暗殺教室~月と星~    作:霊花

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改稿中です。


勉強会の様子とかは……多分番外編書くと思います。


中間テストの時間2

零:Side

 

―次の日。

 

「「「「「「「「「今日は先生、さらに増えてみました!」」」」」」」」」

 

「「「「「「増えすぎだろ!?」」」」」」

 

昨日は一対一だった筈なのに、殺せんせーの分身四体が生徒一人について教えるという体制。

 

先生も昨日のあれでさらにやる気が出たようだ。そりゃあ、スピードで解決できないこともあるとか言われたらね、スピードが自慢の殺せんせーなら見返してやりたくもなるわ。

 

でも、頑張りすぎてなんか分身が変な事になってるような……。

 

「分身、雑になってるよね」

 

そう、たくさんの分身を作ることに注力しすぎて一体一体が雑になり、服装なども変わっていたり。っていうか、雑になったことで分身によって服装やヅラが変わるとか、先生本当にどんな方法で分身作ってるんだろ?

 

前の方の席で渚も、そんな先生に苦笑いしていた。それでも手を止めないし、すぐに問題に向き合うあたり、彼のやる気の度合いがうかがえた。昨日の勉強会の甲斐あって、サクサク進んでいるようだし。あそこの分身だけちょっと嬉しそうな顔してた。

 

___________________________________________

 

時間は経ち、四時間目終了後……。

 

ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ……。

 

さすがにあそこまでするといくら殺せんせーでも疲れるようで、荒い息で教卓にぐったりと倒れている。今なら殺れるかな。

 

ヒュッ、ヒュン。

 

試しにナイフ振ってみたけどいつも通り避けられた。そこはさすが殺せんせーといったところ。いっそ投げた方が当たったか……?

 

とか考えながらナイフを振り続ける。殺せんせーは少しは休ませてください!と抗議してくるけど無視。

 

「なんでここまで一生懸命先生すんのかねー」

 

岡島の言った言葉に、殺せんせーは息を切らしながらもヌルフフフと笑った。

 

「それはもちろん、君たちの点数をあげるためですよ。そうすれば……フフフ」

 

あ、なんかへんな妄想してるっぽい。顔が更にだらしなくなった。あのピンク色の顔はホントダメな、邪なこと考えてる顔だ。

 

ただ、その様子を見ているクラスメイト達の反応は。

 

「いや、勉強はそれなりで良いよなー」

 

「百億あれば成績悪くてもその後の人生薔薇色だし」

 

「ニュヤ!?そ、そういう考えをします!?」

 

その様子に殺せんせーが戦慄していた。いやまあ僕としては、どちらの考えも分からなくはない。

 

だってこのクラスは。

 

「俺たち、エンドのE組だぜ?」

 

そう。元々は(・・・)、落ちこぼれの、人生終わっているだとか思われているようなクラス。落ちてしまえばもうどうしようもない、そういう考えが根付いてしまっている。

 

だからまあ、そういうとは思ってたよ。渚は昨日のことがあったから微妙な顔してその様子を見てるけど。他のみんなはその従来の考えに縛られている。

 

 

 

……けど、その考えをこの担任が許す筈がない。

 

「……そうですか。よくわかりました」

 

少しの間を開けて、そう言いながら殺せんせーは立ち上がる。その顔にはバツマークを浮かべていた。

 

さっきまでと殺せんせーの纏う気配が変わっている。

 

「今の君たちには暗殺者の資格はありません。全員校庭に出なさい」

 

そう言って殺せんせーは外に出て行った。みんなはいきなりのことで戸惑いながら、でも言われた通りに校庭に向かっていく。

 

僕と渚は顔を見合わせ、同時にため息をついた。お互い、先生が何を気にしているのかが分かっているから。

 

と、いきなり横にシュバッと殺せんせーの分身が一体現れた。思わず二人でビクッとする。

 

「お二人は既に分かっていそうですね。ですが一応来てもらいたいです。特に零君には参考がてら聞きたいこともあります」

 

そう言い残して分身はいなくなった。僕は一瞬あっけにとられてたけど、渚は一応行こうかな、と言っており、とりあえず一緒に行くことにした。すぐそばにいたカルマがふーん、と面白そうに笑っていた。

 

 

 

外にたどり着くと殺せんせーはズルル……とサッカーゴールをどかし、障害物が何もなくなった校庭でくるっとこちらへ振り返る。その先には何が何だかわからない、という顔をした生徒たち。

 

そこに烏間先生とビッチ先生が片岡さんに連れられてやってきた。どうやら殺せんせーが呼んだ模様。

 

「イリーナ先生、零君、プロの殺し屋として伺います」

 

「え?」

 

「何よいきなり」

 

いきなり話を振られ、戸惑いの声を上げる。けれど

 

「あなたたちは仕事をするとき用意するプランは1つだけですか?」

 

……その質問でなんとなく、言わせたいことと言いたいことが分かった。それで参考がてら、ね。

 

「いいえ。本命のプランなんてうまくいくことの方が少ないわ」

 

「僕はいつもいざという時のための予備として、いくつかのプランをより綿密に組み立てているね」

 

「……こんなの、暗殺の基本よ」

 

まあ、僕の場合大抵本命のほうだけで済んじゃうけど。不測の事態っていつ来るか分からないし。

 

結構前に、予備を使わないといけない事態に陥ったときが確かにあったけど。その時は内心動揺しながら、過去の自分とそれを教えてくれた師匠に感謝したっけ。あれ以来、自分の立てる最良プランに絶対がないことを知った。

 

「では次に烏間先生、ナイフ術を教える時に重要なのは、第一撃だけですか?」

 

「……第一撃はもちろん最重要だが、次の動きも大切だ。強敵相手では高確率で第一撃は躱される。戦闘ではその後の練撃をいかに繰り出すかが勝敗を分ける」

 

まあ、そうだよな。僕も烏間先生との模擬戦は、ナイフ運びを如何にスムーズに行うかを重視してやってるし。

 

さて、ここまでの話。先生の伝えたいことが分からない人にとっては何が何だか、というような話だろう。

 

「結局何が言いたいんだよ」

 

前原の言ったその言葉がみんなの心情をよく表している。

 

それに対して、校庭の真ん中に移動していた殺せんせーは。

 

「お三方のおっしゃる通り、自信のある次の手があるから、自信に満ちた暗殺者になれる。では、今の君たちは?『俺たちには暗殺があるからいいや』と、勉強の目標を低くしている」

 

そう言葉を紡ぎながら、いきなりその場でくるくると回転し始める殺せんせー。だんだん回転スピードが速くなって……ってちょっと待って何する気!?

 

「それは、劣等感の原因から目を背けているだけです。もし先生がいなくなったら?誰か見ず知らずの殺し屋に殺されたら?暗殺というよりどころを失ってしまえば君たちには、劣等感しか残らない」

 

その言葉と共に周りに強風が吹き荒れ、先生の姿が直視できなくなる。

 

「……そんな君たちへ、先生からのアドバイスです」

 

そして、先生の姿は

 

「第二の刃を持たざる者は、暗殺者を名乗る資格なし!!」

 

校庭を埋め尽くす巨大な竜巻になり、僕たちに向けて高らかに言い放つ先生。

 

轟音を立てて校庭のど真ん中を、竜巻が吹き荒れ続ける。

 

……強風を周りに吹かせながらも僕らを吹き飛ばさないようサイズを調整しているあたり、やっぱりさすがだなと思った。この竜巻、離れたところからもよく見えるよね。騒ぎになったりしないかなぁ……。

 

 

と、現実逃避の考えに走っている間に、段々と風が弱まっていき、その竜巻が収まる。すると、そこには。

 

すごく綺麗に整備されたグラウンドが現れた。

 

雑草だらけだし凸凹で荒れ放題だった校庭が見る影もない。なんかトラックの線までしっかり引いてある。

 

先生は、地球破壊するとか言っている生物が土地平らにするくらいはなんてことない、と言い放っていた。

 

「さて、もしも君たちが第二の刃を示さなければ、先生を殺すに値する者はここにはいないと判断し、校舎ごと平らにしてここを去ります」

 

殺せんせーはかなり恐ろしい宣言をしていた。

 

「……いつまでに?」

 

「決まっています。今回の中間テストです。全員50位以内をとりなさい」

 

「「「「「「……な!?」」」」」」

 

それは、落ちこぼれと言われたこのクラスに対してはあまりにも高い目標。僕が渚と共に昨日考えていた目標でもある。

 

そしてそれは、このクラスに元々用意してあった救済措置。本校舎のクラスへ戻るための条件の一つでもあったはずだ。

 

……昨日のあの会話は、フラグだったかぁ……。

 

ほぼ全員が驚く中で先生は言う。

 

「先生は君達の第二の刃をしっかり育てています。本校舎の教師に劣るような、とろい教え方はしてませんよ。ですから、自信を持って振るって来なさい。このミッションを成功させ、笑顔で胸を張るのです。自分達が暗殺者であり……E組である事に!」

 

 

それを聞いて。

 

……さて、と僕は考える。

 

やる気を問答無用で引き出されたみんなを見る。多分今の調子であれば先生の言う通り、みんながその条件をクリアすることは不可能ではない。かなり厳しいのは確かだけど、可能性は0ではないのは確かだ。

 

けど、僕の頭の中には一つの懸念事項があった。

 

 

昨日の職員室の、あの出来事。

 

 

 

 

 

……浅野理事長、変な事してこないよね?

 

 

零:Sideout

___________________________________________

 

渚:Side

 

中間テスト当日。

 

定期試験は全校生徒が本校舎で受ける決まりになっている。つまり、僕等E組だけは完全アウェーの中での戦いになる。

 

ついでに、監督の先生は本校舎の教師(ちなみに今の時間はD組の担任)。指で机を叩いたり、ワザとらしく咳をしたり、明らかに集中力を乱すための妨害をしてきている。

 

―けど、まあ。

 

「うわあ!来た来た!」

 

「ナイフ一本じゃ殺せねーよ!」

 

「どうすればいいんだよこの問4!!」

 

 

―そんな妨害を気にする余裕なんか無いんだけどね、僕たちは。

 

テストという名のコロシアムの中。そこに投入されてくるは問題という名のモンスター。

 

僕らはシャーペンというナイフで応戦する。

 

その問4は恐ろしい巨大モンスターの姿となって襲い掛かってくる。分かっていたけど一問一問が難関の問題。このままだと問題に殺られる……どうすれば。

 

と、僕が攻めあぐねているその横から

 

ザシュッ

 

零君があっという間に、迫ってきていた魚型の問4を三枚おろしにしていた。

 

「渚、よく見て(・・)みなよ」

 

そんな声が響いた気がした。

 

……あ。

 

そういわれて思い出す。先生が懇切丁寧に教えてくれた解法(おろし方)。一箇所ずつ、構成する部品を見てみれば、さっきまで凶悪なモンスターだったのがただの魚に見えるようになった。

 

「よく目を凝らしてみれば単純単純、楽に解けるんだよね~」

 

そう言いながらさっさと先へ行く零君。席は離れていてもなんかそんな感じが伝わってきた。

 

これなら、いける!!

 

全員が問4を倒し、みんなが思った。

 

問5も、

 

ザシュッ

 

問6も、

 

ザクッ

 

問7、問8、問9、問10も……。

 

 

……え?

 

次の瞬間。

 

僕等は後ろから、見えない問題に殴られていた。

 

渚:Sideout

___________________________________________

 

中間テスト結果発表日。

 

廊下では烏間先生が本校舎に電話をかけていた。

 

教室内を覗けば、空気が明らかに落ち込んでいる。

 

「これは一体どういうことでしょうか。公正さを著しく欠くと思いますが。それにどう考えても普通じゃない」

 

 

―テスト二日前に、全教科のテスト出題範囲を大幅に変えるなんて。

 

 

その一言に含まれる内容が、教室内の雰囲気の原因だった。

 

そう。テストの後半に出てきた問題。その全てがもともとのテスト範囲になかった問題だったのだ。おかげで、E組のほとんどが学年50位に入ることが出来なかった。

 

〔わかってませんねぇ。えっと、烏間先生?急な範囲の変更についてこられるかを試すのも方針の一つ〕

 

それに対して本校舎のほうでは、浅野理事長直々に教壇に立って全クラスに変更部分全範囲を教えあげたという。

 

E組にその変更を伝えなかったのは明らかにワザと。浅野理事長の仕組んだ罠だった。

 

一方の殺せんせーは。

 

「この学校のシステムを甘く見すぎていました。先生の責任です。皆さんに顔向けできません」

 

と、教室にて誰よりもどんよりとした空気をまといながら、生徒に背を向けて言っていた。が、

 

ヒュヒュンッ

 

「ニュヤッ!?」

 

殺せんせーに飛んでいく二本のナイフ。殺せんせーはあわててかわす。

 

「ねえ、顔向けできなくていいの?」

 

「こっち見ないと僕たちが殺せんせーの事殺しに来るのが見えないよ?」

 

ナイフを投げたのは零とカルマ。

 

二人は殺せんせーのもとに行くと、バサッとテストの解答用紙を広げる。

 

「僕達、テスト範囲変わってもあまり影響なかったし」

 

 

赤羽カルマ

 

合計494点、187人中5位。

 

 

桐紫零

 

合計495点、187人中3位。

 

 

「……すげぇ」

 

「50位以内どころか5位以内……」

 

二人のその成績に、クラスのほぼ全員が驚いている。

 

「先生が俺の学力に合わせて余計なところまで教えたからだよ」

 

「僕も似たような感じだね」

 

先生は、カルマがもともとの範囲をサラッとできるようになると、ここもやりましょう、もうちょっと先も、という風にどんどん先まで教えていっていたのだ。

 

そして零の場合は、中学校に通っていなくてももっと先まで自分で勉強していたので、国語だけに注力することができると同時にカルマ同様先の先まで教えられていた。

 

 

そして、あと一人。

 

「ねえ渚君。ちょっとこっち来てテスト見せてみ」

 

「そうそう。渚のその順位なら堂々としていいと思うよ」

 

座っていた渚を零が引っ張って教卓前へ連れていく。そして、そのテストの結果は。

 

 

潮田渚

 

合計389点、187人中50位(・・・)

 

 

「「「「「「50位!?」」」」」」

 

「ちょ、え、渚!?」

 

クラスのみんなは絶句。

 

「まさか本当に範囲に手を加えてくるとは思わなかったけど、前日の詰め込みが効いたようでよかったよ」

 

「いやぁホント、零の予測が当たるとはね~」

 

「……うん。助かったよ零君、カルマ君」

 

渚はちょっと照れてるのか、テストの答案用紙で顔を隠していた。

 

まあ、何があったのかというと。

 

前日の零、渚、カルマの3人によるお泊り勉強会。そこで零は理事長が問題範囲などに対し何かしてくる可能性を踏まえて、テスト範囲外の内容を少しずつ渚に叩き込んでいた。時間があまりなかったのもあって、全部の教科に適用することはできなかったし、範囲も変更されたそれには追いつかなかったが。

 

それでもミッチリやってもらったお陰で渚は、詰め込み範囲までは着実に点数を取り、目標をクリアしていた。

 

 

さて、この3人はE組脱出の条件を一つクリアしたわけだが。

 

「でも俺等はE組出る気ないよ。前のクラスなんかより、暗殺の方が断然楽しいし」

 

「そもそも僕は前のクラスなんかないし。で、殺せんせーは出てくの?全員が50位以内に入んなかったって言い訳つけて」

 

「しっぽ巻いて逃げるの?死に物狂いで頑張ってその条件クリアした生徒だっているのに」

 

「それって結局さ~」

 

「「殺されるのが恐いだけなんじゃないの?」」

 

3人が殺せんせーを挑発し始める。あの渚でさえもそれはもうノリノリで。

 

そして、クラスの全員が3人の意図を察して同じように挑発し始めた。

 

それに対して、殺せんせーは体中を茹でタコのように真っ赤にして怒った。

 

「ニュヤー!!先生は逃げません!!期末テストであいつらに、倍返しでリベンジです!!」

 

そんな先生を見て、生徒たちは笑い出す。もう、落ち込んでなんかいられないと。

 

中間テストでE組は厚くて大きな壁にブチ当たった。だがそれでも彼らは心の中で、自分がこのE組である事に胸を張っていた。

 




原作と違い、渚も今回50位以内を達成しました。
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