てきとうです。てきとう(下姉様並感)
前略、
ぐだ子さんが何やら曰く有りげなペンダントを引き当てました。
「……先輩、先輩? し、しんでる……」
「私が言うのも何だが、星3概念礼装は何度引いても心胆寒からしめるものがあるからね……龍脈ならまだ良かったのだろうが……」
「ペンダント……アゾット剣……なけなしの十連からのたれ(星4最低保証)……遠坂絶対許さないよ……桜は尻がいいから許す……」
「ぐだ子さんが謎のうわ言を……よくわからないけど、召喚というのは大変なんだね……」
真っ白に燃え尽きたぐだ子さんと、彼女を復活させようと奮闘するマシュさんを横目に、ダ・ヴィンチちゃんと再召喚の準備を進める。
「今見てもらったのは比較的アレな結果だが。要するに、サーヴァントが召喚されるとは限らないということは覚えておいてほしいな」
「あのペンダントは一体何なんです?」
「あれかい? 遠坂家……この守護英霊召喚システム・フェイトの元になった冬木聖杯に関わる三つの家の一つだけど、そこに伝わるものらしいね」
「……? それが、なぜここに?」
「あれは実物そのものじゃないんだ。いつかどこかで聖杯に関わった人、物、あるいは出来事や事象。そういうものもシステム・フェイトは概念として抽出し、拾い上げる。想像として強固な概念であれば、それを纏って概念礼装にすることも可能だよ」
「なるほど。マ◯ック:ザ・ギャザ◯ングの呪文みたいな感じですね!」
「…………君のセンスは、意外とぐだ子君似かもしれないね?」
さあ、準備ができた。
そうダ・ヴィンチちゃんが告げ、僕はシステム・フェイトの前に進み出る。
と、ぐだ子さんが近寄ってきた。いつの間にか復活していたようだ。
「ぐだ子さん、とても参考になったよ。概念礼装なんてものも召喚できるんだね。まあ、もちろん僕は英霊召喚を目指すけど……」
「……ねぇ」
不意に、ぐだ子さんが僕の耳元に顔を近づけた。ふわりといい匂いがして、柄にもなくドキドキしてしまう僕。そして彼女は、
「金鯖ァ引いたら…………す」
「え?」
「せ、先輩! 邪魔になりますから! ね、一緒にこっちで見学しましょう、ね!」
マシュさんがぐだ子さんを引きずっていく。鯖がどうとか聞こえたけど、何と言っていたのか上手く聞き取れなかった。実に残念だ。
――この肉体は、ベレロポンとして生きていた頃より随分鈍感で、時々とてももどかしくなる。
でも、それが普通の人間として生きるということなのかもしれない。
「では――」
今度こそ、システム・フェイトに聖晶石を投入する。
願うのは英霊の召喚。「座」に至りし、輝ける霊長の綺羅星。
――人を救うのは神ではない。
地上にはびこる不義不正は数あれど、悪逆災禍は絶えるを知らねど、それでも人だけが人を救いうる。
この身は神に拒まれ地に落ちた愚者。だが、僕はそう信じ続けたからこそ、ここにいる。
騎英の英雄ベレロポンとは、矛盾した英雄だ。
神の子に生まれ、神の庇護を受けながら、しかし神に絶望し、その存在を疑い試し、やがて狂気に侵され果てた。
運命を恨み、世界を呪いながらの無様な死だ。……だが、人の心と愛に絶望だけはしなかった。
何度でも言おう。人を救うのは、人だ。
神は在る。だが、救済を神に縋ってはならない。
神は我らを愛するが、神は我らに助力し給うが、救済と幸福は、ただ人の内なる
だから、僕は一人の人間として、人を逸脱した英雄達を使役してでも人の未来を救済しよう。
召喚装置に光が満ちる。エーテルが渦巻き形を為さんとする。そこに立つのはいかなる英雄か。
(我が父、大地を揺するポセイドン、時を越え再び戦いに挑む息子の勇姿を御照覧あれ――)
カッ!
先ほどの焼き直しめいて、光の奔流が部屋を満たす。
だが、ぐだ子さんの時よりずっとそれは大きく――
そして、光が収束し――
「私を召喚するとは物好きな人ですね。生贄がお望みでしたら……おや、懐かしい気配ですね」
「え? ……ひょっとして、メドゥーサ……さん?」
僕の前に立っていたのは、奇妙なバイザーで両眼を覆った、長髪長身の
……あれ。英雄って、なんだっけ?
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ダ・ヴィンチちゃんは召喚の後始末があるというので、ひとまず邪魔にならないよう僕の部屋へ移動する。メドゥーサ(さん付けで呼んだところ、「サーヴァントに敬称など不要です」と断られた)が車椅子を押してくれたので、行きに比べてだいぶ楽な道のりだった。
「間取りは同じなのになんか広い気がするなー」
後ろに付いて来たぐだ子さんがそんなことを言う。
「荷物が少ないからね。本棚の一つでも置けばいいのかもしれないけど」
「なるほどなー」
「……忘れてた。お茶菓子もないや」
「では、わたしが適当に見繕ってきますね」
「マシュ、私お団子食べたい」
「お団子ですか? 厨房に行けばあるのでしょうか……」
マシュさんが首をひねりながら部屋を出て行った。これで部屋には、男一人の女二人。そしてどちらも顔見知り以上の仲ではない。
この現状、ひとことで言うと……気まずい。
(何てことだ、僕が行くべきだった!)
「……マスター。気持ちはわかりますが、客人を置いて部屋の主がいなくなるというのは些か問題があるかと」
「こ、心を読まれた!?」
「ああ、そうではなく……マスターがあまりに気まずそうな顔をしていたので、つい」
「よかった、契約するとテレパシー機能まで付くのかと思ったよ」
「いえ、それは付きますが」
「!?」
「失礼、正確には念話も可能だということです。私は魔術の心得もありますので」
「あ、契約のパスが通ると相手の過去を夢で見ることがあるんだって。つまりちっちゃいマシュのあんな姿やこんな姿も見れるってことだよね! 楽しみだなー」
「へえ、過去? 過去かー」
意外と会話が進んで、内心胸をなでおろす。それにしても、僕の過去って今生の過去だろうか。それともベレロポン?
「マスター、私の過去を見たいのですか?」
「え、うーん、どうだろう……見たいような見たくないような」
バイザー越しでいまいち表情から真意が読めないけど、そもそもメドゥーサって
ちらりとメドゥーサを見やる。そもそも、どうしてあんなに露出度の高い服なのだろう。
僕の記憶の中のギリシャ人達はもっとこう何というか奥ゆかしいというか、あーでも昔ステネボイアが僕を誘惑してきた時はあのぐらい露出した服着てたかもしれない……えっあれ愛人装備なのか!?
「マスターは随分面白い表情をするのですね。英雄らしからぬというか」
「英雄じゃないからね」
「おや。てっきり知人の息子の英雄殿かと思っていましたが、人違いでしたか」
「………………間違っては、いないけど。でも、その辺区別してるんだなあってスタンスは今の返事で察して欲しかったな!」
「気の利かない女ですから」
実にそっけない返事である。
というか。
フツーに考えたらその
魂が同じでも見た目は若いし、その辺なんか事情があるのかな~って察する感じでスルーしてくれてもいいじゃん!僕だって「そのバイザーって
あと
「……つくづく飽きない顔ですね。そしてこのバイザーはご想像通り、例のアレ対策ですよ」
「また心を読んだ!」
「ふふふ……気のせいです」
「嘘だ!」
「ヒッポノオス……それ、
「ぐだ子さん、時々見えちゃいけないもの見えてるようなこと言うよね……」
まるで先でも見てきたような。いや、先など既に焼失したのだが。
とはいえ
「ところで、マシュ遅いなー?」
「ぐだ子さん、お団子はすぐには用意できないんじゃないかな」
「その辺、生真面目というか融通のきかなそうな子でしたね。個人的にはむしろ好みですが」
「マシュいいよね……」
「いいですね……」
何やら通じあっている女性二人を胡乱な目で見る僕。
そういえば父上も結構な頑固者だったなあ。いや、そういう意味で言ってるんじゃないと思うけど。たぶん。
「……生き様が不器用な者というのは、共感しあうのですよ」
「本当!? 私もマシュと共感したい!」
「貴女はその……器用不器用とはちょっと違う次元にいるようですが」
昔、貴女みたいな人たちと(基本全裸で)ぐだぐだトークするお仕事したことありますよ、などとのたまうメドゥーサ。……英霊って、意外と扱い雑なのか?
と、扉がノックされた。
「ヒッポノオスさん、マシュです。開けていただけますか?」
「はいはい」
扉を開けると、マシュさんはトレイで両手が一杯のようだった。トレイの上にはお団子が山積みになった大皿、そして全員分のお茶。
「ありがとうマシュさん。意外と早かったですね」
「はい。厨房の方が手伝ってくださって」
「このお団子もその人が? さすがカルデア、サポートスタッフも優秀ですね」
「ええ。ただちょっと見たことが無い方だったような……」
「新人さん?」
「新人さんだったのでしょうか……でも、熟練の主夫を思わせるあの風格は……」
もにょもにょ呟くマシュさんを促してテーブルにつく。
「いっただっきまーすもぐもぐおいしい!!!」
「健啖家ですね、グダコ。知人を彷彿させます」
「あー、古代ギリシャの人は皆よく食べたよね。特に戦士はさ」
僕も含めて。昔はこんな大皿余裕だったけど、今は無理かな。前ほど動けないから、摂取カロリーも気を使わなきゃだし。
「いえ、そうではなく。というか、生前に知り合った戦士たちは基本飲み食いできる状態ではありませんでしたし……」
(その飲み食いできなくされた戦士の中には、僕の知り合いもいるんだろうなあ……)
「……まあ、こうしてサーヴァントとして呼び出されれば、出先で知人も増えるというものです」
「へー、じゃあギリシャ神話以外の英雄も面識があるってこと?」
「ええ。もっとも、私が聖杯に呼ばれたのは冬木で行われた第五次聖杯戦争くらいでしたが」
「「!」」
「あっ」
一瞬固まるぐだ子さんとマシュさん。最近、2004年冬木にレイシフトしたばかりである。
彼女たちの報告によれば、そこにはカルデア同様ライダーとして呼ばれたメドゥーサがいたはずだが……
「先輩! このお団子美味しいですね!」
「レアお団子だ! 今度食べるときは独り占めしようっと」
「先輩最低です」
団子ネタを展開しつつ全力で話をそらすぐだ子さん主従。いったいなにがあったのか。
「グダコ、マシュ。私は貴女方に存念はありませんよ? あの炎上した冬木で貴女たちに出会った時点で、私に私自身の意志はほぼ残っていませんでしたし」
「ああ、シャドウサーヴァントってやつだね。Dr.ロマンに聞いたよ」
「そう名付けたのですね。確かにあれは、サーヴァントの影のような存在です。スキルや戦闘方法こそ同じですが、宝具の真名開放はできませんし」
「……ん?」
真名開放できない? それはつまり、宝具が使えないということで――――
「役に立たないアドバイスだったよ」
「せ、先輩……もう少しオブラートに包んで……」
「すまない……」
ペガサスには気をつけろとか、そもそも必要なかった!
「まあ、備えあれば憂いなしといいますから。実のある采配を期待しますよ、マスター」
「含みのある励ましをどうもありがとう!」
どうにも態度の端々にうっすらトゲを感じさせるメドゥーサさんである。
……彼女からすれば、僕=愛人が他所で作った子供なので、ある意味当然かもしれないが。
「絆レベル0だからね、仕方ないね」
「そういうぐだ子さんはマシュさんと仲いいよね……」
「あ、それは違うよ。マシュって絆レベル全然上がらないんだよね。なんだか心のカベ感じちゃうよね? こんなに仲良くしてるのにマシュは何とも思ってないんだよ、こんなに……こんなに!」
ねぇねぇ私とひとつにならない? とマシュさんに迫るぐだ子さん。心の壁が砕け散りそうな扇情的光景に耐え切れず目を逸らした先、
「……ぺろり」
舌なめずりする蛇がいた! コワイ!
「えっ、ていうかそういう趣味なの!? 父上は!?」
「ふふ。どちらもイケルのですよ、マスター」
メドゥーサさん、ここで今日一番の笑顔を見せてくれました……
とりあえずキリのいいところまで。
次回からは更新間隔が長くなります。書き溜めが捗らない……
そして話が進まない! 早くオルレアンに行きたいな!(むり)
ヒッポノオスは神様絡みになるとこじらせ気味ですが、詳しくはもう少し先の話で。
以下メドゥーサさんステータス。基本は第五次冬木と同じで、スキルランクに変動あり。
クラス:ライダー
真名:メドゥーサ
マスター:ヒッポノオス
出典:ギリシャ神話
地域:ギリシャ、形のない島
属性:混沌・善
性別:女性
《ステータス》
筋力:B
耐久:D
敏捷:A
魔力:B
幸運:E
宝具:A+
《保有スキル》
魔眼:A-
怪力:C
《クラススキル》
対魔力:B
騎乗:A+
単独行動:C
神性:C
ポセイドンの子ベレロポンの魂を持つヒッポノオスによって召喚されたため、ギリシャ神話統合以前の地方神話において信仰された「主神ポセイドンの妻神メドゥーサ」、あるいはギリシャ神話における「海神ポセイドンの愛人メドゥーサ」としての側面が強めに出ている。
具体的には神性が上昇、魔眼および怪力が低下。好きなものにポセイドン追加。身長に上方修正。
冬木の記憶はわりと覚えている方。