暗殺教室~月と星~    作:霊花

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改稿中です。

最初の方にちょっとだけ女子の試合について語られます。


球技大会の時間2

「やー、やっぱバスケ部は強いねぇー」

 

「だねー、流石に圧勝は無理だわ」

 

「でも勝ったんだし良いじゃん。放課後は打ち上げだー!」

 

E組の女子たちがバスケットボールの試合を終えて体育館が出てきた。疲れた様子ながらも明るく興奮がまだ冷めていないその様子は、どうやら無事女子バスケ部に勝ってきたようで。

 

「でもごめんね、私が足引っ張らなければもっと余裕持って勝てたのに……」

 

茅野が申し訳なさそうに言う。

 

「そんなこと無いよ。カエデちゃん」

 

「気にすんなって」

 

舞花と中村からフォローが入るが、さて何があったのか。

 

 

 

時はゲームの後半。それまでの前半ではE組がそれなりの有利戦で、片岡が30得点10リバウンド12アシストのトリプルダブル達成というとてつもない成績を出していた。が、後半で茅野が交代してコートに出ると、

 

「はわわわわ……巨乳……!!」

 

「茅野さん!?」

 

「カエデちゃん目を覚まして!!」

 

女バスのキャプテンの胸元に気をとられて(というかかなりの殺意が感じられた)トラベリング。そして、そこからの試合の流れは向こうへと持っていかれた。

 

彼女がどうにか調子を取り戻すまでに何度か得点を入れられて女バス側が数点リード。その後は正気に戻った茅野も率先して動き、お互いに点が入りながらもその点差を縮めていったが……。

 

 

 

「あの時は、女バスキャプテンが目の前で自慢げに揺らす胸に殺意が沸いて……」

 

「茅野っちの巨乳に対するその憎悪は何なの!?」

 

それを聞いた岡野は思わず突っ込んでいた。

 

 

 

「さて、男子のほうはどうなってるかな?」

 

話しながら女子たちは野球コートの方に向かう。と、現時点での得点を見ればE組が勝っていた。

 

「へえ、男子も野球部相手に勝ってんじゃん!!」

 

E組のベンチのほうに近づきながら中村が言う。

 

「お、女子もう終わったのか。そっちはどうだった?」

 

これから打順が来るので準備していた前原が彼女たちに気付いて問う。それに対しては岡野がVサインを決めながら答えた。

 

「もちろん勝ったに決まってるでしょ!さすがに圧勝とまではいかなかったけどさ」

 

「メグちゃんなんて、トリプルダブルの達成だよ!舞花ちゃんもラストのシュートホント凄かった!」

 

「というかあの時は、女バスキャプテンのシュートを阻止したとこから何が起きたのか咄嗟に分からなかったよ。向こうも唖然として足止まってたし」

 

「いやー、どこからでもシュート入れられるとは聞いてたけど、あんな動き出来るとはね……」

 

「う……あんまり言わないでください……」

 

口々に周りから褒められ、舞花は慣れていないのか顔を赤くして俯いた。

 

 

 

―――それはラスト十数秒での出来事。

 

それまで自陣地から動かず、派手な動きもなく相手からの警戒もほぼなかった……されないように必要最低限しか動かなかった舞花が女バスのシュートをゴール下から防いだ。

 

というか、ダンクシュートを決めようとしていた女バスキャプテンのゴール寸前、舞花はその低身長から考えられないような大ジャンプでそれに追いつき、そのボールを横から掬い上げるようにかっさらった。

 

そしてゴール下へ着地するとその場から反対側のゴールに向けてボールを高々と投げ上げ、

 

何が起きたのか把握しきれていなかった面々の視線を浴びながらそのボールは、吸い込まれるようにゴールリングの中に入っていった。

 

 

そうしてE組側が最後の最後に3得点を入れたことにより2点差の勝利をもぎ取ることに成功したのだった。

 

 

 

「へえ、それちょっと見たかったな」

 

話を聞いていた零がそう呟きながら舞花の方を見る。アイコンタクトで、無茶はしてないよね?と問いかけていた。

 

それに対して舞花は苦笑いしながら、そんな心配しなくても大丈夫だよ、と返した。

 

そんなやり取りの間にベンチに置いていた携帯が付き、律が顔を出す。

 

『ご安心ください。女子の皆さんの試合はすべて録画してあります!』

 

「でかした律!」

 

 

「それで、そっちは?点数的にいい感じみたいだけど」

 

速水が男子たちに向かって聞きかえすと、三村が微妙な顔をしながら口を開く。

 

「あーここまではいい感じだったんだけど。1回表からラスボスの登場だ」

 

___________________________________________

 

零:Side

 

試合を終えた女子たちと話していると、アナウンスが入った。

 

『たった今入った情報によりますと野球部顧問の寺井先生は朝から具合が悪かったようで野球部員も先生が心配で試合どころじゃ無かったとの事。それを見かねた理事長先生が急遽寺井先生の代理として指揮を執られるそうです!!』

 

その放送に観客席がワッと賑わった。うわぁ、白々しい。

 

……ってちょっと待って野球部顧問ホントに泡拭いて倒れてる。……担架で運ばれてった。

 

 

……浅野理事長どんな脅迫したんだよ。

 

 

 

 

『それでは、試合再開です!』

 

そのアナウンスが入ると同時に前原が打席に入った。と、そのコートの様子を見て僕は思わずあ、と声を漏らす。

 

相手は守備全員が内野に入っていた。こちらのほぼ全員がバントしかできないのを見抜かれたみたいだ。

 

「……つってもダメだろあんな至近距離じゃ!!目に入ってバッターが集中できねえよ!!」

 

岡島がそう言う。だけど竹林が難しいねと呟いた。

 

「ルール上ではフェアゾーンならどこ守っても自由だからね。審判がダメだと判断すれば別だけど……審判はあっち側だ。期待できない……」

 

そんな中進藤が投げる。さっきよりも威力も威圧感も増していたボール。前原はバントをあてたはいいがそこから走りきるまではいかなかった。

 

続いては岡島。どうすんだと焦る顔で殺監督のほうを見るが……

 

(打つ手なしかよ!!)

 

岡島を含めそれを見たみんなの心の声が聞こえた気がした。

 

殺せんせーは顔色サインを出せず、顔を触手で覆ってしまっている。いや、何かしらの指示は出してやってよ。

 

そしてまたアウト。次に入った千葉もアウトになってしまう。

 

そして一回の裏。今度は向こうが攻撃してくる番だ。

 

バッターに立った野球部員がバットを構えるのを見て杉野が投げる。それは少しカーブを描いて渚のグローブに収まった。杉野の得意な変化球だ。

 

今の野球部員が相手だと、打たれたらそれを取ってアウトにするのはちょっと難しいだろうし、裏の間は杉野が頼みの綱となってくる。

 

そしてそのまま3人を打たせずにアウトにする。さすがだな杉野。これでどうにか点数の優位は保てたわけだ。

 

 

……だけど相手方のベンチを見ると、そこには理事長が進藤に何かを語りかけている様子が見える。……うわー、洗脳してるよあれ。

 

と、その時カルマの足元に殺監督が現れた。

 

「足元に出んなよ殺監督。踏まれたい?」

 

「次の打順は君からです。君の挑発で揺さぶってみましょうか」

 

カルマにそう言っている殺監督はいつものニヤニヤ顔が戻っていた。……なにか思いついたのかな。

 

どうにか1点も取らせず二回の表を迎えた。まあ、相変わらずガチガチのバント対策守備を敷かれているけど。

 

そんな中、バッターのカルマはすぐには打席に入らず守備の様子を見ていた。

 

「どうした?早く打席に入りなさい」

 

なかなか打席に入らないカルマに審判は注意をする。けどカルマはそれを無視し理事長の方を向いて口を開いた。

 

「ねーえ、これってズルくない理事長センセー?こんだけ邪魔な位置で守ってんのにさ審判の先生は何でなにも注意しないの?観戦してるお前らもおかしいと思わないの?……あっ、そっかぁ~、お前等バカだから守備位置とか理解してないんだね」

 

それは明らかな挑発。それにイラッときたのか観客席の生徒は

 

「小さいことでガタガタ言うなE組が!!」

 

「たかがエキシビションで守備にクレームつけてんじゃねーよ!!」

 

「文句あるならバットで結果出してみろや!!」

 

と、野次を飛ばす。カルマは駄目みたいだよと殺監督に舌を出しながら顔を向ける。けど殺監督の顔には大きな丸が浮かんだ。

 

……あ、そういうことか。

 

こちらから抗議した、しかし審判はそれを突き返した。この行動自体に意味がある。後々に向けての布石、かな。

 

そしてカルマは、まあそのまま三振。だけどそこで一旦、殺監督の指令でE組側からタイムを取った。

 

ボコッと、僕の足元に見慣れたにやけ顔が現れる。反射的に踏もうとしたら一旦引っ込んで少しズレた場所にまた出てきた。

 

「いきなり踏もうとしないでください!」

 

「いきなり足元に出る方が悪いと思うけど」

 

とかなんとかやり取りをした後に出された指令は、次のバッターである木村と交代すること。

 

「ちょっとここで点数に余裕を持たせておきたいので……君なら確実に取れるでしょう?」

 

「……そりゃあね」

 

 

そして、試合再開。

 

僕は言われた通り打席に入ってバットを構える。バントの構えではない、普通のスイングの構え。

 

僕はみんなと違って練習期間でバントの習得はしなかった。まあ、やろうと思えばできるとは思うけど……。

 

僕の様子を見て、守備は少しだけ後ろに下がった。でも内野から出ていないところをみると、はったりだとか思われてるんだろうね。

 

まあ、下がっても下がらなくても意味はないけど。

 

 

スピードも威圧感も増した剛速球が飛んでくる。真っ直ぐに飛んでくるそれをしっかり見据え、バットを振る。

 

 

 

カキィィン!!

 

 

 

そんな快音をたててボールは高く上がり猛スピードで飛んでいく。その間に僕は一応全速力で走る。

 

守備をしていた野球部員も慌ててボールを追って走るのが見える。けど多分間に合わないし、それにあの速さと高さなら。

 

僕は二塁、三塁と辿り着き、けど止まらずホームへと向かう。二塁や三塁の様子をちらりと横目で見ると、あっという間に駆け抜けられたのに気づいて唖然としている守備が見えた。

 

そしてその間にボールはフェンスの向こうへと飛んでいった。それを守備が見届けているのを横目に僕はホームに走りこむ。

 

『な、ほ、ホームラン……E組が!?っていうかいつの間にホームに!?どういうことだ!!』

 

僕は一応何か予測不可能なことがあったときのため切り札で、元々打順には入れられてなかった。練習の時もバントの練習ではなく、ホームランを確実に打つ(・・・・・・・・・・・)練習をしてたし。まあ、とりあえずこれでまた点差に余裕ができた。

 

でもそこまで動揺は長引かせられなかったようで、次の渚と磯貝は打つことはできたがすぐ取られてしまいアウトになった。

 

そして二回の裏へ移行。杉野がある程度持ち前の球種で粘ろうとしたけど、何本か打たれて守備が追いつかずに二点取られてしまう。

 

三回の表もみんなバントで杉野は警戒されてるから三振でスリーアウト。

 

そして、最後の野球部の攻撃、そこで向こうは、

 

「みんな、手本を見せてあげなさい」

 

全員がバントで打ってきた。

 

さすがにそれはちょっと予想外で、っていうか野球部が素人だらけのE組相手にバント使ってくるとは思ってなかったから、バント向けの守備は練習してない。

 

……あっという間にノーアウト満塁。そして次にとうとう進藤が打席に入る。

 

このままじゃ流石にヤバいな。どうにかここで止めないと……。

 

「おーい、殺監督から指令」

 

守備で一旦集まってどうするか相談していたところ、カルマが声をかけてきた。

 

内容を聞いてみれば……

 

「あ、やっぱさっきのアレ?」

 

「えぇ……それホントにやる気かお前ら」

 

「この状況だし、やるしかないっしょ」

 

「ま、効果は大きそうだね」

 

これは結構際どいとこ突くなぁと思いながら了承する。そしてさっきと位置を少し変えた形で守備を固めなおした。

 

 

『さあ!試合再開……ですが……こ、この前進守備は!?』

 

放送から戸惑った声が聞こえてくる。

 

変更点は僕とカルマの守備位置。それは内野の内側……どころか進藤の前でかなり近い位置。

 

「さて、明らかにバッターの集中を乱す位置で守ってるけど、さっきそっちがやった時は審判は何も言わなかった」

 

「文句無いよね理事長センセ?」

 

二人で挑発する。けど理事長は涼しい顔で表情一つ変えずに問題ない、と答える。……へぇ、

 

 

 

……本当にそれで良いんだね?

 

 

思わず二人でニヤリと笑う。

 

 

「そんじゃ……」

 

「遠慮なく」

 

そう言って僕たちはもっと進み、バッターのすぐ目の前に立つ。そう、進藤がバットを振れば普通に当たる位置だ。

 

「……は?」

 

これにはさすがに驚いたようで、進藤の集中が途切れたのか彼からの威圧感が下がった。

 

「気にせず打てよスーパースター。ピッチャーの球は邪魔しないから」

 

そんな彼の様子を見ながら、カルマが余裕の表情で言う。あーあ、進藤の目が点になってる。

 

「気にせず振りなさい進藤君。骨を砕いても打撃妨害を取られるのはE組のほうだ」

 

そう理事長は言うけど、進藤自身は酷く動揺して震えていた。うん、効果覿面。隣じゃあカルマが悪魔みたいな笑顔を浮かべていた。

 

杉野が投げると、進藤は案の定こちらをビビらせるためかバットを大きく振る。けどいつもよりスイングのスピードが遅い。それを僕たちはスッと上半身をひねるだけで避け、ボールはキャッチャーである渚のグローブへ収まる。

 

あ、理事長の顔から笑顔が消えた。

 

 

「あーあ、だめだよそんな遅いスイングじゃあ。次はさ、殺すつもりで振ってごらん」

 

カルマがまた挑発するのを聞きながら、僕は心の中で合掌した。やっておいてなんだけど、なんかちょっと申し訳なくなってくる。

 

「うわぁあああ!」

 

迫ってくる杉野のボールに、進藤がバットを振る。けどそれはボールは当たれど腰の抜けたスイングだった。

 

「渚君!」

 

「!おわっと」

 

地面に当たって跳ね返ったボールを、カルマが飛び上がってキャッチし渚に渡す。それでサードランナーはアウト。そして次は三塁の木村にボールが送られてセカンドランナーも間に合わずにアウト。次にボールは一塁に送られそのボールはバウンドしながらも届く。

 

進藤はその間腰が抜けたのか走らず、その場でへたり込んでいた。

 

『ゲ、ゲームセット……!!な、なんと……E組が、野球部に勝ってしまったぁ……!!』

 

実況は声を裏返らせながらそう告げた。

 

「やったぁ!!」

 

「男子ナイス!!」

 

E組女子サイドも歓声をあげて喜ぶ。本校舎生徒たちはものの見事盛り下がって落胆したように球場から離れていく。

 

多分、見てた殆どの人が気づいてないんだろうな……野球の裏で行われた、監督たちの数々の戦略のぶつかり合いに。

 

 

 

 

そんな中、杉野が進藤に歩み寄って行った。

 

「進藤、ゴメンな。ハチャメチャな野球やっちまって。でもわかってるよ……野球選手としてお前は俺より全然強い。これでお前に勝ったなんて思ってねーよ」

 

それを聞いて、座って俯いていた進藤は顔をあげた。

 

「……だったら、何でここまでして勝ちに来た。結果を出して俺より強いと言いたかったんじゃ無いのか?」

 

その言葉に、杉野はちょっと困ったように頭をかいた。

 

「んー、渚は俺の変化球の練習にいつも付き合ってくれたし、カルマや零の反射神経とか皆のバントの上達ぶりとか凄かったろ?てか零はあれで初心者だけどお前相手にホームラン打ったし。でも、結果出さなきゃ上手くそれが伝わらない。……まあ要するに、ちょっと自慢したかったんだ。昔の仲間に今の俺の仲間の事」

 

杉野がそう言い切ると進藤は呆けた顔からニヤッと笑った。

 

「覚えとけよ杉野。次やるときは高校だ!」

 

「おうよ!」

 

二人の野球少年たちは、お互い拳を合わせてそう約束を交わしていた。

 

 

 

 

零:Sideout

 

___________________________________________

 

 

 

本校舎の生徒たちがグラウンドからぞろぞろと離れていく様子の中、一人の男子生徒がその流れに乗らずに立ち止まっていた。

 

彼がフェンス越しに覗く先ではE組の生徒たちが男女ともに集まり、ハイタッチを交わしている。

 

「……まさか、な」

 

その中のある二人の生徒を見止めて、彼はぽつりと呟いた。

 

「おーい浅野、戻らないのか?」

 

「珍しいな、浅野君がE組を気にするとか」

 

「……いや、大したことじゃない。今行く」

 

 

 

このエキシビションを見ていた多くの本校舎生徒はただ落胆して帰っていく、その中でただ一人。

 

椚ヶ丘の絶対的エースは今のE組に、一足早く警戒心を抱いてその場を後にした。

 

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