さて、前回メドゥーサはベレロポンが生まれる前に死んだという話がありましたが、
ペルセウス:メドゥーサを殺す
ヘラクレス:ペルセウスの子孫
イアソン&メディア:ヘラクレスと一緒にアルゴー号で冒険
ベレロポン:育ての父グラウコスがイアソン主催の競技会で事故死
という感じの時系列を採用。下にいくほど若い設定(ヘラクレスとイアソン夫妻は同じくらい)。
尚あれこれ調べていくと色々つじつまが合わなくなり作者の頭はばくはつした
「降霊術を利用した脚の代わりになる魔術礼装……面白いことを考える魔術師もいたものね」
「メディア、その礼装って作れる?」
「無理ね」
即答であった。
召喚装置のある部屋からマイルームに場所を移して、本日二度目のお茶会中。
なぜかDr.ロマンが参加希望したので、合計4人で座卓を囲んでいる。
「Aランクの道具作成スキルを持つ神代の魔術師でも再現不可能なのか!? ユグドミレニアのフィオレ女史だっけ、凄まじい才能だなあ」
「そこのなぜここにいるのか良く分からない優男、誤解しないように。足りないのは技術でも知識でもなく、材料よ」
「なぜってそりゃあ――――って、材料?」
「ええ。マスターが欲しがっている
「……なるほど」
カルデアの外は一面真っ赤な焦熱地獄である。
そこにある全てを灼き尽くし、地球の呼称が青の惑星から赤の惑星に変わりかねないレベル。
「もちろん、人間を使っていいなら話は別だけど。貴方、やってみる気はない?」
「ボク!? いやぁ~ちょっと気が進まないなぁ……ほら医療スタッフのお仕事とかあるし!」
「そう。残念ね」
事も無げにDr.ロマンを生け贄に捧げようとする神代の魔女。やばい、文化が違う。
と、メドゥーサが妙に冷ややかな口調でメディアに言った。
「……ふ。手も足も出ずとは、ヘカテーの弟子の名も地に落ちたものですね」
「……何か言ったかしら?」
「いえ、お気になさらず。あくまで個人的な感想ですので」
「……そもそも、貴女がマスターを載せて運べば済む話じゃないの? その無駄にでかい図体、こんなときでもなければ一体いつ活かすというのかしら」
「ほう、騎兵を馬扱いするのですか。キャスタークラスがライダークラスを侮辱しようとは、背中に気をつけないと後悔しますよ」
「ふん。敵味方の区別もつかないサーヴァントなど、駄馬扱いで十分でしょうに」
バチバチバチバチ。
飛び散る火花。威嚇しあうサーヴァントふたり。そしてその脇で震える人間たち。
怖い。超怖い。こんなサーヴァントペアを引いたのは誰だ! 僕だ! 本当にすまない……!
「……チッ。とにかく、礼装を作って欲しいならレイシフト先で適当な動物でも拾ってくることね」
「となると、オルレアンに行かないと話が進まないわけか」
「まあ、一時しのぎくらいはしてあげるわよ」
そう言って、メディアが僕の車椅子に杖先を向ける。
「『軽量化』『慣性軽減』『浮遊』『動力増幅』『推進力生成』……こんなものかしら」
「うわっ!? 車椅子が地面を滑った!?」
「地面からほんの少しだけ浮くようにしたわ。押すなり車輪を回すなりすれば勝手に進むから、とりあえずオルレアンではそれで移動しなさいな」
「これは要特訓だなあ……」
例えるなら、エアホッケーのパックにされた気分。
反応性と加速性がAランクだけどハンドリングとブレーキ性能がEランク的な。
生前からしてモノを乗りこなすことには定評のある僕でも冷や汗必至の、超絶ピーキーマシンであった。
「メドゥーサ。何その視線は」
「……少々、ライダークラスとしての本能を刺激されまして」
「貸さないからね」
「……(眼力を強める)」
「視線の暴力反対! 君の場合、それリアルに暴力だからな!」
圧制には屈しません! なぜマスターの僕が圧制されているのか、そういう理不尽にも!
残念そうな顔で視線を和らげるメドゥーサ。バイザー越しでも石化しかねない凄みがあった……
……ん?
……本当に見えてないんだろうな? 殺気か邪気かしらないけど、視線を視線めいた何かとして感じられる以上、その自己封印バイザーって長い年月を経て弱まったりしてないか?
僕の脳裏にいつかどこかでアニメで見た「妙にひょろ長い身体でシスコン全開な魔眼の
というか、そのときって、たぶん第一犠牲者=僕だし。願わくば
閑話休題。空気の緩んだ今のうちに人間関係の把握に努めるとしよう。
この二人、それぞれ別方向に劇薬過ぎて放っておくと大惨事になりかねない気配がある。
「あー、ところで、二人はお互いやけに遠慮がないというか……知り合いなのかな?」
「知り合いと言うには些か血なまぐさい関係ですが」
「……冬木の聖杯戦争でやりあったのよ。まあ、『この私』にとっては別の時間枝で起きた実感のない記録にすぎないけれど」
「実感がない? その割には――随分、鍛え直したようですね?」
「ッ……そりゃあ、あんな負け方、認められるはずないでしょう!? 座で閲覧しながら質の悪いヤラセを疑ったわよ! ……まあ、一番目を疑ったのは出先の私が男と……ったことだけど……」
なにやらゴニョゴニョ言っているが、とにかく今のメディアのステータスは筋力Dランクに耐久Cランク。キャスタークラスには不必要すぎる恵体ぶりである。
第五次聖杯戦争、そこで一体いかなる屈辱的敗北が彼女を襲ったのか――
(冬木の時より1ランクずつ上がっています。スペック上は冬木のアーチャーと同ランクですね)
(三騎士クラスと同じ!? 流石にやりすぎじゃ……あれ、むしろそのアーチャーが低すぎない?)
(弓兵も本来直接やりあうクラスではありませんから)
(……そこ、こそこそ密談しない!)
(うわぁ!? 盗聴されてる!?)
「私に言わせれば、その程度の念話なんて小声でひそひそ話しているのと何も変わらないわよ」
「……まあ、そこはキャスターたる貴女に分があるでしょうね」
「え、突然何の話?」
神代の魔女恐るべし。そして話題に置いて行かれたDr.ロマンが混乱してる。
でも、サーヴァントのスペックって上げようと思って上がるものなの?
「冬木で召喚された時は身体能力にスペック振る必要を感じなかっただけで、本来私は現代未来のお嬢さんや坊やに打ち負けるほどひ弱じゃないのよ」
「マジですか」
「そりゃそうさ、ヒッポノオス君。なにせメディアといえばアルゴー号クルーの一人だ。当時の過酷な船旅を成し遂げた彼女の身体能力が低いはずがない」
「あら貴方、意外と見る目はあるのね。意外だわ」
「それは光栄……あれ、何で二回言ったのかな?」
「意外だから」
「三度目!?」
「確かに意外ですね」
「意外だ……」
「君たちも乗らなくていいよ!」
いやあ、Dr.ロマンがいると空気がほぐれていいなあ。魔術師なんて気難しいか陰気かのどちらかしかいないと思っていたから、彼みたいな人がいてくれるのは素直に嬉しい。
僕? 僕は魔術師じゃない。魔術回路はあるけど生前の在り方からして騎兵か槍兵といった所だ。
……ふむ。もしベレロポンがライダークラスのサーヴァントになったなら、宝具はメドゥーサ同様に黄金の手綱、ランサークラスならキマイラ殺しのときの槍と鉛が宝具になるのかな? スキルはもちろん騎乗、神性、戦闘の仕切り直しも出来るだろうし、あとは……リュキア王としてのカリスマとか取っちゃう? 取っちゃう系? だったらいっそステータスも、アテナ神とポセイドン神の祝福補正とかなんとか理由つけてガッツリ盛っていく方向で……
…。
……。
……いけないいけない。ついフリーダム英霊ズに当てられて、有り得るはずなき僕の考えたさいきょうのサーヴァント・ベレロポンを妄想してしまった。想像するのは常に最強の自分かもしれないが、それはそれとしてその先はジゴクですよ。
今日は二回も召喚したので頭の具合もいい感じにヘタってきている僕。正直そろそろ寝たい。
と、そのとき。メディアがポツリと呟いた。
「……まあ、筋力耐久の代わりに幸運が2ランクダウンしたんですけどね」
「それ一番下げちゃ駄目なやつだ!?」
一気に目が覚めました。
幸運。ぶっちゃけそれだけ有れば良いと言っても過言ではない、むしろ低ランクだとまずロクでもない結末が待っているとでも言うべきか、とにかく最重要ステータスであることは間違いないのだ。この神代の魔女、本来Bランクあったはずの幸運をDランクまで投げ捨てるとは――
「――愚かな」
「なっ何よメドゥーサ文句あるの!? 仕方ないでしょう、サーヴァントである以上は限りある魔力の器の範囲でステ振りしなくちゃいけないんだから!」
「なるほど、そうかもしれませんね。ところで……
「ッ!?」
「
「!!」
「そして私こと、
「!!!!」
「メディアよ、毎度毎度、貴女のナイフはなぜ外れるのか」
「……そこまで言うことないじゃない!?」
「予言は私の領分ではありませんが――あえて予言しておきます。冬木と違って、今回の貴女はロクな男に巡り合わないでしょう。何かと貧乏くじをひくでしょう。そのうち自分の黒歴史とか昔の男とか出てきたりして」
「やめて!!!」
「幸運とは、かくも大事なものなのです。次があったら大切に。経験者からの忠告ですよ」
「うぅぅ……あんまりよ、あんまりだわ……」
さめざめと泣き出すメディアさん。作戦前夜にして既にお通夜の様相を呈している。
そしてあまりの居心地悪さに撤退を始めるDr.ロマン。
「さ、さぁ~てと、明日も早いし、ボクはそろそろ御暇しようかなあ」
「僕を置いていくんですかドクター!?」
「ヒッポノオス君、サーヴァントの精神ケアも君の大切な仕事だ。頑張ってくれ」
「うわぁ、せっかくのドクターっぽい台詞がシチュエーションのせいで台無しだ!」
「マスターもこう言っていますし、もっと長居してもいいんですよ? 貴方からドクターの称号を取ったらロマンしか残らないでしょうに」
「あはは、男の子に必要な物はいつだってロマンだけさ!」
「……」
「……ごめん、今のボク(XX歳)にはちょっとキツイかも」
「伏せ字がおじさん臭いですよ、ドクター……」
僕とメドゥーサにからかわれつつも断固撤退の意思を崩さぬ我らがドクターである。
仕方がないので、メディアを介抱することにした。ほら、ちょっと目を離した隙に異形のナイフで自分刺そうとしてるから。それ召喚リセットボタンじゃないから。死ねば助かるとかそんなことはないので存分に生を謳歌して欲しい! 少なくとも例の魔術礼装が完成するまでは!
「さあ、メディア、このハンカチで涙を拭いて……君に涙は似合わない」
「うぅぅ……嘘くさい笑顔の裏に損得勘定が透けて見えるわ……やっぱり外れマスターだわ……」
「HAHAHA、何を言っているんだ君には期待しているのだぜ」
「メデューサの予言大当たりじゃない……いきなりロクでもない男1号2号じゃない……」
こうして、作戦前夜の貴重な休息時間は
「……帰るのを止めはしませんが、結局貴方は何をしに来たのですか」
「あ、やっと聞いてくれた。いやあ、美しい女性サーヴァント二人で両手に花のヒッポノオス君がちょっぴり羨ましいから押しかけちゃおっかなーって……あっごめんなさい嘘ですバイザー取らないで」
「見つめ合えば素直にお喋り出来ますよ?」
「ひぃっ
「……なるほど。しかし、魔術師が軽々に自分のサインを与えるとは思えませんが」
「ぐぅの音も出ないコメントをありがとう! ……ハッ、待ってくれ、その理屈だと、あのネットアイドル "マギ☆マリ"のサインが全く出回らないSSR級レアアイテムなのも、まさか彼女の正体が魔術師だったから……? そうか、"マギ☆マリ"のマギは魔術師のmagi……ならば"魔術師☆マリ"の正体とは……そう、旧世紀日本の文献にその存在を確認される、
「……」
「そこは『な、なんだってー』と返して欲しかったなあ……なんちゃって」
「そこまでにしておけよロマニ」
「SSR!?」
長くなったので前後編に分割。……前編のこいつら茶しばいて駄弁ってただけだ!
ちなみに、ヒッポノオスがメドゥーサの視線を認識できるのは彼女の自己封印が弱まっているためではなく、ヒッポノオス自身の直感に似た危険察知能力が働いています。サーヴァントじゃないのでスキル化されたりはしませんが。
以下メディアさんステータス。
第五次冬木に比べて筋力耐久1ランクずつ上昇、幸運2ランク低下。もう肉弾戦も怖くないね!
クラス:キャスター
真名:メディア
マスター:ヒッポノオス
出典:ギリシャ神話
地域:ギリシャ、コリントス
属性:中立・悪
性別:女性
《ステータス》
筋力:D
耐久:C
敏捷:C
魔力:A+
幸運:D
宝具:C
《保有スキル》
高速神言:A
金羊の皮:EX
《クラススキル》
陣地作成:A
道具作成:A
……コルキス王女だからてっきりコルキス出身だと思い込んでたんですが、上を書くのに改めてFGOのステータス画面確認したら、この人Fate世界だとコリントス出身になってる!?(コリントス→ギリシャ、コルキス→グルジア(ジョージア)なので、だいたいアルゴー号の出発地と目的地くらい離れてる)
確かにメディアの父ことコルキス王アイエーテースはコリントス出身だったらしいんですが……そうか、ヒッポノオス君と同郷になるのか……