暗殺教室~月と星~    作:霊花

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えー、活動報告で言った時より遅くなり大変申し訳ありません。

とりあえず完全に季節外れな話ですが、今年最後の更新です。改稿前には入れてなかった話です。


アートの時間

零:Side

 

「あっ、今日から衣替えか」

 

自宅で朝食を食べていた僕は、カレンダーの赤い走り書きを見て呟いた。

 

今日は7月1日。椚ヶ丘中学校では7月から制服が夏服に切り替わる。

 

いつもの癖で既に冬服のまま着替えを終えてしまっていた僕は、食器を片付け終えるとブレザーを脱ぎながら寝室に戻る。

 

「えーっと、確かここに入れてたはず……うわぁ」

 

郵送されてきてそのまま放置されていた段ボール箱……つまり未開封状態の制服を見て僕は思わず顔を顰めた。

 

時計を睨みながら素早く段ボールやビニールを切り裂き、半そでのYシャツや薄手になったズボンを取り出す。

 

時間の余裕は無いし大急ぎで着替える。大体着替え終わったところで玄関のチャイムが鳴った。

 

「うわっ、ちょっと待ってて!!」

 

机に置いていたリストバンドを左手首に嵌め、鞄と靴引っ掴んで慌てて外に出た。

 

 

 

 

 

「おはよっ!カルマ」

 

「おはよ~零。今日は随分と慌てて出てきたね。寝坊?」

 

バタバタと慌てて出てきた僕を、門の前でカルマが笑いながら迎える。

 

うん、階段降りるのすら面倒になって2階の窓から飛び降りたからね……。ちなみに靴は部屋に放置していた予備のを使った。

 

「いやー、今日から夏服だったの忘れててさ……急いで着替え直してて」

 

「なるほどねー……別にそんな無理して着替えなくてもよかったんじゃない?俺らのクラスそん位じゃあ怒られないし」

 

「いや、一応規則だし殺せんせーも注意くらいはしてくるんじゃないかな」

 

そういえば殺せんせー自身は、夏服ってどんな感じになるんだろう……いや、普段の服も半袖っぽいから変わらないか。

 

 

 

 

 

「おはよー!零、カルマ君」

 

「おはよう、舞花」

 

「紫苑さん、そのカッコ暑くないの?」

 

2人で舞花を迎えに行くと、彼女は長袖のカーディガンを羽織って出てきた。最近夏日の日が続いてるし、長袖を着るには暑いのは確かだ。

 

「うん、確かにちょっと暑いけど……日焼けする方が辛いから」

 

「あー、なるほどね」

 

その体質は相変わらずか……。

 

小さい頃夏に外で遊びまわった時、日焼けした肌が真っ赤になってたっけ。風呂に入るときもかなり痛がってた覚えがある。

 

彼女はそれ以来、晴れた夏の日は日焼け止めを塗った上に長袖を着た状態で外出するようになったっけ。

 

「まあ、真夏のあの教室はとっても辛そうだけど……」

 

「クーラーとかついて無かった筈だからね……」

 

『ちなみに、E組の教室の日中平均気温は既に本校舎の教室の気温と比べて2度ほど高くなってるらしいですよー』

 

「蘭、その情報はちょっと余計」

 

 

……恐らくそう遠くないうちに暑さで死屍累々としたE組が見れることだろうな。

 

 

 

……。

 

 

「……律、扇風機は自作できる?」

 

『そのくらいでしたらお任せあれ♪』

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

「今日から夏服!いやぁー肌色が眩しいねェ。健全な男子にはつらい時期だぜ!」

 

「ま、まあね岡島君……」

 

教室にたどり着くと、なんか岡島がバカな事口走ってた。隣で渚が呆れながら相打ちを打っている。

 

……まあどうせ度が過ぎるようなら今も目を光らせてる女子たちから折檻されるだろうし、放って置いていいか。

 

ちなみに監督する立場の殺せんせーは、なんか無の表情で、

 

「いけませんよ。露出の季節に平常心を乱しては」

 

「「「あんたが言うなよエロダコ!!」」」

 

「教師らしく注意してくれてるとこ悪いけど、手元のそれで台無しだから」

 

エロ本を教卓で堂々と読みながら何やら宣う駄目教師に、クラス中からツッコミが飛ぶ。

 

僕もこの先生に関してはなんか見ているこっちが恥ずかしくなるので、そのエロ本に向かってナイフをぶん投げた。ついでに頭めがけてもう一本投げておく。

 

「にゅやぁあああ!!?何するんですか零君!!」

 

ページのど真ん中に命中したナイフによってページの半分以上が貫かれたのを見て、殺せんせーが悲鳴を上げたけど無視。なお頭に向けた方はいつも通りあっさりよけられた模様。

 

 

 

 

 

 

「……ああ……今日から半そでなのは計算外だった」

 

と、そんな中に一人のクラスメイトが教室に入ってきた。

 

そしてその彼の姿を見て、殺せんせーを含めクラスの全員が驚いた。というか絶句した。

 

「晒したくは無かったぜ。神々に封印されたこの左腕はよ……」

 

 

((((((どうした菅谷!!?))))))

 

 

なにやら中二病臭いそのセリフと共に入ってきた一人のクラスメイト……菅谷。

 

彼の左腕には、タトゥーのような、花と蔓を模した黒い模様が描かれていた。

 

 

 

___________________________________________

 

 

 

一時騒然としたクラス内(主に無駄にテンパった殺せんせーのせい)だけど、菅谷がちゃんと説明してくれたのでとりあえず混乱は収まった。そしてそのまま興味は菅谷の左腕の模様に移った。

 

とりあえず、菅谷の腕にある模様はタトゥーではなく、メヘンディアートというペイントなんだそうだ。ヘナタトゥーとも言われるがやり方はタトゥーよりも全然簡単で、ヘナという植物の粉を基にした塗料を肌の上に乗せて模様を描き、乾いたらそのインクを剥がすだけ。

 

 

「色素が定着したら一週間くらい剥がれねーんだこれ。今朝気付いてマジでどうしようか焦った」

 

「でも結局どうしようもないから、いっそ堂々としてネタにしよう、て感じ?」

 

「そーいう事。予想以上の反応でこっちが驚いたけどな」

 

「ああ、あれね……」

 

スッとみんなの目線がある一方に集まる。そこには息を切らせた担任が、大量の心理学やらカウンセリングやらの本を開いた状態でこっちの様子を見ていた。

 

「よ、よかった……。先生てっきりうちのクラスから非行に走る生徒が出たのかと……」

 

「こういうとこチキンだよねうちの担任」

 

「……そもそも普段から非行に走ってるようなものだよね、このクラスは」

 

呆れ顔でツッコむ茅野さんに、苦笑いしながら舞花がさらなるツッコミを入れた。

 

あーうん、担任殺しに行ってる時点で普通はアウトなんだよな。慣れ過ぎてみんなそこの感覚麻痺してるけど。

 

先生もとりあえず落ち着いたみたいで、みんなと同じくその菅谷のペイントに興味を持った様子。

 

菅谷は鞄を探りながら先生に声をかけた。

 

「塗料余ってたの持ってきたから、先生にも描いてやろうか?」

 

「にゅやッ!いいんですか!?」

 

その提案にすぐ乗る殺せんせー。目がめっちゃキラキラしてすっごくワクワクしているのが分かる。曰く、一度はこういう入れ墨みたいなのを描いてみたかったのだとか。

 

菅谷が準備した塗料を紙の上で試し描きしているのを、横から覗く。感覚としては溶けたチョコで絵を描くみたいな感じらしい。あ、隣で舞花が興味津々だ。

 

殺せんせーの顔にスーッとインクを乗せていく。

 

 

 

と、

 

 

 

「ギャ―――!!!」

 

「「「ギャ――!!」」」

 

 

 

……うわぁ。

 

 

殺せんせーが悲鳴を上げたついでに、間近で見ていた何人かが同じく悲鳴を上げた。

 

うん、いきなり顔面がドロォと溶けだしたのには驚いた。軽くホラーな絵面。

 

……あーなるほど。

 

「対先生弾を粉末にして塗料に練りこんだんだね」

 

「まあな。案外いけるかと思ったんだけどな……」

 

「確かに先生、完全に油断してはいたな……」

 

「けどまあ、殺すまでじっとしてくれるわけないよね」

 

近くにいた磯貝と一緒に菅谷が使った対先生弾の粉末を見せてもらう。今回のは失敗したけどこれ、結構使えそうだ。

 

ちなみにダメージを受けた先生の講評は、

 

「……アイデアは面白いですが効果としては嫌がらせのレベルです。というか、先生普通にかっこいい模様描いてもらいたかったのに……ひどいです菅谷君……」

 

「わ、悪かったよ先生。ちゃんと普通の塗料で描いてやるって」

 

割とガチで凹んでたので、菅谷は慌てて普通の塗料を取り出した。

 

すらすらと慣れた手つきで先生の帽子の周辺に模様を描いていく。額近くに大きく一輪の花、その周りには規則正しく葉を並べていて、冠のようだ。

 

あっという間に殺せんせーの顔が飾り付けられたのを見て、周りから拍手が沸いた。流石というか、こういう美術の分野となると彼はずば抜けている。

 

「他にも描いてほしい奴、居るか?」

 

この問いにクラスの大半が手を上げたことは、言うまでもないだろう。さっきからうずうずしてるの結構いたし。

 

ついでに僕の隣では別の意味でうずうずしている人物がいるけど……。

 

「……すみません、菅谷君。私できるなら描く方やってみたいんですけど……」

 

「お、いいぜ。紫苑さんもこっち(アーティスト)側か」

 

そっと申し出た舞花に、彼はちょっとわくわくした様子でもう一つの塗料を渡した。自分と同じ側に立てる存在が居て嬉しいのかな。

 

「あ、じゃあ舞花ちゃん、ちょっと私の腕に描いてみてよ!!」

 

「私も私も!!」

 

「あ、あんまり菅谷君みたいな絵は期待しないでね?」

 

舞花の周りには彼女と仲がいい倉橋さんや茅野さんを筆頭に女子たちが何人か集まり、その他は菅谷の方に集った。

 

舞花の描く模様は彼女らしく可愛らしい絵で、手首回りとかにブレスレットのような模様を描いたりしていた。途中菅谷の方に行ってた不破さんが何やらマンガで出てくるマークを所望しに彼女の方に来たけど、その漫画は知らなかったみたいでちょっと困ってた。口頭の説明だけだとよくわからなかったらしく、舞花は律に頼んで画像を調べて貰って再現したみたいだ。

 

「お~っ!!ありがとう舞花ちゃん!!今度この漫画貸すね!」

 

「うん、是非とも。納得できる出来になって良かった……」

 

舞花も少年漫画とか結構好きな方だけど、最近まで読める環境になかったからここ数年のやつはほとんど知らないんだよな。長期連載中のやつとかは結構読んでるみたいだけど。最近結構不破さんと漫画の話してて、色々布教されてるみたいだ。

 

一方菅谷のやってる方は、結構腕全体に満遍なく綺麗な紋様を施してて、なんか凄いことになってる。

 

主に男子は菅谷に頼んでるんだけど、一人一人別の紋様を人によっては両腕どちらにも描いてもらってるようで、その辺パパッと仕上げる彼は本当にすごい。

 

「零ー。あなたもどう?」

 

人数的にも描く面積的にも少なかった舞花が先に終わって、こっちに手招きしてた。

 

「あ、じゃあお願いしようかな」

 

まあ、こんな機会滅多にないので僕もやってもらうことにした。右の手首にちょこちょこと小さな模様が描かれる。小さな星が連なるように散りばめられ、少し大きめに一つの黒い丸が白抜きで雲のような模様をあしらって描かれた。……これは。

 

「もしかして、星と新月?」

 

「正解。……どうかな?」

 

「うん、気に入った」

 

菅谷は大きな模様を華やかに描いて腕全体を堂々と魅せ、舞花はワンポイントだけ小さな模様を描いてさり気ないアクセサリーのように魅せる。二人の個性がよく視える。

 

 

 

にしてもこれって、なにも知らない人が見たらちょっと怖いだろうな……。

 

 

 

「みんなおはよ……ギャ―――!!!?」

 

 

 

あ、丁度いいところへビッチ先生が。

 

教室を見た途端悲鳴あげて壁際へ張り付いたその様子に、僕は思わず噴き出した。うん、実にいい反応だ。

 

それを見た菅谷が慌てて説明しているけど、殺せんせーが授業ほっぽらかして夢中になっている様子にビッチ先生はすかさずツッコむ。うん、なんかいつの間にか1時間目に突入してたね。

 

「ところで菅谷君、見てたら先生も誰かに描いてみたくなりました」

 

仕舞にはそんなことまで言い出す我がクラスの担任だった。菅谷はいいけどもうまっさらなキャンバス無いぞ、と殺せんせーと一緒に教室内を見回し……。

 

「「あっ……」」

 

その目に留まるはたった今教室に入ってきたビッチ先生。

 

おあつらえ向きにノースリーブの夏服となって肌の面積が増えてるから、殺せんせーと菅谷には好き放題描けるキャンバスに見えた事だろう。

 

勿論すぐにそれを察するビッチ先生。

 

「ちょ、ふざけんじゃないわよ!誰がそんな……あ」

 

「「あっ」」

 

抗議の声を上げたところで床に落ちていた塗料を踏み、そのまま足を滑らせて後ろの壁に頭を打ち付けた。

 

そのまま気絶したビッチ先生を見て何とも言えない雰囲気になる。

 

「勝手に気絶しちゃったけど……」

 

「とりあえず安静にしておきましょう。……その間に先生はこっち半分、菅谷君はそちらを」

 

「ほっほー、俺と競う気かね」

 

そしてその間に勝手にペイントし始める殺せんせーと菅谷。

 

 

 

 

 

 

数分後……。

 

「「「おお~!!」」」

 

菅谷が担当した右腕には、ハートと植物を組み合わせた鮮やかな模様が描かれていた。

 

「さすが菅谷!」

 

「外に出て楽しい感じに仕上げてやったぜ」

 

そもそもファッションアートだしな、と自信満々に描き上げた菅谷。鮮やかながらもあっさりとした模様はなかなか土台に合っているように見える。

 

「これならビッチ先生も逆に喜ぶんじゃない?」

 

「ねー!」

 

「……菅谷君のだけだったら気に入ったかもしれませんけど……」

 

矢田さんや倉橋さんが楽しそうにそのペイントを見て話しているけど、舞花がもう片側の腕を見て少し顔を引きつらせていた。

 

さて、もう一方のソレは……

 

 

『衣替えの季節だよタコくん!』

『僕も衣替えがしたいよ!』『よーしおじさんに任せろ!』

『それでどうするの?』『ソデを切って新しい衣をつけるのさ……』

 

 

「「「「「「なぜ漫画に!!?」」」」」」

 

タコと板前さんのようなおじさんの会話している3コマ漫画。この後そのタコ君はたこ焼きにされるんですね分かります。

 

ってそうではなく。

 

「いやぁ、ファッションとかアートとかは苦手でして……ならば得意分野でと」

 

「逃げに走るくらいなら描くなよ」

 

 

殺せんせーの弱点⑳:安い絵しか描けない

 

 

いや、これは誰が見ても顔引き攣らせるよ。左右で違和感がありすぎる。これ絶対起きたら激怒するだろうな、ビッチ先生。

 

「……いや、あえてそれをポップアート的な図柄として生かす手もあるぜ」

 

それを見て菅谷がそこにさらさらと加筆していく。枠の辺りにいろいろ描きこんでいるようだけど……。

 

「ほれ、これでどうだ」

 

「「「おおおおお!!」」」

 

流石というか、枠を華やかに飾り立てることで、見事に違和感を緩和させていた。これならまだ外を出歩いても大丈夫なくらいかもしれない。

 

……けど、そこで妙な対抗心を燃やした大人がここに。

 

「いや、あまりきれいに収まると気障ったらしいですね。どこか一か所は笑いどころを作らないと……」

 

「何でそこで張り合うの!?」

 

「お願いですからその辺でやめてあげてください!!」

 

周りの制止も聞かずに殺せんせーが更に何かを付け足す。

 

……プフッ。

 

「「「それ見た事か!!」」」

 

「あっははははははは!!」

 

「あぁ……もうどうするんですかこれ」

 

顔面に丸メガネと髭が付け加えられて、更には額に『中肉中背』の文字。思わず爆笑した。

 

 

 

 

 

その後も菅谷がフォローに描き加えると同時に更に殺せんせーが余計な物をつけ足すという状況が続き……。

 

 

 

―――結果。

 

 

「死ねっ!!!あんたたち全員殺す!!!!」

 

「ごめんなさい!つい熱中してしまって……でも教室壊れるから実弾はやめて!!!」

 

 

まあ、そうなるよね。

 

目が覚めて自分の現状を確認したビッチ先生は、すぐに教室を出ていき……実弾入りの機関銃を両手に持って戻ってきた。

 

まあ、途中からマジで収集つかなくなって、殺せんせーなんかマジックと段ボール持ち出してくるし、最終的に中々にカオスなことになっていた。ってか段ボールの兜と甲冑はマジで何?

 

……うん、見事にガチギレ。

 

とりあえず実弾はマジで危ないので可動部にナイフ投げて発砲できないようにしといた。

 

「ちょ、ストップですイリーナ先生!すぐに落とせば定着しないらしいですよ!!」

 

「あんたはなぜ止めなかったのよ舞花!っていうかちゃっかり一人だけ回避してんじゃないわよ!!」

 

「それに関してはホントにすみません!!」

 

舞花が濡らした手ぬぐいと水の入った桶を両手に急いで駆け寄るけど、罪悪感から全力で頭下げて謝ってた。

 

ちなみに足や胸元にまで手を出そうとしていた殺せんせーを舞花が全力で止めに入ってたおかげで、腕や顔の塗料を落とすだけで済んだ。一応マジックも水性だったし。

 

……これあそこで止められなかったらどんな状況になってたんだか。

 

 

 

零:Sideout

___________________________________________

 

 

「……全部菅谷君がやってたら多分あそこまで怒らなかったのにね。先生が余計なもの足すから……」

 

「……だろーな」

 

渚は実弾持ってきて殺せんせーに向けて撃ち始めたビッチ先生を見た瞬間に机の下に隠れ、同じく丁度隣に隠れてた菅谷と話をする。

 

「なあ、普通はテストの答案の裏とかに落書きしたら、スルーされるか怒られるかだろ?」

 

菅谷はその芸術肌から今回のように目立ちすぎるところがあり、2年の時にそれを理由に素行不良扱いされ、E組行きになった。

 

渚はその背景を知っているので黙って話を聞く。

 

「だけどあのタコは減点評価なんてしないし、むしろ嬉々として安っぽい絵を書き足してくる。考えてみたら当然だよな、殺しに行ってもいいわけだし」

 

「……まあ、生徒側にも殺し屋とか機械とか居るしね」

 

渚はこれまでにE組に来た転校生たちを見る。教室の前の方で零はビッチ先生を押さえつけており、舞花は濡れた手拭いで顔の辺りから丁寧に拭き始めていた。

 

桶とかどこから持ってきたんだろう……と渚はちょっと思った。殺せんせーが落ち着かせるためかポッキーをビッチ先生の口に入れようとしてるが逆に怒らせている様子。

 

ちなみに律は今のところ何も言わず静観している。

 

「……ここまで色々いると、ちょっと異端なくらいがE組(ここ)じゃ普通だ。いいもんだな、殺すって」

 

「……うん」

 

 

この教室は、普通からはみ出る個性豊かな生徒たちが「先生の暗殺」という目的のために切磋琢磨している奇妙な教室。

 

 

7月―――殺せんせーの暗殺期限まであと8か月。

 

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