はくのんの受難 作:片仮名
今回はノーコンいけましたね。
フレンド機能が改善されたおかげで困ることがなかったのが大きいです。
ヘラクレス宝具レベルMAXの方が大活躍してくださいました。
いやぁケルトの脳筋と物量とかタチ悪い。
迷路があったら壁ぶち壊して進むぜとばかりの屈強な軍団がワラワラととか怖すぎる。
同時にはくのんは
ケルト からは にげられない。
が確定した模様。
さて、マシュの宝具が発動できるようになって数時間後。
私たちは休憩しながらも仲間となったキャスターからあらかたの流れと情報を得ることができた。
本来ならあまりのんびりしていられる時間はないと思ってはいたのだが珍しくギルガメッシュが、
「どうせ最後に待ち構えているのはセイバーであろう。奴の事だ、ただ聖杯の前に立つだけで使おうとは思っていまい。まぁ、泥に汚染されていない元来のセイバーであれば分からんがな。あれは愚かで哀れ、それでいて美しい女だった。別の我が見初めるほどにはな」
そんなギルガメッシュの発言に驚きつつも、次の瞬間にはこの王様ならあり得る話かと納得してしまう。
だって愉悦大好きなこの王様だ、そのセイバーが必死になって聖杯を手に入れようとあがく様を見て、これは我のものにしようと思い至ってもおかしくはない。と、ここで何故かニヤニヤとギルガメッシュが私を見下ろしてくる。
いや、まぁ愚かですよ、私も……。
「……先輩先輩、きっと英雄王の望む反応はソッチではなくですね」
「デミ、口を閉じよ。白野め、もう少し我の偉大さというものを刻み込んでおくべきであったか。我がセイバーに寝返り、貴様と敵対すればどうなるかも考えられんとはな……やはり記憶か?他のサーヴァントとの記憶の影響で、我に関する記憶の優先度が下がっているとでも?」
やはり消しておくべきか、そんな物騒なつぶやきが耳朶へと届く。
いや別にギルガメッシュとの記憶に齟齬があるわけでもないし、優先度が下がっている訳ではない。実際に最近、というかギルガメッシュが召喚されてからはよく彼と駆け抜けた日々を思い返すことが多くなっている。
ただ私は、そのセイバーに寝返るギルガメッシュという姿が想像できなかったに過ぎない。
「……ほう、では貴様は我が寝返るはずがないと?」
寝返るはずがない……ある意味ではそうかもしれない。
ギルガメッシュは相手が気に入らなければ確かに裏切って相手につくことだってあるのだろう。
それでも、私が知っている王様は――――別の自分が惚れた女のためだけに立場を変えるような王様じゃない。
何より、
――長い時間を共にしてくれたギルガメッシュが、ぽっと出について行ってしまうとは思えない。
まぁどっちがぽっと出なのか分からないけど。
でも彼はかつての聖杯戦争でサーヴァントに見捨てられた私を、財宝を削ってでも助けてくれた。
その果てにともに勝利を掴み、消されるだけの私をまたもや彼は救ってくれた。
そんなにまで救われて、私が彼を信じられないはずがない。
私が彼を信じたい、うん、これが一番合っている気がする。
まぁ飽きられたらそれまでの話ではあるが。
「――――――ふむ、そうきたか。相も変わらず愚かというかなんというか、まぁ我的には80点くらいか。ああ、貴様が我に信を置くその様は以前にも一度見ている。自分の身が溶かされようと手足がなくなろうと、我に元へとたどり着かんとその進む姿を、我はぼんやりと覚えている」
そういうとギルガメッシュは愉快そうに笑い、背を向けた。
「うむ、そういうことならば許すぞ白野よ。贋作者やアホ毛、化け狐の悔しそうな顔が目に浮かぶわ……!」
……どうやら他のサーヴァント達でも同じようなことがあったのは伝えない方がよろしそうである。
もしおんなじことがあったと伝えてしまった日には恐ろしい罰ゲームが待っているだろう……あれはひどいものであった。何故あんなものが宝具にまで昇華されたのか理解できないほどにひどい宝具であった。一体何人の人が犠牲になればあれ程までの神秘を秘めるようになるのか。
思い出すのもアレなのでやめておこう。
「……英雄王の手綱を握るか。そりゃあ勝てないわなァ」
キャスターもまた面白そうに笑っていた。
そりゃあギルガメッシュに勝てる英霊なんて数えるほどいるのか、いないのか。
「そういう意味じゃねェんだが……まぁ嬢ちゃんだからな」
人のよさそうな笑みを浮かべて、キャスターは離れていった。
ギルガメッシュはご満悦なので放っておくとして……マシュと所長を労わっておこう。
マシュは私のためにと命を懸けてその宝具の力を引き出してくれたのだから。所長も巻き込まれた上に、ちょくちょくやってくる魑魅魍魎を倒しつつ、私の手助けをしてくれていた。だからこそ戦いの途中、所長に感謝の言葉を口にすれば所長は照れた顔をして、
『べ、別に貴方のためじゃあなくてね!? 少しでも同じ境遇の人がいればこの魍魎どもが私に殺到する数が裂かれるというか……ええ、裂かれてないわね! 殺到してあぶれたのがソッチに行ってるだけね! ああもう、それこそ私のせいで死んだなんて御免だからね!?』
そこまで言われては私も全力全開で所長と共に戦うほかなかった。
あれだね、やっぱりツンデレはきゅんとくるね。
特にあれだけツンツンされてた期間が長かったからひとしおだね。
カルデアに帰ったら所長の手伝いもできるよう、仕事を覚えることにしようと思う。
「あ、先輩。お疲れ様です……それと申し訳ありません。私が宝具を使えないばかりに、先輩に負担をかけてしまいました」
それこそ気にすることじゃない。
マシュと私はもう一心同体なのだから、マシュに負担がかかるのならば相応の負担を私も背負うべきだ。
「ありがとうございます、先輩。先輩が一緒ならば心強いです。……それで、なのですが、えっとですね。どさくさ紛れの発言で先輩の耳に届いていたか分からないのですが……」
ああ、ご褒美の話か。
「うぅ、や、やはり聞こえていましたか。いえ、当時の私はそれはもう必死で余裕もなく、咄嗟に口から出てしまった素直な欲望なので聞かなかったことに――」
私に出来ることならば、可能な限り頑張ろう……あ、聞かなかったことに? 分かった、じゃあ聞かなかったことに――
「――しないでいただけると大変喜ばしいです!」
え、あ、うん?
まぁマシュが喜んでくれるというならば私も頑張りがいがあるというものである。
それじゃあこの戦いが終わるまでに考えておいてほしい。
そして、全部終わったらカルデアに帰って、私にそれを伝えてほしい――キチンとマシュの口から。
「はい、必ず。必ず帰りましょう、先輩」
「……なぁ所長さんよ。嬢ちゃんのアレは相変わらずか?」
「ええ、恐ろしいほどのプレイボーイもといプレイガールっぷりよ。人に敏感なマシュがコロリといくほどには……最近は私も危ない気がしてならないわ」
「戦歴まとめりゃあ、数こそフェルグスに劣るだろうが質なら優に超えてんじゃねぇか?」
こそこそと向こうでキャスターと所長が話していた。
どうやら仲良くなれたようで一安心である……ケルトにトラウマ持ったら大変な気がするし。
私? まぁ私は理不尽に耐性があるので問題はない――できる限り私からは関わらないようにするけど無駄になるに決まっているのだから。抑止力か何か働いていそうで怖すぎる。何故私の歩む道はいつもこんなんばっかなのか。
それからまたしばらく。
大方のメンバーが回復し、私たちはついに敵の本拠地と思われる洞窟の中へと足を踏み入れた。
先頭を行くのはキャスターで、彼は迷う様子もなくスイスイと足場の悪さなど気にした様子もなく進んでいく。
「まぁ英雄王は知ってるだろうが、大聖杯はこの奥にある。元々は聖杯戦争のために用意された場所……地下工房だ。侵入者用のトラップが多いからはぐれないように注意しな。はぐれさえしなけりゃこの程度のトラップ、踊りながらでも解除してやるよ」
ありがたい。
流石はキャスターのサーヴァントと言ったところか。
……ぜひ、この調子でお願いしたい――――じゃないとマシュが宝具を使えるようになった以上、ギルガメッシュが動きかねない。主に誰かを針山にせんとして。
「……最大の敵が俺の後ろを歩いてるとか、一番危ないパターンじゃねぇか! おいおい勘弁してくれよ!?」
い、今のところは大丈夫だと思う。
どうもギルガメッシュの機嫌がいいみたいだし、すっかり忘れているのではないだろうか。
こうまで機嫌がいいのは珍しいし、もしかしたらこの先に待っているというセイバーとの対面が楽しみなのではないだろうか。なんだかんだでこの聖杯戦争にセイバーが参加していると確信しているくらいには、彼女のことを知っているようだし。
「まぁそれもあるんだろうがよ……っと、そういやまだ残ってるサーヴァントの情報を伝えてなかったな」
いや、でもそれ伝えたら消されない?
「だから小声で、嬢ちゃんにだけ伝えんだろ。ほれ耳を貸せ――いや、やめとくか。ちゃんとこの距離で聞き取ってくれ。じゃねぇとせっかく伸びた時間が消し飛んじまうからよ。取りあえず、残ってんのはセイバーにアーチャー、そしてバーサーカーにこの俺だ」
ふとアーチャーと言われて思い浮かべたのは当然ながらあの紅い弓兵だ。
まぁそんなことは早々にないとは思うのだが。
「アーチャーは、いけすかねぇ野郎でな。アイツの性格とはまず相いれねぇ。そんで能力の方だが……これもまた変わっててな、アーチャーのくせに剣を使いやがる。どこにそんな弓兵がいるんだよって話だが事実でな。おかげで正体がつかめねえ」
……うん、ああ、もしかするともしかするのかもしれない。
とはいえもし居るのだとすれば、それは私の知るアーチャーではないだろう。
割り切れるかは別として、敵として現れるのならば覚悟しておかなければならない。
できるかどうかは別として。
「んで残るバーサーカーだが、コイツはハッキリしてやがる。尋常じゃないバケモノ――なんだがこれまた奇妙でな。セイバーに消されたのか知らねえが足取りがつかめなかった。だから警戒するのはこの奥にいるだろういけすかねぇアーチャーと、堂々構えてるだろうセイバーだ」
そのセイバーだけど、真名はなんというのだろうか。
この前の休憩時間に聞いた限りだと、圧倒的な火力で他のサーヴァントを殲滅したくらいしか分からなかった。
「あぁ、まぁ嬢ちゃんなら平気か。正直、中途半端な奴じゃその真名を聞けば腰が引けると思ってよ。だがあの英雄王と一緒にいる嬢ちゃんが驚くようなことがあれば、それこそ師匠が召喚された時とかあり得ない場合くらいだろうよ。だから教えてやるよ、アイツの真名とその宝具を――」
もったいぶるその様子に、どんな大物が出てくるのか息をのむ。
「その宝具の名はエクスカリバー。この世でもっとも名の知れた聖剣であり、セイバーはその担い手であるアーサー王だ。まあそのアーサー王、実は女だったりと色々あるけど省くぜ?」
うん、そこはいいや。
ウチのセイバーとかもそうだったし。
でもそっか、円卓か……円卓かァ……嫌な予感しかしない。
「つうか、あんま驚いてねぇな? もうちょっとこう反応があると思うんだけどよ?」
だってその姉妹剣を知っているし。
その担い手である太陽の騎士とも戦ったことあるし。
でも驚いてないわけじゃないのだ――だってあの円卓だよ、アレを治めた王様だよ?
――どんな筋肉ダルマさんです? 精神は正常な人?
「だよなぁ、そう思うよなぁ……まぁ会って確かめな。見た目はアレだが、腕は間違いなく超一流の域だ。サーヴァントとしてもな」
ですよね、ガウェイン級だよね。
それがこの先にいるとかクライマックスじゃないか。
「まぁ安心しな。俺もいるし、認めたくはねぇが超一級のサーヴァントが嬢ちゃんについてんだ。それに俺の見立てじゃ、あのデミの嬢ちゃんの宝具はセイバーと相性がいい。嬢ちゃんがいつも通りやれば問題ねえ」
その通りだ。
私が動揺してしまえば、それはマシュにも伝わってしまうだろう。
やるべきことは一つ、いつも通りに前に進むこと。
――相手が誰だろうと、負けてやるつもりなんて欠片もない。
「――――はは、ははは! 威勢のいい嬢ちゃんだ、ああ、それでこそってなぁ! 畜生、キャスターとして召喚されたこの身がもどかしいぜ! よし、行こうぜ嬢ちゃん。この先、あのアーチャーが待ち構えてる。さっさと叩きのめして、終わらせるぞマスター!」
――応!
「ちょっと、ケルトに染まってない!? 思ったより影響を受けやすいというか、だから対応できてるのかしら……」
「ここは一応敵地なのだから、少し声を抑えてはどうかね?」
ドクンと、心臓が鼓動を打つ。
とても聞き覚えのある声、ああ、この声を知っている。
何時だって前に立ち、その背で私を導いてくれた、心の底から安心できる彼の声だ。
彼はきっと、いや間違いなく――――
「――――去ね、贋作……ではなく雑種。貴様ならばなんの遠慮もなく消し去れるというものよ……この溜まった鬱憤をその身で受け止め塵と化せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「む、英雄王!? 何故貴様がここに! いや、そんなことよりも慢心をどこに置いてきた!? おまけにそこのマスターと思わしき少女を見たら摩耗した記憶がやけにうずくだと!?ま、待たんか、こんなところでその宝具を放ってみろ生き埋めになるぞ。分かった、通って構わんからそこのマスターを巻き込むな――――!?」
次の瞬間、赤い奔流が視界を覆う。
同時にスっとキャスターに見ちゃいけませんとばかりに目をふさがれた。
「ふん、我が我のものを操れぬとでも? この程度の加減なぞ児戯にも等しい……うむ、我の輝かんばかりの魂がより一層美しいものとなった。具体的に言うと八つ当たりできてスッキリした」
「な……なんでさ………………」
私がキャスターの目隠しを解き視界が自由になったころには、そんな切ない声と共に金色の粒子が溶けていく瞬間だった。
――さっき、贋作者言わなかった?
「言っていないが? 所詮は雑種、我にかかれば一瞬であったな。称えても良いぞ?」
何だか無性にアーチャーに会いたくなった。
安否の確認を兼ねて。