暗殺教室~月と星~    作:霊花

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改稿中です。

再び転校生回、イトナ君とシロさんの登場です。



転校生の時間3

とある日の放課後、烏間惟臣はパソコンにメールが来てることに気付いた。

 

開いて見ると、メールは本部からの物であり内容は

 

『六月十五日、二人目の「転校生」を投入決定。満を持して投入する「本命」である。事前の細かい打ち合わせは不要。全て付添人の意向に従うべし』

 

と書かれていた。

彼は何も言わず、暫くしてから『了解』と返信した。

 

___________________________________________

 

零:Side

 

今日は6月15日。天気は雨……しかも土砂降りで、山道はぬかるんでるし、気温はそんなに高くないのに湿度のせいで蒸し暑いしちょっと憂鬱だ。

 

ただ教室内では昨日烏間先生から来たメールにあった、今日来るという転校生についての話題で賑わっていた。

 

「おはようございます、皆さん。それではホームルームをはじめます」

 

妙にくぐもった声と共に殺せんせーが教室に入って来る……ん?

 

……なんか、顔が昨日よりかなり大きくなっているような……?目とか口とかの大きさは多分変わってないけど、その周りがぷっくりと膨らんでいるというか……。

 

『殺せんせー、三十三パーセントほど巨大化した頭部についてご説明をお願いします』

 

律が代表して聞いてくれた。わかりやすく数値にしてくれてありがとう。かなり巨大化したんだね。

 

「水分を吸ってふやけてこうなりました。今日はかなり湿度が高いので」

 

生米かよ!?と心の中で突っ込んだのは恐らく僕だけじゃない。

 

 

殺せんせーの弱点⑭:しける

 

 

殺せんせーはバケツに向かって顔をムギューッと絞って、どうにかいつもの大きさに戻していた。顔を絞るなんて光景初めて見たな。

 

「ところで、烏間先生から転校生が来るという事は聞いてますね?」

 

「あーうん。まぁ、ぶっちゃけ殺し屋だろうね」

 

殺せんせーの確認に、前原が既に殺し屋だと断定して答えた。まあ、ここで普通の人が来るってことはほぼ無いだろうし。

 

「紫苑さんや律さんの時は少し甘く見て痛い目を見ましたからね。先生も今回は油断しませんよ。いずれにせよ、皆さんに仲間が増えるのは嬉しい事です」

 

というか、このクラスに来る転校生、僕を合わせてこれで4人目になるんだよな。さすがに多すぎるような気がする……。

 

「同じ転校生暗殺者として、零君と律は何か聞いてないの?」

 

原さんが僕と律の方を向いて聞いた。転校生としては舞花もいるけど、僕みたいな職業:殺し屋ってわけじゃないことはみんな知ってる。

 

……にしても、もう一人の転校生か。

 

「僕は何も知らないよ。入ってくる時期も結構離れてるし」

 

僕が入ってきたのは4月だから約2か月前になる。……このクラスに来てから結構経つんだな。

 

あと、もしロヴロさんがまた誰か送り込むときは連絡してくれって頼んだから、そっちとは別口のはず。

 

『私は少しだけ聞いています』

 

律は何か知らされているらしい。

 

『初期命令では私と彼の同時投入の予定でした。私が遠距離射撃、彼が肉迫攻撃と連携して殺せんせーを追い詰めるために。ですが二つの理由でその命令はキャンセルされました』

 

彼。つまり今度は男子か。それに近接戦闘型と。

 

「へぇ…………理由は?」

 

『一つは彼の調整が間に合わず予定より時間がかかったから。そして二つ目は私が彼より暗殺者として圧倒的に劣っているからです。私の性能では彼のサポートを努めるには力不足だと……。そこで各自単独で暗殺を開始することになり、重要度の下がった私から送り込まれたと聞いています』

 

殺せんせーの指を単独で破壊した律がその扱いって……。しかも、調整に時間が掛かったから?

 

ってことはまた人外の殺し屋が来るってことか。もうなんか律のせいでよっぽどの事じゃない限り驚かない気がするけど、今度は一体どんな方向性の奴だろう。

 

 

 

 

 

その時、ガラララッと教室のドアが開いた。

 

 

ドアの方を見れば、そこに立っていたのは……何故か白装束に身を包んだ人物。

 

まさかこの人が転校生……ではなさそうな気がする。体格的にも成人男性だし、制服も着ていない。どちらかというと教師に加わると言われた方が納得だ。……ん?こっちに腕を向けてきた?

 

 

思わず警戒度を上げると、ポンッという軽い音が響き、その人の腕からいきなり鳩が飛び出した。……え?

 

 

「はは、ごめんごめん。驚かせたね。転校生は私じゃ無いよ。私は保護者……まぁ白いしシロとでも呼んでくれ」

 

その人、シロさんは軽く笑いながらそう自己紹介した。うん、白装束で入ってきていきなりマジックなんて見せてきたら普通に驚くよ。

 

にしても、保護者か……。

 

この人の白装束は顔も覆っていて目元すらも隠している。恐らく向こうからは見えるようになっているんだろうけど、こちらからはその顔は見ることが出来ない。それに声に何か違和感……恐らく変声器か何かで変えている。

 

……身バレ防止がかなり徹底されているな。

 

 

 

 

……あれ?殺せんせーが教卓にいないんだけど……あ、いた。

 

 

っておいこら。

 

「怯えすぎだよ、殺せんせー」

 

思わず僕がため息交じりに言うと、みんなも気付いて僕の目線の先、教卓近くの天上の隅っこを見た。

 

そこには銀色の、どろどろとした液体状の殺せんせーの姿が張り付いていた。

 

……一瞬の沈黙。

 

「ビビってんじゃねーよ殺せんせー!!」

 

「奥の手の液状化まで使って!!」

 

「い、いや……律さんがおっかない話をするもので」

 

 

殺せんせーの弱点⑮:うわさに踊らされる

 

 

あ、あれが液状化か。話には聞いてたけど初めて見たな。

 

「始めましてシロさん。それで肝心の転校生は?」

 

まだちょっとビビりながらも降りて来て、ニュポンッと元の姿に戻った殺せんせーはシロさんにそう聞く。

 

「始めまして殺せんせー。ちょっと性格とかが色々と特殊な子でね、私が直に紹介させてもらおうと思いまして」

 

シロさんは殺せんせーにお土産だと言いながら羊羹を渡し、クラスを見渡していた。

 

……ん?渚辺りのところで視線を止めた?

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、皆良い子そうですなぁ。これなら、あの子も馴染みやすそうだ。席はあそこで良いのですね?殺せんせー」

 

シロはカルマと寺坂の間を指差し言っており殺せんせーはそれに頷いていた。

 

「では紹介します。おーいイトナ!入っておいで」

 

その呼びかけにみんなが教室のドアに注目する。が、入ってこない。

 

 

……!?後ろに気配が、

 

「零、カルマ君、そこ危ない!!」

 

舞花が叫んだのもあって反射的に立ち上がり、カルマの腕を引っ張って半ば無理やり席から離した。

 

 

それと同時に僕たちの席の後ろの壁が派手に破壊された。

 

 

そしてぽっかりと空いた穴から誰かがスッと入ってくる。破壊された壁からはいくつもの破片が僕たちの席辺りに降り注いていた。

 

「わ、結構危なかったな……舞花、ありがとう」

 

「サンキュー二人とも」

 

「どういたしまして」

 

僕は直前に知らせてくれた舞花にお礼を言う。カルマも僅かに冷や汗をかきながら礼を言っていた。うん、あのままだと僕もカルマも怪我してた可能性がある。……何故か寺坂辺りは破片がほとんど飛んでいってないけど。

 

 

……さて、壁をぶち壊すという何とも豪快な方法で入室してきた誰かさんは。

 

「俺は……勝った。この教室の壁よりも強いことが証明された。それだけでいい……それだけでいい」

 

「「「「「「いや、ドアから入れ!!」」」」」」

 

恐らく、というか確かに転校生なんだろうその少年の独り言に、みんなで一斉に突っ込んだ。なんか、血走った眼をしてるな……この子。

 

殺せんせーもリアクションに困っているようで、笑顔でもなく真顔でもない、中途半端な顔になっていた。なんだありゃ。

 

「堀部イトナだ。名前で呼んであげて下さい。あぁ、それと私は少々過保護でね。暫くの間、彼の事を見守らせてもらいますよ」

 

白装束で顔が見えない保護者に、表情も行動も話も読めない転校生。……イトナ君の見た目は、白っぽい髪にちょっと変わった模様の目をした背丈の低い少年、一応普通の人間に見える。

 

だけど恐らく、律以上にひと波乱ありそうだとみんな同じことを思っただろう。

 

……そしてちょっと気になったことが一つ。

 

机や椅子に散った壁の破片を払いながら席に着き、僕がそれについて聞こうと……するその前に、カルマがイトナに声をかけた。

 

「ねぇイトナ君。ちょっと気になったんだけど、今外から手ぶらで入ってきたよね。外はどしゃ降りの雨なのに、何でイトナ君は一滴たりとも濡れてないの?」

 

それは、僕が聞きたかったことと同じだった。クラスのほとんどはその登場が衝撃的過ぎて気付いていなかったようだけど。

 

イトナ君は一旦スッとクラスを見回すと席から立ち上がり、カルマを見た。

 

「お前はこのクラスの中じゃトップクラスで強い。だけど俺より弱いからお前は殺さない」

 

そう言ってイトナ君はカルマの頭をなでる。……カルマはその行動を無表情に見ていた。

 

えっと、質問の答えになってないよね?会話が全然噛み合ってない気がするのは僕だけじゃないと思うけど。

 

あ、今度は僕の方を見てきた。

 

「お前がこのクラスの中で一番強そうだ。だけど俺には敵わない」

 

「……へぇ」

 

 

……敵わない、ね。

 

 

「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれないやつだけだ」

 

とか何とか言いながら、彼は教室の前の方へと歩いていく。そして、

 

「この中じゃ、殺せんせーあんただけだ」

 

イトナ君は殺せんせーを指差して、そう言い放った。

 

「強いとはケンカのことですか?力比べでは先生と同じ次元には立てませんよ」

 

殺せんせーはさっき渡された羊羹を食べながら笑う。が、

 

 

 

「立てるさ。だって俺達、血を分けた兄弟なんだから」

 

 

 

イトナ君がポケットから同じ羊羹を出しながら言ったその言葉。その言葉にみんな固まった。

 

そして、

 

「「「「「「き、兄弟ィ!?」」」」」」

 

みんなが驚きの声をあげる。そんな中イトナはそれを無視しながら話を進める。

 

「負けた方が死亡な、兄さん。……兄弟同士だから小細工は要らない。お前を殺して俺の方が強いことを証明する。……放課後、この教室で勝負だ」

 

イトナ君はそう言いながら教室のドアへ向かい、保護者のシロさんと共に教室を出ていった。……出ていくときは普通にドアからなんだな。っていうか、授業は受けないつもりか。

 

 

……教室に沈黙が下りる。その時間約3秒。

 

 

 

「どういうこと!?兄弟って」

 

「先生兄弟いたの!?」

 

「いや、そもそも人とタコっていう時点で全然違うじゃん!」

 

そしてようやく再起したこのクラスの面々は、すぐさま殺せんせーを問い詰めに入った。

 

「いえいえ!まっったく心当たりありませんっ!!先生、生まれも育ちも一人っ子ですから!」

 

そして慌てて言い訳を始める殺せんせー。曰く、昔両親に弟が欲しいと言ったら家庭内が気まずくなった、とか。

 

そもそも親とかいるのか!?というツッコミが入った。

 

……まあ、生物である以上親に当たる存在は必ずいるだろうけど。兄弟というのは先生に心当たりが無い以上、嘘なのか、ただ知らないだけか……

 

 

何かを比喩しているのか。

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

 

 

――――現在昼休み。

 

いつの間にか教室に戻ってきたイトナ君の机の上にはお菓子、デザートなど甘いものが山のように積まれていて、イトナ君はそれをどんどんその口へと運んでいた。

 

「すげー勢いで甘いもの食ってるな」

 

「甘い物好きは殺せんせーと一緒みたいだな」

 

「表情が読みづらい所も」

 

クラス中が教卓にいる殺せんせーと一番後ろのイトナ君を見比べている。

 

「兄弟疑惑で皆やたら私と彼を比較してムズムズしますねぇ。ここは気分直しに今日買ったクラビア誌でも読みますか。これぞ大人のたしなみ」

 

そう言って殺せんせーはグラビア誌を取り出して読み始める。……おい、生徒の前で教師が読んでいい物じゃないと思うんだけど。

 

……そしてそれとほぼ同時に

 

((((((巨乳好きまでおんなじだ))))))

 

イトナ君も同じグラビア誌を読んでいた。えぇ……。

 

「……これは俄然、信憑性が増してきたぞ」

 

「え、そうかな……岡島君」

 

興奮しながら言う岡島に渚が突っ込む。

 

「そうさ!!巨乳好きは皆兄弟だ!!」

 

「三人兄弟!?」

 

おんなじグラビア誌を取り出して見せながら言い放つ岡島に、渚がまた突っ込む。その岡島の行動には女子から嫌悪の視線が送られていた。

 

 

……別の場所では茅野さんが、

 

「もし兄弟だとしてもさ、なんで殺せんせーは気付いていないのかな」

 

と疑問を述べた……ら、素早く反応したのは不破さん。

 

「きっとこうよ!」

 

 

……えー、不破さんが言うことには、

 

 

昔何処かに殺せんせーみたいなタコ型生物の王国があり、殺せんせーとイトナはその国の王子だった。で、ある時人間の国に攻め込まれ、敗北寸前のところでタコ王国の王様が殺せんせーとイトナだけは寸でのところで逃がす。が、逃げている途中で二人は見つかり、殺せんせーはイトナを庇って攻撃を受けながら川に落ちて流されてゆき、そこで二人は生き別れることになった……

 

 

「で!成長した二人は兄弟と気付かず、宿命の戦いを始めるのよ!!」

 

目をキラキラさせながら最後を締めくくる不破さん。……いや、気付かずって殺せんせーはともかく、イトナ君は殺せんせーの事兄さん呼びしてるよ?

 

……生き別れの兄弟、か。なんか昨日観てきた『ソニックニンジャ』のヒロインとラスボスみたいだなって思った。

 

あ、そういえばあの映画の英語感想文まだ提出してない。……まあ、放課後にでも渡しに行こう。

 

 

 

 

「う、うん。で、どうして弟だけ人間なの?」

 

茅野さんが若干引きながら問いかけた疑問に、不破さんは言葉を詰まらせた。

 

「えーっと、それは、まあ……突然変異?」

 

うん、考えてなかったんだね。

 

「そこ肝心なところだよね!?」

 

「キャラ設定の掘り下げが甘いよ!」

 

そのあまりにも適当な答えに、茅野さんと原さんが突っ込む。

 

と、そこに舞花が一石を投じた。

 

「んーその背景設定なら……二人にはもともと人間の血も交じっていて、イトナ君はその血が濃く出たことから人間の姿。で、殺せんせーと生き別れた後にイトナ君は敵国に捕まってしまったが人間の姿をしていることから受け入れられ、そこからは最後の生き残りである殺せんせーを殺すための刺客として育てられた。……みたいなことが考えられるのでは?」

 

「おお~!!ちゃんと辻褄が合った!」

 

「舞花ちゃん、この短時間によくそこまで考えられたね」

 

「か……完敗だわ……」

 

「あ、あははは……」

 

不破さんはぐぬぬと悔しがり、舞花はどこか複雑な顔をしていた。

 

 

……後から思えば、この時すでに舞花はイトナ君の秘密に勘付いてたんだろう。

 

 

 

 

この時彼女たちの話を聞いていた僕は、なんとなく胸騒ぎがしていた。

 

ちらっとイトナ君の様子を見る。彼は一瞬こちらの視線に気づいて顔を上げたが、すぐにグラビア誌へと目を戻した。

 

 

……少しよく観察してみたら、彼からはどこか妙な気配を感じた。自分でもよく分からないけど、なんか……得体のしれないものが彼を覆っているような、そんな感じだった。

 

 

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