孤独に生きるグリムガル   作:愛と勇気だけが友達つまりボッチ

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1話

 ーー目覚めよーー

 

 

 気がつくと、冷んやりとした感触と共に身体にずきずきとした痛みを感じた。

 横たわっていた身体を起こして辺りを見回すと、真っ暗だった。

 時間が過ぎて、目が慣れてくると、どうやらここは洞窟の中のようだ。余り広くない空間が岩の壁や床に囲まれていて、時折ぴちゃんと水の雫が床で弾ける音が聞こえる。

 そういえばなんで俺、こんな所にいるんだっけ。

「……あの、誰かいますか」

 か細い女の声。俺以外にも人間がいたみたいだ。

「いるぞ」

 今度は渋めの男の声。

 そして、次々と返事が返ってくる。

 大体10人といったところか。

 俺のように返事をしなかった者を含めれば15人くらいいるかもしれない。

 え、どうして俺が返事をしなかったって?しようとしたら他の奴と被って、つい黙っちまったんだよ。

 少し話をした後、洞窟の中にいた俺たちは取り敢えずここから出ることにした。

 しばらく歩いて洞窟を抜けると、空は既に白んでいて、月が昇っていた。赤い月が。

 赤い月に違和感を感じながら、俺は他の奴を見回した。男が12人、女が4人、自分を含めると計13人。

 大勢が困惑の表情を露わにしている中、空気を読まない、耳に触るような声が響いた。

「ちゃららら〜ん。ようこそ、グリムガルへ。皆さんの案内役のひよむ〜ですよ〜。よろしくね!」

 状況が上手く理解できているか分からないが、俺たちが洞窟にいたのはひよむ〜とやらが関わっているらしい。

 他の奴もそれに気付いているのか、苛立たしさをハッキリと顔に出していたり、オロオロと戸惑っている。

「さっさと案内しろ」

 そう言ったのは、銀髪にガタイの良い男だった。眼光が鋭く、一目見て、ヤバイ奴だとわかる。関わらないようにしよう。

 そしてひよむ〜を先頭に、俺たちはその後を続いていく。歩きながら会話をしている中で、分かったことがあった。

 それは、ここにいる誰一人として洞窟で目を覚ます以前の記憶がないってことだ。どうしてあそこにいたのか、今まで自分はなにをしていたのか。唯一つ、思い出せるのは自分の名前だけ。

 ーーハチマン

 どうやらこれが俺の名前らしい。自分で言うのもなんだが変わった名前だ。

 色々と考えながら、自然と列となった最後尾を歩いていると、俺の前を歩いていた少女とふと目が合った。

「ひっ」

 ……めっちゃ怯えられた。

 俺の顔ってそんなに怖いのか?少なくともあの銀髪、レンジとかいう奴よりは怖くないと思うんだが。

 って自分の顔がどんな顔してんのかも分かんなかったわ。後で確認しないと。イケメンだといいなー(遠い目

 怯えられたことに現実を逃避する程度には、ダメージを受けた俺であった。

 

 

◇ ◇ ◇

 

「アンタたちには2つの選択肢があるわ。義勇兵になって10シルバーを受け取るか。それとも義勇兵にはならないで、他の職を探すか」

 街に到着すると、俺たちはレッドムーン義勇兵団という所の事務所に連れてこられた。義勇兵というのはモンスターを退治したり、依頼をこなしたりする傭兵稼業のようなものらしい。

 そして、俺たちに尋ねているのが自称ブリちゃんことブリトニー所長。バッチリと濃ゆいメイクを施し、女言葉で喋るが、れっきとした男だ。

「義勇兵にならなくても、金はくれんのか」

「あげるわけないでしょ、慈善事業じゃないのよ。義勇兵にならないんなら他行きなさい。身元の不確かなアンタたちを雇ってくれる所なんてあるかは知らないけど」

 ヤダー、義勇兵になるしかないじゃないですかー。

 ブリちゃんの言葉に質問をした少年は舌打ちをする。たしかランタとかいう奴だ。道中やたらうるさかったのと天パだってことは覚えている。

「いいだろう」

 銀髪のレンジが前に出てきて、銀貨の入った革袋と義勇兵の証の見習い章を掴んだ。

「義勇兵になってやる」

 レンジが決断すると、レンジに続いてチラホラと義勇兵になるものが現れる。何人かは結構悩んでいたみたいだが、最終的には全員が義勇兵になることにしたようだ。

 まぁ、他に選択肢がないからしかたないからなんだけどね。

 全員が義勇兵になると、ブリちゃんからはもう言うことも指示もないらしい。自由だが、自分のことは自分でやれって事か。

 ……めんとくせえ。

 などと考えていると、レンジが突然、丸刈り坊主の男を殴った。

 何だ?全員ぶっ飛ばして、今配られた銀貨を巻き上げるつもりか?と思ったが、そうではないらしい。生意気な目付きでレンジを見たため、強弱ハッキリさせたかったらしい。

 いったいどこのサバンナだよ、ここは。

 レンジが圧勝すると、続いてレンジは使えると思った人間を何人か引き連れて出て行った。

 レンジがメンバーを選んでいるときに、俺は目が合いそうになったが、こちらを向くと感じた瞬間、神速にも勝る勢いで目を逸らした。

 いや、レンジは頼もしいと思うよ?あいつに着いて行ったら、専業主夫になることも夢じゃない。でもさ、レンジと仲良くやっていける気がしない。

 つうか怖い。

「あちゃー、俺もレンジチームに入りたかったー。でもクヨクヨしたってしょうがないっしょ!んじゃ俺っちも行くわ!ばいびー!」

 チャラチャラとした感じの男、キッカワは一人で出て行った。

 ああ見えて、行動力はあるらしい。意外だ。

 キッカワについて驚いている間に、もう一人出ていって、今は俺を含めて6人が残っていた。

 テンパに、ガタイはいいが少し鈍そうな男、あまり目立った特徴のない男、それと女二人だ。

「……」

 誰も動こうとしない。主体性がなく、どう動いていいかわからないのだろう。

 居心地の悪い沈黙の中で、俺は考えていた。

 コイツらと行動を共にするべきだろうか。

 俺は即断する。 

 

 一人で行こう、と。

 

 一人で行動するのは色々と不便だろうが、こいつらと一緒にいる方がもっと面倒くさそうだ。

 なぜなら、ここにはリーダーに適した奴がいない。

 リーダーの欠如した集団というは足を引っ張り合うだけで、何のメリットもない。行動の指針を決めるのにも意見が割れたりすれば、必要以上に時間と労力を費やさなければならない。

 そんなのはゴメンだ。

 そもそも、俺は一人でいる方が性に合っている、気がする。

 

 一人で生きていくことに決めた俺は、ブリちゃんから銀貨と見習いの証を受け取る。

 ブリちゃんから全身を舐め回すような視線を感じた気がして、背筋がぶるっと震えた。

 ブリちゃんから逃げるように早足で出ていく際に、特徴があまりないーー強いていえば眠たげな瞳のーー少年、ハルヒロと目が合った。

 何か声をかけて行くべきか、少し逡巡した末、軽く会釈してその場を立ち去った。って、もっと堂々としようぜ、俺……。

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 あの後、まず俺は情報収集に励んだ。

 向かった先は酒場。情報収集するには定番の場所、とゲームで聞いた覚えがある。

 酒場に入ると、酒場はだいぶ繁盛しているようで、客の笑い声がしきりに飛び交っていた。

 人口密度の高さに少し辟易しながら、比較的人の少ないカウンターに腰掛けた。

 そこで俺は酒を注文して、店主から色々と教えてもらった。

 安い宿の場所やヨロズ預かり商会という金や物を預かってくれる場所、それと義勇兵について知っている話をしてくれた。

 酒一杯しか頼んでいないのに、ここまでしてもらうのは少し悪いなと思っていると

「兄ちゃんが稼げるようになったら、ドンとここで金を落としていってくれりゃあいいさ」

と店主のおっさんは笑い飛ばした。

 なんていいおっさんなんだ!と感動すると、酔いが回ったせいか目に涙が溜まり、その様子を見られてまた笑われた。

 

 しっかりと礼を告げてから酒場を出ると、紹介された宿屋に入って、これからのことを考えた。

 真っ先に決めなければならないことは、どのギルドに所属するかということだ。ギルドというのは労働者組合のようなもので、同業者が集まった組織らしい。

 新人の義勇兵はそこで技術やら魔法やらを教えてもらい、戦闘の糧にしていくということだ。

 酒場の店主が教えてくれたギルドは

・戦士ギルド

・聖騎士ギルド

・暗黒騎士ギルド

・盗賊ギルド

・狩人ギルド

・魔法使いギルド

・神官ギルド

 以上の7つのギルドだ。

 他にもギルドはあるが、この辺が有名どころらしい。基本的にはギルドの脱退も自由なので、後々入りたいギルドか他に見つかれば入りなおせばいい。

 

 どのギルドに入るか考えた時に、真っ先に候補から外したのは魔法使いだ。魔法の詠唱は隙が大きく、前衛が敵を引きつけてくれてるところに叩き込むのが魔法使いの戦闘スタイルだ。

 しかし、ソロの俺には前衛がいるはずもなく、魔法使いを選択した場合、魔法を発動する前に敵にフルボッコにされて人生終了だ。

 よって、魔法使いは駄目だ。

 

 次に神官もソロには向いていない。

 神官とは回復魔法を駆使して、自分や仲間の傷を癒したり、杖を用いて敵を殴打したりする職だ。

 回復魔法というのは魅力的だが、神官には敵を仕留める決定打がない。

 杖は基本的に敵の行動を阻害することを目的としていて、殺傷性に劣る。頭を叩き割ればなんとか殺せるだろうが、刃物を使った方が楽なことに違いない。

 

 続いて戦士。

 大剣を振り回して、敵と打ちあう職。

 攻撃力は申し分なく、戦士ならばソロでもやっていけるらしい。

 しかし、身の丈ほどもある大剣を扱うのは俺にとっては無理そうだ。

 故に却下。

 

 聖騎士の話を聞いた時、俺は聖騎士になろうと決めかけた。

 聖騎士とはロングソードと盾を持った防御よりの戦士で、回復魔法も使えるらしい。

 防御よりということで若干攻撃力は落ちるが、それを補ってあまりある性能だ。

 だから、俺は聖騎士になろうとしていた。

「まぁ、聖騎士の回復魔法は自分にはかけられないんだけどな」

 酒場のおっさんのこの言葉を聞くまでは。

 聖騎士はぼっちお断りの職のようだ。

 

 厨二臭さ漂う暗黒騎士というのは、ロングソードを使った攻撃的なスキルが多い職だ。

 敵と鍔迫り合うよりも、スキルで変幻自在に動きまわり、ヒットアンドアウェイのスタイルが基本のようだ。

 敵を倒してヴァイスとかいうものを積むことで、悪霊を召喚する事ができるらしい。どう役に立つかはおっさんも知らなかった。

 悪霊のことを抜きにしても、暗黒騎士のスタイルはソロの俺には非常に合っている。攻撃力も高く、戦士などの鍔迫り合う職よりも怪我を負う可能性も小さい。

 しかし、暗黒騎士ギルドは一度入ったら死ぬまで脱退してはいけないらしい。

 ーー汝、スカルヘルに抱かれるまで二心抱くべからず

 仮に怪我を負って義勇兵が続けられなくなった時の事を考えると、暗黒騎士は選べない。

 暗黒騎士選ぶ奴なんているのか?

 

 こうして、消去法的に残ったのは盗賊と狩人。

 盗賊とは泥棒のことではなく、れっきとした職だ。

 短剣を得物として、技術を重視した戦い方をするらしい。また、気配を消したり、鍵開けなどの盗賊らしいことも習える。

 狩人は弓と剣鉈を扱う職業で、前衛も後衛もこなせるオールラウンダーだ。

 1ゴールド払って狼犬を買うことで、狼犬を使役した戦闘を展開することも可能だ。

 

 盗賊と狩人にはソロで義勇兵をこなしていく上で、目立ったデメリットはない。

 ならばメリットは?と考えたとき、俺の中で結論は出た。

 

 狩人になろう。

 

 弓と剣鉈を扱える狩人は、弓で遠くから先手を取ることができる。

 先にダメージを与えることができれば、その後の戦闘も有利に運べるだろう。

 また、将来的には狼犬を使役した擬似パーティプレイで、ソロ性能は格段と上がるはずだ。

 

 一方で、盗賊はデメリットはないが、その真価はパーティにおいて発揮するものだ。

 戦闘においては盾役が敵を引きつけているところに強襲を掛けたり、戦闘以外でも色々と役に立つスキルを多く持つ盗賊は、1パーティに一人欲しい人材って奴だ。

 

 狩人と盗賊、ソロにおけるメリットを比較して、俺は狩人になることに決めた。

 

 これからについて、不安も多いが今日はもう寝よう。

 狩人ギルドへは明日行こう。

 ハチマン明日から本気出す……

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