僕の平凡で安全な日々。
―村人A―
言うだけなら簡単な日々だった。
なんら珍しくもない人生。特別変化のない日々。まさに普通という言葉で全て説明しきれてしまう。そんなありふりた生涯を送ってきた。
「生まれて来てごめんなさい」
努力して、迷って、間違えて、挫折して、付き付けられた結果に絶望して。それから色々な事が面倒になって。その色々な事を考えるのも面倒になって。考える事をやめて、自分の意見とか考えとか主義とか。持つのもなんだか馬鹿らしくなって、そして僕は周囲にただ流されるだけの村人Aのような存在になった。同じ事をするだけの、ただ繰り返すだけのどこにでも居るようなそんな存在に。その方が色々と楽でいい。ただ生きているだけの日々。平和で安全な日々。つまらない世界の生き方。
「それでも安全だ」
別に現実というヤツを目の当たりにして自暴自棄になった訳ではない。ただ、この世界にとって僕という固体の必要性がまるで感じなくなってしまった事に、なんだか妙に気が抜けてしまっただけなのだ。考え過ぎというヤツなのかもしれない。もう少し肩の力を抜けとか。そんな所だろうか。ただ…これ以上何かをやっても結局は意味のないもの。ただの”結果”として残るだけで、現状としては”何も変わらない”のではないのだろうかと。そこまで考えてそんな自分が少し嫌になった。
「世界の中心で愛を叫ぼう」
もしも最初から期待なんてしていなければこんなにも落胆することもなかったのではないだろうか。夢を見てしまうから、望んでしまったからその先の結果に納得がいかなくて、こうも憂鬱な気分になるのだ。あの頃の僕はどうしようもなく考えなしで。バカ正直に自身の掲げた目標に向かって。例え失敗したとしても”次”があるなんて信じていた。『どんなに遠回りしたとしてもその目標にまっすぐ歩いていけばいつか必ず叶う』だなんて。
「そんな時期が僕にもありました」
あの頃の僕は色んな事を知って、だからか何でも出来るような気になっていた。勉強もそこそこ出来て。格好付けでスポーツとか、柔道なんか通ってみたり。クラスメイトの相談を聞いてあげたり。教師の愚痴を聞いたり。家で母の手伝ったりと。とにかくがむしゃらに何かに打ち込んでいた。
「今となっては黒歴史遺産の一つだけど」
そこまでして何がしたかったのかというと。たぶんヒーローになりたかったんだと思う。誰かがピンチの時に駆けつけられるようなヒーローのように。実際は何も出来ないただの一般人。所詮はその程度で。夢の見過ぎた子供の追い討ちが来た。
努力は必ず報われる。頑張ればいつか叶う。そんな途方もない事を馬鹿みたいに信じていた。上ばかり見て転がっている石に真っ先に躓いたバカ。
「全く。世知辛い世の中だよ」
―――世界はいつでも平等だった。
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