織斑一夏、神機使いになりたかったんだってよ   作:しじる

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Episode1:当たる確信、転がり込む面倒ごと

モンドグロッソ襲撃事件。

それは二年前、アラガミに対する誤った認識や、神機使いの人員不足によって引き起こされた、前代未聞の大惨事である。

とはいっても、それはフェンリル一般兵たちので、民間人は実はあまり被害が出ていない。

それは、当時極東こと日本から来ていた精鋭神機使い達の奮闘によって、迅速にアラガミを殲滅させれたからである。

 

というのが新聞に書かれたことである。

しかし、当時は女尊男卑が広がりつつあり、またISを上回るものは存在しないという【IS至高主義者】と呼ばれる者達も増えつつあったためか、この事実は、世論にはあまり響かず。

結局神機使いの志望者が増えることもなく、逆にそんなことが出来るのはISだけだと言う発言誰がしたのか知らないが、それもあってか女性はほとんどISの操作方面へ向かってしまった。

 

「ま、アラガミに対する誤った考え廃止のため、アラガミ講義が義務教育に折り込まれるようになっただけ御の字かなぁ?」

 

と、真面目なことを考えるのを止めて、エントランスのソファにもたれかかる私。

第一部隊隊長、極東無敗、人類最強、ISを越えるもの。

そんな御大層な呼び名がついている私はルナ。

霧背(なるせ)ルナである。

それにしても、何故こんな渾名が付いたのだろうか。

スサノオを二体一人で喰ったからだろうか?

シユウを五分で三十体切り伏せたからだろうか?

もしくはお遊び感覚でディアウスピター二体を潰したからだろうか?

心当たりが多すぎるが、少なくともこんな渾名が欲しくてやったわけじゃない。

寧ろやることがそれしかないのだ。

いやあるにはあるが、それには条件が必要であるし、休暇も必要になる。

…貯めまくった休暇があるから休暇は問題ないのだろうが…

 

「あ〜にしても暇だあ〜…何か面白いことないかなぁ…」

 

グー垂れながら、何故か目に付いた【モンドグロッソ襲撃事件】の書かれた新聞を机に置いた。

そんな事を言ったところで面白いことなど来ない。

来たら私は仕事が全てギリギリの女になりかけていないだろう。

弱い19で仕事が全てとか嫌すぎるし。

…いや、二年前は本当に仕事しかしてなかったような…

あれでもたしかお遊びでキグルミでお菓子神機…

…あれは黒歴史だな、思い出すのは止めよう。

 

「…何一人で悶々考えてるんだろ私、虚しくなってきた…ヒバリさーん、何かいい任務来てません?」

 

ソファから飛び上がり、その後ろ…と言うか下にある受付所に声をかける。

すっごい失礼極まりない行為だが、この極東に来てもう、いや、はや二年。

もうお互いのことが分かりきってしまっている。

特にこの受付所を担当しているヒバリさんは、下手したら一番付き合いの長い人だ。

こういう事もする人間、それが私だって知っている。

だから彼女はこっちへ顔を上げて

 

「あ、今ルナさんが受けれるいい任務ですか?」

 

笑顔でそう答えてくれるんだ。

 

「うん、今暇でさぁ…何かないかなぁ?」

 

「え〜と………特にないですね、あるのは殆ど第二、第三部隊に回していますし」

 

「あ〜そう…ごめんね突然声かけて」

 

「あ、いえ。こちらこそすみませんね」

 

失礼な聞き方して、突然声かけてと、お互いに分かってるって言ってもここまでされたら普通は怒るけど、ヒバリさんは優しい。

やっぱり可愛らしい笑顔で答えてくれる。

…おかしいな、私彼氏持ちだし女の子なのにヒバリさんに惚れそう。

 

そんな時であった。

あまりにも暇だったからだろうか、普段は聞き流すエントランスのテレビ音声。

この時だけはやたらハッキリ聞こえていた。

内容は、世界初のIS男性操縦者登場と言っていた。

 

「へぇ、ついに見つかったんですね。男性操縦者さん」

 

「みたいだねぇ〜」

 

もちろん神機使いにとってはどこ吹く風だ。

ISはIS、神機使いは神機使いの仕事がある。

共同戦線は二年前以降から殆ど貼ることか無くなった。

それもこれもIS至高主義者が、神機使いとの共同戦線を貼らせることを拒絶する世論がやたら強いからなのだが。

まあIS乗りの人には悪いが、私的の考えをぶっちゃけると、いてもいなくても戦況は変わらない。

最近アラガミがまた強靭に進化したのか、ISの攻撃に全く反応しなくなった。

オマケに神機使いの機能を低下させ、戦わせなくする意味不明なアラガミの登場。

止めに最近アフリカ当たりで見かけるようになったと言われる不治の病をもたらす赤色の雨など、世界はよっぽど人間に容赦がないようで…

 

「はぁ…もうリンドウさんの案件に乗って作っちゃおうかなぁ…【みんなの乗れる箱舟(クレイドル)】」

 

半ば自堕落に、そう考えてた時だった。

エントランスの出撃ゲートと呼ばれる場所から音が響く。

エレベーターである。

恐らく誰が任務から帰ってきたのだろう。

自身の右手(・・)の腕時計に目をやる。

1530(ヒトゴウサンマル)、この時間帯なら。

 

「お、ルナちゃんじゃないか!ちょっとゴメンよ〜、ヒバリちゃん、丁度いい時間だし、一緒にデート行かない?」

 

ビンゴ、タツミさんだ。

大森タツミ、第二部隊隊長で防衛班班長でもある。

私が新人時代、よくお世話になった人だ。

そして何よりも大のヒバリさん好きである。

が…

 

「あはは、遠慮しておきます」

 

よくこんなふうに玉砕している。

それでも私が新人時代からずっとアタックし続けてる所をみると、相当お熱のようだけど…

まあ、ドンマイだね。

 

「あちゃーまた駄目?はは、はぁ〜…」

 

「あ、そういえばタツミさん、第二部隊に今日新しい神機使い、それも第二世代型が来るようですが」

 

「ああ、それ私も知ってる…ツバキさんが有名なとこの人の弟だって言ってたね」

 

ふとヒバリさんの言葉で思い出す。

確かその二世代型の人は男性だったはず。

 

「で十五歳、なおかつ昔極東の神機使いに命を救われた…だったっけ?」

 

「そういえばそうだったな〜。まあ何であれ、神機使いは万年人不足だ。来てくれるのは嬉しいぜ!よーし!そうと決まれば訓練メニュー決めなきゃなぁ!!」

 

タツミさん、すっごい嬉しそう。

まあタツミさんが言う通り、神機使いは万年人不足。

入ってこないというのもあるけど、やっぱり死にやすい職でもあるからか、入ってきたところで死ぬ。

そんな事もあり、なかなか足りるということはない。

なるべく死なせないように、私達先輩が頑張ってサポートしてあげても、やっぱり死ぬ時は死ぬ。

それがたまらなく悔しい。

まあ、ネガネガしてても先へは進めない。

今はこの思考を捨てよう。

 

「ところで、その新入り君って名前なんだたっけ?」

 

タツミさん…自分のところの新入りさんなんだから、名前もツバキさんに聞いておけばいいのに。

 

「確か名前は…」

 

 

 

 

 

 

 

「「織斑一夏」」

 

 

 

 

 

 

テレビと声が重なった。

…え?

いや、今テレビでやってるのは世界初のIS男性操縦者特集だよね?

何で新入りになるはずの子の名前が?

というかあれ?

何でだろうかな、この名前に凄く覚えがあるような…

 

「コチラがその顔となります」

 

テレビの声が、一気に静寂となったエントランスに響く。

映し出されたその画像は…

 

「あ…あの時の子だ」

 

 

 

 

 

 

【極東の神機使いに助けられた】

私が助けた、私は極東神機使い。

【十五歳】

当時私は十六歳、彼は十三歳。

【有名な人の弟】

姉はあの織斑千冬。

【新聞、モンドグロッソ】

何故目に付いたか、今わかる。

 

あの時の、確信のない予感が、二年後の変なところで当たった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、いやそれでもちょっと待てぇいぃぃぃぃぃ!?!?」

 

面白そうな事は、呟いてもやってこない。

だけど、扱く面倒くさそうなことは、呟いてなくてもやって来るんだ。

後であの子だと呟いてしまった私は、タツミさんとヒバリさんに質問攻めされる事になってから、そう確信めいて思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界初のIS男性操縦者発表三時間前

 

目の前に立ち塞がる巨大な建物(フェンリル極東支部)

そう、今ここで、この建物の中で俺の全てが決まる。

織斑一夏十五歳、モテない彼女無し。

自信があるのは家事全般、守りたいものはたくさん。

夢はゴッドイーター。

その夢のため、俺は千冬姉に迷惑をかけた。

安くて、就職率安定の藍越学園への入学。

あのモンドグロッソ襲撃事件が起こるまでは、あの神機使いに会うまでは、そう考えていた。

あの日から、俺は神機使いを夢見た。

あの力で、千冬姉を守りたい。

あの力があれば、みんなを守れる!

あの、深紅髪の神機使いの背に、追いつきたい。

その一心で、俺は初めて、自分の意思で千冬姉に世話をかけた。

バイトも全部やめて、全て神機使いになるための勉強に励んだ。

友達、弾や蘭も応援してくれた。

紙テストは全て終わった、百点満点の自信満々だ。

後は適合試験、それに受かるだけだ。

教本に乗っていた、【適合試験に行けるのは、紙テストで合格を貰えたものだけ】だと。

だから紙テストは問題なかったんだろう。

あとはこれだけなんだ、これさえ受かれば…

そう意気込んで、俺は極東支部へ入っていった。

 

 

 

 

ここまでは良かった…

 

 

 

「迷った…盛大に……迷ってしまった」

 

憧れた極東支部、ゴッドイーターまであと一歩、定時三十分前に到着する予定で速めに来たのに…

 

「迷ったあああああああ!!ヤバイどうしよう!!どうしよう!!」

 

もう時間が無い、適合試験開始はあと二分前。

今頃他の紙テスト合格者の名前読み上げが始まってるだろう、やってしまった。

こんな受験本番の試験て腹を壊してやらかしたよりも酷いミス。

もう泣きたくなる。

ここまでの努力は何だった、千冬姉への迷惑は?

もうどうでも良くなってくるほどショックだった。

 

だけど神は俺を見捨ててないようで…

 

「ん、あれ?試験会場って書いてないか!ヤッタバァァ!!ギリギリ間に合ったああ!!」

 

目の前の試験会場と書かれた看板を見つけ、その看板が示す部屋へ駆け込む。

扉を開け、飛び込んだ先は…IS?

 

「…え?」

 

まさかある訳ない存在に俺は驚き、同時に興味惹かれた。

だってそうだろう?

俺の姉は織斑千冬、IS国家代表だ。

その綺麗な戦いを知っている訳で…

 

「もし、これに俺が乗れたら…神機使いじゃなくてこっちの道もあったのかなぁ…いや、神機使いだろうなぁ!」

 

だれかに言うわけでもないのにそう言いながら、ISへと手が伸びていく。

手が触れる…瞬間視界が白く染まる。

何かが、いや大量の情報が頭の中に入ってくる。

 

「な、なんだよこれ!?」

 

白が消え、いつも通りの視界が俺に戻った時。

その時俺は…何故かISを装備していたんだ。

 

「はぁ!?な、なんで男がここに!いやそれよりISを纏ってるぅ?!」

 

この時、俺は先程の看板をよく見てなかったことを思い出した。

そういえば、よく良く考えればあの看板は"IS学園入学"試験会場と書いていた気がする。

つまりここでISを動かそうが動かさまいが、俺は適合試験に間に合ってないわけで…

やっぱり、アラガミがいるこの世界に、神なんている訳ないと。

 

「俺、神機使いになりたかったのに…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルナくん、君には例の男性IS操縦者【織斑一夏】君の護衛に付いてもらいたいんだ」

 

それは突然、サカキ博士によって顔面真近で告げられた。

…いやサカキ博士?

そんな近くで言わなくても分かるから、離して下さいちょっと怖い。

 

「で、何でまた?」

 

「いや、こんな事態起きたことなんでないからね。たまたま極東支部でIS学園と試験会場を一緒の場所で行っていたら、たまたま極東支部に入りたかった子が間違えてISを動かして、たまたまそれが男で、たまたまその子はあの織斑千冬の弟。更にはたまたまモンドグロッソ襲撃事件の被害者で、たまたま極東支部神機使いの君に助けられてるていう出来すぎてると言うほどの話に、世界中がパニックさ」

 

「いや世界がパニックな理由なんていいです、寧ろアラガミ以外でパニックになるような事って何ですか?雇用枠が激減くらい?」

 

「いや、結構真面目な話なんだけど…まあそれが君だし、仕方ないのかも知れないね」

 

サカキ博士が呆れたように呟く。

いや、実際呆れられてるのかもしれないけど。

でも私には疑問で仕方ない点が多い。

 

「疑問でたまらないって顔だねぇ。【何故第一部隊の私なのか?】【何故神機使いが護衛なのか?】【どうして彼はISを使えたのか?】とか、違うかな?」

 

…相変わらずこの人は読心術でも覚えているのか覚えていないのか、やたら人の心中を当ててくる。

 

「私が答えられるのは、最初に上げた二つだけだね。最後のは現在国が調査中だ。ああ、人体実験なんて手荒な真似はしてないはずだよ。本来なら、あの子は神機使い。即ち極東支部の人間だった訳だからね」

 

「つまり彼は結局、神機使い扱いってことですか?」

 

「うん、そうなるね。本当ならツバキ君の怒号が飛んだ後、再度適合試験を受けるのがセオリーだけど、今回は事情が事情」

 

ははー、読めてきた。

つまり自分のところの人材は自分で守れと。

二年前に比べて、随分国も偉そうになりましたことだねぇ。

 

「やれやれだねぇ…で、なんで私?」

 

それを聞いた瞬間、サカキ博士の顔が非常に嬉しそうに。

あ…聞かなきゃ良かったって毎回後悔するハメになる時(主に私が)にする顔だこれ。

 

「君は、最近暇だって言ってたね。君が暇な理由は、君がいっつも一生懸命働いて、極東支部周辺にいるアラガミを、殆ど食い潰しちゃったからだって気づいているかな?」

 

「えっと…つまり?」

 

「今、極東支部にはアラガミが極少数の小型以外いないんだよ、君のおかげでね。だから暫く働きずくめだった君たちに、ツバキ君と相談して休暇を与えようとしたんだ…後は分かるね、それに君は織斑一夏を知っている、と言うより助けたね」

 

「あ、いや、それは…いやいや、でも直接助けたのはソーマだよ!」

 

「登場彼より巫山戯た戦績を、あの巫山戯た格好で達成した君の方が、彼にとっては救助者に見えたようだね」

 

ぐほぁ!?

ふ、古傷を!!

き、キグルミのことは触れないで!

それは私のトラウマなのよぉ!!?

 

「という訳でだ、君には悪いケド拒否権がないんだ。極東支部全員の総意だよ」

 

「へ?!」

 

「ああ、伝言があったね…君の彼氏さんから【リーダー、いっつも働いてばっかりで、疲れてるだろうし、リーダーのおかげで俺、いっつも助けられてきたから、だからこそもう休んでいいんだぜ!後は俺達がやるよ!長期休暇、楽しんできてくれよ! コウタより】だってね」

 

「…………………ノワアアアアアアアアイ!!?ナンデェ、サカキ所持ナンデェ!?」

 

てかコウタ!

そんな事言われたら行くしかないじゃないのぉ!!

もう、いっつも私の心をぶち壊しに来て…

 

「嬉し恥ずかしい…コウタに直接言われたら死んでたかも」

 

「死なれるのはちょっと困るなぁ。さて、霧背君。彼氏くんも、読み上げてはないけど、積りに積もってるほかのみんなのメッセージもあるんだ。そして私からもだ、【ゆっくり、満喫できなかった学園生活、長期休暇代わりに行ってらっしゃい】」

 

 

「………ふふ、うん!行ってきます!!」

 

 

そう、私は決意した。

織斑一夏護衛につく事に。

…え、ちょっと待って学園生活?

極東支部で彼の神機使いサポートじゃなくて?

 

「ああ、そういえば言ってなかったね。彼は極東支部ではなくて、IS学園へ強制入校させられたよ。神機使いになるのは卒業後らしいね」

 

 

 

 

 

 

 

「ハァァァァァァァァアア?!」

 

訂正、もう十九歳の私にとっては、休暇どころか毛が禿げそうな任務になりそうです。

 

 

《Episode1:当たる確信、転がり込む面倒ごと 終 Next Episode→》

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