暗殺教室~月と星~    作:霊花

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改稿中です。

修学旅行2日目になります。


修学旅行の時間2

零:Side

 

修学旅行2日目。

 

僕達は朝から各班ごとに分かれて行動を始めた。それぞれの班に時間別で殺せんせーが付き添い、そのタイミングで暗殺を行うことになっている。僕達4班は順番的には最後になる。

 

とりあえずそれまでは事前に決めたコース通りながらも自由にいろんな観光名所を回っていく。

 

「なんか、変な修学旅行になっちゃったよね」

 

「そう?結構楽しいと思うけど」

 

「せっかくの京都なんだから、抹茶わらび餅食べたいー!!」

 

茅野さんが切実な声を上げる。いやうん、あとで時間空くと思うしその時に食べに行ってもいいんじゃないかな。

 

と、その茅野さんのセリフに奥田さんが何かを思いついたようで……。

 

「なら、それに毒を入れるのはどうでしょう?」

 

「なんで!?」

 

……あー殺せんせーは甘いものに目がないから、手としては有りかもしれない。カルマも名物で毒殺はいいねと賛成していた。茅野さんはもったいないよ!と抗議していた。茅野さんも殺せんせーと同じくらい甘いものに目がないらしい。

 

「でも、殺せんせーに効く毒って?」

 

僕が聞いてみると一同シーンと静まり返った。聞くところによると以前、奥田さんが殺せんせーに毒殺を仕掛けたらしい。水酸化ナトリウムに酢酸タリウム、果ては王水まで一人で調合したのだとか。ただし、それらは全部殺せんせーには効かなかったらしい。

 

いや、効くには効いたけど、毒物として害を与えたわけではなく何故か短時間だけ顔の造形が変化したのだとか。

 

つまり、今の段階では対殺せんせーの毒がない。ただ、毒でなくても……

 

「……毒の代わりに対先生弾を埋め込んでみる、とか?」

 

「あ、それならありかも」

 

「やめようよ!おいしいスイーツがかわいそうだよ!スイーツに罪はないんだよ!?」

 

……茅野さんがあまりにも必死すぎるのでこれはなしになった。

 

 

 

「そういえばさ、零君は今回雇われた殺し屋について何か知ってる?」

 

渚が聞いてきた。ああ、あの人の事ね。

 

「レッドアイって言う射撃専門の殺し屋。ライフルを使った遠距離狙撃の腕前は超一流」

 

「へぇ、長距離射撃か」

 

「それなら、今回は成功するかも……?」

 

まあ、普通の標的だったら成功させられる実力があるのは確かだろうけど。

 

「いや、たぶん失敗するよ」

 

「え!?」

 

「普通の対象だったら成功するだろうけど、あの殺せんせーのことだ。射撃のプロが雇われてるくらいはお見通しだよ。絶対翻弄されておちょくられて挫折する」

 

「な、なるほど」

 

あの先生の動きは全然読めないからね。あの真面目な狙撃手なら、可哀想だけど先生の常識外の行動で振り回されて終わると思う。

 

「はぁー、修学旅行のときくらいは暗殺の事忘れたかったよな……いい景色なのに」

 

杉野がため息をつきながら言う。まあ、一生に一度のこのクラスでの修学旅行だし、純粋に楽しみたいよね。

 

「そうは言うけどさ、京都って暗殺の名所でもあるんだよ。ね、渚」

 

「うん。だってほらそこのコンビニ見てみてよ」

 

調度自分たちがいる場所のすぐ近くにあったコンビニ。そこにはとある有名な事件の現場であることを物語る石碑が。

 

「あ~、1867年、坂本竜馬暗殺の近江屋跡地ね」

 

さすがカルマ。よく分かってる。

 

「他にも、少し先行けば本能寺もある。当時と場所は少し変わってるけど」

 

本能寺と言えば、1582年、織田信長の本能寺の変。織田信長は結果的に自害したと言われているけれど、あれは明智光秀による暗殺事件ともいえる。

 

「こんな狭い範囲でも沢山のビックネームが暗殺されてる。ある意味、京都は暗殺の聖地だよ」

 

京都は昔、政治とかの中心で貴族も武士もたくさんいたからね……。その辺考えたら、これはもう暗殺名所巡りにもなっている。

 

ちなみにここまでの暗殺名所の知識は、殺せんせー特製しおりに載っていたもので。渚も持って来ていたそのしおりを見ながら解説していた。

 

「えーと、次の目的地は八坂神社でしたっけ」

 

「えーもう休もうよ~。京都の甘ったるいコーヒー飲みたいし」

 

「飲もう飲もう!!」

 

「あはは……まあ、もうそろそろ時間的にお昼食べに行ってもいいかもね」

 

そんな話をしながら八坂神社へ続く祇園へ向かった。

 

 

 

……なんか、少し前から変な視線を感じ始めたんだけど。いやにぴったりと複数の気配……もしかして尾行されてる?

 

「祇園って奥はこんなに人気がないんだ~」

 

「ここら辺は一見さんお断りの店が多いから私の希望コースにしてみたの。目的もなくふらっと来る人もいないし、暗殺にぴったりじゃないかなって」

 

それに気づいていないみんなは普段通り話している。うん、確かに人気の無い、見通しの悪く道幅の狭いここは暗殺にぴったりだ。……目的もなく来る人はいない、か。

 

 

けど、

 

「ホントうってつけだ。なんでこんな拉致りやすい場所歩くかね~」

 

そういう場所って、変な輩に出くわすような場所でもあるんだよな。

 

ぞろぞろと前から複数の男たちが現れたのを見ながら、ため息をつく。見るからにガラの悪い、典型的な不良たちのようで。学ランを着ているから中学生か高校生か……体格的に高校生か。

 

そして、自分たちの歩いてきた後ろからも同じ学ランの男たちが迫ってきていた。さっきから感じていた妙な視線の正体か。

 

「お兄さん達何?観光目的っぽくないんだけど?」

 

カルマが前から現れた相手に対して問いかける。

 

「男に用はねー。女置いておうちにかえんな」

 

……ああ、そういう目的なわけ。なら……

 

「手加減は必要ないな!」

 

バキッ、ガンッ!

 

近くに居た不良に回し蹴りを食らわせる。ほぼ同時にカルマも近くに居た一人の頭を掴み、電柱にぶつけていた。

 

ゴンッと鈍い音が響く。

 

「ほら渚君、目撃者居ないとこならケンカしても大丈夫っしょ」

 

カルマが平然とそんなことを宣っているのが聞こえてくる。まあ、この場合は向こうからケンカ吹っかけてきたような物だし、大丈夫だとは思うけど。

 

そう思いながら、自分の背後から迫ってきていた一人を背負い投げする。その手からはナイフが滑り落ちた。……へぇ。

 

それを見て思わず目を細める。

 

カルマの方にもナイフを持った輩が迫ってきていたけど、布で視界を無くすことで軽々と撃退していた。

 

でもこの時僕は失念していた。こいつらが何の目的で僕たちに近寄ってきていたか、相手を倒すことに気を割きすぎて大事なことが頭から抜けていた。

 

「きゃあ!?」

 

「ちょ、何するの!放して!!」

 

女子たちの悲鳴が聞こえてきて反射的にそちら側を見る。いつの間にか茅野さんと神崎さんが不良たちにつかまっていた。

 

咄嗟に助けに行こうとするが、同じく動き出そうとしていたカルマのすぐ後ろに人影が見えた。

 

「カルマ後ろ!!」

 

咄嗟に声をかけ、それに反応したカルマが振り返るも間に合わず。ゴッと後ろに迫っていたやつが鉄パイプでカルマの頭を殴っていた。

 

「ほんっと隠れやすいな。ここ」

 

「カルマ!!」

 

「余所見すんなよ」

 

ってしまった!!

 

カルマと女子たちの二方向に気を取られすぎて自分の背後がおろそかになっていた。咄嗟に後ろに居る奴に対して振り返って腕でガードするけど、すぐにそれは間違っていた事を知った。

 

 

バチバチィッ!!

 

 

それは、放電の音。

 

「っ!ス、スタンガン……」

 

……完全に油断していた。かなり強めの電流が体中に走り、動きが取れなくなる。その間に茅野と神崎さんが他の男達に拘束され、連れて行かれるのが見えた。

 

「くそ……」

 

それを助けられないまま、僕は意識を失っていった。

 

零:Sideout

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渚:Side

 

「……みなさん!大丈夫ですか!!」

 

その奥田さんの声で僕達は目を覚ました。

 

「奥田さんは無事だったんだ……」

 

彼女の無事なその姿に、少しだけホッとする。

 

「すみません。思いっきり隠れてました」

 

申し訳なさそうに奥田さんは言う。けど、

 

「いや、それが正解だよ。でなけりゃ茅野ちゃんや神崎さんみたいに攫われてただろうし」

 

あいつら、かなり犯罪慣れしてるっぽいし。そのカルマ君の言葉に僕たちは顔をしかめた。

 

「あいつ等の車、盗車だろうし。通報しても時間かかるだろうね。っていうか俺に直接処刑させてほしいんだけど」

 

額に血管浮かばせたカルマ君が言う。どうやら彼は珍しくかなり怒っているみたいだ。その怒りは二人が拉致られたことに対するものか、不良にいいようにやられたことに対するものか分からないけれど。

 

 

 

そして、もう一人。

 

 

 

「……参ったな……平和ボケしすぎてた。まさかこんな……ハハハ」

 

 

その声に、背筋が凍った。

 

バッとその声の方を振り返ると、零君が立ち上がっていた。その顔はうつむいていて陰っている。座り込んだままの僕からもよく見えないそれは余計に鳥肌が立った。

 

声色はいつも通り。そう、普段通り過ぎて逆に不自然だ。だって、僕から見たら明らかに彼の()()の状態だ。

 

「渚。先生のしおりの目次見て」

 

「え?」

 

そんな彼に、普段通りの声で呼びかけられる。

 

「確かあのしおり、班員が拉致られたときの対処法ってあったと思うんだけど」

 

その言葉に、僕は急いですぐ傍に落ちていたしおりを拾ってめくる。

 

「ちょっとまって…………あ、ホントにあった」

 

「じゃあ、みんなはそこに書かれてること実行して。僕は先に行ってるから」

 

その言葉と共に、零君の姿が掻き消えた。一瞬の、あまりにも素早い行動で何が起こったのか咄嗟に分からなかった。

 

 

 

でも、零君の姿が消えるその直前に一瞬見えた、彼の表情。

 

 

……恐ろしいほどに、無表情だった。

 

渚:Sideout

 

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