ニセコイ Under Tale Color Wars   作:ゆうびん

9 / 9
今回は短めです。

話進めにくい...

でもオリキャラ考えるのって楽し~い


第九話『タナトス』

目的地に到着し、三人がタクシーから降りる頃には日も完全に落ちきり、夜になってしまった。

 

「さ、入ろうか!お二人さん」

「...あ、ああ」

「...う、うん」

 

軽い足取りで二人を先導する臨太郎とはうってかわってあとに続く一宥と春のそれはぎこちなかった。

目指す先にある建物が傍目に見てとても不気味だからである。明るい時間帯ならばまだそれなりに見れたものかもしれないが、夜の闇に包まれさらに建物に電気がともってないのを見ると怪しむのも致し方ないというものだろう。

 

 

「ここ、本当に開いてるの?」

「厳密に言うと閉まってる。でも特別に開けてもらってる」

「...知り合いがやってる店なのか?」

「まぁ、そんなんだ」

 

質問をかいくぐりながら進む臨太郎についていくと入り口に先ほども見た『萬漢堂』という看板が視界に入った。

さらにその店名の上下に『漢方と整体の店』『東洋医学研究所』という文字も見えてきた。

そして入り口のベルを鳴らすと中に明かりが灯り、奥からやってきた足音とともに扉が開かれた。

 

「いらっしゃい、待ってたよ“末松社長”」

「「...社長?」」

 

中から現れた青年、年は二十代後半辺りだろうか?黒のスラックスに白のポロシャツ、胸にはこの店の名前がプリントされておりいかにも整体院と言った風貌だ。

だが、春と一宥の疑問はこの青年ではなく青年が言った言葉にあった。

 

「...末松、今君は社長って言われなかったか?」

「ん~...。ま、まあな...」

 

飄々とした今までの態度から一変してしどろもどろとした対応をする臨太郎。ここで春はあることを思い出した。

 

「あ!そういえば莉緒ちゃんも言ってた。末松君がどこかの会社の社長だって」

「桃昇のヤツ...、ったくしょうがねぇな。あんまり人に言うなって言ったのに」

 

めんどくさそうな顔をする臨太郎に、先ほどの青年が再び声をかける。

 

「ありゃ、言っちゃマズかったかな?」

「まぁいいか、いずれ言わなきゃならない事だし。詳しい話しは入ってからにしよう、狭いけど気にすんなよ」

「...末松君が言うセリフじゃないよね...」

 

春のツッコミも聞く耳持たずと言った感じで臨太郎は家主であろう青年を差し置いて中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「申し遅れたね、僕はここの院長の“国沢 綴”。今日はそちらの頭が白い男の子の手当てだね、こっちに来て貰えるかな?ついでに末松君も」

「...はい」

 

院長の国沢と名乗る青年に連れられ、奥の施術室へと向かう一宥と臨太郎。一人残された春はそれを待合のソファに座りながら無言で見送る。

無人の待合の静けさに何とも言えない居心地の悪さを感じながら辺りをキョロキョロと見渡すが、どうにも落ち着かない。

 

「調度品...っていうのかな?骨董品?壺とか置物とかいっぱいだな...、なんかこれって...」

 

おもむろに立ち上がり側に行って眺める。

 

「藍川君が使ってる部屋と雰囲気が似てるな...、何だろコレ」

 

歩きながら春の目に留まったのは等身大の老婆の人形であった。

 

「良くできてるなー、質感というか雰囲気というか...」

 

目を瞑ったまま佇むそれはまるで本物であるかのように春の目に映った。そう、まるで本物のように...

 

「 い ら っ し ゃ い 」

 

「ぴゃああああああああ!!!!!」

 

皺だらけの顔を動かしその人形、否、生きていた老婆は春に嗄れた声で挨拶をする。

急に目を見開きこちらを向いてきた老婆に春は未だかつて出したことの無いような甲高い悲鳴を上げる。

それを聞きつけて奥から臨太郎が呆れたように戻ってきた。

 

「おい“タナトス”!入ったときそこで突っ立ってたから嫌な予感がしてたんだよ」

「ヒッヒッヒ、初診の患者にはこれをやるのがここのしきたりだぁよ...」

「それやめろって、そんなんだからここ客こないんだろ」

 

全く意に介さないような様子の老婆、通称“タナトス”どう見ても日本人な出で立ちだがなぜそんなヘンな名前をしているのか春は当然疑問に感じる。

 

「びっくりした...!お婆ちゃ...ん?タナトスって何?ここの人?」

「あー、小野寺ちゃん。詳しくは後々ってことでとにかく座ってくれや、話しが進められん」

「う、うん」

「ヒッヒッヒ、そんじゃあ茶ぁでもいれてやろうかぁね」

 

そうしてタナトスも奥へと消えていってしまった。

待合に二人きりとなった春と臨太郎は長机を挟む形でソファに座る。

 

「やっと落ち着いて話が出来るな。とりあえずそっちが知りたい質問言ってきて?バンバン答えていくから」

「えっと...じゃあ昨日の武山って人はなんで莉緒ちゃんのギターを盗んでいったの?」

「依頼されたから、あの男は復讐代行業をしてたんだ」

「復讐って...誰が依頼したの?」

「今年の一学期まで居た軽音楽部の三年、辞めさせられた腹いせにな」

「それも確か...莉緒ちゃんから聞いたよ、折り合い悪かったって。でもなんで知ってるの?」

「そりゃそうだよ、なぜなら俺が辞めさせたんだから」

「えぇ!?」

「ちょ、落ち付けって」

 

春の驚いた声は閑散とした待合にとても響いた。

そこにお盆に湯飲みと急須を乗せたタナトスがやってきた。

そのままトプトプと湯飲みに茶を注ぐ。もうもうと湯気が立ち上り、芳しい匂いが春達の鼻をくすぐる。

 

「気ぃつけて飲めぇ~ヒッヒッヒ」

「あ、ありがとうございます...」

「どうもッス」

 

藁納豆のような顔をニヤニヤさせながら茶を差し出すタナトス。春と臨太郎は喉を落ち着かせようと湯飲みを口元へ運ぶ...が

 

「ぷわっ! なにこれ!にっがーい」

「ぐぉ!ヒデェ味だ...何入ってるんだこれ...」

 

二人は口に流れてきた茶の味に顔をゆがませる。最低限茶の味は保っているだろうが、いうなればそれはお茶にこの世のありとあらゆる残酷さを織り交ぜ、何年間も暗く風当たりの悪い場所に保管していたかのような口当たりが悪ければ喉ごしも後味も悪い、そんな飲み物、否、飲み物のような何かだ。

 

「ヒィ~ッヒッヒッヒ、言ぅたじゃろう“気ぃつけて”ってなぁ」

「なんなんですかこの...お...茶?」

 

これがお茶であるという事を認識するのも躊躇っているのか春はこれをまるで未知のものであるかのようにタナトスに尋ねる。

 

「タナトス特製薬膳茶じゃ、眠気も吹き飛んだじゃろう」

「眠気が吹き飛ぶどころか何話してたかさえも忘れちまったよ」

「もともと眠くもなかったし...」

「ヒッヒッヒ、あとはごゆっくりと...」

 

二人の悶絶具合をしばらく見てタナトスはまた奥へと戻っていってしまった。

 

「何だったの?今の」

「さぁ?」

「「.........」」

「話しの続きだよ!早く続き!」

「お、おう...、桃昇から聞いてなかったか?俺が色んな部活作る手伝いしてるって」

「そういや聞いたかも...」

 

人差し指で顎をつくように考えるポーズをとる春。確かに聞いた、クラスメイトの維志もそれで世話になったということも思い出した。

 

「まぁその一環でな、たまたま軽音部がガラが悪いってウワサ聞いたんで覗いてみたんだ、そしたら中で上級生がバカ騒ぎしててな、その中に桃昇が居たってワケ」

「莉緒ちゃん...」

「見てるこっちの心が痛くなるほど健気で前向きで、ホントに自分の世界に浸ってるってああいう事なんだなって思ったよ。だからそれを邪魔するヤツが許せなかったんだ」

「そっか...」

「ま、ヒマがあったら桃昇に聞いてみなよ。“なにをそんなことを?”って顔して聞いてくると思うぜ」

「...うん」

 

そこまで言って臨太郎は湯飲みに残った薬膳茶を一気に飲み干した。

当然渋い顔をしたがすぐに表情を引き締める。

 

「だが、俺が実力で追い出したおかげで桃昇が逆恨みされることになっちまって。それで今回の学校侵入、ギター強盗事件が起きちまったんだ」

「なにそれ...どういうこと?」

「いや、それだけじゃない。もっとヤバイことが隠されていたんだ」

 

臨太郎に高く評価される莉緒に頬を綻ばせていた春だったが、臨太郎の苦々しささえ感じさせる表情に自身も気と表情を切り替える。

 

「これを見てくれ」

 

そういって臨太郎が取り出した書類を受け取る春。中身はとあるホームページの中身を拡大コピーしたものであった。

それをペラペラとめくっていく春、徐々に表情を強張らせていく。

 

「ちょ、これって...、グス...こんなことが...あっていいの?」

 

 

春は目に涙を溜めて、口元を手で押さえながら嗚咽を漏らすのだった。




オリキャラプチ紹介

国沢 綴...萬漢堂の院長で三人いるスタッフの一人。読みは“くにさわ てつ”。

タナトス...三人いるスタッフの一人。タナトスとはギリシャ神話の死を司る神。なぜそんな名前なのかは誰も知らない。

???...三人いるスタッフの最後の1人。未登場。


次回もお楽しみに!!
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