――六本木――
かつて、ある戦いの舞台の一部になった六本木に、ある男が立ち止っていた。
有栖零児(ありす・れいじ)。特務機関・森羅に所属するエージェント。
任務により六本木に来ていた零児は、周りを見渡していた。
零児
「やはりここか。六本木は問題が多いようだな。いつ、閉鎖都市指定を受けてもわからんか……それにしても小牟の奴、何をやっているんだ? ここで合流する別の組織よりも遅れたら、お仕置きだな」
そう呟く零児に、金髪の男性と黒髪の女性が現れた。どちらも武装をしており、少なくとも民間人ではないのは確かだった。
???
「あー、そこのお兄さん」
零児
「ん?」
???
「その赤いジャケット……今回、合同任務を行う森羅のエージェントか?」
男性が零児に対しての質問の内容は、零児の頭から2人組の正体に気づく。
零児
「ということは、お前達がミスリルの……」
???
「そうよ。私がメリッサ・マオ。こっちが部下のクルツよ」
クルツ
「クルツ・ウェーバーだ。よろしく頼むぜ。エージェントさんよ」
零児
「ああ、よろしく頼む」
――ミスリル。
ミスリルとは、どの国家にも所属せず、平和維持を主に活動している傭兵組織。
今回の任務では、森羅、ミスリルともう一つ、ある組織と合同で任務を遂行するのだ。
マオ
「あら? 確か、そっちは三人組って聞いてたんだけど……残りの2人は?」
零児
「ああ、1人は少々遅れて到着する。もう1人は……いつ来るかわからん。すまないが、もう少し待ってくれるか?」
マオ
「OKよ。問題ないわ」
クルツ
「その2人、カワイコちゃんだったいいなぁ」
マオ
「クルツ、変な事はしないようにね」
クルツ
「わかってますよ……っと、あっちから誰か来るぜ」
クルツが指を指した方向には、ポニーテールの少女がランランとしながらこっちへ向かっていた
???
「な~のじゃ♪ な~のじゃ♪」
クルツ
「おおっ! オレのカンが当たったぜ! ビンゴだ!」
マオ
「クルツ! 調子に乗らない!」
かわいい女の子だという予想が当たり、はしゃぐクルツ。そんな態度にマオがクルツに注意をする。
やがて、少女が零児達の元にたどり着くと、少女は零児の方へ向き、陽気に声をかける。
???
「おう、零児! 待った~?」
零児
「遅いぞ小牟(シャオムウ)! 自分の立場や仕事、分かってるんだろうな?」
小牟
「うるさいの! 色々とあるんじゃ! 色々と!」
少女の名は小牟。
零児のパートナーにして、同じエージェントである。
その前は零児の実父である正護(しょうご)のパートナーであった。
一見は少女に見えるが、実は狐の妖怪であり、年齢は既に700歳を超えている。本人曰く、永遠の765歳らしい。
零児
「ミスリルよりも遅れてきたら、文句の一つや二つあるのも当たり前だろう」
小牟
「ミスリル? ……ああ、お主らが、今回、協力する傭兵じゃな。ワシは小牟じゃ!」
どうやら、マオとクルツの存在に気付いてなかったらしく、彼女達の方へ視線を移し自己紹介をする。
マオ
「メリッサ・マオよ。よろしくね」
クルツ
「クルツ・ウェーバーだ。よろしく、小牟ちゃん!」
お互いの自己紹介も済み、零児は残りの一人について小牟に訊く。
零児
「小牟、もう1人の博士は?」
小牟
「博士はまだ来ちょらんのう。新兵器を持ってくるとは言っとったぞ」
マオ
「博士ってことは……残りの一人って、科学者かなにか?」
小牟
「そうじゃ。じゃが、年齢不詳でのう」
クルツ
「へぇ、ミステリアスなんだな」
小牟
「ほ~んと、一体何者なんじゃろうな」
零児
「年齢に関してはお前も怪しいもんだがな」
小牟
「うるさいの! ……所で、今回はミスリルと一緒になにをするんじゃっけ?」
今回、ミスリルと何の任務をするのか忘れてしまった小牟。そんな彼女に零児は呆れながら説明する。
零児
「大事な任務をわすれるんじゃない。まず、このあたりで出たという妖物の反応を調べる。その後、渋谷でBSAAと合流する」
クルツ
「BSAAっつったら、ゾンビ専門の組織だろ? またあの組織と合同か」
零児
「なんだ? ミスリルもBSAAとは会っているのか?」
マオ
「そりゃ、傭兵だからね。一緒にゾンビ退治したこともあるわ」
クルツ
「だけど、ゾンビと戦うのはゲームの時だけにしたいぜ」
零児
「まぁ、気持ちもわからんでもないがな」
マオ
「ところで、お宅もBSAAと会ったことあるの? あまりゾンビと関わらないと思うけど……」
マオの質問に零児と小牟は前回の戦いを思い出す。境界線や、偽物の世界で旅した、あの冒険を……
小牟
「実は、少し前にひょんなことから急遽、共に戦う事になったことがあるんじゃ」
しかし、森羅の二人は詳しいことを話さず、ただ“偶然”に急遽、合同任務をしただけということを伝える。
クルツ
「ふぅん……ま、とにかく、その博士が来るまでに、任務を遂行しない?」
零児
「そうだな。小牟、何か感じるか?」
小牟
「ふむ……おかしな気配はあるようじゃな。妖怪達、出て来いや!」
マオ
「どっかで聞いたことあるセリフね……」
クルツ
「姉さん、あそこから何か出てくるぜ!」
???
「……」
クルツが指した方には、突然どこからか妖物達が現れた何匹か現れた。
その姿はカラスに酷似しており、それぞれカラーが付いた服や帽子を身に着けていた。
マオ
「お目当ての妖物達が出てきたけど……カラス?」
クルツ
「随分とオシャレなカラスだな」
零児
「だが、こちらに敵意があるのは確かなようだ。……来るぞ!」
小牟
「うむ! お主ら、用意はよいな?」
クルツ
「もちろんだぜ!」
マオ
「こっちにはスペシャリストがいるからね。出来る限りやるよ」
零児
「そいつは重畳。行くぞ!」
――――――――
戦闘が始まってから数分が経とうとしていた。
数としては零児達が不利だったが、質としては勝っていた。
しかし、数が減ったら増援が現れるの繰り返しで苦戦していた。
マオ
「こいつら、普通の武装は効くから大したことはないけど……数で攻めてきてるわね」
小牟
「もしかしたら、ただ時間稼ぎをしたいだけなのかもしれん」
クルツ
「こいつらにそんな組織的知能があるのかよ?」
零児
「指揮官がいるとしたら、可能性はあるな。博士が遅れているのも、もしかしたら……」
零児が、まだこの場に居合わせていない博士に何かあったのではないかと思っていた。
しかし、まだ敵が出てくるため、安否の確認が取れずにいた。
マオ
「速急に終わらせる必要があるわね」
零児
「ああ。行くぞ!」
――――――――
敵が全滅し、周囲にまだ気配があるか小牟に探らせていた。
小牟
「……どうやら、これで終わりらしいのぅ。ワシの妖物センサーも反応なしじゃ」
マオ
「便利なセンサーね」
クルツ
「ふぃ~、やっと終わったぜ」
戦闘が終わったことを知ると、クルツは疲れたようにその場に座り込む。
その様子を見た零児は、マオとクルツに近づき労いの言葉をかける。
零児
「メリッサ曹長、クルツ軍曹もお疲れ様」
マオ
「普通にメリッサって呼んでも大丈夫よ」
クルツ
「俺もクルツでいいぜ、零児」
零児
「フッ、そうか」
マオやクルツに呼び捨てでいいという誘いに、零児は笑って承諾した。
すると、クルツが話を切り替える。
クルツ
「それよりもよ、あとの博士って奴、大丈夫なのかよ?」
マオ
「襲撃を受けてる可能性もあるわね」
小牟
「大丈夫かのぅ……零児、博士と連絡は取れんのか?」
零児
「ああ、まだ取れないままだ……ん?」
ふと耳を澄ますと、何かが走っている音が聞こえ来た。
その音が段々と近づいてくることからして、どうやら零児達の方に近づいて来ているようだった。
クルツ
「この音……車か?」
小牟
「それにしては、ちとでかすぎじゃぞ?」
マオ
「あ! あれを見て!」
音を出していた物の正体は、大型車両をも超える大きさを持った車両だった。
その車両のカラーは零児や小牟のカラーにどことなく似ていた。
零児
「なんだ、これは……!」
マオ
「明らかに乗り物みたいだけど……」
小牟
「デカアアアアイ! 説明不要!」
クルツ
「小牟ちゃん、テンション高すぎ……って、誰か出て来たぞ」
車両から運転していたであろう白い髪の女性が姿を現した。
???
「ふぅ~、着いたってところ? やっと」
クルツ
「こ、これは……また見事な美人!」
???
「あら、嬉しい事をいってくれるのね。後でサービスしちゃおうかしら」
クルツ
「マ、マジすかっ!? ぜひ、お願いします!」
サービスという言葉に鼻を伸ばすクルツ。
マオ
「全く、このスケベ男は……それより、アンタが森羅の博士?」
???
「そうよ。アタシは森羅の装備課課長、裏嶋千鶴(うらしま・ちづる)よ。常に博士と呼んでね。アナタ達がミスリルから派遣されてきた?」
零児
「そうだ、裏嶋千鶴(うらしま・ちづる)博士。女の方はメリッサ・マオ。男の方はクルツ・ウェーバーだ」
マオ
「よろしくね、博士」
クルツ
「さっき言ってたサービス、期待するぜ」
裏嶋
「あれは冗談よ、冗談」
クルツ
「そ、そんなぁ~」
裏嶋のサービスが冗談だったという事実に落胆するクルツ。余程、期待していたようだ。
小牟
「残念じゃったの、クルツ。女はそんなに安くないんじゃ!」
零児
「それよりも博士、そのでかい車は一体なんなんだ?」
零児は裏嶋が乗ってきた車両について訊く。
彼女は、それを待ってましたと言わんばかりに歓喜のようにその車両の説明をする。
裏嶋
「よくぞ訊いてくれたわね! これぞ、我が装備課が誇る局地特務車両“、龍亀一號”(りゅうきいちごう)! 50名の隊員をラックラクに収容できるのよ! ラックラクに!」
マオ
「へぇっ! 森羅の技術は凄いわね!」
龍亀一號の説明にマオは感心する。
しかし、零児はその説明である推測に辿り着く。
零児
「博士、合流時間が遅れたのはもしかして……」
裏嶋
「そうよ。走れる場所が限られてるから」
クルツ
「確かに、この大きさだったら遠回りするしかないよな」
マオ
「だけど、今回の合同任務はそんな遠出にはならないはずよ。もっと小回りの効く車の方が良かったんじゃないの?」
裏嶋
「今回はミスリルやBSAAとの合同でしょ? 華麗にお披露目をしようと思って」
零児
「あのなぁ、博士、BSAAへ接触するのは俺と小牟、それにメリッサやクルツだけだぞ。お披露目なんてしなくてもいい」
裏嶋
「ちょっと、ロマンがないんじゃないの?」
零児はBSAAと合流するのにわざわざ龍亀一號という大型車両は必要ないと主張するが、裏嶋はロマンで反論する。
零児
「ロマンじゃ飯は食えんし、敵と戦う事もできん」
クルツ
「そんな真面目じゃなくてもいいじゃねえかよ、零児。旅は道連れってやつだぜ?」
小牟
「全くじゃ。ほんと、面倒なダメロマンチストじゃ」
クルツは別にいいだろうと言い、さらには小牟はダメロマンチスト言った。
零児
「……お前は後で尻をつねる」
小牟
「あ、新しい……」
小牟の発言に零児は怒ったらしく、彼女の尻をつねるというお仕置きを宣言した。
小牟は頬を赤らめながら尻を抑えるように手で触る。
そんな様子にマオはため息を吐いた。
マオ
「アンタ達、いつもそういう風なの? いくらパートナーだからって、やって良い事と、やっちゃダメな事あるのよ」
クルツ
「ほんとだぜ。……零児、その役、俺にやらせてくれないか?」
マオ
「……アンタは尻をつねるのとは別のお仕置きを与えるわ」
マオもクルツに対して零児のお仕置きとは別のお仕置きをする宣言をした。
裏嶋
「プレイは車内でやりなさいね。……ほら乗って! 渋谷に向かうから」
零児
「やれやれ、こんな大仰な物に乗ってBSAAのメンツに会うのか……笑われるぞ」
クルツ
「むしろ、絶賛されるんじゃないか?」
マオ
「ま、良いんじゃない? こんな始まりでも。ね、小牟」
小牟
「そうじゃのう、これなら100人乗っても大丈夫じゃろう」
マオ
「ハハッ、そんなに乗れないんじゃないの?」
クルツ
「だよな」
零児
「やれやれ、先が思いやられるな……」
零児はそう思いながら、龍亀一號に乗って渋谷に向かう。
――祭りの始まりは、この時から既に始まっていたのかもしれない……
初めまして! 作者のcokoです。
この小説に関してはこういう形で進行していきます。
無事に完結できるようにしていきます!
さて、今回のお話で「フルメタルパニック」より、メリッサ・マオとクルツ・ウェーバーが参戦です! 主人公は後に出させるつもりなので、ご安心ください。
それでは、また次回!