自己紹介と学園長への挨拶が終わり、それから時間はあっという間に過ぎて2時間目。
1時間目は山田先生のISの基本学だったらしいけど、次の授業は私のアラガミ基本学だ。
正直基本学って言っても本当に基本中の基本で、サカキ博士から最初の頃習った【オラクル細胞ってなに?】の丸パクリだけど、まあなんとかなるでしょ!
そんな淡い気持ちを抱いて、私は教室の扉を開く。
扉が開かれると同時にチャイムが鳴り響き、授業の始まりを告げる。
「はーい、それじゃあ改めまして初めまして!!霧背ルナです!今日はアラガミ基本学の基本中の基本、【オラクル細胞ってなに?】を始めます!!」
意気揚々と、ちょっと窮屈な黒スーツで私は宣言する。
…が、沈黙。
いや、ワクワクとした表情をしているのが2人。
織斑一夏君と……金髪の美少女?
俗に言う縦巻きロールヘアーをしていてお嬢様見たいだけど、まあ興味を持ってくれるのは嬉しいね!
他の生徒がすっごい面倒臭そうにしてるけど…
うぁ、確かにこれは応えるねぇ…山田先生が落ち込むのも無理はないね。
まあ目気ないで私はやるよ!
元気だけが取り柄ですから!
「じゃあ早速教科書開いてと言うべきなんだろうけど、その前にみんなに質問!!アラガミって何?」
私の素っ頓狂な問に、みんな「へっ?」て顔してる。
そりゃそうか、アラガミを狩る神機使いがアラガミを知らなきゃ可笑しいものね。
「は、はい!【人類の天敵】【絶対の捕食者】【全てを喰らうもの】です!」
いや、すぐに復帰して返答してくれた子がいた。
それは織斑一夏、流石は神機使いを夢見てるだけあるね。
だけどその答えじゃ花丸は上げられないなぁ?
「惜しいとだけ答えておくよ!他にいるかな?」
そう言うと、本当に悔しそうに下を向く一夏君。
まあ神機使い目指していたら花丸欲しかったんだろうね。
これで正解しなくてもべつに神機使いとして働けるけどね。
「はい」
私が他にいるって聞いてすぐ手を上げた子がいた。
さっきの縦巻きロールさんだ。
「アラガミは、【単細胞生物オラクル細胞】の集合体で、脳も臓器もなく、複数の生物集団として【喰らう】という本能のままに動く生命体ですわ」
「お、その通り。花丸上げちゃうよ!君、名前は?」
本当に大正解の回答をしてくれた。
でもごめんね、私は名簿見てないのよ。
見るべきなんだろうけど面倒くさかった。
こんな事言ったら千冬さんに殺されるな…
「セシリア・オルコットですわ、霧背先生」
「OK〜!丸つけておくよ!」
ん?
でもオルコットってどこかで聞いたことがあるような?
まあ今はいいか!!
「さて、先程オルコットさんが言ってくれたように、アラガミとは単細胞生物オラクル細胞の集合体で、実はそれそのモノが複数の生物群なんだ。1個の生命体として完成しているオラクル細胞の集合体だからこそ臓器も脳もいらないんだ。だってその代わりになるコア一つあればそれぞれのオラクル細胞がそれぞれの機能を発揮するからね」
そう、オラクル細胞は1個の生命体。
だから司令系統さえあれば問題ないんだ。
その司令系統がコアという事なだけ。
「簡単に会社なんかで例えるなら、【コア】が社長で、【それ以外】が社員みたいな物かな?間違えてるかもだけど」
なんとか絞り出した例えを言ってみる。
正直私はサカキ博士みたいに例え話出すのは苦手だけど、出した方がわかりやすいって思ったから言わせてもらった。
「さてと、じゃあアラガミは【コア】を潰せば倒せるの?といえば半分正解かな?【コア】を潰したところで、司令塔のなくなった【それ以外】は黒い霧として霧散するけど死んだわけじゃない。何れどこかで新たな【コア】を作って蘇る。そう、一時的に行動不能にしているだけに過ぎないんだよねぇ…だからって放っておいて良い訳なんてない、そのために【コア】を回収する私達、【
…ふぅ、言いたいこと全部言った。
この死ぬわけじゃないのを死んだって勘違いする子が多いから、明確にしたかったんだよねぇ。
「先生〜でもそれってISでも出来るんじゃないですか?」
ありゃ?
やっぱりこんな事言う子いたか。
取り敢えず、ちゃんと正しい知識を答えてあげないとね。
「ハイハイ、今度から手を挙げてから言ってね!…残念ながらISではアラガミのコア回収はおろか、討伐すら不可能だよ」
そう答えると、殆どの生徒が半信半疑と言った様子。
挙句
「でもISは史上最強の兵器なんでしょ?絶対防御もあるし、神機使いより安全にアラガミを倒せるんじゃないんですか?」
と、神機使いなら多分全員「はぁ?」と答える回答をしてくれた。
かくいう私も言いかけた。
どうやらだいぶ間違えた知識を覚えてきちゃったみたいだね。
全部正さないと。
「えーと、ISが最強なのはあくまで対人戦。対アラガミ戦だと昔はともかく今じゃこんな事この学校で言うのあれだけど、はっきり言って【役立たず】です!」
そうはっきり答える。
やっぱり例の2人を除いてみんな有り得ないって表情。
だけれども私は解説を続ける。
「そもそもISは宇宙開発のためのマルチ…なんたらで、アラガミとの戦闘や対人戦なんて全く考慮されて作られてないんだよ?絶対防御なんて言われてるけど、もともとそれも多分宇宙線とかデ…なんたらを防ぐためのもので、オラクル細胞の攻撃を防ぐものでもないからね。大体オラクル細胞の結合はあまりにも強固で、既存の兵器では全くダメージを受けないんだよ?ISの使っている兵器はあくまでも既存の兵器の上位変化したものだしね」
こんなだけISのことを否定するようなことを言っていると怒られそうだけど、これが事実だし現実。
ISの攻撃はあくまで囮なんだ。
最近無力って事がアラガミにもわかったから無視してくるようになったのは、ISのの共闘がまだ終ってない一部では本当に大きいみたいだけど。
「かと言って神機使いみたいに神機がISにも使えるかというと否、例え神機使いがISに乗っても、神機にとってはISも食べ物みたいでね、食べちゃうんだ。これは初期の頃に篠之野束博士とペイラー・サカキ博士の合同研究で判明しているからわかると思うけどね」
逆に言うと偏食因子でISを作れれば使えるんだけどねぇ…
ISに使うだけの偏食因子を用意するくらいなら防壁作った方が生存確率が上がるから作られないんだよねぇ。
そんなことを思索し、続いて何を話そうかなと思った時に、終了のチャイムがなる。
ありゃもうそんな時間なんだ。
結局これと言った授業出来てないような気がする…
いや気にしちゃいけない、多分!
「それじゃあ今日の私の授業(?)はここまで!最初だし課題は出さないでおくよ〜。次の授業の時には【小型、中型、大型、超弩級?アラガミ分類の基本】を行うよー!教科書の5ページにあるから、予習したい人はしておいてねー!」
そう言って私は逃げるように教室を出た。
…結論から言うとすっごい緊張した。
ツバキさんの前に立つくらい緊張した!
はぁ…あれってちゃんと授業として出来たのかな?
そんな心配をしつつ、私は職員室へ戻るのだった。
霧背ルナ退出後
霧背先生の授業が終わり、大半の生徒が背伸びをしたり欠伸をしたりしている。
はっきり言って真面目に聞いていたっていう雰囲気を全く感じさせなかった。
ここはISを学ぶ学園、それもそうかもしれないが自分たちの命に関わることなんだからもう少し集中して聞いてもいいんじゃないかと思うのは俺のエゴだろうか?
いや、これが普通なのかもしれない。
俺だってあの襲撃事件がなければアラガミなんて知ろうともしなかったかもしれないし。
そういえば前の休み時間で箒と襲撃事件の会話をしたな。
「大丈夫だったのか?!」とか聞かれたなぁ。
大丈夫だからここにいる訳だけど。
そう言えば箒は剣道大会で優勝したことを褒めたら怒ってきたな。
嬉しくない優勝だったのかな?
俺が気にすることじゃないかもしれないが。
「ちょっと宜しくて?」
そんなことを考えていたら、ふと声がかけられた。
「あぁ、なんだ?」
「お初目にかかりますわ、セシリア・オルコットと申しますの。よろしくお願いしますわ」
「あぁ、よろしく!ってオルコットってさっきの授業で!」
その名前でさっきの授業の見事な回答を思い出す。
あれは本当に尊敬に値する回答だった。
そんな返答をした人が目の前にいるんだ、多分成績もいいんだろうな。
「ふふ、そんなに気にしなくても宜しいですわよ?確か夢は神機使いなんでしたっけ?」
彼女が聞いてくる。
当然俺はそれに「そうだぜ!」と答えた。
すると彼女は嬉しそうに微笑んだ後
「私も、元は神機使いを目指していましたの。お互い仲良くなれそうですわね」
と答えてくれた。
純粋に可愛いとかじゃなくて綺麗だと思った。
いいところのお嬢様なんだなぁ…
でも元はってどういうことだ?
そう思った俺は、彼女へ聞いてみた。
「元ってなんでだ?」
「私、お父様が旧式の神機使いだったんですの。それで憧れて神機使いを目指していたんですが、【お前のような優しい子が、こんな世界へ来なくていい。お前はお前の道を行け】と言われまして。ですからこのISで、お父様の手伝いができたらと思いましてこちらに来たのですが…プロのあの方が言うのですから骨折り損でしたわね」
「いや、そんなことないって!その努力は君が頑張って得たものだろ?無駄じゃないって!」
実際、あの授業で完璧な回答をしていたしな。
無駄ではないと俺は思う。
「そう言えば、その神機使いのお父さんて元気なのか?」
この時俺は気づくべきだった、神機使い【だった】と過去形であることに。
普通神機使いは一定の年齢を取らないと辞めること出来ないし、そもそも辞める人が少ない。
それはそうなる前に死ぬからだ。
つまりよく考えればオルコットさんのお父さんがどうなっているかなんて想像がついたのに。
「……殉職なさいましたわ」
「あっ…わ、悪い……」
俺は情けなくそう言うしかなかった。
「気にしないでください、お父様は誇り高く逝きましたわ…それで私が落ち込んでいたら、天に昇ったお父様に示しがつきませんわ!だから気にしないでください」
…強い人だ、そう俺は思った。
そう思うしかなかった。
親との思い出がない俺には、その思い出の大切さが解らない。
でも、親を千冬姉に当てはめると、俺には耐えられない悲しみか襲うだろう。
耐えられる自信なんてない、恐らく腐ってしまうだろう。
それを彼女は超えているんだ。
素直に凄い、安っぽいけどそう思ったんだ。
そう思った時に、3時間目のチャイムが鳴り響いた。
「あっと、ではまた後で!」
「あぁ、また後でな!!」
自分の席へ戻っていくオルコットさんを見送り、そして俺も自分の咳に座る。
さてと、次の授業は何なんだろうな?
3時間目チャイムがなってすぐ
職員室へ戻ってそうそう、私は千冬さんに捕まった。
どうやら3時間目はIS実習授業のようで、山田先生含む副担任全員集合のようだ。
まず最初に千冬さんが教室に入り、次に山田先生、それに続いて私といった順で、教師陣は教室に入りを果たす。
「では、これよりISの実習授業を始める…と言いたいところだが」
途中まで言っていた言葉を千冬さんが切る。
何で切ったんだろうと思ったけど、次の千冬さんの言葉でその疑問晴れる。
「この授業を始める前にクラス代表を決めたい。クラス代表とは、後のクラス対抗決定戦で出場や、その他多くのことをする…まあ早い話クラス委員のようなものだと思って構わん、自推薦他推薦問わん、誰かおらんか?」
んーつまり第1部隊の隊長を専願性にしたような感じなのかな?
ん、山田先生が違うって感じの表情をしてる。
そんなことを考えていると、早速手を挙げて答える女子が1人。
「はい、織斑君がいいと思います!!」
「私も織斑君で良いと思います!!」
最初の一人につられて二人目も同じように応える。
まあ予想はついていたよ、初の男性操縦者らしいしね。
当の本人は「え?」て顔をしてるけど、残念だけどこれ現実なんだよね。
このまま流れに任せて一夏君になってしまうのか?
いや、ならない。
それに待ったをかけた人がいた。
「織斑先生、自推薦します」
そう言って手を挙げた人がいた。
そして彼女を私はよく知っていた。
と言ってもついさっき知ったばかりだけど。
彼女、オルコットさんのことは。
「ほうオルコット、ではその理由を聞かせてくれ」
オルコットさんの自推薦に、千冬さんが理由を聞く。
まあそれでふざけた理由だったら怒らないといけないからね。
オルコットさんに限ってそんなことないと思うけど。
「それは簡単なことですわ、織斑一夏君は元々神機使いを目指していた方。ISの学などまだありません、そんな人に物珍しいからという理由で代表者にするのは些か酷なものだと思いますの。ならば私が立候補し、彼の代わりに慣れればと思いましたの」
ふむ、至極まともでよかったよ。
でも一夏君本人は、なにか釈然としない感じ。
確かに代表者になるのは嫌だけど、そう言われるのはちょっとムッとするって言いたげな顔だ。
「ですが、彼も男子というもの。このまま引き下がるのは癪に触るでしょう。それにクラスの皆様も納得いかないでしょう。というわけで、私と彼がISで決闘し、それで勝った方がクラス代表者になるっと言うのはどうでしょうか?」
オルコットさんのその意見に私的には全面的に同意するよ。
確かにこれなら一夏君も納得するだろうし、仮にオルコットさんに勝ったとしたらそれは素質があるってことで、結果的にクラス代表者に相応しい人は決まるわけだ。
周囲もその意見に異論はないのか静かになる。
そこへ千冬さんが決まったと判断し、今週の日曜日に代表決定戦を行うことにするのであった。
クラス代表決定戦に関して決定されてから数分後、それは突然やってきた。
「霧背先生、ちょっとお願いがありまして」
後ろから聞こえてきたその声はオルコットさんのものだった。
何のお願いか気になったし、私はその声に振り向くことにした。
「なにかな、オルコットさん!」
振り向き、そこにいるオルコットさんへ顔を向ける。
相変わらず目を引く金の縦巻きロールヘアー。
宝石のように綺麗ですんだ青い瞳。
整った顔立ちにシミ一つない白い肌。
まるで大分前にリンドウさんがお土産で買ってきた、欧州人形みたいだ。
そんな彼女の天使のよう微笑みが送られ…た後、耳を疑う言葉が飛び出した。
「よければ、私と模擬戦闘をしてくれませんか?」
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