織斑一夏、神機使いになりたかったんだってよ   作:しじる

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Episode6: エキビションマッチ、青い雫と人類最強

一夏くんとオルコットさんの戦闘が終了してから数分後。

私はオルコットさんのISが修理完了するまで、ピットの待機用ベンチで待っていた。

破壊されたビットことブルーティアーズの修復が完了次第、開始な訳だけど…

 

「やっぱり暇だなぁ…」

 

たった数分で終わるとはいえ、それでも待ち時間というのは暇なもの。

それに、この模擬戦が終わった後にオルコットさんには聞きたいことがあるし、やっぱり早くやりたいという心があるのかな。

何だかんだ言っても私、結構バトルマニアというか…戦闘狂というか…

 

『霧背先生、オルコットさんの修復が完了しました。アリーナへ出場してください』

 

とか考えてたら、いいタイミングで修復が終ったみたい。

やっとだね!

私は何だかんだで踊っている自分の心に従うままに、1週間ぶりに神機(相棒)をアタッシュケースから引っ張り出す。

 

エルデナゲル 極、ヤクトバリオン極、アイギス極。

そう呼ばれる三つの刀身、銃身、盾。

それが私の神機。

綺麗に収縮されていたそれらは、やがてそれぞれが肥大化し、やがていつもの大きさになる。

携帯形態(キャリアフォーム)と言われる、最近神機に新しく追加された形態。

戦闘時には全く使わないけど、こういう運搬に向いている。

サバイバルミッションとか、前は持ち運んで移動するのが面倒だったのも、この形態が生み出されてから随分楽になった。

ちなみにこれは、今は無所属の篠ノ野束博士とサカキ博士の合作らしい。

 

「まあ私は戦いしかできないし、こういうのには感謝が尽きるね!」

 

呟き、そして私は神機を肩に担いだ後、私はピットと出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、意気揚々とピットの外に出てみたけど、オルコットさんはまだ来てないようで。

多分、今から出るのかもしれない。

いや出てきたね。

相変わらず綺麗な機体、青を主体としていて、それが彼女の金の髪によく似合っている。

私がもし乗ったら赤い髪と青い機体で変な彩色になるね。

と、まあ自虐ネタは置いておいて。

彼女との問題は色々ある。

まず私は飛べない。

いやある方法でこれはクリアするけど普通はこんな広々したところでISと戦うなんてナンセンスだからね?

また威力はアラガミの攻撃より弱いとはいえ食らえば大怪我は必須。

あとはあの高軌道とどこまでやっていいのかだね。

どこまでとはそのまま。

神機は強力だからね、下手をすればシールドごと操縦者を喰い破りかねない。

だから捕食形態(プレデターフォーム)は基本厳禁。

ここまでは良いけどねぇ…他の攻撃がどこまで良いのかが…

 

 

「まあ考えても仕方ないか!」

 

そうさ、やばかったらその時どうにかすればいい。

あの時みたいにどうにかなるさ!

そう思った私は、ピットから飛び降り、グラウンドに降り立つ。

 

「さてと、準備は良いかいオルコットさ…いや、この際仕事じゃなくて個人で言わせてもらうか。セシリア、行けるかい?」

 

「ええ、私は大丈夫ですわよ。ご教授願いますわ霧背先生!」

 

意気揚々と答えるセシリア。

やっぱり若いっていいねぇ、いや私も若いけどさ…

あ、言い忘れるところだった。

 

「セシリア、私が勝ったら教えて欲しいことがあるんだけど」

 

「別に構いませんわよ、私が負ける気がしますが…だからと言って手を抜きませんし勝利も諦めませんわ!!」

 

『お二人共準備は宜しいですか!』

 

山田先生の放送が響く。

その声に私達2人はキリッと集中する。

 

『それではエキビションマッチ、セシリア・オルコットさん対霧背ルナ先生。始めてください!!』

 

「それでは、1曲ワルツを踊ってくれませんか先生!」

 

その言葉とともに打ち出される青の閃光。

だけど真っ直ぐにしか進まないそれは私には当たらない。

それを軽々と躱し、神機を銃形態(ガンフォーム)に切り替え散弾を打ち出す。

初撃を当てられなかった事にはさして驚くこともなく、セシリアは散弾を軽く舞うように避ける。

 

「私はワルツ踊れないから、何か別のをお願いね!」

 

「ふふ、では…タンゴなどどうでしょうか?」

 

それが私と彼女の模擬戦の切火となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナ観客席にて。

俺はオルコットさんと霧背先生の戦闘が始まるのを今か今かと待っていた。

だってあの霧背ルナの戦闘だ。

助け出してくれたあの時から俺の憧れの人。

最新版の神機使い教本には必ず名前が上がる、現人類最強の神機使い、極東無敗の人類最強。

その戦いが見れるんだ。

あの時見た戦いは小型アラガミだったから、あんなふうに早く終わったというのが今なら解る。

だからこと、本気の霧背ルナを見てみたい。

いや、本気になってくれるかは解らないけど、なんとなく本気になってくれるんじゃないかなと期待している自分がいるんだ。

 

「おりむ〜目が恋する乙女みたいに〜キラキラしてるよ〜」

 

「うわっのほほんさん!?」

 

と、物思いに耽っていた時にいきなり目の前に広がるのほほんさんの顔。

たしか本名は布仏本音だったっけ?

てか近いよのほほんさん!!

 

「まあ、あの人はどうやら一夏にとっては千冬さんみたいな存在らしいからな」

 

今度は箒が入ってくる。

何故か不機嫌そうだ。

まあ、憧れって意味では千冬姉と同じと言われれば同じなのかもしれない。

でも、あの人を守りたいという訳で神機使いになる訳では無いからなぁ。

あの人を守るってのは流石にお恐れ多い気がする。

いや、それ言ったら千冬姉もそうだけど…

たった1人の肉親だからなぁ。

 

「ん、そろそろ始まるみたいだな」

 

ふと箒が呟く。

すると山田先生の放送がアリーナに響き渡った。

それは試合開始の有無を伝えるもので、それを終えると同時に試合が始まった。

開始早々打ち出されるオルコットさんのレーザー。

生身で喰らえば蒸発しかねないそれを軽く紙のように躱し、神機を銃にして迎え打つ。

打ち出された散弾はオルコットさんに当たることなく宙で力を失い地に落ちていく。

この間約1·5秒の出来事。

非常に早い、目を疑う出来事。

そもそもISのレーザーなんて普通は視認できない。

ISのハイパーセンサーとかいう奴のおかげてやっと見える速度。

それを普通に見て避けたんだ霧背ルナは。

改めて神機使いとは人間を辞めた人間だと認識されせられる。

まあ、しっかりアラガミ基本学を学んでいれば理解できるんだけど、どうやらクラスの殆どは聞いてなかったみたいて…

 

「ウェェェェェェエエア!?」

 

大半がこんな奇声をあげていた。

箒は箒でポカーンとしている。

まあ、箒は元から神機使いのことは束さんから教えられていても見たことはないから驚くか普通。

さて、肝心の試合は今どうなっているか。

少し目を離していたがその間には進んでいなかったようで、何やら2人は話をしていた。

でもそれはすぐに切られ、またも戦いが始まる。

先手を仕掛けたのはセシリアだった。

俺との試合に使ったあのビットをなんとスカート部も含め全て展開していたんだ。

つまり文字通り本気だ、俺の時以上に。

それらが一斉に(レーザー)を噴き、今度は包囲してからではなく純粋に真正面からの弾幕を貼る。

対する霧背先生はそのレーザーの嵐を軽々と避けていく。

全く無駄の無い洗練された動き。

殆どその場から動いていなかった。

しかし、今度はオルコットさんはミサイルを打ち出す。

当たらなくとも爆風でどうにかなると思ったのか…な!?

 

「ミサイルを打ち抜いた!?」

 

そうだ、なんだってオルコットさんは着弾前にミサイルを自ら破壊したんだ。

あの距離じゃ多分ダメージは入らない。

素人の俺でもわかる。

でもなんで…

 

「目潰しか…」

 

「箒?目潰し…あ!」

 

言われて気づく。

そうだ爆風が当たらなくとも爆炎での視界妨害はあくまで人間の神機使いには効く。

煙は深く、だがオルコットさんにはISのハイパーセンサーが働き見えている。

つまり反撃の恐れなくうち放題なわけだ。

シンプルながらえぐい戦法だ。

 

「なるるんやられちゃうの〜?」

 

「のほほんさん、なるるんはちょっと…」

 

だか確かに敗北の可能性はある。

視界が見えない中であのレーザーの弾幕を防ぐなんて俺にはできない。

すこし諦めを覚えてしまった俺だった。

だが、俺もオルコットさんも、クラスのみんなもまだ知らなかったんだ。

霧背ルナの、本気というのを。

 

瞬間、煙の中から何かが伸びた。

それは的確にビットを貫き爆散させる。

オルコットさんもこの異常に気付き一気に煙から距離を取る。

 

「一体何が!!」

 

そこまで言って煙がはれ、俺は思い出しそして気づく。

そう、神機と言っても型は様々だ。

小回りが効き、回避性能と手数に長けたショートブレード。

あらゆる状況に対応でき、リーチも火力もそこそこあるロングブレード。

防御面に優れ、一撃てアラガミの頭を勝ち割ることを可能とするバスターブレード。

これら三つはブレードタイプと呼ばれ、少し前までは主軸近接武装として使われていた。

だけど近年、丁度霧背ルナの伝説が生み出される頃に新しいタイプの近接武装が産み出された。

彼女の神機の近接武装…ヴァリアントサイズ。

新しいポール型神機と呼ばれた特殊な近接武装。

その特性は長いリーチと手数。

だかそれ以上の特性は、刃を構成する特殊プレートとプレートの間にできる溝。

いわゆるフレーム間のつなぎ止めを外して、さらにその長さを伸ばすことにある。

この行為を…

 

「ラウンドファングという…」

 

俺が呟き、そこに佇む彼女は無傷で伸びた神機を元の大きさに戻していた。

何故無傷かはどうやら俺とオルコットさんにしかわからないらしい。

なぜわかったって?

簡単だ彼女の神機の盾から煙が少しだけ上がっていたからだ。

霧背先生の盾はタワーと呼ばれる種で、展開速度は遅いが非常に高い防御力をほこりどんな攻撃も通さない硬さを持つ。

恐らくミサイルの時から展開していたんだ。

そうすればわざわざ見えなくとも避ける必要がなくなる。

自身の神機(相棒)の硬さを信じて耐えるだけなんだから。

 

『流石ですわ、まさかサイズの特性をそう活かすなんて…突くものじゃありませんわよサイズは』

 

オルコットさんがツッコむ。

そのツッコミに霧背先生は…

 

『ぬっふふふ〜、セシリア知ってる?極東では常識に捕らわれてはいけないんだよ〜』

 

『そうなのですの!?』

 

いやちょっと待って何言ってるの霧背先生!

そしてオルコットさんもなんで納得してるの!!

確かに霧背先生とか千冬姉とか束さんとか色々おかしいのがいるけど常識には沿ってるはずだよ!

 

「いや、一夏もそうだからな?」

 

「いや確かに世界最初の男性操縦者だけど、てか何故バレた!」

 

「顔に書いてるからな」

 

まじで!

いやいやそんなこと言ってる場合じゃなかった!

少し余所見をしてる間に試合は発展していた。

霧背先生はラウンドファングを巧みに使い、本来なら地を薙ぐ技を振るってビットを次々と落としていく。

それだけにあらず、ついには回避行動をとるオルコットさんにすら当てて見せた。

 

『ッ!?』

 

大きく揺れるオルコットさんのIS、それを待ってたかの如く霧背先生が使った戦法は。

 

「え?こっちに向かってきてる?!」

 

何故かアリーナの壁へ突っ込んでいってるのだ。

いや、これは突っ込んできているわけじゃない!

俺の直感が叫び、そしてそれは的中した。

彼女はアリーナの観客席の下にあるゲート壁に目掛けて走っていた。

そしてそこまで来ると地を踏み出し壁へと跳び、足をつける。

 

壁蹴りだ。

 

思った時には霧背先生は視界から消え、既にオルコットさんの眼前まで吹っ飛んでいた。

何が起こったのか俺にはさっぱりだ…

壁蹴りをしたのはわかるがあんなに早くあんなに距離があったにも関わらず既に眼前。

本当に、現役の神機使いとはあんなにすごいのか…

 

『さて、そろそろ終わらせるよ!』

 

霧背先生の宣告がアリーナに響く。

そしてあれだけ接近されたらオルコットさんのISでは、ヴァリアントサイズのリーチ外への回避が間に合わない。

斬ッと一閃、叩き下ろすように放たれた刃はオルコットさんの脳天にカチ当たり、彼女を地面へと叩きつけた。

連撃はまた終わらず、叩きつけた後鎌を切り上げ彼女を強引に立たせる。

さらに腹部へ薙ぎ払いを当て壁へと吹き飛ばす。

止めに神機を銃形態に変形させ、散弾ではなく何かの弾を吐き出し、それは命中と同時に多段に彼女にヒットした。

それが終わった頃にはオルコットさんのシールドエネルギーは空だった。

 

『ついでに私のOPも空ってね!あはは』

 

結果はある程度見えていたとはいえ圧倒的なその力。

オルコットさんと俺と箒以外のクラスメイトの殆どは、この日神機使いへの目の向け方を変えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、じゃあオルコットさん、聞きたいこと聞いていい?」

 

戦闘が終わり、ISのダメージが回復してから私は彼女に聞きに行った。

もちろんお疲れ様くらいは言った後でだよ?

私の問に少し彼女は戸惑った後、思い出したように。

 

「あぁー!そうでしたわね!申し訳ありませんわ、完全に忘れてましたわ…」

 

いやいいって私は気にしていないし。

言葉に出した方がいいんだろうけどあえて出さず心で話す。

 

「さて、ではなんなりと聞いてくださいませ」

 

どうやら聞かれる準備が出来たみたいで、オルコットさんが答えた。

で、聞く前に私はこう答える。

 

「その前に一つ、かなりプライベートな事だけど大丈夫?」

 

「負けた私に聞く資格はありませんわ、どうぞ御自由に」

 

ホントにいいのかなあと思う心を仕舞いつつ、私は口火を切った。

 

「君の過去、『山道列車大破事件』について聞きたいんだ」

 

《Episode6: エキビションマッチ、青い雫と人類最強 終 Next Episode→》

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