Color Wars 作:ゆうびん
申し訳ございませんです!MGSVが面白いんです!!それだけです!!!
それではスタート
「さぁてと、聞かせてもらおうじゃないの」
肩胛骨あたりまで伸ばした黒髪が初秋の風にふわふわ靡き、夕日に背を向けた臨太郎が春の目の前に立ちふさがる。2メートルの匹敵する長身を折り曲げ、無理矢理目線を春に合わせる姿は中々に不気味である。
「...ぁ...ぅぅ、...ぁ」
春は一言も言葉を出すことが出来なかった。目線から感じる怖気は昨日の武山の比ではなく、沸き上がる底知れぬ恐怖に膝は笑い口の中はカラカラに渇いていた。当然思考も正常に働かない。
「きら~くに話してもらっていいんだぜ?なんならお互いの自己紹介から始めようか?」
おどけたように肩をすくめる臨太郎。それを受けた春は背後の一宥をチラリと見る、相変わらず一宥は青い顔で息を切らしている。こうなった原因にこの男が関わっていることは間違いない、そして今自分がその目に遭おうとしているところだ。
(藍川君...、やっぱりこうなること分かってたんじゃない...馬鹿...でも)
心の中で一宥に毒づく春。だがそれでも強く出ることは出来ない、なぜなら自分も目の前の巨人を目の前にして何も出来ずにいるからである。意を決して来たはずなのに何も出来ずにスカートの裾をぎゅっと握って俯きながら震えているだけだ。
(私も...怖くて何も言えないよぉ...)
「これじゃさっきと何もかわんね~よ!むしろ絵面的にまずくなった分余計に気まずくなるっつ~の!」
緊張した空気を吹き飛ばすように声を上げる臨太郎、確かに男対男だった先ほどと比べると男対女で相手が言葉に詰まっている状況では傍から見ればこちらが何かやましいことをやっているようにしか見えない。そこで臨太郎はとある提案をした。
「ようし、じゃあこうしよう!小野寺ちゃんが俺に気になることを一つ聞く、俺が答える。そしたら次は俺が小野寺ちゃんに聞く、答えてもらう。それでいいだろ?俺からの最大限の譲歩だぜ!?いいよね」
「............」
春は声は出さなかったが頷いて納得を示し、質問を頭の中で練る。考えてみればこの男への疑問は尽きない、武山との関係、昨日見ていた理由、今日の昼休み莉緒を助けた理由、そもそも何で自分たちを呼び出したのか、いろいろ頭の中で考えているがここで春は再び背後を振り返り藍川を見る。
(いろいろ聞きたいことはある...、でもやっぱり気になるのは...)
緊張で張り付いた唇を震わせ、深呼吸を一つして春は言葉をつなぐ。
「...スー...ハー...、あ、藍川君がこんなに辛そうにしてるのは何でなの?一体何をしたの?」
「「...............ッ!?」」
春が求めた答はこれだった。昨日自分を助けてくれたクラスメートとの事の顛末を第一に求めずにはいられなかった。だが、これには臨太郎も当の一宥も驚かずにはいられなかった。
「...ハハ、そうきたか、OK!答えてあげるよ、別に俺が手酷く痛めつけたわけじゃないんだ。昨日こいつがスクーターに轢かれたの知ってるだろ?」
「昨日の...私を庇って轢かれたあの...?」
「そう!俺はそれをずっと見てたんだけど、どう見たって病院にも行かずに一晩で治るようなケガじゃなかったでしょ?んな体で俺に勝とうなんてホントに思ってたとしたら笑えるぜ」
ヘラヘラ笑いながらクイとあごを上げて一宥の方を示す臨太郎、一宥はそれを受けてバツが悪そうに目を逸らす。
「ちょろ~っと話聞くだけだったんだけどさ、『君に話すことは何もない』なんてマジ顔で言っちゃうもんだから『じゃぁ小野寺ちゃんに聞くからいいよ』って言ったらいきなり俺に飛びかかって来てやんの」
「まさか...それでケンカしたの?」
「ケンカなんて大袈裟なモンじゃないさ、さっきも言ったように痛そうにしてるとこ軽く小突いただけだよ。そしたら蹲っちゃって、そこに小野寺ちゃんがやってきたって流れ。笑えるよね」
(好き勝手言ってくれて...)
ふざけたように首を傾けおどけるような解説を受けて春は内心苛立ちを見せていた。先ほどまで恐怖していたことも忘れ、目の前の長身を見つめていた。理由は二つ、さっきからの臨太郎の話しと話し方を聞くになんだか自分が軽視されているように見えたこと、もう一つは曲がりなりにも昨日自分を助けてくれた一宥が痛い目に遭わされた事。だがこの男は今日の昼休みに莉緒を影ながら助けていたし否定的な発言もしていなかった、少なくともこの男が報復や暴力的な行いを目的として自分たちを呼んではないと察しほんの少しだけ安堵をする。
「も、もうこっちの話しはいいでしょ。そっちの聞きたい事って何?」
「う~ん、こっちもこっちで聞きたいこといろいろあるんだけど...、じゃあさ、なんで」
「......」
「なんで桃昇のギターを取り返そうとしたんだ?あんなキケンなことして」
この一言で臨太郎の纏う雰囲気がガラリと一変した。
屋上にあがって声を掛けられたときに時に感じた感覚とは違い、先ほどの安堵も吹き飛ぶほどの威圧感が春に叩きつけられる。
「な、なんでって...、なにが?」
あくまで平静を装うつもりで春は応対するが、動揺から口角が引き攣り言葉が詰まる。
「なにがじゃないだろ、こんな顔してるけど俺結構驚いてるんだぜ?クラスで一番の男子嫌いの小野寺ちゃんがあんな悪そうな見た目した男を相手にして、これまた碌に人付き合い出来なさそうな父っちゃんボーヤとタッグでブッ倒しちまったなんて、そのくせ取り返したギターはその場に忘れていくんだからな。笑えるぜ」
「うっ、そこまで見てたんだ。じゃぁあの後の事も...」
「なんの事?」
「だ、だから...私が藍川君にむ、む、むねを...」
顔を真っ赤にする春。雨に濡れて敏感になった乳房を布越しとはいえ触られ、その上壁に押し倒されもしたのだから赤面も致し方ないことだろう。
「? 藍川がなんかしたの?昨日二人が立ち去ってからそのブッ倒されたヤツに話し聞きにいったからよく分からないんだけど?」
「ううん知らないならいいよ、この話はなーし、終わり!」
手をバタバタ振る春。そのまま話題を変えようとするが...
「勝手に終わらせようとしてんじゃねーよ!俺の質問に答えろっつってんだろ!」
「......ッ!」
臨太郎から発せられた空を裂くような声に春は体をビクリと震わせる。我ながら余計な事を言ったもんだと後悔したが、時既に遅く初めて相見えたときのように臨太郎は腰を曲げ顔を接近させる。それにふと昨日の事を思い出させ春は体を強張らせる。
「大体さぁ、軽音部ってあそこがどんな部か知ってんの?小野寺ちゃんよ」
「し、知ってるって...莉緒ちゃんがいる部なんでしょ!知ってるわよそんな事、それがどうしたのよ」
「知ってるのそれだけ?」
「それだけで十分でしょ!他に何があるのよ!」
半ば開き直り気味に問う春。
「凡高軽音楽部、創設自体は数十年前だがここ近年どーにもめんどくさい生徒らが入部してたみたいでな、やたらと問題ばかり起こしていたんだって」
「なにそれ...」
「部費の個人的な流用や部室の私的な利用。設備を勝手に売っぱらったりさらには未成年を巻き込んだ...つっても高校生だから全員未成年か、飲酒や喫煙なんかの不祥事にも枚挙に暇がねぇ」
「そんな...そんなの先生だって黙ってるハズ無いよ!」
「そんな馬鹿なって思ってる?もともと当時の顧問が部活動に無頓着だったから入部している生徒にも無頓着だったらしい、どうやらそこにつけ込んで勝手に届け出出さないで部室に入り浸っていた生徒もいたんだって」
「ひどい...」
「そんな部だからまともだった部員は一人また一人と抜けていき脂身からラード作るみたいに悪い生徒ばかりが残っていったんだって、どうしようもねぇなコリャ」
「.........」
話を聞いて春の心に暗い影が差した。莉緒があれだけ頑張っている軽音部に他に部員がいないことは聞いていたがそんなどうしようもない暗い過去があったことは聞かされてなかった。
「そんでもって今年の春に顧問が異動になった。無頓着が過ぎて後任の顧問も探さずいよいよ持ってクズばっかりだった部活が宙ぶらりんになって誰の目にも留まらなくなっちまったんだ」
「.........」
「そうなりゃもう連中も気兼ねってもんが無くなるわけ。やってることは迷惑沙汰、大会にもまともに参加しない、そもそも楽器すら持とうともしない。そんな奴らが軽音部の看板背負ってんだ」
「.........」
「そんなクズの巣に嗚呼、哀れにも熱意という名の養分をたっぷり蓄えた可愛らしい青虫くんがノコノコやってきたワケなんですねぇこれが、笑えるだろ」
「それが...、莉緒ちゃん...?」
「そーう!そのとおり!冴えてるねぇ小野寺ちゃん!」
ずっと黙りっぱなしだった春が震えるような声で紡いだ莉緒の名に、大袈裟なリアクションで臨太郎が反応する。
「意気揚々と入部した桃昇は当然軽音部の現実を知ることになった!だが、それでも諦めなかったんだ、健気な女の子じゃないか!」
「.........」
「し~っかし!悪さばっかしてた部員がそんな桃昇を歓迎するなんて百億%あり得ない、入部して早々桃昇は針の筵に座らされる羽目になったんだ」
臨太郎が口にするとおり、入部後の莉緒への部員達からの扱いは散々なものだった。部室では陰口を叩かれ、楽器の練習をすれば煩いと怒鳴られ、飲食飲酒で部室を好きなだけ汚し後片付けは全部押しつけ莉緒が自費で購入した音楽の本も悉く破り捨てられた。そもそもまともな音楽の経験も情熱を持ち合わせていない部員達にとって莉緒の存在は邪魔以外の何者でもなく、また絶好のからかい相手だった。
「んなわけで!健気な青虫くんはチョウチョになって羽ばたくことも出来ずア○トーークも真っ青なぐらいイケてない学生生活を送ってたんだ、笑える...いや、ここまでくるとさすがに笑えないな。そもそもそんな部活さっさと辞めて趣味のサークルなりなんなり作ればいいのに、口下手で音楽のことしか会話できるようなトピックが無いからやり方もわかんねぇ、クラスメイトとも碌に口聞けねぇ口下手だったから」
(...そういえば莉緒ちゃんって...)
春は微かに思い出した、入学したてで自分がまだ楽を敵対視しており、いつボロを出すやと時間のある限り偵察にいっていた頃、教室で見ていた桃昇莉緒という少女は今ほど明るかっただろうか、と。答えはNoだ、昨日教室で誰かが言っていたように一学期は特に印象に残るような生徒ではなかったし部活の勧誘をしてきたのも二学期になってきてからだ。
「だからやらなかった、いや出来なかったんだなー。そこにしか居場所が無かったから、そこにしか居るしかなかったんだ。自分の未来がないって分かっていてもな」
流し目で腰を逸らす臨太郎。さっきまでの嘲笑は鳴りを潜め若干の哀れみを含ませた目線でう~んと唸りながら伸びをする。
「だから実力が有ろうが無かろうが関係ない、認められるチャンスそのものが無いんだもん。“世界を獲る”いい言葉だよね~、獲れねぇ限りは“挑戦中”で済ませられるんだからな。便利なもんだ」
「.........!」
その瞬間だった、春の中で何かが音を立てて切れた。
秋風に揺れる黒髪を掻き分けながら臨太郎は目線を春に戻す。
「で?何で小野寺ちゃんは桃昇のギターを取り戻しにいったワケ?」
「......何よ...」
「...ハ?」
俯いていた顔をバッと上げる春。その目には溢れんばかりの涙が溜まっており、言葉を発するのと同時に堰を切ったように流れ出した。
「何よ!何よ何よ!グスッ、さっきから聞いてれば、あんたに、何が分かるってのよ!グス」
ポロポロと両の瞼から熱い涙を流しながら高い目線の臨太郎を睨み付ける。
「莉緒ちゃんはぁ、グスン。...頑張ってるよぉ!それだけで、いいじゃん!ヒク」
「......いや、だからさ」
「認められるとかぁ、羽ばたくとかさぁ、いちいち他人が口出しする事じゃないじゃん」
目元の涙を両袖でぬぐい、しゃくり上げながら溜まっていた怒りを静かにぶつけていく春。さすがに面食らったのか臨太郎も上手く対応が出来ないでいる。
「大体アンタもぉ、経歴とかそんなこと偉そうに言ってたけどぉ!結局外面見て文句言ってるだけじゃない、事が起きてから高いところでダメ出ししてるだけの人間にぃ!助けた理由教えろなんて言われても答えるワケないんだからぁ」
「分かった!分かったから泣き止めって、誰か来ちまうぞ...」
静止させようと春に手を伸ばす臨太郎、だがその手は春にバシッとはたき落とされる。
「莉緒ちゃんはね!ここしかなかったからやってたんじゃないの!何に代えてもやり抜きたいことがあったから、辛くても頑張ってたって言ってたもん。うわあぁぁ~ん」
とうとうダムが決壊したように大泣きし始めてしまった春。臨太郎はどうしようもなくその場でオロオロしている。
「............」
...その時だった、二人が全く意識していなかった背後でソレはのそっと立ち上がり...、そしてソレは二人にゆっくりと近づいてゆく。
「ああああ~ん」
「だぁ~!もう...どうしよ...」
「.........おい...」
「「うわぁ!」」
急に声を掛けてきたそれに春も臨太郎も驚き、振り返る。その先にはずっと柵にもたれたままで座り込んでいた一宥が立っていた。
「...藍川君...グスン」
ちらと春を見やる一宥、春の目は赤く充血しており頬は涙で濡れそぼっている。
「いいところに目ぇ覚ましてくれたな藍川ちゃん、小野寺ちゃんと二人だと話しが進まない進まない。二回言うくらい進まないんだ、お前が声かけてくれたおかげでなんか泣き止んだみたいだわ」
「彼女を泣かせたのは君か?」
「...ハァ?お前何言っ、ブハッ」
最後まで喋る事無く臨太郎は左の頬を殴られて言葉を途切らせる。殴った音は傍から見てもいい当たりだと分かるくらい軽快に屋上中に響き渡った。
今回はここまでです。
なるべく早く更新したい...
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