織斑一夏、神機使いになりたかったんだってよ   作:しじる

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Episode7:山道列車大破事件

数年前、イギリスから少し離れたある場所では列車が走っていた。

周囲は美しき雪山に囲まれ、空は青く、渓谷から見える緑はその風景にアクセントを残す。

その四番車両に、彼女達は乗っていた。

そう、後に【山道列車大破事件】と呼ばれるようになるこの惨劇が起こる車両に二人はいた。

当時十歳であった、セシリア・オルコットとその母である。

本来ならこの2人には護衛がつくのだが、どうやら親子水入らずでの旅のようで、護衛は全くいなかった。

 

「キレイですわねお母さま!」

 

「ええ、とっても…」

 

2人にとっての穏やかな時間が過ぎていく。

そんな時、彼女の母親がポツリと呟いた。

 

「あの人とも一緒に来たかったわ…」

 

その言葉に過剰反応するように、セシリアが噛み付く。

 

「あんなやつ、別に来なくていいですわよ!約束だったのに、男ってどいつもこいつも」

 

どうやら彼女の父親は、この旅行に参加するはずだったようだ。

だが、何かあったらしい。

 

「仕方ないわよ、緊急の任務らしいもの」

 

「私たちの旅行よりも任務!?やってられませんわ…」

 

どうやら相当不機嫌のようで、彼女の母親もやれやれと言った表情であった。

そんな時であった。

窓の外に不自然な影が見えたのは。

 

「あれ…?赤い波?」

 

セシリアには、それが何か見えたようだ。

 

「セシリア、どうしたの?」

 

「山から、赤い波見たいなのが…」

 

そこまでセシリアが言った直後だった。

 

「アラガミだぁ!!!」

 

その声が聞こえた頃には、彼女の視界はグチャグチャになっていた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オルコット少尉、またですか?」

 

「はは、またなんですよ。申し訳ありません」

 

派手に壊れかけた神機を見て、整備士の人か激しくため息をついている。

それもそうだ、私の神機の使い方は荒い事で有名になってしまうくらいには酷い。

『無茶する旧神機使い』というあだ名がついてしまうくらいには。

 

「ともかく、今度からはちゃんとした使い方をしてくださいよ?スナイパーで零距離射撃とか聞いたことありませんし…」

 

「善所します」

 

「しないって言わないから信用されないんですよ?」

 

うぐ、言い返せない…

くうぅ、さっきの任務さえなければ今頃親子水入らずで旅行だったのにぃ…

そんなことを考えていた時であった。

突然オペレーターの顔が青くなったのは。

 

「どうしたんだ?」

 

「いや、異常な偏食波が発生されています!ちょうど第3部隊が向かった先です!!第3部隊応答願います!!」

 

オペレーターのただならぬ焦りと、それについで基地全体に響く警告音。

これはアラガミが迫ってきた証である。

それと同時に無線が帰ってきた。

 

『こちらに第3部隊、謎の黒髪の少女を確保したが何が起こっている!!アラガミが滅茶苦茶くるぞ!?』

 

『おい、まさかこの子が呼び寄せてるんじゃ!?』

 

『うんな馬鹿なことあるか!!オペレーター、早く詳細を伝えろ!あと援護をよこしてくれ!!』

 

通信からして、パニックになっている事は百も承知であった。

当然そんな通信を聞いてオペレーターも冷静を若干欠く。

第3部隊へ落ち着くようにオペレーターが伝えようとするが、そこへダメ出しのようにもう一つの連絡が届くのであった。

 

『こちら…山道列車……アラガミに追突して…横転した…………救助を…』

 

「次から次へと!てか山道列車!?」

 

「おい、あの辺の山道列車って、オルコットの…」

 

そこまで聞いて私は無我夢中で飛びだしていた。

もし本当にそうなら、そうだとするならば…

 

「頼む、無事でいてくれっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗い、何も見えない。

痛い、寒い、瞼が重い。

私に一体何が起きましたの?

体中が痛む、気に入っていた服も所々破けてそこから血が出ている。

辺りも暗い、一体ここはどこですの?

不安が自分の中を駆け巡る。

そんな時、視界のそばに映るものがあった。

それは…鉄塊に下半身を押しつぶされたお母様だった。

 

「っ!?お母様!!大丈夫!?」

 

「っぅ…大丈夫よセシリア、私は大丈夫。セシリアは…大丈夫?」

 

「私は大丈夫!お母様!まって、じっとしていて…すぐに助けるから!!」

 

私はお母様へと伸し掛る鉄塊へと手を伸ばす。

幼い私にこんなものを動かす力なんてない。

それでもやらずにはいられなかった。

 

「良いのよセシリア、もういいの」

 

でも、それに取り掛かった直後にお母様からその言葉を聞いた…

 

「自分のことだからわかるわ、助からない」

 

「な、何言っていますのお母様!助かりますわ、助けてみますわ!!」

 

私の呼びかけにも、お母様は首を横に振る。

 

「セシリア、よく聞いて。あの人のことよ、貴女は前に聞きたがってたでしょう?」

 

「今はそんなこと…」

 

「いいから聞いて、セシリア」

 

私が反論をだす前に、お母様はそう告げた。

その目は、今や瀕死とも言える人が見せるものではなく、確たる強い意思があった。

私はお母様をよく知ってはいた、だけれどもこれだけ強い目は初めて見た。

そう、これが私が最初で最後に見たお母様の力強い瞳だった。

 

「貴女のお父さんはね、確かに自分の言いたいことも普段言えないし、仕事で忙しくて会話もあまり出来ないわ。でもね、お父さんは立派な騎士よ。人類を、私たちをアラガミから護ってくれる騎士。やる時にはやってくれる人よ」

 

そこまで言ってお母様が口から血を吐いた。

お願いだから喋って欲しくなかった。

でも、私にはそれを言い出すほど今のお母様の話をやめさせたくなかった。

 

「初めてあった時もそう、アラガミに襲われたあの日、白馬の王子様みたいに私の前に現れて助けてくれた。私はダメでも、必ず貴女は助けてくれるわ…あの人は、そういう人ですもの」

 

口から血が垂れ、でもその時見たお母様の顔は今まで1番綺麗だった。

そんな時だった、外から声が聞こえたのは…

二人、1人はもう聞きなれていた声だった。

話に出ていた、私の父親の声…

何か口論をしていたようで内容はこうだった。

 

「いいか、アラガミは殆ど偏食波に釣られて行ってしまったがいつ戻ってくるかわからん。そしてここも時期に崩落する、生きてるかどうかわからん人間を救うためにお前が死なれると困るんだよ少尉!」

 

「だとしてもです!自分の家族がまだ見つかっていないというのに、退ける訳無いでしょう!?」

 

「落ち着け少尉!いいか君は騎士だろうが!神機使いという、人類を守護する騎士だ!それが規律を乱し、自身の命を危ぶめてどうする!!」

 

口論がさらに激しくなる。

これだけでも、いつもの父親ならありえない事だった。

いつもはすぐに引き下がって、ただアタマをヘコヘコ下げていたあの人が、今私たちのために言い合っている。

でも、それだけじゃなかった…口論の最後に、あの人は…お父様はこう言い切った。

 

「自分の、自分の家族すら守れない騎士など騎士ではない!!そんな騎士の座など、アラガミに喰わせてやる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言ったでしょう?お父さんは、やる時はやる人だってね?」

 

瓦礫がお父様の手によって退かされ、光が差し込む中で、お母様はそう呟き、静かに息を引き取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、私の知ってる山道列車大破事件ですわ」

 

私は、セシリアから今の全てを聞いた。

はっきり言って他人が聞いて内容じゃないだろうと思う。

それでも聞きたかった私は、彼女に頼んできかせてもらった。

あの事件の事を。

乗客の過半数が死亡したあのアラガミとの衝突大破事件。

あの謎の偏食波の正体は未だに不明だけれど、あれが原因だと言われている。

そして、セシリアはその事件の被害者であった。

 

「やっぱり、聞かなきゃ良かったね…辛いことを思い出させてごめん」

 

「いえ、良いですわ。それにあの事件がなければ、私も女尊男卑に染まっていたかも知れませんし」

 

微笑むセシリア。

そうは言うがそれでも辛い思い出だったろうに、私は彼女に話させてしまった。

自らの興味と確認のために。

 

「…『雫の狙撃手(ティアーズ・スナイパー)』、オルコット少尉の異名。確実にアラガミの急所を狙い撃つ、ワンショットワンキルの達人。あの雨宮ツバキと肩を並べた伝説の狙撃手。それが、君のお父さんであってるよね…機体名もそこから?」

 

神機使いを目指すものなら、少しは耳にする二人の名。

雨宮ツバキとオルコット少尉。

未だに二人の狙撃手としての戦績を超えた神機使いは誰一人としていない。

上司に嫌われ部下に好かれたオルコット少尉。

だからこそ私はオルコットの名に反応を示したんだろう。

そして、セシリアの返答も正しく私の予想通りだった。

 

「仰る通りですわ。私は、あの日以来お父様を尊敬するようになりましたわ。専用機もそう…渡されたとき、名前が決まってないと言われた時には既にこの名をつけていましたわ…父の意思を継ぐ『雫』の名を」

 

「…ハガンコンゴウ4体同時討伐、彼の取っておきのバレットによる自爆にて、彼を除く隊員全員を生還させた英雄…とも言われてるね」

 

「……はい。勇敢な最後だと聞きましたわ」

 

空気が重くなる。

内容がないようだからしかないのだけれども。

 

「私は、父のような人になって見せますわ」

 

セシリアがつぶやく。

確たる意志を持って。

その瞳に迷いなど一切なかった。

 

「だから、今日は模擬戦闘、ありがとうございましたわ、先生」

 

だからことこの振り返っての微笑みは少し面食らった。

私は、そんな彼女にどういたしましてとしか返せなかった。

強いな…私はたった19年しか生きていないけど、この時だけは、若い子を羨むお年寄りの気持ちがわかった気がしたかもしれない。

 

「…………そういえばクラス代表はセシリアさんになるのかな、どうなんだろ?」




この世界のセシリアのお父様は、滅茶苦茶強かった(故人)
あとゲーム内だとお笑いのタネの誤射ですけど、流石にこの真面目な話でそれは出来そうにないので、自分のバレッドで自爆という形を取らせてもらいました。
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