楯無は二番目に別れた
そこは魔術が発展した国で魔術師達が占いからまじない、魔法道具の販売など、町で様々な商売をしていた
楯無はその中でもレックのかつての仲間であり、霧の魔術師と呼ばれている人物のいる屋敷に訪れていた
楯無「すみません、ミリアーナ・レイヴァンスさんはいらっしゃいますか?」
?「私なら、もう後ろにいるが?」
突如、屋敷の中に霧が立ち込め、それが一か所に集まると、魔女の帽子をかぶったスレンダーな体系の眼鏡をかけた赤い髪の女性が楯無の前に現れた
?「私がミリアーナ・レイヴァンス、霧の魔術師と呼ばれている者だ、ミリアで構わない」
楯無「更識楯無です、レックからの紹介で来ました…」
ミリア「ああ、あの若造か、懐かしい名だ…それで、どう紹介されたんだ?」
楯無「えっと…霧の魔術を巧みに操り、敵を惑わせながら一撃必殺で相手を仕留める魔術師で…少し難があるとか…」
ミリア「そうか…で、見た感じ君は女のように見えるが…女だよな?」
楯無「そうですが?」
楯無はよくわからず、肯定したがこれが仇となるとは思いもしなかった
ミリア「早速だけど、私の所で働いてもらおうかしら?」
そこから、楯無の修行が始まろうとしていた
だがしかし、そこからがある意味で地獄になろうとは思いもしなかった
ミリアは楯無を客室に案内し、そしてそのまま楯無と共に中に入り、鍵を閉めた
楯無「え? いったい何を…?」
ミリア「フフフ…レックの奴、どうせ外見が女だけの男を寄越してくるとは思ってはいたが…本当に女…それも私好みの…フフフ…」
その瞬間、楯無の胸をミリアが揉みしだきはじめた
ミリア「このたわわな果実…良いハリねぇ」
楯無「あ…やめ…ぁん…!!」
ミリア「ウフフ、ここにいる間、たっぷり可愛がってあ・げ・る」
楯無の声にならない悲鳴が屋敷の中に響いた
それから、楯無はミリアから魔術を教わり始めた
ミリア「さて、楯無ちゃん、今日の課題は霧のスクリーンよ」
楯無「は、はい!!」
楯無は意識を集中させると、霧が立ち込み、スクリーンの形をとった
だが、長くは続かず、僅か五秒で霧散してしまった
楯無「そ…そんな…何で!?」
ミリア「成程、楯無ちゃん、魔法がうまくいかない理由がわかったわ…楯無ちゃん、貴方、できないことに焦りを感じているわね…」
楯無「…焦り…?」
ミリア「ええ、どういう育ちで、何を思っているのかはわからないわ、でも楯無ちゃん、そんなんじゃレックが用意してくれた二年で習得はできないわ…」
楯無「・・・」
楯無はミリアに言われ、肩を震わせていた
ミリアはそんな楯無を見て、いきなりカードを取り出した
ミリア「楯無ちゃん、悪いけど水晶蜥蜴の鱗を買ってきてくれないかしら?」
楯無「…わかりました…」
楯無はぶっきらぼうに言って出て行った
ミリアはその間にカードを確認した
ミリア「運命の出会い…か…」
その呟きはミリア以外誰も聞こえはしなかった
楯無「何よ!! 私には挫折なんて不要なのに!! あの変態、私をこけにして!!」
楯無は不満を漏らしながらミリアのお遣いをこなしていた
その時、背後からいきなり何者かに裏路地に引き込まれた
楯無「だ、誰!?」
男「あの魔女の所にいた少女…漸く私の物になるのですか…」
声の方を見ると、そこには優男のような風貌の男性と、醜い豚のような顔つきの大男だった
楯無はその二人を睨み付けていた
男「警戒しなくてもいい、すぐに気持ちよくして差し上げますから」
楯無「貴方なんか!!」
男「私なんか…なんですか? 貴方の事なら何でも知ってますよ? 魔法の国の中で魔法が使えない異世界出身だと…」
その優男は歪んだ笑みを浮かべて楯無に迫った
楯無は蹴ろうとしたのだが、脚を何かで縛られ、腕を大男に捕まれ何もできなくなってしまっていた
優男は楯無の太もも部分をさすり始め、楯無は嫌悪感を抱いていたが、恐怖で震えていた
男「こんなに感じてくれるだなんて…」
楯無「く、この!!」
楯無はミリアが言っていたことの意味を今更理解し、涙を流した
楯無「(本当だ…私…あの時、出来ないことがあれば私の汚点になってしまうと焦っていた…過信していても、焦っても何にもならないのにね…この男に汚く弄ばれるくらいなら…いっそ死んだ方が…)」
楯無はもうあきらめてしまったのか、目の光が失せてしまった
優男は楯無の着ていた上着に手をかけ、乱暴に引きちぎろうとした時、いきなり何者かに殴り飛ばされた
?1「この辺りに指名手配犯が来ているって通報で来てみたけど…当たりみたいだ」
殴った人物は金色のボサボサだが髪を後ろで三つ編みにして束ね、青いチェストプレートを着けた碧眼の少年だった
男「お前!! 人の恋路の邪魔をしやがって!!」
?2「恋路…? どう見たって嫌がっている女の子を無理矢理犯そうとしているところにしか見えないんだけど?」
優男が少年を睨むと、少年のそばに揚羽蝶の翅が生えた小さな少女が現れ、優男に侮蔑の視線を送っていた
その間に、少年はオークの足を踏みつけ、怯んだ隙に楯無に接近し、抱きかかえた
?1「大丈夫ですか?」
楯無「え、ええ…」
いきなりのことで楯無は動揺し、何故か心が弾んだ
?2「さあ、片づけるわよ」
?1「そうだね…」
少年はペンダントを掲げると、ペンダントから眩い光が放たれ、光が収まると、オークと優男は地に付して意識を失っていた
?1「任務完了…あとは警察に突き出すだけだね」
楯無「あ、あの…助けてくれて、ありがとう…」
?1「どういたしまして、それでは」
少年が立ち去ろうとしたとき、楯無は服の裾をつかんでしまっていた
楯無の行動に、少年は何となく察したのか、足を止めた
?1「少し落ち着くまで一緒にいますよ、えっと…」
楯無「刀奈…更識刀奈…」
?1「僕はカイト、カイト・モリガミです、よろしくお願いします、カタナさん!!」
?2「カイト、私を忘れてるわ、私はシアン、カイトの契約宝獣、真名は
カイトと名乗った少年とシアンと名乗った妖精の少女は楯無に名乗り、楯無も自分の本当の名前で挨拶した
カイト「えっと…それで…カタナさんはこの国の人ではないそうだけど…どうしてここに?」
楯無「えっと…ここの魔術師の所で魔術を習っているんだけど…旨く行かなくて…」
シアン「そうなの?」
楯無「出来ないことがあってはいけない…更識の当主はそうでなくてないけないって思って…」
カイト「うぅん…そう言うものなのかな?」
カイトの言葉に、楯無は思わずカイトを見た
カイト「あ、すみません、僕は家柄とかよくわかりません…ですけど、出来ないことが無い完全無欠な人間なんて存在しないと思います、出来ないからこそ、誰かに頼れる…完璧とは程遠いかもしれないけど…当主とか、そう言ったこと無しでカタナさんはカタナさんらしくいれば良いって…すみません、何だか変なことを言ってしまって」
カイトは楯無に言いたいことを言った後、謝罪した
楯無はカイトの言葉でミリアの言葉の意味が分かり、カイトに抱き付いた
カイト「カタナ…さん…?」
楯無「…グス…ヒック…エグッ…」
楯無は泣いていた
カイトはそれを見て、困った顔をしたが、すぐに優しく楯無の頭を撫でた
カイト「何があったかわかりませんが…今は泣いても良いですよ…?」
楯無はその後もずっと泣きじゃくり、その間も、カイトは優しく微笑んでいた
だが、その間、シアンはジト目でカイトを見ていた
しばらくして、楯無は落ち着いた
楯無「ありがとうね、カイト…少し、楽になったわ」
カイト「どういたしまして、僕なんかで避ければ、何時でも相談してください、僕はしばらくこの街にいますし…一応、これが僕の連絡先です」
カイトはそう言って楯無に名刺を渡し、シアンと共に去って行った
楯無はその名刺を見ていた
楯無「…カイト…君…フフ♪ 明日も会えるかな?」
楯無は嬉しそうに鼻歌を歌いながらミリアのいる屋敷に戻った
それから、楯無はかなり快調だった
教えられた魔術を三時間である程度体得し、そして、自分に合ったやり方に改良している
だが、本人は慢心することも無く、焦ることも無い、完全に自信と希望に満ちていた
楯無「えっと…この魔法薬のレシピは…あ、それよりも先に魔石を用意しないと…」
ミリア「勢が出てるわねぇ、カタナちゃん」
楯無「ひゅい!?」
楯無がいつものように魔術の研究をしていた時に背後からミリアに抱き付かれ、間抜けな声をあげてしまった
楯無「師匠!?」
ミリア「ウフフ、最近、好きな子ができて調子もよさそうね」
楯無「な、何故それを!?」
ミリア「私は霧を操る魔術師…霧で様子を見ていたのよ」
楯無は見られていたと知り、羞恥で顔が赤くなり、顔を両手で抑えて涙目になっていた
ミリアはそうなっている楯無を見て恍惚とした表情を浮かべていた
ミリア「っと、本題を忘れるところだったわ…これ…」
ミリアは楯無にアメジストの付いた扇を渡した
楯無「えっと…これは…?」
ミリア「貴方の相棒になるかもしれない子が宿っている宝石よ」
楯無は扇を手に取り、アメジストに触れた
その瞬間、楯無の前に紫色の大きなコウテイペンギンが佇んでいた
?『余を呼んだのはそなたか? 小娘よ』
楯無「・・・」
コウテイペンギンが王様のような口調で喋っているのだが、どうも威厳が無く、可愛らしく思ってしまった
?『何だ?余がこの姿で威厳が無いと言いたいのか?』
楯無「い、いえ…そんな事は…」
?『まあ、よかろう…ふむ、揺るぎない自信…そして、過去に侵してしまった罪へ向き合う事への覚悟…余と契約するに値する人間と見た…』
楯無「それじゃあ…!!」
?『よかろう…余は主の剣となろう…』
ペンギンは紫色の光となり、宝石に戻り、宝石は光を宿し、紫色に艶やかに煌めいていた
そこから、楯無は宝獣の扱いをミリアから教わり始めた
合間にカイトと会うこともあり、カイトの前では本心で話し合うことができた
その間に簪との仲を改善し、彼女の婚礼にもしっかりと参加していた
二年後、楯無は魔術を自分の物とし、更識家の当主としての風格が形成されていったが、カイトへの思いは変わらず、定期的に連絡を簪や使用人たちには内密にとっていた
だが、父親にバレていたのは言うまでも無かった…