Fate/Grand Order 騎英の絆   作:乃伊

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過去話とか。ぐだ子の霊圧は消えた。


第4話 幕主他間(マスタア)の物語

「――先に結論から言いましょう。なぜ僕がメドゥーサを召喚するに至ったのか。

 おそらく僕の前世が、かの海洋と地下水そして全ての泉の支配者でありメドゥーサと情縁深き海神ポセイドンの息子ベレロポンであったためではないでしょうか。」

「はぁ!? 寝言言ってんじゃないわよ!?」

 

 まあ、そうなるよね。

 

「ええ。疑うのはもっともです。順を追って話しますから、質問はその後に」

「…………続けなさい」

「ありがとうございます。では――

 

 ――ヒッポノオス。僕がそう名付けられたのは、僕自身にとって二度目です」

 

 

 コリントスの少年ヒッポノオス、つまり僕はコリントスを支配する王グラウコスの元で育ちました。生まれの父を違えたポセイドンの子たる僕に対して、育ての父グラウコスがどのように思っていたかは、もはや知るすべがありません。

 ただ、グラウコス自身、夜天に輝くプレイアデス7姉妹の末妹たるメローペーの子として生まれながらに神性の欠片を宿す者でしたから、一概に人の倫理を当てはめられるものでもないでしょう。

 いずれにせよ、子どもの僕はそんなことを気にすることはありませんでした。

 

 あるとき、僕はベレロスという少年を誤って死に追いやってしまいました。

 その罪を償うため、僕はティリンス王プロイトスの元へ赴き、清めを受け――

 

 ――その過程で、いくつかの試練を乗り越えました。

 

 名をベレロポン(ベレロスを殺した者)に改めたのも、そのときです。

 クー・フーリンですか? ああ、マシュさん、良い例ですね。

 彼もまた、子供時代セタンタと呼ばれていた頃にクランの番犬を殺してしまったことから、その番犬の子が育つまで番犬の代わりを務め、クー・フーリン(クランの猛犬)と呼ばれるようになったそうです。

 ……アイルランドの大英雄を引き合いに出されるのは少し恥ずかしいですが。

 

 ともあれ、試練を乗り越えたベレロポンは英雄と呼ばれるようになりました。

 その一つが、アテナ神に授かった黄金の手綱を使って天馬ペガサスを御し、怪物キマイラを殺したことです。他にもいくつかの戦いを乗り越えて――ついにはリュキア王の娘ピロノエーと結婚し、後に王の座を継ぎました。

 

 これで終わりならハッピーエンドだったのでしょうが。

 英雄ペルセウスのようにはなかなかいかないもので――失礼、彼女(メドゥーサ)の前で言うことではないですね――麒麟も老いては駑馬に劣るとはよく言ったものです。

 

 僕には一人の娘と二人の息子がいました。

 息子は戦争で死に、娘はかの女神アルテミス――月を支配し狩猟と貞潔を守る、しかし遠矢射る疫病と死の運び手でもある女神の手にかかりました。

 

 ……人は死ぬものです。

 でも、やはり、内心になぜという気持ちは残りました。()()()()()()()

 怪物を殺し、襲い来るアマゾネスを殺し、たくさんの人を助けました。王としても、道を誤ったとは思いません。

 それなのに、なぜ。なぜ。なぜ――

 

 それを神に問うために、僕はペガサスに乗って天を目指しました。

 

 そのあとは、ご存知の通りです。

 大神ゼウスは一匹の虻を遣わしてペガサスを刺し、僕はその暴れる背中から振り落とされました。

 視力を失い砕けた脚で地上をさまよって、誰に知られることもなく死んだのです。

 天罰覿面というやつでしょうか。

 

 まあ、その当人がこうして転生なんてしているのは、全く締まらない話ですけどね。あはは。

 

 

「――終わり? じゃあ、いくつか質問があるわ」

 

 僕の作り笑いを遮ってクールに発言を求める所長。

 我ながらちょっと引くくらい鬱気味な話だったので、こういう対応は逆に嬉しいとすら感じる。

 

「ひとつめ。あなたの話が事実だったとして、メドゥーサはあなた(ベレロポン)が生まれるずっと前に死んでるはずよね? なぜ召喚したその場で分かったのかしら」

「それはまあ、知識半分感覚半分といいますか。僕の時代にも怪物になる前のメドゥーサの容姿とその美しさは語られていましたし、あとはポセイドンに連なる神気を感じましたから」

「神性スキルのこと?」

「そういう形で再現されているみたいですね。ベレロポンにもあるはずですが、この身体ではどうにも。……なにより、これほど美しい髪を持つ女性は滅多にいませんよ」

「……そう。一応納得してあげる」

 

 あとバイザー越しの魔眼の圧力と身長な。言わないけど。

 

(不要なことを口にしないのは美徳ですよ。……ふふ。私の中で絆ポイントが1上がりました)

(やった!?)

(次のレベルまであと9999ポイントです。頑張ってくださいね)

(ちくしょう!)

 

 召喚初日にして、心が読めるのを全く隠さなくなったメドゥーサさんである。

 曰く、いわゆる念話こと精神連結システムのちょっとした応用らしい。魔術ってスゴイナー。

 

 というか絆ってポイント化出来るんだな……まあサーヴァントの能力値自体パラメータ化されてるし今更か……

 

 ……いや、まてよ。本当に心理状態をパラメータ化することなんて可能なのか?

 器たる霊体のスペックではなく、その内なる英霊の心の有り様を再現し、読み取る?。

 本来無数のニューロン群が演算すべき、曖昧模糊にして厳然たる出力結果を?。

 

 ならば、それを可能にする絆ポイントとは。

 心の演算装置の一側面を完全に再現する、すなわち魂の記述、かつて至りし第3の残滓――否。

 

 ヒトの業で、魔術で以って英雄(ヒト)を再現する? 絆をも? 心をも?

 ヒトがヒトを再現できるなら、内なるココロに手が届くなら。

 その至る先、心の望む終極とは――

  絆ポイントが生み出す未来とは――

   ソレはヒトの幸福。全てのヒトを記録し、再現し、絆を紡ぎ心を幸福に至らしめる。

    すなわち、全人類のしあわせ。ヒトに残された、サイゴの――アッアッアッアッ!

 

――忘れよう。

 

  ――忘れた。

  

    ――いやだなあ、絆がポイント化されるなんて、ゲームじゃないんだから!

 

 英霊への深刻なゲーム脳汚染を憂える僕に、所長が再び質問を投げつける。

 

「ふたつめ、いいかしら?」

「あ、はい。どうぞ」

「ベレロポンの話は分かったけど、転生について何も話していないわね」

「ああ、それですか……」

「そもそも、英霊の座っていうのは行くとか行かないとかそういうものじゃないでしょう」

 

 まあ、確かに。希望者制なら反英雄のサーヴァントなんて存在しないだろうし。

 とはいえ、何事にも例外はあるもので――

 

「シーシュポスの神話をご存知ですか?」

「……神々を欺いた罰として永遠に上り坂で岩を押し続ける羽目になった人だね。ベレロポンのお祖父さんでもある」

「ありがとうございます、Dr.ロマン。所長、シーシュポスは座にいると思いますか?」

「…………いない、わね。座であれ何であれ、『罪人シーシュポスが罰を受けていない』状態が許容されるとは思えない」

「ええ。だから、行かないことは可能なんですよ。行かせない、かも知れませんが」

 

 シーシュポス。あるいはシジフォス。ベレロポンなんかよりずっと有名人である。主に不名誉な末路の方で。

 あれ、そういえば外の世界まるごと焼却されたけど、お祖父様はどうしてるんだろう……? まだタルタロスで岩運びしてるのか?

 

「シーシュポスの例はいいわ。でも、それは特例中の特例でしょう? あなたに適用されるとは思えない」

「――ゴネたんですよ」

「え?」

「我は神が天に昇るを認めざる者! 只人として死すべき運命にある者! もし神の意に背くを強いるならば、今すぐ我が祖父を座に送ってみせろ! ……と、こんな感じで」

「「「……」」」

 

 一同呆れ顔である。あ、訂正、メドゥーサが何かキラキラした視線で僕を見てる。

 

(神の横暴を逆手に取って要求を押し通すとは素晴らしい気概です、マスター! 私の絆ポイントが更に上昇しましたよ!)

(ああ、また1ポイント? いちいち言わなくていいよ、面倒だし……)

(いえ、5000ポイントです)

(神さま大っ嫌いすぎる……)

 

 まさかの特大ボーナスであった。敵の敵はなんとやらとか言うアレだ。

 

「――で、転生したのはよく分かりませんが、まあなんか嫌がらせじゃないですか? たぶん」

「嫌がらせで転生できるなら二十七祖番外位(ミハイル・ロア・バルダムヨォン)は魔術師やめてクレーマーになったでしょうね!」

「あはははは」

「笑い事じゃない!」

 

 ぷんすか怒る所長。まあ、とりあえず納得してくれたようだ。

 

「はあ……なんだか疲れたわ。少し休みます。あなた達ももう戻りなさい」

「了解です」

「あ、所長。メドゥーサの現界についてなんですが」

「ああ、それを言うのを忘れていたわね。マスターが二人しかいない現状、サーヴァントは現界させたままカルデアの電力で契約維持した方が効率的だわ。ぐだ子、あなたもサーヴァントは呼びっぱなしにしていいわよ」

「やったー!」

 

 マイルームへ駆け出していくぐだ子さん。そういえば彼女のサーヴァントってマシュさん以外知らないな。

 僕もメドゥーサに車椅子を押してもらって退出する。戦闘時のみの召喚とかだったら日々の生活にちょっと困ったので、現界維持の許可は非常に助かる措置だった。

 と、Dr.ロマンが僕を呼び止めた。

 

「あ、ヒッポノオス君。ダ・ヴィンチちゃんが呼んでたから顔出してあげて」

「はい、了解です」

 

 なんだろう?

 

 

-------------------------

 

 

「ようこそ、ダ・ヴィンチちゃんのステキなショップへ。早速だけど、何か忘れていることはないかな?」

「忘れてること、ですか?」

 

 メドゥーサにカルデアの施設案内をしつつ、ダ・ヴィンチちゃんの工房にやって来た。

 工房とは言うが、半分購買部というかなんというか、ここの主のダ・ヴィンチちゃんがあれこれ作ったり仕入れたりしたものをメロンゼリーと交換しているのである。好きなのだろうか、メロンゼリー。

 工房にも購買部にも不釣り合いな豪奢絢爛な衣装に身を包んだダ・ヴィンチちゃんは、逆に布面積が足りなすぎるメドゥーサをちらりと見やると、僕に要件を伝えた。

 

「そう、大事な確認事項だ。君は、その車椅子でオルレアンの大地に降り立つつもりかい?」

「あ」

 

 確かに。百年戦争当時のフランスに、車椅子に適した地面を求めるのは無茶というものだ。

 とはいえ、レイシフトは明日に迫っている。今からどうこうする時間はない。

 

「どうしましょうか。まさかメドゥーサに背負ってもらうわけにも行かないし」

「……(無言で頷く)」

「まあ、そうだよね。そこで、こんなものを用意してみたよ」

 

 そう言って、ダ・ヴィンチちゃんはポケットからジャラジャラと虹色に輝く聖晶石を取り出し……聖晶石?

 

「え、それで何しようっていうんですか?」

「もちろん、召喚に決まっているさ」

「……本気で、僕を背負うためのサーヴァントを?」

「あはは。そんな非効率な真似はしないよ」

 

 快活に笑うダ・ヴィンチちゃん。だが、突然周囲を見渡すと声を潜めて、こう言った。

 

「これは、とある人に聞いた話だが。ルーマニアのユグドミレニアという魔術師一族に、降霊術と人体工学の天才がいたそうだ。彼女は脚が不自由だったため、魔術戦において代わりの脚となる特殊な魔術礼装を開発したと言われている――」

「……すごいですね。あ、もしかしてその礼装がカルデアにあるんですか?」

「いや?」

 

 ……思わせぶりな話のわりに、着地点が見えない。

 混乱する僕に、ダ・ヴィンチちゃんは再び満面の笑みを浮かべると、聖晶石を差し出した。

 

「引きたまえ」

「ヒキタマエ?」

「『求めよ、さらば与えられん』。真にその礼装を求める気持ちがあるなら、きっと概念礼装として召喚できるさ」

「いやいやいやいや!? 無茶言わないでくださいよ!」

 

 そもそもそれ実装されてるの!?

 

「実装? 何のことかわからないな……まあ、理屈上は可能なはずだよ。システム・フェイトは実在する礼装そのものを抽出することもある。マグダラの聖骸布なんかが確認されているが……ともあれ、案ずるより産むが易しと言うよね!」

「適当過ぎる……」

「まあまあ。やるだけやってみたまえよ。この聖晶石は私達から新米マスターの君へのプレゼントだ。スタートダッシュキャンペーンと言ってもいい」

「はぁ。そこまで言うならやってみますけど」

 

 

――というわけで、メドゥーサ召喚以来の二度目の召喚儀式である。

 

「ところで、これでまた英霊召喚できたらどうするんです?」

「その時はその時だね。もしかしたらその礼装に変身できるサーヴァントが来るかもしれないし」

「そこまで想定するとは……やはり天才か……」

 

 ガチャガチャガチャガチャ、聖晶石を投入する。前回のような緊張感が、悪い意味で全く無い。

 

「じゃあ十連続でいきますよーえいっ」カッ!

 

「黒鍵? 悪魔祓いは専門外だなあ」

「えぃっ」カッ!

 

「これは千年黄金樹……まさにユグドミレニアゆかりの概念礼装だ! 近いぞヒッポノオス君!」

「えぇ~ほんとにですかぁ~……えいやっ!」カッ!

 

「む。遠坂家のペンダントだ。ぐだ子ちゃんとお揃いだね!」

「ぐだ子さん、それ引いてショック受けてましたけどね……えい」カッ!

 

「む。また遠坂家のペンダントだ。マシュちゃんにプレゼントしたら喜ぶんじゃないかな?」

「彼女には悪いですが、プレゼントならメドゥーサが先ですよ……えいっ」カッ!

 

「(何か嫌なものを見たような表情)」

「メドゥーサ……?」

「……偽臣の書か。私もサーヴァントだから、あまり関わりたくないね……なんかワカメ臭いし」

「ワカメへの風当たり強すぎません? 僕ちょっと泣きそうですよ……ぇぃ」カッ!

 

「サクラ!?」

「メドゥーサ、突然何!?」

「おや、虚数魔術とは珍しいね……サクラっていうのはこの使い手の女の子かい?」

「え、なに、何で感極まった感じで泣いてるの……怖い……」カッ!

 

「サクラ!!!!!!!!」

「イマジナリ・アラウンド? ちょっと大人びてるけどさっきと同じ女の子が写っているね、骨格が同じだ」

「叫ばないで、叫ばないでね、心臓に悪いから……」カッ!

 

「(何かとても嫌なものを見たような表情)」

「えっ何その表情……星4だけど外れなのか……?」

「鋼の鍛錬。十字架を掲げた宗教者だね、なかなかいい肉体だ。信仰は強しというものかな」

「そういえばサーヴァントが来てないですね、誰か強そうな……」カッ!

 

「龍種! お望み通り強そうなやつだぞ!……というか君はもう目的を忘れたのかい?」

「えっやだなぁ覚えてますよ、なんでしたっけ、移動手段を調達できる何か……」カッ!

 

「!!!きたぞ、サーヴァントだ!」

「(ほう、という表情)」

「(どきどき)」

「あら、随分と可愛らしいマスターなのね」

「「「!」」」

「キャスターのサーヴァント、メディアよ。ところで後ろの大雑把な造形の女は誰かしら?」

 

 あ、メドゥーサがすごくイラッとした表情になった。知り合いかな?

 

 

---------------------

 

 

「……明日の作戦からはわたしも復帰します」

「了解です、所長」

「……その申し訳なさそうな顔をやめて。報告を怠った事実はともかく、保留するだけの事情があったことは把握しました」

「その、すみませんでした」

「やめなさいって言っているでしょう。……はあ、まったくアレな連中ばかり生き残ったものね。わたしがいなかったら、一体どうするつもりだったのかしら」

「あはは、耳が痛いなあ……でも、ヒッポノオス君なんか真面目で頼れそうじゃないですか」

「真面目? ……どこが」

 

 オルガマリーの声が、先ほどとは別種の冷たさを帯びる。

 それは怒りや苛立ちではなく、魔術師であればよく見慣れた冷徹な――

 

「ロマニ、ペガサス乗りの英雄の名前を言ってみなさい」

「えっ、ベレロポンでしょう。さっき言っていた」

「本当にそう習ったのかしら」

「ああ、()()()()()()()以外の表記は見たことないですね。でも、それはぐだ子ちゃんが召喚したアーサー王が女の子だったのと同じで、よくあることじゃないですか?」

「全然違うわよ。アーサー王の場合は、アーサー王だった人がアーサー王として呼ばれた。それが青年(アーサー)でも少女(アルトリア)でも、本人であることに変わりはないの。でも、ベレロポンは違う。傲慢故に天を目指し墜落した英雄と彼のパーソナリティは違いすぎるし、そもそもペガサス乗りの英雄の伝承に『ベレロス殺し』なんて改名の逸話は存在しない。なによりBellerophon(ベレロポン)の名前が残らずベルレフォーンという誤記だけが残るとは考えにくいわ」

「……ベルレフォーンとベレロポンは別人だと?」

「さあ。確かなのは、座やら転生やらを含めわたし達が知らない何かが残っているということよ」

 

 そう言って、オルガマリーは不貞寝するようにベッドへ潜り込んだ。

 




次回オルレアン突入だ! やったぜ!
とりあえずメドゥーサ、メディア、ストーリー鯖の3人戦闘で行く予定。

<十連結果>
黒鍵(青)
千年黄金樹
凛のペンダント
凛のペンダント
偽臣の書
虚数魔術
イマジナリ・アラウンド
鋼の鍛錬
龍種
メディア

星4礼装がいっぱい! なんて幸運なマスターだ!
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