プロローグ モンドグロッソ襲撃事件
諸君、諸君らは【アラガミ】と呼ばれる存在をご存知だろか?
【アラガミ】とは、南極大陸にて突如発生した【オラクル細胞】と呼ばれる単細胞生物によって構成された生命体だ。
【アラガミ】は何でも食らう。
土も、水も、植物も、動物も、マグマも、挙句は人類最悪の兵器、核弾頭まで。
その細胞結合はとても強固で、既存の武器では全く歯が立たない、正しく人知のの呼ばぬ神そのもののような生物だ。
そして、故に人は彼らを日本の八百万の神に例えて【アラガミ】と呼んだ。
さて、ここまで聞けば人類には滅びという絶望しかないのかと思うだろう。
実際一時期はそうだった、72億もいたかつての人類は、アラガミの登場とともに激減。
その数を約半数以下に落としていた。
だが、ある4人の天才学者達によって、これでもこの被害は想定以上の良い結果だったのだ。
その天才学者達の名は【ヨハネス・フォン・シックザール】、【ペイラー・榊】、【アイーシャ・ゴーシュ】、そして【束・篠之野(日本名 篠之野束)】。
彼らによる活躍によって、人類は想定よりも少ない被害ですんだのだ。
例えばオラクル細胞を逆利用した対アラガミ兵器【神機】、アラガミの侵入を防ぐ【アラガミ装甲壁】、そして神機を操る神機使いを支援する、元は宇宙開発のマルチフォーマルスーツ【インフィニット・ストラトス】。
彼らが開発したこれらによって人類は、少し違うだけの日常を過ごせるようになっていった。
時を程なくして、ISは女性しか使えないことが原因でか【女尊男卑】と呼ばれる思想が生まれるようになった。
少なくとも、当面の絶滅という危機から救われたからか、愚かな考えにも至ったという者もいる訳である。
さて、このような前置きはもう止めにしようか。
諸君らも早くどのような物語か知りたいだろう?
安心したまえ、ゆっくり語っていこうじゃないか。
あ、そうだった。
先に私の自己紹介しよう。
私は【
まあ私の本名を知ってる人間もいるかもだろうけど、今は黙っていてくれたまえ。
それじゃあ、お話と行こうか。
あれはそう、2年前の出来事かな?
ゴットイーターの普及によって、人類に娯楽としてISが使われ始めて3年後。
その娯楽ことスポーツIS操縦者の頂点を決める2回目の世界大会【第二次モンドグロッソ】。
その日に起こった出来事だ。
そこから、彼と彼女達の。
神喰らいの物語は始まったんだ…
二年前、フェンリルヨーロッパ支部・第二次モンドグロッソ会場
その日は雲一つ無い晴天だった事を、俺は覚えている。
俺の名前は織斑一夏、このモンドグロッソに出場していて、なおかつ前モンドグロッソ優勝者【織斑千冬】の弟だ。
沸き立つ会場、目の前で繰り広げられる美しく華麗な激戦。
宙を自在に舞い、鉄火を打ち鳴らす、美しい鉄と鉄。
正確にはタダの鉄じゃないけど、俺からしたら鉄のそれは、俗にISと呼ばれるものだ。
俺が今いるここは第二次モンドグロッソ会場。
そして今目の前で繰り広げられているのが、その試合。
神機を除けば現行最強兵器【インフィニット・ストラトス】通称IS。
それはスポーツとしても最近は知られるようになり、これはその大会というわけだ。
『入ったぁぁぁぁ!!!零落白夜ぁぁ!!またしてもやったぁぁ!!織斑千冬選手ぅぅぅ!!止まらない、止まらないぞぉ!誰か彼女を止めることが出来るのだろうか!まさかの二連続優勝目前、このまままた優勝をかっさらって行くのぁ!』
会場に轟く歓声と実況のアナウンス。
どうやら、俺の自慢の姉は勝ったようだ。
流石は千冬姉、次はいよいよ決勝戦。
俺はこの時、この後起こる事態のことなんか想像なんかできなかった。
『さあ続いて遂に決勝戦!!第二次モンドグロッソついに終幕の時が来たァ!ではまずは皆さんご存知、第一次モンドグロッソ優勝者、【ブリュンヒルデ】の名を持つ最強のIS操縦者!ご登場してもらいましょう!織斑千冬選手ぅ!!』
このまま、千冬姉が優勝して、俺がそれを祝うと思っていた。
現実は、そうはいかなかった…
『対するはドイツ国家代表!今大会のブラックホースとして、一気にここまでのし上がってきたぁ〜…はい?え、なんですって?』
俺達は、すっかり忘れていたんだ。
神機使いや、防壁のおかげて平和になったから。
『え、それホントなんですか!!?』
奴らの恐怖を、アラガミの恐ろしさを。
『み、会場の皆さん!落ち着いて聞いてください!たった今入った情報で、アラガミが防壁を突破し、この会場に向かって…』
アナウンスの言葉か最後まで言われる前に、それはアリーナの上空から降ってきた。
それは全てを食らうもの、それは絶対の捕食者、それは人類の天敵種。
【アラガミ】
アラガミ襲撃数分前、フェンリルヨーロッパ支部
バラバラと特徴的な音を立てて、フェンリルのエンブレムが刻まれたヘリが着陸する。
今そのヘリから出てくるのは、現行人類最強の部隊であり、神機使い最強の部隊だ。
最初に出てきたのは、赤い帽子を被った白髪の少女。
顔立ちからしてロシア系、何故か服を中途半端に着ていて、胸の下が見えてしまっている。
次に来たのは、これまた特徴的な帽子と服を着た少年。
顔立ちは東洋、極東こと日本系の顔。
続いて出てくるは、青いフード付きのコートを着た少年。
少しだけ目元に隈が出来ているのは何故だろうか。
そして最後に出てきたのは、深紅の髪とワインレッドのロングコートを着た少女。
顔の左目のすぐ下には一文字の傷か入っているが、それを覗いてもそれなりに整った顔ではあるようだ。
彼、彼女らの顔付きからして平均年齢は15~16歳だろうか?
しかし年端も行かないこの子達こそが、人類最強の部隊なのだ。
「お待ちしておりました!!防衛の件は聞いております、支部長はこちらです!!どうぞ!」
ヘリから出てきた彼女らを出迎えたのは、フェンリルの制服を着た男性。
彼女らは、彼の指示に従って建物へ入っていく。
「モンドグロッソの影響があるから、もう少し賑やかだと思ったんだけど、随分静かだね」
「
東洋系の少年と、青いコートの少年が話し合う。
それに釣られてか、制服の男性も。
「まあ、そうですね。でも、それでも人手がたりないんですよ。最近かなり平和になったせいか、だーれも神機使いに志願しなくなりましたから…」
愚痴を零す。
彼の言っていることは事実だ。
近年は、彼女ら神機使いの(正確には一部の)めぐるましい活躍によって、殆どの市街や街、果てには村までアラガミに襲われる確率はグンと下がった。
それ以来か、アラガミは最早一般人には関係ないと言う、謝った認識が広まっている。
「このままじゃ、神機使いまで高齢化に脅かされる日が来るかも知れませんね…」
ロシア系少女が呟く。
「それだけは避けたいですね…あ、付きました。支部、連れてまいりました」
「入りたまえ」
ドアの向こうから声が聞こえる。
声からしてかなり歳の行った女性かと思われる。
「失礼します」
彼がドアを開ける。
彼に続いて、彼女達も部屋に入る。
そこは簡素ながらも、十分な執務室であり、後ろにはフェンリルの旗が飾られていた。
「皆様極東から、遠路はるばるご苦労さまです。私はこのヨーロッパ支部の支部長を務めさせていただいてます」
老婆は、丁寧なお辞儀をした。
深々と、尊敬するような。
それを見てか、彼女らは自己紹介を始めようとするが…
「いえ、仰らなくて結構で御座います。私は貴女様方のことをよく知っております…さて、貴女様方をわざわざ極東から呼び出した理由は至極簡単で御座います」
「モンドグロッソの防衛、だろ?」
コートの少年が呟く。
それに少し驚きはするが、老婆は
「ええ、そうで御座います…ここ、ヨーロッパ支部はフェンリル本部のすぐ側、その気になればいくらでも神機使いを連れてはこれますが…些か防衛に任せれるほど優れたものが居りませんので。本来なら私達だけでやるべき事なのでしょうが…」
「いいさ、困った時はお互い様でしょ?」
ここで初めて、深紅髪よ少女が喋る。
「…あぁ!ありがとうございます!もしもモンドグロッソがアラガミに襲われ、被害が、それも国家代表に出ようものなら私は人間としても、社会人としてもお終いですわ…」
「いや、そこまで深刻にならなくても…それに、襲われたとしても、私たちが頑張れはいい話でしょ?ね、皆!!」
少女が仲間達に振り向き、笑顔で伝える。
数秒の余白はあったが、皆全員やれやれと言った表情になるが、それは合意という意味だと取れる表情でもあった。
そんな時であった。
突如、それは響き渡った。
周囲の電工灯が赤になり、警告音が鳴り響く。
数秒遅れてそのアナウンスは轟いた。
『緊急事態発生!緊急事態発生!B4地区とZ6地区のアラガミ防衛が突破されました!行動できる神機使いは、すぐさま現場に急行してください!』
「おっと、早速お仕事だねぇ〜」
少しは驚いたが、いつも通りとばかりな表情を取る少女。
彼女の仲間の少年少女達も、緊急事態ではあるのだか、妙に落ち着いている。
「さ、流石は最前線極東の精鋭部隊…ど、動じて御座いませんね…ん?ちょっと待ってください、今何地区と仰りました!?」
老婆は真逆に狼狽する。
どうやら襲撃された地区を聞き返しているようだが。
『え?あっはい!!突破されたのは、B4とZ6です…Z6?!』
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!?!言ってるそばからやられてるぅ!!!?」
「ちょ!支部長さん落ち着いて!!どうしたんですか!?」
「Z6地区は、モンドグロッソ会場からかなり近いんですよ!嘘でしょぉ!?この前このモンドグロッソの為だけに最新の防壁にしたのに何でぇ!!」
まるで想定していなかったのか、パニックになる老婆。
「だから落ち着いて下さい支部長さん!!私たちがいます!」
その一言に、老婆がピクリと止まる。
「…その為の私たちです!後は私達【
「皆、アリウスノーヴァ以来の緊急出撃だよ!!」
第二次モンドグロッソ会場は、今や阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
アリーナのシールドバリアを食いちぎり、上空から降ってきたアラガミ。
種別名は【ザイゴート】【オウガテイル】そして【シユウ】。
何れも中、小型アラガミで、特に驚異でもないと知られているアラガミだか、それは神機使いにとって。
神機使いでない一般人では、どう足掻いても勝てない絶対捕食者。
例えるなら、巨大な象に挑む1匹の蟻の様なものだ。
そう、例えISでもアラガミには勝てない。
ISがアラガミと対抗できるという話があるが、それはデマである。
ISはあくまでも神機使いのサポートであり、アラガミの気を引きつけることしか出来ない。
倒すことは不可能だ。
「国家代表のお2人は下がってください!!我々が気を引き付けます!!」
そういって、バリアの裂け目から一般兵が突入する。
一般兵とは、簡単に言うと暴徒鎮圧兵だ。
無論、アラガミに対抗する術は無い。
彼は囮になるつもりだ。
アリーナはパニック状態である。
そこへアラガミがバリアを食い破り、侵入しようものなら、逃げ遅れた何人かは犠牲がでる。
最悪、皆食い殺される。
それだけは防ぐために、彼は自らの命を糧にしようという。
「な、巫山戯るな!君たちの武装では…」
「まだ未成年の、未来ある子供を、死なせられないんでね!!各員、偏食因子塗装弾を仕様!効かないだろうが使わないよりましだ!死ぬ覚悟決めろ!!」
おぉ!と、十二人ほどの隊員達が吠える。
迫り来るアラガミ、構えるは今や名ばかり有名な銃器【AK47】。
ただ撃つ、なるべく食われないように、なるべく気を引ける様に撃つ。
「っう!!…早く逃げろ!!IS国家代表でも、アラガミ相手じゃ話は別だ、ここは覚悟の出来てるやつに任せて、さっさと行けぇ!!」
「だ、だが…」
「隊長、上だ!!」
隊長、そう呼ばれた者は最後までその言葉を聞く事は無かった。
オウガテイルが、その者の頭を食いちぎった。
鮮血が、無くなった頭部の代わりをするように、辺りにぶちまけられる。
「あ、あぁ…」
「隊長!!ッ!君、早く逃げるん…ゴァ!!」
続いて側にいた隊員もまた、ザイゴートによって下半身が泣き別れした。
理不尽に、突然目の前で奪われた命。
ISという力を持っていながらも、守れやしない人。
あまりにも残酷な現実に、涙が出かけるが堪える千冬。
耐えなければならない、今泣いてる暇はない。
今泣こうものなら、彼らの命をかけた時間が消える。
「っぅ!!(そうだ、一夏!)一夏ぁ!」
歯を食いしばり涙を堪えるが、脳裏を過ぎるたった一人の肉親、弟の顔。
アリーナに観戦に来ていたのを彼女は知っていた。
なら、彼はどこに?
パニックのこの
まさか、もう食われたのでは。
そんな最悪な結末が頭を走る。
だか、いやそんな事はないと否定の意思を浮かべる。
そうしないと、彼女の心が折れそうだった。
「一夏ぁ!!何処だァ!!」
ISのスピードを利用し、必至でアリーナを探る。
そしてようやく彼を見つけた、が。
「一夏!っ!?あれはシユウ!!一夏!後ろだ!一夏ぁ!!!」
一体のシユウが彼を襲おうとした。
この距離では間に合わない、助けられない。
彼の死の
それだけは、それだけはやめてくれと、彼女の心が叫ぶ。
だが現実は無慈悲、今シユウの翼腕が一夏を捕まえた。
そのまま、彼を食らうつもりだろう。
シユウが大きく口を開け…
「や、やめろおおおおおおおおおおおおお!!!!」
その食われる寸前の出来事であった。
シユウの脳天が、真っ二つに裂けた。
裂いたそれは空から降りてきた。
人だ、青いフード付きのコートを着た少年だ。
白いノコギリのような大きな武器を持ち、それを再度振り上げ…それは変形した。
まるで天使の羽の様な、白い巨大な顎と牙を持つ物に。
それは裂けたシユウの心臓部と思われる部位を食いちぎり、そしてシユウは活動を停止した。
「ギリギリセーフだったね、ソーマ!!」
その言葉が聞こえた瞬間、何かが降ってくる。
それは少年とは真逆の、深紅の髪を持ちワインレッドのロングコートを着た少女。
彼女もまた、その右手に大きな得物を持っていた。
大きな、明らか人が使う大きさではない、刃が紅の大鎌。
コートの少年は、彼女の言葉に気づいたか
「はぁ、リーダー…さっそく民間人を確保した」
素っ気なく返事を返す。
「うん!死んでないならOK!!」
よく見ると、その2人には共通点があった。
少女は左、少年は右だが、同じモノを手首に付けてあった。
赤い、大きな腕輪を。
「神機使い…」
織斑千冬、織斑一夏。
2人は、ここで出会った、最強の神機使い部隊に。
後に大きく人生に関わるだろう四人に。
俺は今、目の前の男(と言っても二つくらい年が上そうなだけだが)に助けられた。
アラガミに体を掴まれ、頭から食われようとしたその時、そのアラガミは目の前の男に真っ二つにされたあと心臓部を食いちぎられ、その体を黒い霧へと霧散させていった。
その男はソーマと、もう一人空中から飛び降りてきた少女に呼ばれていた。
二人の持っている武器、赤い腕輪。
俺は名前も知らないこの二人がなんなのかを知っている。
俺達を護ってくれている命を懸けた人達。
守るために人間を止めた人達。
神を食らう、神機使い。
「ゴッド…イーター…」
「で、リーダー…
ソーマと呼ばれた男は、もう一人の深紅の髪の少女に聞く。
それを聞いた少女は、少しだけ考えたような顔をした後
「じゃあいつも通りで!ソーマは左から、私は右から、コウタは
…上から?
今この場にはコウタと呼ばれそうな人はいない。
今いるのは死にかけてる一般兵たちと、何故か宙に浮いている千冬姉とこの二人だけ。
「まさか!」
いや、一つだけある。
彼女達が降りてきたヘリ。
そこから援護するとでも言うのか。
「ところで君、名前は?」
「え?俺?!」
突如深紅の少女が話しかけてくる。
俺の名前?
なんで聞くのかわからなかったが、とりあえず今は答えよう。
「お、織斑一夏…」
「織斑一夏…うん、いい名前だね!極東の人かな?私も極東生まれだから、同郷の人は嬉しいなぁ!」
その極東という言葉に、俺の頭にある人物が映る。
極東のゴットイーター最強と呼ばれる人の顔が。
極東無敗、人類最強、ISを越えるもの。
「極東?極東…日本…神機使い…深紅の髪……まさか!!」
「そんじゃあ始めようか!」
「ああ、やるか…リーダー…いや、【霧背ルナ隊長】」
その言葉が放たれた直後だった。
三体の小型アラガミが、彼女によって分解された。
本当に一瞬だった、目にも映らなかった。
俺が瞬きする度に、あれだけ恐ろしかったアラガミ達が、まるで掃除で片付けられるゴミのように、あっという間に黒霧に霧散していく。
ソーマと呼ばれた男の白い得物が振るわれる度に、アラガミは哀れに粉々になり、その青いコアを食われていく。
だか、彼も凄まじいが恐ろしいのは霧背と呼ばれた隊長だ。
彼女が大鎌をたった一振りする度に、五、六体のアラガミが刈り取られていく。
それはもう凄まじい速度でだ。
アリーナを埋め尽くさんばかりいたアラガミが、彼女らが現れてからあっという間にいなくなっていく。
最後に残ったシユウも、ヘリから飛んでくる恐らくコウタと呼ばれた人の砲弾によって、無残にもその頭部に血のような何かを吹き上げる花となった。
「ふう、お終い!いやー極東も毎回こうだといいんだけどなぁ」
「毎回襲われたら堪らんがな…」
「ちょ、例えばだってもう!」
あれだけのことをした直後でこの会話。
余裕綽々と言ったところだろうか。
まるでこれじゃあ無双ゲームじゃないか。
俺は素直にそうとしか思えなかった。
同時に、彼女達に憧れた。
あれだけの力があれば、守れるかもしれない。
もう遠くなってしまった姉を、千冬姉を守れるかもしれない。
そして、俺は…
「なりたい…いや、なってやる!
当時、家計の為ととりあえずで決めていた高校ではなく、神機使いになるための勉強へ、この後励むこととなった。
初めて、俺が心の底から望んだ、形ある夢であった。
「織斑一夏、か…いい目をした子だったなー」
帰りのヘリの中、私は一人そう思う。
あの少年を助けたあと、私たちは民間人救助へ向かった白髪の少女アリサの援護に向かい、アラガミ襲撃事態は終息した。
後にこの事件を【モンドグロッソ襲撃事件】と呼ばれ、世間へアラガミに対する考えを改めさせる事件となるが、今は関係ない。
事件の被害は、アラガミに対する誤った認識や、神機使いの人数不足もあってか、かなり酷いものもであったが。
それはフェンリル内での被害であり、民間人への被害はほぼ最小限であった。
それでも、一般兵の犠牲は洒落にならないが。
「そういえば、ルナが助けたあの子って名前なんて言うんだい!」
「あ、それ私も気になります」
コウタとアリサが私に聞いてくる。
まあ、確かに気になるかもしれない。
私なら、部隊の仲間が助けたこの名前は気になる。
私にとっては別に不思議なことでもないので、二人にその子の名前を話すことにした。
そのせいで、二人にもみくちゃにされるとも知らず。
「あの子、織斑一夏って言ってたよ。なかなかカッコイイ顔してたなぁ〜」
「「…へ?」」
「うん?どうしたの二人共?ソーマも鳩が豆鉄砲を受けたみたいな顔して…」
「「ウェェェェェェェェェェイ!!!!!!」」
二人が絶叫する、全く想像できてなかった私は耳を抑える。
ソーマもソーマで、とても呆れた顔で
「リーダー、あんたは相変わらずとんでもない事にばかり関わるな…全く」
「え、ちょ、待って!なに、なにか私不味いことでもした?!人命救助でやらかしちゃったの!?」
後にこの織斑一夏とは、極東こと日本のスポーツIS国家代表操縦者で、第一次モンドグロッソ優勝者の織斑千冬の弟だと知った。
その瞬間、私は何故か予言めいたことが頭に走った。
きっとあの子は、ゴッドイーターになるって。
確信はなかったけど、何故かそう思ったんだ。
これが二年後、彼と私の奇妙なお話の幕開けになるなんて、誰も思っていなかったんだ。
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