シャルロットとレックはフランスに来ていた
ただ、ここに来たのは観光ではなく、二つの理由があってだ
その一つがシャルロットの母、マリー・フランソワの墓参りだ
レックはマリーが好きだったというカーネーションの花をシャルロットと共に備え、近況報告をしていた
シャル「御免ね、レック…こんなことに付き合わせちゃって…」
レック「大丈夫、君が行きたい場所に今は着いて行くよ」
シャル「ありがとう…それじゃ、行こうか…」
その後、もう一つの目的のために墓地を後にした
その頃、デュノア社では社長であり、シャルロットの父、エーデル・デュノアは焦っていた
何者かからのハッキングを受け、デュノア社の不祥事と設計図を奪われ、ISの生産ラインも停止状態、そしてISのデータを取るために使っていたシャルロットも行方不明となっている
この状況に立たされた
エーデル「クソ!! 誰だ!!こんなふざけたことをしたのは!!」
エーデルは辺りの物に当たり散らし、焦っていた
恐らく自分の不祥事を世間に公表されるかもしれない状況にさらされ、気が気じゃない状況になっていた
レック「会社のお偉いさんも大変だね、不祥事が盗まれちゃって…」
エーデル「だ、誰だ!?」
レックが足を組んで机の上に座っていて、膝の上に、シャルロットが頭を乗せていた
レック「僕はレック・ヴォルフス…旅人と言おうかな? それとも…ここの命運を握っている…神様…と言った方が良いかな?」
レックはそう言ってUSBメモリーをエーデルに見せつけた
エーデル「何!? そ、それにシャルロット!!貴様!!」
レック「あ、このデータにシャルは関係ないよ? 僕の友達が調べて奪ったんだから…」
エーデル「そ、それを…如何するつもりだ…!?」
レック「それは君のこれからの態度次第かなぁ?」
シャルロットが退くと、レックは机の上から降りた
そして、エーデルの近くまで来た
レック「ここに来たのはシャルロットと縁を切ってもらうためさ」
エーデル「何を馬鹿な…シャルロットは私の娘だぞ!?」
シャル「へぇ~…その娘が義母に暴力を振るわれているのを無視してIS適性があったからって非道徳な実験に使ったり、部下に無理矢理犯させようとした癖に…よく言えるね…?」
シャルロットのブリザードのように冷たい笑顔でエーデルに問いただした
エーデルはその笑顔に怯えてしまい、震えていた
その時、エーデルの妻、リジー・デュノアと、その娘ゾフィ・デュノアが慌てて入って来た
ゾフィ「パパ!!大変なの!!」
エーデル「ゾフィ、今それどころじゃ…」
リジー「何処にも連絡が取れないの!!」
レック「ああ、全て使えないようにさせてもらったよ…」
ゾフィ「何!?あんた!?」
レック「僕はレック・ヴォルフス…男だから間違えないでね?」
レックは笑顔で言ったが、三人は開いた口が塞がらなかった
全員、レックの事を女性だと思っていたらしい
レック「…さて、ここにある不祥事のデータとISデータ…さらには僕が持っている最新の技術のデータ…これが欲しいならシャルロットを手放すこと…」
ゾフィ「なんだ、それなら簡単でしょ? パパ」
エーデル「ま、待て!! シャルロットを渡せばこちらが不利になる!! 私の弱みを握られる!!」
リジー「なら、条件を飲むふりをして殺すのは? どうせ勝手に進入してきたんだし…IS部隊も外に待機させてあるから、問題ないわ」
三人はこそこそとそんな事を話していた
だが、彼らは理解していない、レックが異世界の出身であり、生身でISを圧倒するほどの実力を持っていることを…
エーデル「良いだろう…シャルロットとの縁を切ろう」
レック「そっか、よかった~」
レックは嬉しそうに微笑み、シャルロットと共に背を向けた
その瞬間、銃声が鳴った
エーデルが隠し持っていた拳銃の引き金が引かれ、銃弾が撃たれた
だが、レックに当たる事は無かった
何故なら、レックが鉄扇で銃弾を受け止めていたからだ
レック「やっぱりね…こうなることは予想済みだよ…」
エーデル「な!?」
リジー「馬鹿ね、こっちにはIS部隊が控えているのよ!!」
エーデル「そ、そうだ!!取り囲め!!」
その言葉と共に、ISを纏っている部隊がアサルトライフルをレック達に向けて取り囲んだ
レック「えっと…総勢十人って所かな…?」
リジー「撃ち殺せ!!」
その言葉と共に、IS部隊はアサルトライフルから発射される弾丸の雨でレックとシャルロットを狙い撃ちした
銃弾の雨の所為で煙が上がり、レックとシャルロットの姿が見えなくなったが、デュノア一家はそれを嘲笑いながら見ていた
エーデル「これで私の会社は助かる!!」
リジー「ざまぁないわね」
ゾフィ「それもそうよ、あんな溝女と一緒にいるんだから、男もたいしたことないわね」
レック「シャルが…なんだって?」
その声と共にデュノア一家はレックとシャルロットが立っていた場所を見た
銃弾は分厚い氷の壁に全て防がれ、数発はレックの指の間に挟まっていた
その時、レックの姿は妖のような姿になっていた
レック「もう一度聞くけど…シャルが…何…?」
リジー「な、何よ…今の…」
ゾフィ「ど、溝女と言ったのよ!!それの何が悪いわけ!? 男の分際で、私には向かうんじゃないわよ!!こっちにはISがあるのよ!! ちょっと姿が変わっただけで調子に乗るなぁぁぁぁ!!」
ゾフィはラファール・リヴァイブを纏い、アサルトライフルをレックに向けた
レック「…はぁ…仕方が無い、多少荒っぽく行こうかな…」
ゾフィ「死ねぇぇぇぇぇ!!!」
ゾフィがアサルトライフルの引き金を引こうとした時、アサルトライフルが圧し折れ、横からの衝撃をゾフィは味わった
理由は明白、レックが眼にもとまらぬ速さで接近し、アサルトライフルをへし折り、ゾフィの腹部に回し蹴りを放ったからだ
ラファール・リヴァイブの装甲はさっきの衝撃で大半砕け散っていた
リジー「そ、そんな…生身で…でも、絶対障壁があるはずなのに!?」
レック「ああ、絹ごし豆腐よりも脆いバリアの事? あんなのあっても無くてもこれぐらい僕のいた所じゃ当たり前だけど? …でもさあ…君達は最後のシャルロットの慈悲を無碍にしたんだ…それなりに覚悟して貰おうかな…?」
レックはシャルロットの方を見た
シャルロットは静かにうなずいた
レックは頷きを確認すると、両手を広げ、何かを詠唱しだした
レック「
『
その詠唱はレックの心象、かつて世界を守り、救世主として皆に認められていた頃、唯一救えなかった少女との思い出、子供の頃、自分達を取り巻いていた汚れた大人達のいたという現実から目を背け、友達のことからも目を背けた過去
レック「『
過去に戻ることができないのならいっそ時間を凍結させて進むことを拒もうと思っていた記憶
詠唱のさなか、当たりの気温が急激に下がり、ダイヤモンドの柱が聳え立った
|Une fois qu'il fait fondre le cœur des souvenirs mousseux《きらめく思い出に心を溶かしてしまえ》
」
今まで感じてきた輝かしい記憶を夢見て心をゆだねてしまおう…悲しみと憎しみの満ちたこの世界から逃れるすべはなく、ただひたすらに生きてくしかないという彼の結末
シャルロットを守るようにダイヤモンドのドームが形成され、部屋一面、いや、会社…土地そのものが凍り付いた
レック「『ネバーエンディングアヴァロン』」
その瞬間、レック以外の時間が止まり、ダイヤモンドで出来た桜の樹が聳え立った
レック「受け入れろ…これが
レックが親指を下に突き付けた瞬間、桜吹雪が舞い上がりIS、人物、全ての物を切り刻み、デュノア社を見るも無残に瓦礫の山に変えた
エーデル「ウググ…た…助かった…のか…?」
シャル「そう思っているの?」
シャルロットは何時の間にかダイヤモンドのドームから出ていて、拳銃を取り出した
エーデル「シャ、シャルロット!?」
シャル「・・・」
レック「え?シャル、待って!!」
シャルロットは塵を見るような目でエーデルを見下ろしていた
エーデル「ま、待て!!シャルロット!!」
シャル「ねえ…何で僕を縛ろうとするのかなぁ?」
シャルロットは拳銃のセーフティを解除しながらエーデルの元に歩み始めた
エーデルは恐怖心で逃げようとしたが、動くことができなかった
シャル「さようなら…お父さんだった人…」
シャルロットは引き金を引いた
だが、エーデルには当たらず、レックが銃弾を手の平に受けていた
レック「…ッ!!」
シャル「……え……?」
レック「あはは…大丈夫…それに…君が汚れちゃいけないから…ね?」
レックはシャルロットに少し痛そうな顔をして笑顔を見せた
それを見たエーデルは安堵の表情を浮かべ、逃げた
レック「それに…もう彼は死んでいるから…」
レックは指を後ろに動かした瞬間、エーデルの首がとんだ
レックの指を見ると、透明な糸が結ばれていて、その糸がエーデルの首を撥ねた
ゾフィ「キャァァァァァァァァァァァァ!!!」
首がとんだ光景を見たゾフィが悲鳴を上げ、リジーは恐怖で震えていた
だが、悲鳴を上げたことでレックに生きていることに気づかれ、レックはそっちを見た
レック「あれでまだ生きているなんて少し驚いたなぁ~…ちょっとショックだけど…まあ、この悲哀の楽園からは逃れられないけどね?」
ゾフィ「ま、待って!!貴方は人を殺したのよ!? 血も涙もないの!?」
レック「それは君にそっくりそのまま返そうかな? 友達から聞いたんだけど、君は男だという理由で虐待し、自殺を嘲笑い、自分よりも人気のある女の子を自分のお父さんの部下に女の子にとって一番ひどいことをさせて自殺させたようだけど…血も涙もないの?」
レックの問いかけにゾフィは何も答えられなくなっていた
リジーも何かを言おうと思ってはいるのだが、何も言えない、言ったとしてもレックの神経を逆なでし、助かる見込みが無くなる…
いや、もうすでに助かる見込みなどないのだが…
レック「さあ、シャル…今日は真っ白な大雨が降りそうだから、帰ろっか」
シャル「あ…うん…」
レックは微笑みながらシャルロットと共に歩き始めた
それと同時におびただしいほどの巨大な氷塊が降り注ぎ、ゾフィとリジーはその氷塊に押しつぶされ、絶命した
デュノア社から離れたレックは元の姿に戻り、手を押さえた
レック「あ~…滅茶苦茶痛いな…やっぱり…あの姿と気合で耐えていたんだけど…ユキに頼んで治して貰おうかな……シャル……?」
シャルロットは俯いていた
シャル「…ごめん…」
レック「え、どうしたの?」
シャル「僕が…僕が…あの時、銃を抜かなきゃ…レックは…」
シャルロットが何か言おうとした時、レックが人差し指でシャルロットの唇を塞いだ
レック「何も言わないで…君は何も悪くない…ただ、彼等が君のやさしさを踏みにじった…それだけの事だよ…」
シャル「でも、レックが汚れて…」
レック「…僕はとっくの昔に汚れてるんだ…だから…君には汚れて欲しくない…それだけだよ…」
レックはシャルロットの背中に手を回し、抱きしめた
シャルロットは嗚咽を漏らしながらレックの胸の中で泣き出した
しばらくして、シャルロットが泣き止み、レックはシャルロットの額にキスをした
その日から、シャルロットは決心した
レックにこれ以上重荷は背負わせない、一緒に背負って行こう
それと同時にデュノア社があった場所には巨大な雹が降った痕跡とは別に、何故だかオーロラが観測されるようになったが、関係性は今のところ不明らしい