Fate/Grand Order 騎英の絆   作:乃伊

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どうにもシリアスから抜け切れない大人たち……を、ギャグ展開にぶち込んでいく子どもたち。


第3話 お見舞いに行こう!

「……そう。ヒッポノオスの召喚は上手く行ったのね」

「うん。メドゥーサ……正当な英雄ではないけど、第五次冬木でも呼ばれていたし実力にはお墨付きのサーヴァントさ」

「システム・フェイトは冬木聖杯と違って、設計の時点で反英雄も召喚可能よ。だからそれ自体は驚くほどのことじゃないけれど……」

 

 なぜ、数ある候補の中からそのサーヴァントが召喚されたのかしらね。

 そう呟いて、オルガマリーは寝台からロマニを見やる。

 

「ははは。何でだろうね? あはははは」

 

 分かりやすすぎる程に挙動不審だ。なにか隠している。

 オルガマリーの内に、じわり、とこみ上げるものがある。

 これまでもこんな風に、色々なことを隠されてきたのだろうか。甘い言葉だけが自分に届いていたのだろうか。

 

「……ロマニ。あなたも、わたしを軽んじるのね」

「ッ違う!」

 

 弾かれたように、ロマニが振り返った。

 

「ボクたちはあのレフ・ライノールとは違う! 今回のこともいずれ伝えるつもりだった! ただ、あなたは九死に一生を得たばかりだし、こちらとしても情報が足りていないし……」

「……もういいわ」

「所長!!」

「アニムスフィア当主でも駄目。カルデア所長でも駄目。……あははっ、いまや人類はうちの職員20人くらいしか生き残っていないのに、馬鹿みたいだわ。とんだ張子の虎よね」

「……」

「わたしを認めなかった連中も、わたしを嫌っていた連中も――わたしが嫌いだった連中は、みんなみんな死に絶えた。よくよく考えれば小気味良い話だわ」

「所長、それ以上は」

「オルガマリーよ、ただの。今更肩書なんて。……どうせもう半年もすればここも全て滅ぶんでしょう? 身分も地位ももう意味が無いんだし、せいぜい自由にやらせてもらうわ。ああ心配しないで、仕事はします、もう何の意味があるのか知らないけど」

「……」

「寝ているのももう沢山。ヒッポノオスは居室かしら? 直接聞くことにするわ」

「……居室にいるはずだ。ただ、何かあったら呼んでほしい。すぐ行くから」

 

 ロマニの返事を聞いたオルガマリーは無言で立ち上がり、病衣のまま部屋を出ていこうとする。

 ドアを引き開けようとした、そのとき。

 

 

バァン!!!

 

 ものすごい勢いでドアが開き、朱と白色の弾丸がオルガマリーの土手っ腹にズドンと突っ込んだ。

 

「ンキャー!!」

 

 ふっとばされるオルガマリー。それに絡みついて一緒にごろごろする朱と白色の弾丸(ぐだ子)

 

「所長!! また会えてすごくうれしい!!」

「え!? な、なに? ぐだ子、どうしてここに!?」

「所長、お元気そうでよかったです」

 

 混乱するオルガマリーをいいことに全力でスキンシップを取りに行くぐだ子。

 そしてそれをサラッと流して後ろから登場するもうひとりのマスター・ヒッポノオス。

 

(ヤバイ、ヤバイ級の大物だよこの子たち!)

 

 ロマニは戦慄しつつ、理性を保っていそうな方(ヒッポノオス)に問いかける。

 

「やあ、ヒッポノオス君。召喚が上手く行ったようで何よりだ。それで、皆そろってどうしたんだい?」

 

 見覚えのない美女――サーヴァントだろう――に車椅子を押されたまま、ヒッポノオスはにっこりと微笑み、

 

「所長のお見舞いに伺いました。みんな心配していたんですよ」

 

 そう告げた。

 

 

----------------

 

 

 やや遡って。

 

「ふい~お腹いっぱいだ~」

「美味しいお団子でしたね、先輩」

「このお茶もすごく良いな……ジャパニーズ・グリーンティーはお団子によく合うんだね」

「ええ。懐かしい味です」

 

 コクコクと頷きながらお茶を啜るメドゥーサ。なぜか、やけに様になっている。

 

「って、そうか。メドゥーサは日本の冬木で暮らしていたことがあるんだよね」

「ええ。当時はこういった和菓子をよく食べたものです」

「いいなあ~」

「そういうぐだ子さんも、日本風の名前だよね。生まれは日本なの?」

「どうだっけ?」

 

 うろんな返事を発しながら床に寝そべってごろんごろんするぐだ子さん。そのたびに揺れたり潰れたりする胸部のマシュマロが実に目に毒だ。

 

「いっぱい食べたら眠くなっちゃったなあ……」

「お部屋に戻って仮眠を取りますか? 先輩は今日このあと特に予定がありませんが」

「うぅ、まだ寝れない……今寝たら溢れちゃうから……エルピーとかスタミナとか溢れちゃう……」

「スタミナ?」

「元気が有り余っているのですね、グダコは」

「それはすごいな、僕はもう召喚疲れでヘロヘロだよ」

「マシュ……スマホ取って……」

「マスター、健康管理も貴方の仕事の内ですよ。自らを健康に保ち、サーヴァントの状態を万全に保つ。それがデキるマスターなのだそうです」シャンシャン

「むむむ。そう言うところを見るに、君の前のマスターは相当優秀な人だったみたいだね」シャンシャン

「? ええ。確かに私の前のマスターは良き魔術師でした。が、先ほどの台詞は私のマスターのものではありませんよ?」シャンシャン

「そうなの? じゃあ誰が?」シャンシャン

「――――居候です」シャンシャン

「居候!?」シャンシャン

 

 すごいな冬木の居候は!? 聖杯戦争の助言も出来るなら、ぜひカルデアにも居候してほしい。

 

「それはどうでしょうか。彼女はあまり冬木を離れたがりませんから…………まあ、当てもなく仕事を探す日々よりはこちらの方がマシでしょうが(小声)」シャンシャン

「仕事を探す? マスターとして以外に、ってこと?」シャンシャン

「冬木ではマスターがサーヴァントを食わせなければいけませんでしたから。お金のため、そして一社会人としての尊厳のため、マスターは働くべきだと、彼女はそう主張していたのです」シャンシャン

「居候が」シャンシャン

「居候が、です」シャンシャン

「……」シャンシャンシャンシャン

「……」シャンシャンシャンシャンシャンシャンシャンシャン

 

 返答に窮した僕の耳に沈黙が痛い! でもさっきからぐだ子さんがやってるゲームの音で辛うじてセーフ! サンキューグッダ!

 

(うぅ、先輩、さっきからヒッポノオスさん達の好意的解釈が心に痛いです……)

 

 何やら心苦しげな様子のマシュさん。ああ、いけない、つい彼女をおいてメドゥーサと話し込んでしまった。

 

「マシュさんはどう思う? サーヴァントとして、マスターにはどんな風でいてほしい?」

「わ、わたしですか? そ、そうですね……先輩には先輩の好きなようにしていただければ、わたしはそれで……」

 

 健気である。

 

「……メドゥーサ、なにか物言いたげな視線を放ちながら僕の髪の生え際に注目するのをやめろ。君に見えてなくても毛根が死滅しそうだ」

「ご命令でしたら。ときにマスター、縮毛矯正に興味はありませんか?」

「天パは嫌いとおっしゃる」

「剃髪も似合うと思いますよ」

「態度がマシュさんと正反対過ぎる……」

 

 坊さんになれというのか。酷いサーヴァントもいたものである。

 そもそも僕って人種的にはギリシャ人だし、ブッディズムはちょっと東すぎるぞ。

 

「というか、君も元女神なら私を信仰しろくらい言いなさいよ」

蛇髪の女(メドゥーサ)を信仰すると、頭のワカメがもっとうねうねする()()()がありますよ」

 

 さすがに耐えられません、と悲しげにうつむくメドゥーサ。

 やっとわかった、この(ワカメ)が君の召喚触媒だったのか……!

 最終決戦前夜あたりに明かされるはずだった想定外の事実に打ち震える。

 決め台詞はきっと、「あなたが、僕のカミだったのですね――」

 うん、ラストっぽいな。

 

 黄金の朝焼けを妄想していると、いつの間にかぐだ子さんがゲームを終えていた。

 

「マシュ、スタミナ消費してたら目が覚めちゃった」

「あ、先輩終わったんですね」

「うん。さっきから暇だった」

「じゃあお開きにしようか。僕らもこのままぐだぐだしているのも何だし……さて、どうしようかな」

「マスター。それでしたら、貴方が従事する作戦行動……グランドオーダーにおける上長に面会しておきたいのですが」

「上長……上司? Dr.ロマンかな」

「そうですね。所長が復帰するまでの一時的な立場ということになりますが」

「可能であれば、両方に会っておきたいですね。作戦系統の乱れは容易に敗北を招きますから」

「所長か。安静とはいっても、面会謝絶じゃないんだよな」

「……お見舞いだ」

「ん?」

「お見舞いだ! しょちょーのお見舞いに行くぞ!」

 

 突然ハッスルするぐだ子さん。マシュさんを巻き込んでお見舞いダンスを踊りだした。

 

(そうか。所長を助けたのはぐだ子さんだもんな。そりゃあ、心配だよな)

 

 ときどき異様にハイになるのも、もしかしたら心配のあまり精神状態が不安定なのかもしれない。

 今後はもっと優しくしてあげよう。そう思う僕であった。

 

 

-----------------

 

 

「そんなわけ、ないでしょう――――この子は素でこうなのよ!!!」

 

 病室にて、ベッドの上でもみくちゃにされる所長。色々すごいことになっている。

 

「冬木以来ですね! よく考えたら生所長は初めてですね! やっぱりナマはモノが違いますね!」

「同じよ同じ! レイシフト先でも生身と同じ構成情報を保持してるから、何も変わらないわよ!」

「えぇ~ほんとにですかぁ~? ちょっと確かめますね」

「ちょっどこ触ってるの! ぁ、駄目、みんな見てるから……!」

 

 あ、Dr.ロマンが壁を向いた。あまり見ないであげよう。

 というか、僕もできれば視線を逸らしたいんだけど。

 

(メドゥーサ、ちょっと車椅子の向き変えてくれない?)

「……!…………!!!」

(聞こえていない……)

 

 メドゥーサさん、バイザーで見えないのをいいことにガン見の構えである。ガン"見"……うぅん、見てはいなくても知覚できてるんだからガン見で良いのかな? どうやら二人はメドゥーサのお眼鏡に叶ったようだ。確かに、所長ってマシュとは違う意味で不器用そうな生き様の人だが。それにスタイルもいいし美人だし。

 マシュさんはと見れば、「先輩と所長が仲良しさんで良かったです~」的な雰囲気を漂わせつつ、でも恥ずかしいのか両手で紅潮した顔を覆いつつ、それでもやっぱり気になるのか指の隙間からチラチラ覗いているようであった。

 

(マスター。なぜ艶めく二人をおいてマシュばかり言及するのでしょうか)

(そこしか目のやり場がないからだよ! そのバイザーちょっと貸してくれない?)

(私からバイザーを取り上げるとは……石化趣味ですか? 確かに永遠に留めるには良い睦み具合です。なかなか上級者ですね、マスター)

(初めて褒められたけど、全然嬉しくないや……)

 

 やっと念話が通じてくれたが、ベッド上では既に色々一通り終わったあとである。合掌。

 

「ふぅ、ふぅ……それで、何の用なの」

「ですから、お見舞いに」

「こんなお見舞い、聞いたこともないわ……」

 

 満足気なぐだ子さんを引き剥がし、息遣いと服装を整える所長。

 こんな美人をいじめるなんて、レフ教授こそ稀代の大悪人であろう。

 

「それに、メドゥーサが所長とDr.ロマンに会いたいというので」

「ライダークラスで顕現したメドゥーサです。お世話になります」

「ああ、貴女が。所長のオルガマリー・アニムスフィアよ。……確かに、女神が嫉妬したと言われても頷ける髪ね」

「ありがとうございます、アニムスフィア所長」

「そんなにかしこまって呼ばなくていいわよ。誰が見ているわけでもなし」

 

 おや? あの堅物所長が随分砕けている。

 良くも悪くも周囲の人間が(物理的に)いなくなったので、プレッシャーから解放されたのだろうか。

 

「そしてボクが医療スタッフのロマニ・アーキマンだ。みんなからはDr.ロマンと呼ばれているよ」

「よろしくお願いします、Mr.アーキマン」

「他人行儀!?」

 

 ショックを受けるDr.ロマン。

 メドゥーサのそっけない態度って僕にかぎらず男全般が対象なのかな? 少しほっとする僕。

 

「そこ、打ちひしがれるボクを見てほっこりするの禁止!」

 

 禁止された。横暴上司である。

 

「ともあれ、お見舞いには感謝するわ。都合も良かったし」

「都合、ですか?」

「ヒッポノオス。あなた、所長である私に言っていないことが色々あるんじゃないかしら」

「? ……ああ、転生のことですね。Dr.ロマンから聞いたんですか?」

「……………………転生?」

 

 聞いてねぇぞ、とばかりにギロリとDr.ロマンを睨む所長。震えるドクター。

 むしろ彼はいったい僕の何を話したのか。

 

「……話が見えないわね。ヒッポノオス、最初から……その転生とやらから、反英雄メドゥーサを召喚するに至った経緯まで、今ここで説明しなさい」

「……長くなりますよ?」

 

 メドゥーサがどこからともなく椅子を人数分運んできた。

 こういうところは意外に気が利くというか、普段は単に気を回すのが面倒臭いだけなんじゃ……?

 

「さて、どこから始めたものでしょうか――」

 

 全ての始まり。それは騎英の英雄ベレロポンの始まりであり――

 

「――ヒッポノオス。僕がそう名付けられたのは、僕自身にとって二度目です」

 

 これは、コリントスの少年ヒッポノオスが英雄ベレロポンとなり、死して再び只人ヒッポノオスとしての生を得るまでの物語だ。

 

 




オルレアンが遠い! 遠すぎる!
次回もカルデアかな……

>メドゥーサのそっけない態度って僕にかぎらず男全般が対象なのかな?
 →ヒッポノオス氏、男&(元)英雄&ワカメ族の三重苦の模様。なお右に行くほど致命的(クリティカル)
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