ニセコイ Under Tale Color Wars   作:ゆうびん

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前前前回のあらすじ「色々あってギター泥棒をぶっ倒した」
 前前回のあらすじ「それを誰かに見られてて屋上に呼び出しになった」
  前回のあらすじ「呼び出した奴が春を泣かせた」

そして第八話!始まります


第八話『シータク』

「...へ?」

 

春は目の前の光景がなんなのかもはや訳が分からなくなっていた。自分が必死の思いで取り返した(置き忘れたが)ギターの顛末について痛烈なダメ出しをした長身の男がさっきまで痛みで動けなくなっていた別の男に殴り飛ばされ地面に仰向けに倒れている。

 

(わ、訳が分からない...)

 

さっきまで流れていた涙も止まり、春は目元を拭うと殴った張本人である一宥に目線を向ける。同じく一宥も春の方を向き二人は自然と目があった。

 

「あ、藍川君...、その...」

「......、ゴメン!!」

 

緩やかに頭を下げて謝る一宥に春は面食らう。

 

「え?...どうしたの、いきなり」

「...君をこれ以上関わらせないって話だったのに、結果的に巻き込んでしまって...」

「藍川君、...てい!」

「......!?」

 

春ははぁ~とため息を吐いて一宥の頭にチョップをくらわせる。そして今度は一宥が面食らう事になった。

 

「あのね、藍川君!そんなに謝られたらこっちだって言いたいこと言えなくなっちゃうよ!」

「...お、小野寺?」

「私だって!ずっと言いたかったよ、助けてくれてありがとうって!でも藍川君一人で勝手に話し進めちゃうし、気になって来てみたらなんだか倒れ込んでいるし、ヘンなデカイ人は好き勝手言ってくるしで私だってもうガマンの限界なんだから」

「...あ、ああ」

 

曖昧に返事をする一宥だったが、春の自分を見つめてくる瞳に思わず引き込まれそうになる。

 

「とにかく!ケガは大丈夫なの?昨日のと今さっきのヤツ」

「...ケガしてた方の手で殴ったから、すこし痛いかな」

「そうそう、スゴイ音がしたよね、昨日の人のも含めて。ケンカなんてテレビドラマなんかでしか見たこと無かったからびっくりしたよ」

「その...、君が末松に傷つけられているかと思ったら自然に手が出てしまって...」

「自然に、って!?そうだったんだ...藍川君が...」

 

柵にもたれ顔を春から背ける一宥。西日に照らされているせいで分かりにくいがその顔が赤らんでいるのは夕日が原因ではないようだ。

そんな一宥を見て春も同じく顔を赤らめる。

 

「で、どうするの?」

「...どうするもこうするも、こっちも末松に聞いておくことがあるのもまた事実だから、なんかロープとかで縛って気絶してる間に動きを封じて話しを聞ける状態にしないと」

「そう...、あの、私も聞かせてもらっていいかな?」

「どうして?もう君はこれ以上...」

「それ以上言わないで!」

 

ビシッと一宥の眉間に向けて人差し指を差す春。あまりマナーが良いとは言えないが、その勢いと目力はそんな文句も吹き飛ばすような力を感じさせる。

 

「...分かったよ、とにかく何かで末松と話しが出来る態勢に持って行っておかない...と...」

「...どうしたの?藍川く...ん...」

 

 

 

 

 

 

「もう終わった?話」

 

二人は揃って絶句した。殴り飛ばされ、地面に仰向けに倒れているハズの男が実は、“倒れているようで倒れておらず、倒れそうな姿勢をキープしたまま二本の足で全体重を支えている”状態でこちらに話しかけて来たからである。

頭が地面に付くか付かないかという急角度で、宛らリンボーダンスのような体勢で不動を保っていた臨太郎は予備動作も無くバク宙で直立姿勢に戻る。

 

「スゴイ...」

「もう終わったかっての!」

「あ、ああ、終わったところだ」

「そっか。で?どうするんだっけ、これから」

 

トントンと首を傾け肩を叩きながら臨太郎は二人にゆっくりと近づく。

 

「あ、俺を縛り上げるんだっけ?なかなかいい趣味してんな」

「「.........」」

「とにかく、お二人さんの事情はよーく分かったよ。とりあえずは桃昇のために頑張ってくれたってことなんだな、でもさ...」

 

軽妙な口ぶりで語りかける臨太郎だが、その口調には明らかに“怒気”が含まれているのを二人は本能で察知した。

 

「...ちょっと見通し甘すぎるんじゃね?」

 

 

 

臨太郎がゆるりと口角を吊り上げたのを見たのを最後に瞬時に距離を詰められ、一宥は首を手首で押し付けられ柵に背中を乗り出すようにもたれかかる。

一宥は無理矢理外そうとするが固く押し込められそれは適わなかった。

 

「グ...くるし...」

「ちょっと!止めてよ、怪我してるの知ってるでしょ!」

 

それが昨日の光景を思い出させたのかムキになって止めようとする春、それを横目に見て臨太郎はやっと手を緩める。

 

 

「ゴホゴホッ!...ハァハァ」

「藍川君、大丈夫?」

「甘いんだよ!何もかも、見通しが甘けりゃ詰めも甘い!お前ら二人、昨日の一件があれで全部終わったと思ってんのか?」

 

二人を向きなおし声を上げて吼える臨太郎。

 

「一時の感情やその場の正義感で首突っ込むようなマネされるとよ、こっちもいい迷惑なんだよ。昨日のヤツ、あれからすぐに起き上がってお前たちに報復に行くところだったんだぞ!」

「「......!?」」

「...そういえばあの男、どこかのチームの副リーダーだって言ってたな...」

「お!藍川ちゃん、首絞められてたのによく聞いてたじゃねぇか、いい耳してんだな」

 

わざとらしく褒めてくる臨太郎にバツが悪そうに目を逸らす一宥だが、さらに臨太郎は続ける。

 

「そいつがいたチームはUV(ウルトラ・ヴァイオレンス)。ギャグ見てえな名前してっけど2,3年前までは凡矢理で一番勢いがあったチーム、らしい」

「...らしいって...、どういうことだ?」

「俺も今年の四月にここに越してきたからな、顔も見たことの無い奴の不良自慢なんぞ興味もない。だが、知り合いが巻き込まれたとなりゃ話は別だ」

「それで...その人はどうなったの?」

 

恐る恐る春がたずねる。

 

「昨日ずっと見てたからな、アプリでサイレンならして二人が出てったの見計らって俺がひっ捕らえた、そんでもって今度こそ警察に来てもらった」

「あれあなただったの?あんなもの鳴らすから...わ、私の胸が...うう」

「.........」

「? まぁとにかくだ、俺ら三人まだお互いに聞いとかなきゃならない話があるだろうけど、もうこれ以上屋上にはいられねぇな。じきに下校時刻だわ」

 

なぜか顔を真っ赤にして顔を背けあう春と一宥を怪しみつつ、臨太郎は時計を指差す。

 

「藍川ちゃんの手当てもしなきゃならんし場所変えようぜ、このあとまだ時間あるか?」

「駄目なことも無いけど...家に連絡入れとかないと」

「...俺は構わない」

 

二人の同意を聞くと臨太郎は顔を上げパンと手を叩く。

 

「よぅし!決まりだな、実は正門出て左の路地曲がったところにタクシー待たせてあんだ。一緒に出てったら誰かに見つかったときメンドいから先に行って待ってろ」

「わかったよ...」

 

そういって出て行く一宥とそれについていく春だったがここで足を止め...

 

「ちょっと待って!静かにして...」

 

目を閉じ耳を澄ます春の耳に何かが聞こえてくる。

 

「莉緒ちゃんのギターだ...」

 

色々あって疲れた目をしていた春だったが、その音を聞くだけでその瞳は綺麗に透き通った色になっていた。

 

「早く行こ!藍川君♪」

「ちょ、痛ててててて」

 

腕が痛む一宥をお構いなしと言わんばかりに春は引っ張っていく。

 

 

 

二人が階段を下りていったのを見て臨太郎はふっと息を漏らす。

 

「やれやれ、ゲンキンなムスメさんだこった...ゥオッ!」

 

時間差を置いて自分も去ろうとしたとき踏み出そうとしたヒザに違和感を感じそのままふらついたが何とか持ちこたえる。

 

「何だ...今のはまさか...」

 

さっきの藍川のパンチが!?と思い殴られた頬を撫でる臨太郎、自分が臨戦態勢になってなかったとはいえまさか一宥にそこまでのポテンシャルがあったことを見抜けなかったとは。

 

「やっぱ都会はすげえな」

 

どこか時代錯誤な感想をつぶやきその場を後にする臨太郎だった。

 

 

 

 

3人を乗せたタクシーは夕闇の中を走る。中にいる3人の様子は三者三様で後部座席の春は慣れないタクシーにモジモジしており、その隣の一宥は痛む腕を押さえつつ窓の外を眺めてぼーっとしている。そして助手席に座る臨太郎は運転手と世間話しながらそれぞれ車内での時間をつぶしていた。

 

「ねぇ...末松君」

「何だ?」

「これからどこに行くの?」

「言ったろ、手当てしに行くって」

「だからどこに?」

「傷の手当てするのにケーキ屋なんか行ったりしないだろ、専門分野だよ」

「...もしかして病院?」

「あるいはそれに準ずるところ」

「なにそれ」

 

うまくはぐらかす末松に辟易する春だったが、今度は臨太郎が一宥に問いかける。

 

「そういや、時に藍川ちゃんよ」

「...何かな」

「俺お前のことずっと勉強虫だとおもってたんだけど、なかなかどうしていい動きするじゃねぇか」

「...昨日のことか?」

 

臨太郎が引っかかってたのはやはり一宥のことだった。自分も一学期はあまり出席出来ていないことが多かったと言うのもあって、積極的に関わらない人については詳しくは知らなかった。

 

「そう!よく見りゃ身長もそれなりだし肩幅もそこそこある、アスリートよりもファイター向きだ。それに自分よりも大きい相手を躊躇いなく押しのけやがるときたもんだ、そうなると考えられるのは何か格闘技やってたか、あるいは...」

「あるいは?」

「...前科持ちとか?」

「.........」

「.........」

 

臨太郎の冗談ともつかない言葉に車内の沈黙が一層増す。

 

「ジョークだよ、マグレってことも十分あるしな」

 

それに耐えきれなかったのか臨太郎自身が空気を吹き飛ばしてしまった。

 

「もうまもなく目的地付近です」

「.........!」

 

ずっと黙りっぱなしで運転していたタクシー運転手が初めて言葉を発する。春がそれに反応するようにポソポソと一宥に耳打ちをする。

 

「ねぇ藍川君、病院行くみたいだけどお金持ってるの?」

「...それが、...手持ちはあんまり無い...」

「私もそんなに持ってないわよ...」

 

申し訳なく消え入りそうな声で答える一宥と春。だがもともと狭い車内で小さな声で会話しようとしても隠しきれるはずもなく臨太郎(と運転手)には丸聞こえであった。

 

「心配すんな!今日のは俺が払っとく」

「えぇ、太っ腹!なんで?どうして?」

「桃昇の礼だよ、まがりなりにもギター取り返すために頑張ってくれたしな」

「...末松」

 

いまいち把握仕切れていない様子の春と一宥にお構いなしの様子で臨太郎は続ける。

 

「あいつが頑張ってたの俺も知ってたからな、先輩の理不尽な仕打ちにもたった1人で耐えてたのも知ってる」

「末松君...」

「それに確かめるためとはいえ小野寺ちゃんにも酷いこと言っちまったし、藍川ちゃんにも痛い思いさせちまった。今更だけど謝る、悪かった」

「いいよ、莉緒ちゃんももう元気になったみたいだし!ね、藍川君」

「君がいいって言うのなら俺はそれでいい」

 

そうこうしているうちにタクシーは目的地に着いた。降りた先には『萬漢堂』という看板を掲げた不気味な建物があった、電気はついておらず何やら怪しげな雰囲気が漂っている。

 

 




笑点の新しい司会者誰になるんでしょうね

個人的に円楽師匠(6代目)は回答者だから光るキャラだと思っているので無いと思いたいですね。
でも昇太、たい平もまだ若いし木久扇師匠はおバカだし、となると小遊三、好楽のどちらかかなぁ?
...なんかイヤだな

次回もよろしく!
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