Fate/Grand Order 騎英の絆   作:乃伊

7 / 19
オルレアン編開始。
ジャンヌは英雄王ピックアップの時に銀ルーラー演出を経て作者のカルデアへ来てくれたので、思い入れがあります。一瞬何が起きたか分からなかった。


第7話 小説で分からない!フレンド申請

 1431年、フランス。

 戦火絶えぬ時代でありながら、その地は未だ緑に満ち、風は穏やかに草原の薫りを運ぶ――

 

「ジャンヌゥゥゥゥッ! ジャンヌ、ジャンヌ、ジャンヌジャンヌ、ジャアアアアアアンヌ!」

「なっ、その熱狂はジル……じゃない!? どちら様ですか……?」

「……おおぉ! この顔をお忘れになったのですか!? 私です! 貴女の親愛なる友人(フレンド)、ぐだ子です! あの炎上する冬木で共に戦った日々を、本当にお忘れになったというのですか!?」

「フユキ……? いえ、あの」

「アァ神よッ、これは如何なる悲劇か! おぉォォォォ■■■■■■■■■■――――!」

「とっとにかく! また敵が来ました! 共闘をお願いできますか、お話はその後で!」

「■■■■■■■■■■■ーーーッ!」

 

 

---------------

 

 

 時間は少し遡る。

 

「付近に生体反応無し。逃げ切りましたよ、先輩」

「つーかーれーたー」

 

 ぐでん、とマシュさんに向かって倒れこむぐだ子さん。人間相手の逃走とはいえ、サーヴァントの体力についてくるとは、その肉体はやはり只者ではない。……いや、断じて二人の間で押しつぶし合うマシュマロについて言及したわけじゃあないよ。

 

「フォーゥ」

「フォウさんもお疲れ様です。相変わらずの健脚ぶりですね」

「あ、第一動物発見。走るのも得意そうだし一匹目の動物霊はあれでいいかしら、マスター?」

「あのリス的な生物、マシュさんのペットらしいよ。だから駄目」

「残念。私が見るに、食べても薬効がありそうなのだけど」

「食べるの!? リスを!?」

「あらマスター。リスは食べられるわよ。こうやってナイフで脳みそごと挽肉にして……」

「メディアストップ! チタタプの乱用は許されない!」

 

 なお惜しそうな目で異形のナイフ(ルールブレイカー)片手にリスのフォウ君を見つめるメディア。怯えるフォウ君とマシュさん。いや本当にそのへんの野生害獣でいいから。僕も心苦しいから。

 

 ぴぴー。

 

 と、そのとき不意に電子音が鳴り、Dr.ロマンの姿が通信機から映し出された。一瞬驚いたが、なんでも作戦中はこうして通信を取り合うことで円滑な任務達成をサポートするのだとか。

 

「さて、お疲れの所悪いが、やることが色々あるんだ。君たちが逃げている間に周辺の解析を進めたんだが……まず、空を見てくれないか」

「これは……」

「ほう……」

「……貴方、仕事モードだと意外に真面目なのね」

「あ、驚くのそこなんだ」

「大丈夫だよ、そのうち事態が深刻になったら通信とか繋がらなくなるから」

「フォローするのそこなんだ」

 

 驚きを隠せない僕らギリシャ組と、経験者ぐだ子さんによる貴重なフォローシーン……フォローってこういう使い方で良いんだっけ、ドクター?

 ともあれ、空を見上げる。 大気汚染が深刻化する現代フランスではなかなか見られない抜けるほどに蒼い空だが、そこに異様なほど巨大な光帯が浮かび上がっていた。

 

「あれは衛星軌道上に広がる何らかの魔術式だと思われるわ。そこから見ても距離感がつかめないでしょうけど、直径はおそらく北米大陸と同程度。言うまでもなく、こんな現象が1431年に起きたという記録はありません。間違いなく未来消失の原因の一つでしょう。こちらで解析を進めますから、あなた達は現地の調査に専念するように」

「突然の所長! 通信越しでも美人ですね!」

「お疲れ様です、所長。レイシフト前に管制室にゴマ饅頭とお茶を用意しておきましたから、どうぞ召し上がって下さい。わたしと先輩の分は取っておいてもらえると助かります」

「……え。このゴマ饅頭ってマシュが用意したの? てっきり厨房からの差し入れだとばかり……もしゃもしゃ」

「ちょっとロマニ!? それ最後の一個じゃない!」

「……所長。ドクターの処分はお任せします。戻ったら厨房の赤い人にいっぱい美味しいスイーツを作ってもらいましょう。もちろん先輩とヒッポノオスさんも一緒に。ドクターは抜きで」

「楽しみにしておくわ。さて、ぐだ子は分かっているでしょうけど、まずやるべきは霊脈の捜索と召喚サークルの設置。支援体制が整い次第、現地の人間と接触し事態の解明を目指します」

「了解です!」

「こちらも了解しました」

「な、なんてスムーズな進行……もしボクだけだったら句読点代わりに『敵が来たぞ!』とか言いながらぐだぐだ話を進めることになったかもしれないな……」

「馬鹿なこと言わないで。基本的なサポートはロマニに任せるわ。わたしはレオナルドと一緒に解析に専念するから、聞きたいことがあったら呼びなさい」

「……そうですか。了解しました」

「ぶー」

「露骨に不満そうな顔しない!」

 

 

 

 そんなこんなで和気藹々と探索を始めた我らカルデア一行。しかし、この超怪しいSFスーツでは現地民との接触を避けざるを得ず、捗るものも捗らない。

 ……こういうときは、ゴリ押ししても駄目だ。手を変えないと。

 

「ドクター、提案があります」

「ん、何かな、ヒッポノオス君?」

「こちらから現地民に接触しましょう。あの怪しい光帯を調査する謎の魔術組織の方から来ました――とかそんな感じで開き直れば、逆にいけるんじゃないでしょうか」

「……確かに現状は手詰まりだね。よし、試してみよう。ちょうど近くに砦があるし」

「了解です。じゃあ行きましょうか、ぐだ子さん。謎めいた感じのノリでお願いしますよ」

「おっけー!」

 

 というわけで、すぐ傍の砦――逃げまわる内にドンレミからヴォークルールまで移動していたらしい――へとアプローチを試みる。お、ちょうど外から戻ってくる兵士の一団がいるな。彼らを説得して砦に入れてもらおう。

 ぞろぞろと彼らに近づくチーム・カルデア。ぎょっと顔をこわばらせて戦闘態勢に入る兵士たち。ちなみにチーム・カルデアの構成員はSFピッチリスーツ×2、クール系騎士×1、露出マシュマロ盾ガール×1、フード目隠れ魔術師×1、ボディコン両眼バイザーお姉さん×1である。

 うむ。実に怪しい。

 そして、怪しい集団代表ことマスターぐだ子が前に進み出て、大音声で――

 

「我々は、断異夢派徒路追流(タイムパトロール)だ!!!」

「ぶっ」

 

 つい吹き出してしまった。すまない。

 だが、兵士たちへのインパクトは絶大であったようで。

 

断異夢派徒路追流(タイムパトロール)……聞いたことがあるぞ! 未来からやってくる過去改変絶許集団だ!」

「なにっまさか俺が毎晩ベッドで妄想してる転生俺TUEEEモテハーレムを断罪に来たのか!?」

「もう大人なんだからそういうのやめなよ」

「馬鹿言え、夢の中でくらいドラゴンスレイヤーにならなきゃやってらんねぇよ!」

「しかし未来とは……いや、確かにこんな破廉恥衣装は狂人か未来人にしか不可能だ」

「未来ってアレだろ、『イルカがせめてきたぞっ』ってやつだろ! 俺は詳しいんだ!」

「えっじゃあこいつらイルカってことじゃん!?」

「ワイバーンに溢れたこの世界で、イルカかどうかを精確に定義するのは難しいね」

「じゃあどうすんだ」

「ソンケイを信じるんだ!」

 

 ワイワイガヤガヤ。

 

「……ストーーップ!!! そこまで!」

 

 敵対されなかったのはいいが、このままでは話が進まない!

 

「……ゴホン。繰り返しますが、僕達は……あー、断異夢派徒路追流(タイムパトロール)です。未来の知的で素敵な技術を使って、あの空に現れた異常な光帯の調査に来ました」

「どうもー、サポート役のDr.ロマンです。最近、何かおかしな事とか起きてないかな?」

「なにもないところから声が! しかも見られてる!? これが未来の技術……!」

「おい見ろ、あの車椅子……地面から浮いてるぜ」

「ハッ待てよ、この技術を組み合わせれば、どんなところも覗き放題侵入し放題……」

「あーダメダメ、風紀が乱れすぎます」

「なるほど。見られ慣れてるから、平気であんな服装が出来るんだな」

「……ゴホン、ゴホン! とりあえず質問に答えてもらっていいだろうか! あと僕らも好きでこんな格好してるわけじゃないから、そこらへんヨロシク!」

(好きでやってるわけじゃない……?)

(特殊性癖……?)

(ヤベェ、こいつら未来に生きてやがる……)

(ああ、『未来から来た』ってそういう……)

「……異邦の方々、確かに貴方がたは何らかの未来から来たようだ。現在、この国では異常な現象が多々発生している。砦まで来てもらえれば、状況を説明できるが……」

「ありがとうございます。ぜひ、同行させてください」

 

 渋い中年の隊長から許可をもらった。やったぜ、状況が進んだぞ!

 ……それと引き換えに何か大切な尊厳が失われた気がするが、気にしたら負けだ!

 

 

 

 

 ヴォークルールの砦は酷い有様だった。外壁は無残に崩れ落ち、兵士たちの表情も暗い。

 僕たちは中年隊長に案内されるまま、指揮官室へ向かった。

 

「お茶もお出しできず申し訳ない」

「いえ、お構い無く。……この砦の損害は、イギリスとの戦いで?」

「……いいえ。……正直、我々も我々が戦っている敵が何者であるのか分からないのです」

「……詳しくお聞かせ願えますか?」

 

 中年隊長から語られたオルレアンの現状は、実に奇妙なものだった。

 処刑されたはずの聖女ジャンヌ・ダルクの復活。魔性に堕ちたジャンヌが使役する竜の襲撃。徘徊する骸骨やゾンビといった死体たち。

 

「裏で動いてる奴がいるわね。間違いなく魔術師よ。……あの光帯との関連は分からないけど」

「あ、所長。解析の方はどうですか?」

「さっぱりよ。情報が少なすぎるわ」

「その件なのだけど、ひとついいかしら」

「メディア?」

「あら、神代の魔術師にご指南いただけるとは幸いね」

「別に大したことではありませんわ、オルガマリー所長。……今、アレの解析に労力を割くのは時間の無駄です。やめておきなさい」

「メディア、それはどうして?」

「意図が見えないからよ。魔術を解析するなら、術式そのものより術者の思惑から辿る方が早いもの。術式が千変万化でも、術者の頭は人間の範囲を越えないでしょう? ハウダニットに意味が無いとまでは言わないけれど、まずはホワイダニットに注目するべきよ」

「……随分、現代的な考え方をするのですね。まるで現代魔術科の君主(ロード)のよう」

「ふふ。貴方たち近代の魔術師が、やっと私達の思考に追いついたのではなくて?……まあ、実感の無い記憶とはいえ、私が一時期21世紀の冬木にいたのは事実ですから、『現代的な』思考も影響したかもしれませんわね」

「……忠告、ありがたく受け取っておきます」

 

 魔術師同士の会話というのは、物事の明言を避けるというか猫の被り合いというか、どうも僕の性には合わない。なので、この空気をぶち壊してくれる何かがないかなあ、と――

 

「――お話中に悪いが敵襲だ! 骸骨兵とワイバーンが砦に向かっているから迎撃してくれ!」

 

 GJ(グッジョブ)ドクター!

 

 

 

 砦の外に飛び出すと、既に兵士たちが戦闘態勢に入っていた。周囲にいるのは骸骨兵たち。ワイバーンは未だ姿を見せていないが――

 

「危ないっ!」

「なッ!?」

 

 突然メドゥーサに車椅子ごと引っ張られた僕は、自分のいた場所を衝撃波めいた突風が通り抜けていくのを見た。……おいおい、あれ直撃したら怪我じゃすまないぞ。

 

「ご無事ですか」

「ああメドゥーサ、ありがとう」

「その車椅子で戦場に滞在するのは難しいでしょう。離れて指揮をお願いします」

「分かった、そうしよう」

 

 ぐだ子さんと一緒に、砦の外壁ギリギリまで下がる。マシュさんが僕らのガードに付いた。これで戦場にはメドゥーサ、メディア、アルトリアさんの3人。一方、敵は既に骸骨兵だけではなく、

 

 ギャオォォォン!

 

「あれがワイバーンかあ、いっぱい飛んでるなあ」

「……竜を見るのは生前ぶりだな。相変わらず厄介そうだ」

「ヒッポノオスさん、何か対抗策はあるんですか?」

「直撃を避けること、だね。たいてい魔術が効きにくいからメディアには厳しいか……」

 

 ハラハラしながら見守っていると、メディアはワイバーン相手をやめて骸骨兵駆除に専念するようだ。メドゥーサとアルトリアさんは連携しながらワイバーンを相手している。だが、幾ら何でも多勢に無勢であり――

 

「あぁっメディアさんが後ろから飛んできたワイバーンの衝撃波で吹っ飛ばされました!」

(メディア、一旦下がれ! とりあえずその毛皮をさすって体力回復するんだ!)

(金羊の皮! ただの毛皮と一緒にしないで!)

(あ、意外と余裕?)

(そんなわけ無いでしょう――キャアッ!)

(メディアッ!)

 

 念話中に、一匹のワイバーンが突っ込んできた。突撃(チャージ)だ、躱せない!

 

「ッ……! 令呪を以って命じる! メディア、緊急回避――」

「そこですっ!」

 

 令呪発動の直前、メディアに喰らいつかんとしたワイバーンが頭上から地面に磔にされた。それは槍……否、槍状の穂先が付いた戦旗であった。

 

「戦場の皆さん、加勢いたします! どうか私と共に武器を取ってください!」

 

 戦場を裂くその声は、しかしどこまでも清冽であり、何人も汚すことのできない美しさを感じさせた。兵士たちの間に沈黙と困惑が広がる。しかし、介入者はそれに応えることなく彼らを骸骨とワイバーンから救い出そうとしていた。

 

「ヒッポノオス君、ぐだ子ちゃん、あれは――」

「誰でも構いません、メディアを助けてくれた恩人です! メドゥーサ、メディア、共闘しろ!」

「先輩!」

「マシュ、私は大丈夫だから行っていいよ。あの時と違って戦えるんだってこと見せてやろう」

「はい! マシュ・キリエライト、戦闘行動開始します!」

 

 僕には良く分からないやり取りを交わし、マシュさんが戦場へ駆けて行く。

 見送るぐだ子さんの表情は、とても柔らかく微笑んでいた。

 

 

 

 そして第一の戦いが終わり、失意の再会が訪れる。

 ぐだ子さんは再会を喜ぶことも悲しむことも出来ぬまま、再び襲い来る敵襲に投げ込まれた。

 

 

---------------------

 

 

「■■■■■■■■■■■ーーーッ!」

 

 敵の再来。戦場に戻るサーヴァント達。

 狂乱するぐだ子さんの、憤怒と悲哀と歓喜の入り混じった咆哮が戦場に響く。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーッ!!」

 

 彼女から魔術回路の励起を感じる。マシュさんとアルトリアさんに強化魔術が発動した。

 

「■■■■■■■■■■■ーーーッ!!!」

「……約束された(エクス)……勝利の剣(カリバー)!」

 

 そして、解き放たれる聖剣。ワイバーンも骸骨兵も、敵の全てを消し飛ばしていく。

 共闘者……旗を翻す美しい女性サーヴァントが、マシュさんとともに僕らの元へやってきた。

 

「皆さん、お疲れ様でした。マスターのお二人も、ご助力ありがとうございました」

「■■■■■■■■■■■ーーーッ!!!!」

「……あの、これは」

「ぐだ子さんは泣いている……貴女という戦友を失った悲しみで心を痛めているのだろう……」

 

 困惑する共闘者――もう疑う余地はない、彼女は間違いなくオルレアンの戦乙女ジャンヌ・ダルクだ――に、自らの推測を告げる。ギリシャの神々も、ときに英雄達の心を惑わせ、そこから幾多の物語が生まれてきた。戦いに身を投じる者ならば、誰もが知る痛みだ。

 

「……ごめんなさい。マスター・ぐだ子、私はあなたを覚えていません。でも、私はあなたに悲しんで欲しくないと、そう思います」

「■■■■■■■……ッ!」

「マドモアゼル・ジャンヌ。先輩はきっと……あなたと友達(フレンド)になりたいのではないでしょうか」

「私と、友達に……?」

「はい。覚えていらっしゃらないと思いますが、わたしたちは別の時代においてルーラーのサーヴァント、ジャンヌ・ダルクと共闘したのです。先輩もわたしも、あなたにはとてもお世話になりましたから――」

「……そうだったのですね。ぐだ子、今の私はサーヴァントとしての力を十分に発揮できません。でも、そんな私で良ければ――友達に、なってくれますか?」

「■■■■■■■■■■■ーーーッ!!!!!」

「あはは、先輩、そんなに喜んで抱きつかなくても、ジャンヌさんはいなくなりませんよ」

「ええ、共に征きましょう。私の、異邦の友達……」

 




実はアルトリアさん初セリフ回。次セリフ回の予定はまだない。

参考資料:炎上する冬木でぐだ子を助けるジャンヌ・ダルク
http://www.fate-go.jp/manga_fgo/comic06.html
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。