ナザリックの喫茶店   作:アテュ

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お待たせしました、4th Cup後半投稿させて頂きます

おすすめBGM Faith by Peter Mclsaac Music

youtubeにこちらをBGMにしたガトーショコラの制作動画がありましたのでそちらを開いて頂きながら見るとより一層雰囲気を楽しめると思います


また、ユーザー名の変更を行わせて頂きました。

セネルケウィン→アテュ

よろしくお願いします


4thCup 「Breakfast」

「よし、ポットも温まったな」

 

(何だか2分程度しか立ってないのに、1週間以上経ってる錯角があるな……?何でだろうか。まぁいいか)

「ポットも温まった。茶葉も決めた、湯もそろそろ沸く。後は……ティーカップか」

 

 そう言いながらアインズが戸棚の中を探すと中には数多くのグラス、カップが並んでいる。どれもシンプルではあるが高級さと気品が調和されたデザインに仕上げられている。アインズ自身こういったものにあまり興味が無いが

 

 またまた余談になるがティーカップの歴史も長い。嗜好品の代表であるコーヒーと比べてみると違った特徴が伺える、一般的なコーヒーカップは底が深めになっている事が多い(大体120~150ml)。一般的なマグカップが250ml前後とされることからかなり容量は小さめという事が分かる。対してティーカップは底が浅く口は広めになっている事が多い(大体200ml)。

 

 もちろんそれぞれに理由がある、一言で言えば飲み頃の温度になる。コーヒーではおよそ80度~で抽出する事が多いが紅茶は100度近く、さらに現在のコーヒーの主流なペーパーフィルタードリップ方式ではもう少し温度が下がる事が多いため、実際に飲む場合では70度前後になるだろう。紅茶ではティーバックであろうとリーフであろうと使うお湯の温度は変わらず100度近い。しかし紅茶の飲み頃の温度はおよそ60度付近と言われている。すなわち淹れ立てでは温度が高すぎる、そのため()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これでいいか。ミルクティーだし少し底が深いものにしておこう」

選んだカップを横に置き、軽く洗った後にレンジで温まったティーポットのお湯を少し注いでおく。

 

そこで菓子を準備しに行ったシクススが戻ってくる。早いな……まだ数分位だと思うが。

 

「お待たせ致しました、アインズ様。副料理長がこちらへ既にお持ち頂ける所でしたので受け取ってまいりました」

 

「そうか、ご苦労。ではケーキの用意はシクススに任せよう」

 

「はい、畏まりました」

 

「さて……ん?」

 

どこからか声が聞こえてきた。この声は……

 

「アインズ様~!」

 

大きな声を出しながらアウラが駆け寄ってきた、相変わらず元気一杯でこちらも思わず笑顔になってしまう。

 

「どうした、アウラ。珍しいなこのラウンジに来るのは」

 

「アインズ様を探しておりました!ただいまお時間大丈夫でしょうか?」

 

ふむ?何か急ぎの案件があったかな。いやいやもしかして何かイレギュラーな事態でも起きたのだろうか?とアインズが不安になりながら問いかける

 

「どうした?何かイレギュラーでも発生したか?」

 

「いえ!アインズ様にお会いしたく探しておりました!おはようございます!」

 

「そうかそうか(ほんわり)」

 

少し身構えたが子供(年上)らしい発言に思わず笑顔になってしまう。ここのところアウラとゆっくりと話すタイミングが無かったなと感じ、良いタイミングかもしれないなとふと思う。

 

「アインズ様、お邪魔ではなかったですか……?」思わず不安そうな顔をしながらアウラが聞いてくる

 

「そんな事は無いさ、少し試してみたい事があってな……ふむ、アウラこそ今から少し大丈夫か?」

 

「はい!もちろんアインズ様のためでしたらいかようにも出来ます!」

 

「そうかそうか、……そういえば今日はマーレと一緒では無いのだな?」

 

「はい、先ほど回覧板を回しにコキュートスのところへ渡しに行っていました」

 

(あぁ、そういえばまた風呂に誘っていたな。だからマーレもあまりはっきりとはアウラに言えなかったか)

 

「ふむ、では少々付き合ってもらってもよいかな?実は生産スキルを使用できる指輪の検証をしようと思っていてな。自分だけで試しても良かったが、せっかくだアウラも試食……いや、試飲してもらえないか?」

 

「生産……スキル、試飲……ということは……アインズ様自らお作りになられるのですか!?」

 

 アウラが酷く驚いた様子でいる。無理も無い事だが至高の御方から授与されるものはどれも光栄極まりない、しかし至高の41人が手ずから作ったものは今となっては数少ない。正確に言えば、手ずから生み出せる存在がアインズのみになってしまったため非常に貴重になってしまっている。そんな状況で、至高の御方が手ずから作っていただいた一品を自分に与えてくれるというのだ。

 

 思いがけない幸運にアウラがフリーズしかける、それも仕方が無い事である。共に仕えるナザリックのシモベら誰であろうとも同じように戸惑うに違いない。守護者一の知恵者デミウルゴスであろうと、錬磨された精神と武人の心を持つコキュートスであろうとこのような栄誉を与えられてはふと得た幸運に感謝してしまうだろう。

 

「その通りだ。初めて使うものでもあったからな……少々自信が無かったので一人で試してみようかとも思ったが、自分以外の感想も欲しいと思ってな」

 

「ぜひ!ぜひご賞味させて下さい!」

 

「お、おうそうか。……だがあまり期待するなよ?たいしたものではないからな」

 

「アインズ様から頂けるものは全て、私にとって望外の喜びです!」

 

やべぇ、これ結構プレッシャーだ。そういえばアウラってシャルティアが紅茶好きだからちょくちょく飲んでるよなぁやべぇと今更ちょっと後悔し始めたアインズだった。

 

まぁデミウルゴスやアルベドよりは誤魔化しやすいかとポジティブに考え直す。

 

「アウラも付け合せの菓子はガトーショコラでよかったかな?」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

アウラが大好きです!といった顔で頷きながらシクススの方に視線を向ける。

 

シクススが頭を下げながら畏まりましたと返事し、準備に取り掛かる。

 

 

「さて、では私の方も準備をしようか」

 

アインズは手元を動かしながら紅茶の準備を進める。

 

ティーポットからお湯を捨て、茶葉を入れる。今回はミルクティーにするため少し茶葉を多めにした。使う茶葉はイギリス最大の某老舗高級百貨店が販売していたブレックファスト、アッサムを中心にダージリンを少し加えたブレンドを選んだ。

さすがユグドラシル、昔の名店の味をそのまま持ってきてるなんて狂ってるなとあらためて感心した。

 

精巧な葉っぱのデザインのティーキャディーを手に取り、茶葉を計量する。そう畏まりすぎても良くない。こういうのはある程度ざっくりでも良いものだ。

 

沸騰直前になったケトルのお湯を勢いよくティーポットへ注ぐと茶葉が舞い上がり上部に浮かび上がる。ケトルを置き、冷蔵庫からミルク、生クリーム、蜂蜜を取り出す。

 

それぞれ小型のポットへ移し変えカップのお湯も捨てる。

 

ちらりとシクススの様子を伺う。今からちょうどガトーショコラを切り分ける所のようだ。

 

 

副料理長特製のガトーショコラ、今回は特によりバニラの香りを上品に贅沢にとバニラエクストラトを使われている。強いビター風味になっているが、バニラの香りが食欲を誘う仕上がりだ。

 

ナイフを入れしっとりと濃厚な生地が切れる音が心地いい。切り分けられたガトーショコラをアインズといアウラの前へ差し出していく。

 

食べる直前にと副料理長から別に用意された粉糖をシクススがふるいにかけガトーショコラを彩る。

 

「お待たせ致しました、ガトーショコラ(ビター)でございます」

 

「ありがとう、さぁアウラ座ってくれ。茶の準備もそろそろ準備できよう」

 

「いえ……アインズ様にご用意頂いているというのに私が座るというのも……」

 

まぁそりゃ遠慮するだろうなと思いながらアインズも答える。

 

「ふむ、とはいえ今この場では私がアウラをもてなすところだ。ではこうしようか、次回アウラが私を何かしらでもてなしてもらってよいかな?」

 

ニヤリとアインズが分かりやすい餌を目の前に用意すると予想通りとても良い反応で食いついてくれる。

 

「本当ですか!では、ぜひ今度第6階層の私とマーレのところへお越し下さい!」

 

このあたりは良い子供らしさだなとアインズも笑う。アルベドやデミウルゴス達は葛藤しながら答えに迷うだろう、こういったところはアウラとマーレに忘れないで欲しいなとふと考える。

 

「楽しみにしているよ、ただしあまり気を使わなくともよいぞ?私はお前たち、アウラやマーレからもてなされる事だけでとても嬉しいからな」

 

アインズ様……とアウラが潤んだ目でこちらを見る。うん、やっぱりシクススも当たり前のように泣いてるね。

 

「さぁ、そろそろ頃合だ。楽しもうじゃないか」

 

「アインズ様、今更ですがお試しになるというスキルというのは……」

 

「ああ、そうだ紅茶を淹れるスキル、()T()e()a() ()P()a()r()t()y()()だ」

 

 

 

 

……アウラ side……

 

 

私はなんて幸運だろう、仕事に取り掛かる前にふとアインズ様の顔を見たくなり思わず第9階層のロイヤルスイートへ来てしまった。

 

お顔を拝見させてもらえる栄誉に加え、アインズ様手ずから淹れられた紅茶を頂けるなんて。さっきから顔が緩みっぱなしだ。とても他の守護者には見せられない、マーレにだって恥ずかしすぎる。あぁ、なんて幸せな時間だろう。

 

 

 

……アインズ side……

 

「そろそろか」

 

ティーポットの蓋を取り、ティースプーンでほんの少しゆっくりとかき混ぜる。広がりきった茶葉が美しい、その茶葉の大きさが高い等級のオレンジペコである事を伺わせる。

 

蒸らされたティーポットから豊かな香りが広がる。アッサムのコク深さにダージリンのマスカットのような清涼な透いた香りを感じる。

 

思わずアウラも「わぁ~っ!」と目を輝かせる。

 

「さぁ出来上がりだ」

 

アインズがそう言いながらカップへ紅茶を注ぐ、先ほど用意した少し深めのティーカップの半分程度まで。

 

「最初はストレートで飲んでみると良い、次に味わいを変えてシンプルにミルク、リッチな味わいに生クリーム、蜂蜜を加えてみても良いかもしれないな」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

辛抱たまらないといった雰囲気でアウラがカップに口をつける、淹れたてではあるが調整を行っているので60~70度程度、適温だ。

 

「はぁ……とても……とても美味しいです、アインズ様……」

 

そうかそうかとアインズも思わず笑う。なかなか良い手ごたえじゃないかと安心し、自分もカップに口をつける。あぁやはりこれは素晴らしい。アストリアの喫茶店に通うようになってからこの紅茶が最も気に入ってるかもしれないな。

 

アッサムのどっしりとした奥深い味わいが非常に好きだ。ミルクを加えるのもいいが一口目はぜひストレートで楽しみたい。ここから二杯目の変化が楽しみなんだよなとわくわくした様子で一口で紅茶を飲んでしまう。

 

「次はシンプルなミルクティにしよう。アウラも気にせず好きにアレンジするといい」

 

「はい!」

 

くどいようだがこうでも念押ししておかないと恐縮して同じもので!という形になりかねない。お茶を楽しむのに必要以上に肩が張るのは間違っているからなと小さくひとりごちた。

 

アウラは二杯目には少しの生クリームと蜂蜜を入れた贅沢な仕上がりにするようだ。濃厚だ、ガトーショコラにも負けない味わいになるだろうなとアインズが微笑む。

 

「さて、では頂こうか」

 

粉砂糖で雪が降ったように彩られたガトーショコラへフォークを入れる。身がぎっしりと詰まっているような重さを感じながら一口。とてもビターな大人の味わいだ、これだけでは大人であるアインズも少し持て余したかもしれない。しかしここにはこれがある、ミルクティが。

 

シクススが追加してくれた紅茶にゆっくりとミルクを加える、クリーム色に変わり優しげな雰囲気を醸し出す。スプーンで軽く混ぜ、口をつける。

 

 

【挿絵表示】

 

 

あぁ、なんという事かこの味わい。先ほどでも十分に感じられたコクがミルクでより一層引き出されている。

 

「素晴らしい……」

 

自分で淹れておいてだが、思わず呟いてしまう。それほどまでにこの調和は素晴らしい。なんという組み合わせ、なんというマリアージュ。

 

「あぁ……アインズ様、ガトーショコラがとってもビターで重い味わいですけど生クリームと蜂蜜がより一層紅茶を美味しくしてくれています」アウラがうっとりとした顔で言う。

 

「うむ、素晴らしい組み合わせ、絶品だな。スキルも上手く発動しているようで何より」

 

あぁ……実にゆったりとした気分だ。一生ここでゆったりしていたいなぁ……とおもわず考える。

 

 

そんな所へ複数人、歩いてくる声が聞こえる。

 

「アインズ様、おはようございます」

 

「あぁ、おはようアルベド。デミウルゴス、マーレも一緒か」

 

「おはようございます、アインズ様。はっ、私と統括殿は中間報告。マーレは回覧板をアインズ様へ渡しにきたようです」

 

「お、おはようございます、アインズ様」

 

デミウルゴスがにこやかにアインズへ報告。マーレが自信なさげながらもアインズへ挨拶をする

 

「ところで……アインズ様、少々宜しいでしょうか?」

 

「うん?」

 

「こちらのラウンジをご利用されて……お茶会でしょうか?大変失礼致しました。ご報告は後に回させて頂きます」

 

「あぁ、気にするな……いやそうだな報告に火急なものはあるか?」

 

「いえ、中間報告の総括としてはおおむね順調に推移しており後ほどご覧頂ければ十分かと思われます」

 

「そうか、ありがとうアルベド」

 

「とんでもございません!」

 

うーん、アルベドそわそわしてるなぁ。あ、そうかこの配置に気づいたのか。

 

そう、少し変わった置き方がされている。ティーポットやカップなどの配置からアインズが紅茶を淹れていたのでは?と思わせるように目の前に置かれている。これがメイドらに行わせているのならばカップだけがアインズ達の目の前にあるだろう。

 

よく気づくわぁと感心しながらアインズが微笑む。まぁ上手く淹れられたようだし誘ってみるかと思いつく。

 

「実は生産スキルの実験……まぁほとんど趣味だが行っていてな。紅茶を淹れるスキル 『Tea Party』を使ったところだ」

 

「では……こちらの紅茶はアインズ様自らお淹れになられたものですか!?」

 

アルベド、デミウルゴス、マーレが驚愕する。最近アインズがアストリアの喫茶店によく行っている事は当然知っていたがまさか御方自ら淹れられるまで紅茶に興味をお持ちとは……と衝撃を受ける。

 

「あぁ、ちょうどアウラもきてな。少し付き合っていてもらっていた」

 

なんと羨ましい、至高の御方手ずから淹れられた紅茶を飲ませて頂けるとは。アルベド、デミウルゴス、マーレが思わずアウラへ嫉妬の目を向ける。とはいえ直ぐにその嫉妬は解消された。

 

「ふむ、良かったらどうだ、お前たちも少し茶を飲んでいかないか?」

 

『!!!』

 

3人がはっとした顔でこちらを向く、アルベドとデミウルゴスはそのような身に余る光栄……といった顔だ、マーレは凄いうろたえてるな。

 

「あぁ、気にするなそう固いものではない。気に入った茶葉が見つかってな、自分でも淹れてみたいとふと思いつきやってみただけの事だ。感想を言ってもらえると助かる」

 

アインズがそう答え、それならば……と笑みを堪えきれない様子でアルベド達が頭を下げる。

 

決まりだな、さぁもう一度淹れるとしよう。

 

ふとアインズの思いつきで始まった小さな茶会、それはもう少し続くようだ。




今回作業していた際に飲んだ紅茶はHarrodsのモーニングフレッシュです。

作者自身、最も好きな紅茶は何か?となった場合この紅茶をあげます。それほどまでにお気に入りの紅茶です、少々一般的な紅茶よりも値が張りますがぜひ一度お試し下さい。

ただ近隣では名古屋のHarrodsでしか売っていないため名古屋に出かける理由になっています笑


閲覧頂きありがとうございました

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