美しい緑と白い帽子をかぶった山、そしてミラーボールの様な輝きを放つ湖。
それを汚す気満々の排気ガスをまき散らしながら、サイドカー付きのバイクが走っている。
爆撃されたかのような道路を時々宙に浮きながら走っている。
ブロロロロロロロロロロ…!
「ねー」
ガタガタガタ!
「…」
「…ねー!」
「…すー…すー…」
「ねぇってば!」
バシッ!
「ヴァッ!?」
「もう日が暮れそうだよ」
「…」ぶんぶん
北方の人が使う耳まで覆える帽子を深く被った少女がいきおいよく首を振ってあたりを見回す。
「…ご飯どうする?」
「…」ビッ!
勢いよく湖を指さす少女。
「釣れってのかい」
「…」こく
一回だけ頷く少女。
ハンチングキャップに防塵ゴーグルをかけた少年は溜息混じりの笑みを浮かべる。
「釣り具がないよ」
「…」じっ
少女が何か言いたげな表情で少年を見つめる。
「…やだよ」
少年は再び前へと向きなおす。
「しかし夏だからまだいいものの、この辺りはさすがに涼しいねえ」
「…」もそもそ
少女が再び毛布にくるまっていく。
「あー、だからどうするのさ!
もう今日はここで野宿しちゃう?
それとも民家を探す?」
「…」ビッ!サッ!ぶんぶん!
少女が勢いよく過ぎ去る地面を指さし、寝るジェスチャーをし、首を振る。
「野宿はいやなのね…誰かいるかなこんな山奥に」
少年がバイクを走らせつつあたりを見回すと。
「…お」
目の前に妙に目立った赤色があるのに気が付いた。
「ありゃなんだ?」
ゴーグルをはずして目を細める。
その赤いナニカは道の端から端を行ったり来たりしているようだ。
「人かな?」
「…」ひょこ!
毛布の中から勢いよく頭を出す少女。
少女も目を細めてその物体に目を凝らす。
この速度で行けばあと少しでかち合うだろう。
「…おー、人だ」
大分近づいた今の距離で見るそれは明らかに人の形をしていた。
何やら籠の様なものを抱えて右往左往している。
ブロロロロロロ!
「おーい!」
「…」ふりふり
少年と少女が手を振りながらバイクを走らせる。
「…!」ぱあぁ
赤い人型のそれも手を振り返した。
嬉しそうに顔をほころばせているのが見える。
どうやら女の子のようだ。
バイクの速度を落とし少女のそばに寄せると、やっとのことで話しかけてきた。
「こ、こん…!
こんにち、はぁ…!」
息も絶え絶えに挨拶をする少女。
顔を真っ赤にしながら手を膝について肩を上下させる。
「こんにちは!
何もそっちから駆けてくることなかったのに」
「…」ふりふり
少年はゴーグルを外して笑いながらバイクのエンジンを切る。
「すいません…!
あ、あまりにもうれしくて」
赤い頭巾をかぶった少女は顔を紅潮させながら息を切らせている。
「君はこの近くの人?
もしよければ一晩宿を…」
「助けてください!」
「…へ?」
「誰かに…つけられてるんです!」
「…へぇ?」
「…」ふりふり