ナザリックの喫茶店   作:アテュ

14 / 30
お待たせしました、続きになります

最近紅茶飲んでねぇなぁという気分になりますが(作者は毎日飲んでますが)次の話からもう少し増えてくるでしょう

まだまだ暑さはつらいですがそんな時にこそ水出しなり急冷タイプのアイスティーなどを飲んで乗り切ってください。暑すぎるともったりしたアイスクリームなどよりシャーベット系のほうが好まれるということもあるようなので向いているでしょう(ダイマ

誤字報告いつもありがとうございます


経過観察

「そうか、冒険者チーム 虹は依頼を無事達成したか」

 

「はいアインズ様。ボウフラより受け取った詳細報告がこちらになります」

 

いつも通りの口癖を聞きながらエ・ランテルの館でナーベラルから書類を受け取る。

 

先日ミスリル級冒険者 虹よりハーブの採集、有効利用について報告があった。モモン……アインズがそれを知っているのも依頼を出したのはエ・ランテルで商人を行っているノキを通じて依頼を出させた。エ・ランテルの商人ノキ……帝国商人とも繋がりがあり、昔はスパイ活動も行っていた実力者だナザリックからすれば器用貧乏にしかならないが現地基準では高い商才、戦闘力を持つ。

 

「素晴らしい、ハーブについての情報は知っていたが……利用方法のこの情報は有益だ。紅茶のように乾燥させれば現地だけではなく他国への輸出産業へもなりうるだろう」

 

「はっ、まさに……しかしナザリックには余程劣るものになりますがよろしいのでしょうか」

 

「現地の者たちが利用する分には問題無いクオリティだろう、こういった物は価値を与えてやる事こそが大事なのだよ、付加価値というやつだな。」

 

「付加価値ですか……?申し訳ありません、御身のお考えをお教えいただけないでしょうか」

 

「そう難しい話でもない、例えれば誰が使っているかという事でも興味を引く切欠、価値を生み出すことにつながるという事だ。将軍御用達の武具店などがわかりやすい例だ、戦うことに関してはプロとも扱われる者たちがよく利用する店ともあれば冒険者のような者たちも利用したがるようになるだろう金はかかるだろうがな」

 

「なるほど……そういったウジ虫が利用するようになれば後はボウフラどもも勝手に集まってくると……」

 

「知識が無い者ほどそういった情報に頼らざるを得なくなる。上手くいけば労せずに益を得ることに繋がるだろう」

 

「流石は至高の御方、深きお考え感服致します」

 

「この程度は造作も無い、デミウルゴスやアルベドならばもっとうまくやるさ。さてこの話はそのぐらいにしておこう」

 

朝はすぐに誰かがやってくるためその前に話を切り上げたところでいつも通りアルベドやエルダーリッチ、珍しくデミウルゴスも一緒にやってきて一般メイドのシクススが入室の許可を求めそれに応じさせる。

 

 

 

アインズが別の書類を取り出し正に忠臣の見本、膝を折り溢れんばかりの忠誠心を示すシモベらに語り掛ける。

 

「これにてエ・ランテルは交易都市としてだけでなく希少価値の高い効果的な薬草も採取ができる場所としても持つようになった。とはいえ……まぁこれは私のわがまま、戯れに過ぎない。世界征服だけに考えがいっていても少々つまらない、寄り道を楽しもうではないか」

 

ナザリック地下大墳墓の主人であるアインズの言葉に顔を上げ歓喜の表情を見せる。寄り道であろうが本筋であろうがそれはシモベ達にとっては何ら関係ない事であり至高の御方が望むものを全力を以て用意する事がシモベとして当然の行いであると信じてやまない、そしてそれはシモベらにとっても最上の喜びであることは間違いない。

 

「恐れ入りますがアインズ様、質問がございます」

 

「ふむ?質問を許そう、アルベド」

 

恭しく表を上げ濡れた……陶酔しているかのように怪しく輝く黄金の瞳がアインズを見つめる。

 

「ありがとうございます、アインズ様はお戯れと仰られていらっしゃいましたがその有効性は明らか。早くも王国や帝国、聖王国の一部でも紅茶、ハーブの文化が広まっております」

 

「喜ばしい事だ、我が魔導国の素晴らしさの一端が伝わるだろう」

 

「まさに……アインズ様が以前におっしゃられていた魔導国の目指す形……それは我らでは到底思いつかないプランでございます。そちらと関係いたしますがこの文化、茶としての産業はどの程度の着地点を目指して動かれているのでしょうか?国としての主産業、大陸の隅々までをも知らぬ者がいないもの……といった所なのでしょうか」

 

ふむとアインズがイメージを浮かべる。しかしながらアインズはそこまで深い事を考えてこの行動を行ったわけではない。一番最初にナザリックで一般メイドのアストリアから紅茶の魅力を教えられ、いつのまにかはまってしまっていた、話していて産地によっての特徴があると知ってからはこの地にもそういった違いがあるのではないかと思い調べたらいろいろと見つかってしまった経緯――アインズ本人としてはこれ美味いじゃん、え、別の国で作られたものも味が違うのじゃあ試してみようよぐらいの気持ちだったが今では後の祭りに過ぎない――。

 

とはいえ寄り道と言っているだけであり楽しむ程度で終わればいい、そう誤解無くわかりやすく伝えればそれで終わりの話だ。そうこの茶を飲むという事が生活の一端になれば素晴らしい――ついでに

 

「魔導国いや私に敬服する象徴となればなおよいだろうな」

 

「っ……象徴でございますか?まさかっ……」

 

動揺した様子でアルベドや他のシモベらがこちらを見つめる。やばい俺今何を声に出していたんだ?

 

 

「やはり私などの考えを超えられる御方、象徴……その文化を楽しむ事が我が魔導国の繁栄を示すあぁそういう事ならば国としての産業、大陸を超えてどころではございません。時代を超えて永遠に語り継がれるような魔導国を象徴する意味を持つようになるでしょうあの事を皆に今話す時なのですね?」

 

傍で控えていたデミウルゴスが感嘆の声を上げる。

 

途中で言葉を奪われたアルベドが嫉妬の目をデミウルゴスへ向けるがすぐにアインズのほうへ向き直し、蕩けたように見つめているいやまてデミウルゴスあの事ってなんだ……。

 

アインズがまたやってしまったと後悔する暇もなくアルベドとデミウルゴスがアインズの言葉を深読みして説明してしまう。こんな空気では言葉の撤回も修正もできる状況ではない。

 

だがしかしここで一歩を踏み出す事が成長の証というものだろう、いつまでも自分の発言に振り回されるアインズこと鈴木悟?そんなはずはない。

 

 

「……っの通りだ、デミウルゴス、そしてアルベド。よくぞ我が真意を読んだ!」

 

 

 

ダメでした、やけくそである。

 

 

頭を垂れたシモベ達がおおっという声を上げ口々にさすがアインズ様……、どこまで深きを読まれているのでしょうか、智謀の王、オオッオオッという声が響く、最後誰だ……?そうかエルダーリッチか……。

 

またやってしまったと後悔をしながらアルベドへ状況の確認を進める。

 

「さてではアルベド、デミウルゴス状況は読めたようだな?ただ現状の整理のためにも一度我らがここまでやって来た事とやるべき事を話してもらおうか」

 

「畏まりました、アインズ様」

 

 

そうしてアルベドがアインズの横へ控え、手を顎に当て少し思案する様子を見せる。

 

「そうね……最初にアインズ様が紅茶、そういった文化に興味を示されたのは皆知っての通り。その後から話しましょうか」

 

アルベドが焦らすかのような仕草をしてとろけるような笑みを浮かべる、いと尊き御方の心を今知れているという愉悦を感じてたまらないといった表情。エルダーリッチの他、NPCであるナーベラル、一般メイドのシクススも流石は守護者統括であらせられる方と尊敬の目を向けていた。

 

 

 

「まずアインズ様は紅茶という愚かな人間達でもわかりやすく文化的な象徴を選ばれた、繁栄の象徴としてね。外の国ではこういった嗜好品を手に入れるのにも一苦労、それも手に入れてもナザリックが扱っている品よりもはるかに劣る品当然だけれどもね」

 

デミウルゴスがアルベドの発言に続き説明を続ける、アルベドが全て至高の御方の考えを私が語りたいという仕草を見せるがアインズが命じたのは二人で説明せよという事。それを破ることはあってはならない、まずは分からないシモベにもわかるように説明をすることが最優先だ。

 

「ただ、慈悲深いアインズ様は愚かな人間達にも魔導国に頭を垂れる事で傘下に加わる事をお許しになられた。……以前アインズ様から万年を見据えた国を考えていらっしゃると伺った。我らが世界征服を行い完結させる事は当然、しかしながら人間は非常に愚かでもある」

 

 

「そう、統治そのものはエ・ランテルを始め属国である帝国も上手くいっているといっていいでしょう。ただしそれをこの先5年、10年と染みつかせていかねばならないわ。ただ紅茶という文化が広まりつつある……これは私たちへのヒントをお出しになられていたのよ――お前たち目先の事ばかりに目がいっていないかとね――」

 

そんな事考えてませんし明日の事にも手一杯ですと泣きたくなるような声を上げそうになる、しかもデミウルゴスその話皆に話しちゃうのかよぉ!と内心で叫ぶ。

 

 

ナーベラル、シクススはこれまでに英知溢れると知っていた主人が自分らが想像できる範囲などを全く飛び越え万年……それこそ歴史的快挙ともいえるような偉業をなされようとしているのだと今気づく。シモベとして主人の考えに気づけなかった点は大変恥じるべき事だ。――だが、喜びのほうが上回ってしまう。慈悲深き御方はそれほどまでに我らを導いていただけることに他ならないと気づいてしまったからだ。

 

 

「まさに……申し訳ございません、少々話がずれてしまいましたね。10年や20年そこらを支配するのは何ら問題ない事である、しかし100年、1000年……ましてや万年ともなれば愚かな考えを持つものも出てくるだろう。そういった存在を彼ら自身が生まないようにコントロールすればいい、それが象徴だ。まずは人間どもに祭りか何かを企画させる、アインズ様に仕えられる記念式典……としたいところですが根本的な意識誘導が目的でもあるため……そうですね、最終的にはこの大陸の名産品になるであろう茶、紅茶への感謝祭あたりでしょうか」

 

「そうね、嗜好品を楽しめるのは戦時では難しい。であればこそ恵まれた環境にまで導いてくださった魔道王陛下――アインズ様へ――感謝をさせて頂く事につながるでしょう」

 

 

そうなの?とアインズが思うが確かに祭りやイベントは形骸化していることもあるが目的意識を持って続いている祭りも多い。以前タブラさんと死獣天朱雀さんが話していたのを聞いたが祭とは祀る。神を祀ることから来ており神への祈りを捧げるものであり豊穣への感謝でもある。確かに収穫祭などそういった分かりやすい名産品による祭りなども記憶にある、昔ではトマトを投げつけるような祭りもあったらしい今では天然ものなど貴重品過ぎて考えられないが……。

 

 

「徐々に形になっていきそれは最終的にはアインズ様への信仰、与えられた豊穣への感謝へと繋がるでしょう、すなわちアインズ様が神として認知される事に他ならないわ」

 

 

え、やだと本日何回目か分からない精神沈静化が起き冷静になる。王様でもこれ以上ないくらい持て余しているのに神とか……神とかさ?ますますスケールが大きくなりわけわからんなぁ……と現実逃避をし始める。

 

「武力での制圧などよりもより効果的に治められるだろう、これこそがアインズ様が見据えられている真なる世界征服に他ならないでしょう!」

 

 

興奮した様子でデミウルゴスが説明を終えた。いつになく熱くなっている様子は珍しく冷静な姿ばかり見ているシモベらは驚いた様子もある、しかしながら至高の御方の素晴らしき采配それを間近で見ておいて何も思わないとなればそれは不敬であると言わざるをえない。

 

 

 

ここ最近で最大の鎮静化を行いながらアインズは正気に戻る。

 

どうしてこうなった……いや今までも少なくない知ったかぶりを行ってきたがこの流れはもはや収拾をつけようがない状況だ。そして現実逃避をやめたところでデメリットばかりでもないという事に気づく、なんやかんやで興味を持ち始めた紅茶だが今となっては生活の一部に欠かせないものとなっている。堅苦しい面――行事、祭りなど政治的な意味合いを持つようになってしまったことは少々残念だが逆に言えばもう少し紅茶の事に力を入れても疑問を持たれないな――とただでは転ばない。

 

 

「ではアルベド、デミウルゴスお前たちに一つ仕事を任せよう。先ほど話した恒久的な支配につなげるための策を現在の統治に加えて進めよ、細かいところはまた追って書面を出すといい。苦労をかけるがよろしく頼む」

 

「何を仰います!我らシモベはアインズ様のご命令に従う事こそ至上の喜び。そのようなお言葉もったいのうございます……」

 

「まさに、我らにお命じ頂いた事を至極恐悦、光栄にございます。アルベドと審議しながらまたアインズ様へご相談させて頂きます」

 

「うむ……、あぁこの件に関しては他のシモベからも意見を募って構わん例の提案書――目安箱のようなものへ――それに積極的に募集させよ。祭などは神聖な意味合いもあるがある程度親近感ある内容でなければ民に受け入れられないだろう」

 

「はっ、畏まりました。全てはアインズ様のご意思通りに進めさせていただきます」

 

 

――何とか最後だけは上手くいった。よし細かいところは知恵者であるアルベドとデミウルゴスへ任せ、俺はどう時間を稼ごうか……。今の提案書を募る箱を利用して他国などでどういった広がりがあるか見るのも手かもしれない、言ってみれば喫茶店巡りのようなものか――現実では到底出来なかった文化的な試みをできる事に子供っぽいようなわくわくした気持ちを隠せないアインズだった。




というわけで次回から原作であるドワーフ国のようにアインズが逃亡?します。まぁこれも原作同様にアインズしか柔軟な対応、発想ができないということもあってしょうがないとも言えます。

どっかで入れたいなーと思っていた喫茶店巡りのようなものを入れていきます。

どちらが上とは現実では非常に判断が難しく売れてるものが正義だぞという考えがありますがマイナーなものもマイナーなものでたまにはいいものです。ベトナムコーヒーとかチャイとかね、毎日は飲まないけどたまに飲むとあぁこれ案外いけるねっていうのもあります。


さてこれからの時期はミルクティーがおいしくなってきます。作者としてもミルクティーは大変好みでほぼ毎日飲んでいます。

アレンジとして面白いものも今後紹介していこうと思いますのでよろしくお願いいたします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。