真紅の海鳥   作:七香

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最初に注意書きを。
艦隊これくしょん(艦これ)のキャラをお借りしました。
世界観、設定はほぼオリジナルですしキャラクターもオリジナルの物が数多く出ます。
それでも良いというの方はどうぞお進み下さい。


0話 着任

 西暦2130年、戦争はまだ地球上(そこ)にあった。国家の為、家族の為、自分の為、幾億万の理由の下に未だ人類は戦い続けていた。嘗て何から人は闘争を始めたのだろうか、今やそれを知るものは無く、人殺しに意味を見出した人類は過ちを続けていた。

 西暦2089年、旧大戦の敗戦国であるドイツにて新たなるエネルギー源であるゲルト鉱石が発見された。新たな資源の開発と発展は、人々に力と富を与え、世界を喜びで満たしたあとに混沌へと突き落とすこととなる。

 エネルギー大国として名を馳せた中東の国々や巨大な北のロシアは急速に衰えていく中、中国において大規模なゲルト鉱が発見され、爆発的な成長が終わり低迷していた中国経済は大きく飛躍した。世界最高の軍事力を誇っていたアメリカは2040年代の戦争が仇となりヨーロッパ諸国との関係性を悪化させた結果、エネルギー源を中国に依存せざるを得ない状況に陥り、嘗ての影響力を失っていた。中国の勢力は嘗てない程の大きさとなり、世界の中で群を抜いた一つの国家となる。

 2090〜2120年の30年の間、着々と国力を高めていった中国は、2126年、遂に侵略戦争を開始する。2128年には朝鮮半島と南モンゴルを占領し自国の領土とし、東南アジア、南アジア、西アジアへの勢力拡大を図る。2130年、印中戦争に勝利した中国はインドの北半分を占領、西アジアへ進出し更には東南アジア諸国連合との戦争においても優位を保っていた。

 これに対して内密に準備を進めていたロシア、ドイツ、東ヨーロッパ諸国、東南アジア諸国、インド、そして日本は対中同盟を結び、対中戦争の開戦を宣言。またイギリス、フランス、イタリア等西ヨーロッパ諸国は表向きは中立としたものの、ドイツを通じ対中同盟の支援を決定。ここにユーラシア大陸外縁国の巨大なる包囲網が完成した。

 2132年、南下するロシアと北上する中国は満を持して接触。ロシアは正式に戦線布告しここに露中戦争が開戦。西ヨーロッパ諸国は西ヨーロッパ諸国連合となりロシアと共に対中国戦線を開く。またインドでも侵略を免れた南インドは抵抗を続け、占領下の北インドでも対中国のゲリラ戦が行われた。多方からの同時攻撃に対し中国は日本をアメリカとの中継点とするべく交渉を持ちかけるが、日本は拒否。アメリカは中国に協力する姿勢をとり、ハワイ諸島及びアラスカに陣をとり、太平洋を隔て日本やロシアを牽制した。

 2134年、これまで積極的武力行使を控えていた日本であったが、東南アジア諸国連合と協力、また占領下の朝鮮半島の住民と結託。中国に戦線布告し、第二次日中戦争の開戦を宣言。同年の内に朝鮮半島上陸作戦を展開し、連戦連勝に酔っていた中国に大きな衝撃を与えた。

 しかし朝鮮半島上陸作戦の成功により、中国は拡大政策を一時中断し、国境の守りに力を入れる。朝鮮半島から上陸した日本軍を抑え、南下するロシアを迎え撃つ。インドの反乱分子を一掃し、西ヨーロッパ諸国連合をイランの国境付近で撃退すると、連合軍の足並みは乱れ中国の国政は安定軌道に乗ったかに思われた。北、西、南の連合軍を一時退けた中国は、日本に対する戦いに力を入れ始めた。

 朝鮮半島を足掛かりにして中国本土への進出を計った日本だったが、戦力を集中させた中国に対し苦戦を強いられる結果となる。更には太平洋を渡った米海軍が日本に攻撃を仕掛け、日本は東西両側からの圧力により苦戦を強いられ、中国進出軍は朝鮮半島への撤退を始めた。

 朝鮮・中国間の戦いにおいて、日本軍は新兵器を投入した。2100年代初頭に開発された汎用駆動工作重機WG(ウォーク・ギア) を戦闘用に改造、更にWGに搭載されていた脳波出力操縦補助システム、BOSを戦闘に適した段階にまで発展、脳波制御戦闘補助システム、BWSを実戦配備段階まで作り上げたことにより、汎用機動装甲AG(アサルト・ギア)を完成させた。BWSの適応者が必要だった事と、量産の為の製造ラインが未完成だった事で朝鮮・中国間の戦闘では少数しか稼働出来なかったが、これからの戦果に期待できる性能だったと当時の将校は話している。

 AGという切り札は切ったものの、日本は中国の物量とアメリカの強襲作戦に押され朝鮮半島から撤退せざるを得なくなった。アメリカ軍はパプアニューギニアに駐屯し、日本と東南アジア諸国を睨み続けた。東西を強力な敵に囲まれた日本は、ロシアからのパイプラインを頼りに海上防衛ラインを築き、防空レーダー網「ヤタノカガミ」を張り巡らせて本土籠城を決断。西暦2138年、戦争は一時膠着状態となった。

 

 

 

 西暦2138年5月某日、1人の軍人は輸送ヘリの窓から空を見ていた。中国山地の山々は雲に隠れ、鬱屈とした雰囲気を醸し出している。朝鮮半島からの撤退撤退作戦に参加、日本の切り札であるAGを駆り、華々しいとは言えないまでも、ある程度の戦果を上げた彼を待っていたのは海上防衛ラインの一角を担う隠岐島基地配属の命であった。詳しい事は配属後に追って通達するとの上官の言葉に、文句を言う間も無くヘリに押し込まれた、というのが彼の率直な感想である。

「隠岐島で何をやるってのか…水上仕様のAGのテストか?それとも唯の下働きか?全く。俺はAG(アンナモノ)に乗るために空軍に入ったんじゃない。俺はただ…ただ飛びたかっただけだったのに。」

 今年で28歳になる彼、駒藤中尉は無精髭の跡を撫でながら憮然とした表情で隠岐島に降りようとしていた。

 

 

 

「隠岐島基地にようこそ、駒藤中尉。残念ながらゆっくりしている時間は無いのでね。手っ取り早くやらせていただくよ。」

 偉い人と会うのはどうにも苦手だ、と脳内に反芻しながら駒藤は先程までの渋面に無理矢理凛々しさを貼り付けて立っていた。まぁかけたまえ、と促されるままに着席する。

「私が基地司令の林田だ、宜しく頼む。到着早々で申し訳ないのだが貴官は自らの任務をまだ知らない、そうだな?」

「間違いありません。」

「宜しい、では簡潔に説明する。が、その前に二つ言っておこう。まず、これから聞く事は余り周囲に漏らさぬように。そしてもう一つ、君はこれを聞いた以上後には引けない。軍部の奥に足を踏み込む事になるからな。尤も君に選択肢は存在しないがな。」

 苦笑を挟んだ林田だが、その眼に笑みの色はない。そして聞いた方の駒藤は、その物言いに恐ろしい程の重圧を感じていた。しかし基地司令殿の言う通り、選択肢が無いことは理解していた。駒藤にはただ直視を続けることしか出来なかった。

「AGの存在はこの戦争を変えると思われていた。」

 林田基地司令の呟きは恐らく日本軍の上の者たち全ての共通認識であったのだろう。

「圧倒的な戦力というわけではないが、20年以上もかかって作り上げられた物だ。ある程度の戦果を上げてもらわねば困るというのが本音だ。事実、朝鮮半島撤退作戦での特殊機甲部隊の活躍は目覚しかったと聞いた。彼等がいなければ被害は3倍以上だったと言う者もいる程にな。貴官もあの部隊にいたのだろう?あの戦いは誇っていい。それだけの力をAGは、貴官らは示してくれた。しかしだな…」

「戦犯、の事ですか。」

 基地司令の話を遮り駒藤は言った。背後のドアに立つ兵士から来る目線が痛かったが、そんな事を考える余裕は無かった。

「戦犯、か。戦争が終わった訳でもないのに、戦犯とはな。」

「呼称が問題であることは認めます。しかし下士官達の間では浸透しているのもまた事実です。」

「ほぅ…まぁいい。()とは共に戦ったのか?そのようだな、目が語っている。彼は勇敢な戦士であり、決して戦犯などと言われて良い人間ではないと。」

「その通りです。彼はAG乗りの中で最も勇敢に戦い、戦果を上げました。彼に救われた味方兵士も数多くいます。確かに…」

「もういい。」

 林田は駒藤の言葉を遮り、重い空気が両者の間を流れた。背後の兵士の眼は既に感じていなかった。

「彼について議論する時間はない。そして重要なのは彼ではなく、彼のAGが敵の手に渡ったということだ、違うか。」

「…仰る通りです。」

「彼のAGが鹵獲された。つまり敵は今後…AGを使ってくると考えた方がいい。」

 敵がAGを使う、つまりAG同士の戦闘が起こり得るということだ。地上ならば戦車や砲台の力を借りれるが、今の日本は周囲の海を守る事が戦いの主である。機動力でAGに対して大きく劣る戦艦でAGの相手をするのは無謀であることは自明の理である以上、AG同士の海戦が起こることは想像に難くない。

「そこで兵器開発部は2つの対策を講じている。」

「1つは単純だ、AGの性能を上げる。勿論海戦に適したチューンや装備も必要だろう。海戦専用のAGが出来る可能性もある。」

 確かに現段階のAGは陸上運用を主として設計されている。フロートを装備することにより海戦も不可能では無かったにしろ、性能を最大限引き出すのは困難であった。

「もう1つは、適応者を増やし、強力にする事だ。」

「増やし…強力に…?」

「簡潔に言おう、AG戦闘用アンドロイドを作っている。」

「アンドロイド…ですか。」

 過去の戦争ではアンドロイドの兵士が大量に使われた事もあった。しかしある国家が暴走したアンドロイドの兵士によって崩壊した事件があり、それから軍事用のアンドロイドは殆ど使われなくなっていた。

「抵抗があるのは無理もない。だがこれは事実なのだ。そして貴官には、4人のAG戦闘用アンドロイドの教育及び指揮を一任する。」

「アンドロイドの教育…ですか。」

「まだ意味が飲み込めていないようだな。仕方ない。詳しい事と彼女(・・)達のプロフィールはこちらのメモリに纏めてある。さぁ部屋に案内してもらうがいい、話が長くなり過ぎた。」

 有無を言わせない林田の口調を感じて、敬礼し、退出した。時間はいくらあっても足りない。水上戦闘までは予想していたものの、アンドロイドの訓練や指揮など想像もしていなかった。自室に案内されてからも、彼の頭は混乱したままだった。

 

 

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