はくのんの受難   作:片仮名

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遅れて申し訳ない。
いやぁイベントで忙しくて(;´・ω・)
二種類あると迷う迷う……。

そしてジャンヌ・オルタさん!
まぁ来なかったけどね、いつも通りだね。
ただどういうわけか孔明さんがいらっしゃった……ピックアップェ。
これで星5は三体目、喜ばしいけど何か違う。

そして超級アサシン面倒くさい。
三ターンで宝具は痛い、痛すぎる。リリィとアンデルセンとフレ孔明もしくはジャンヌでいくけれど自分も死なず、敵も死なず。バサカ仕込んで交代させよう。


と、まぁ雑談でした。

実際遅れたのは、書くのにあたりストーリー読み返してたら所長への愛着が倍増。テレ顔可愛い。
でも死ぬしなぁ、死なせたくはないけど生きてたら今後にどう響くか分からないしなぁと至りました。

無限に死に続ける→助けるから世界滅ぼせ→所長「死ぬよりまし。誰も助けてくれないし」

的な流れ、もしくは近しい流れで今後のストーリー中にキーパーソンとして出ないよね?
所長救済ルートの怖いところはそこ。







十二話

 

 

 

 

 

 

 

 この足は止まらない。

 例えこの奥にかの騎士王が鎮座していようと、止まることはない。

 だって私は――――

 

 ――――早く戻ってアーチャーの無事を確認せねば!

 

「何故でしょうか……そのアーチャーさんがちょっとは傷ついていてほしいと思ってしまうのは」

 

「ははは、デミの嬢ちゃんと嬢ちゃんは見てて飽きねぇな! 特に外野から見る分には……当事者はもう御免だぜ」

 

 どこか遠い目をしてキャスターは進む。

 ハリーハリー、目指せ最奥!

 そして召喚ポイントを設置するのだ!

 

「一応、やるべきことの優先順位を失ってないから何も言わないけど……そういうところは英雄王のこと信用してないのね」

 

 信用してるよ?

 彼はやるときは本当にやる王様なのだから。

 それが善行だったり悪行だったりは本人のさじ加減なのだ。

 そしてアーチャーとギルガメッシュの性格を知っている私に言わせてもらえば、まさに水と油。保護者気質のアーチャーに唯我独尊我様ギルガメッシュの組み合わせとか合うはずがない。おまけにアーチャーは贋作を、ギルガメッシュは真作を扱うのだからなおさらだ。

 つまり、ギルガメッシュはアーチャーが気に入らないはず。

 そして気に入らない奴にたいしてギルガメッシュは容赦しない。

 

「まぁ、あのアーチャーが気に入らねぇのは俺も同感だけどよ」

 

 確かに皮肉屋ではあるが、そこも含めてアーチャーだ。

 最初こそむっとすることはあれど、彼を知れば知るほどその言葉の裏の本意が分かるようになる。そうなってしまえば凛と同じようにツンとした言葉の裏に真意が見いだせる。ここまで来てしまえば彼の皮肉は笑って流せる。

 

「嬢ちゃんが特殊なんだと思うんだが……もう何も言うまい。取りあえずは安心していいと思うぜ。あの英雄王と言えど、本気で嬢ちゃんを悲しませるようなことはしねぇよ。いや、嬢ちゃんだからこそか……」

 

 そう信じたい。

 そう思いながら愉快に笑い前を進む金ぴかの背中を見る。

 まぁギルガメッシュも、あの『アーチャー』じゃないと分かっていたから開幕ブッパしたんだろうし……少し落ち着こう。

 今さらながらこの奥にいるのは、かのガウェインを従えていた英雄なのだ。

 

「切り替えが早いのはいいことだ。おまけに諦めは悪いし後ろに引かない……何より運もいい。そういうやつこそ星の加護ってのが得られるもんだ」

 

「すでに受けているではないか。この我が守護してやっているのだ、星の守護と相違あるまい」

 

「尊大なのに否定できないのが痛いわね。……それで、どうするつもり? この先にいるのは最も有名な聖剣と担い手。策もなしに突っ込んでどうこうできる相手とは思えないんだけど……」

 

 所長の言うとおりである。

 ガウェインだって聖者の数字とかいうチート能力を持っていたのだ、かの騎士王はそれ以上の可能性だってある。

 

「先輩、その聖者の数字というのは……伝承の?」

 

 太陽出てたら能力が三倍になるの。

 そのスキルを破らないと掠り傷一つ負わせられないこともあった。

 

「何よ、その壊れ性能は。おまけに聖剣持ちですって……?」

 

 場合によってはその聖剣を二連撃ってくる。

 その攻撃範囲の広いこと広いこと――――拡散とかあんまりだ。

 加えて、彼のマスターが決着術式「聖剣集う絢爛の城」とかいう、聖剣の一撃でようやく破壊できるだろう高出力の炎壁で囲ってくるのだ。その中で拡散型の聖剣とか本当に地獄だった。なんで表の聖杯戦争で使用してくるのか……。

 きっとギルガメッシュが強すぎたから、レオも本気中の本気になったのだ。

 

「よく……よく勝てたわね。いくらサーヴァントが英雄王だからって、その組み合わせはマスター殺しじゃない」

 

 流石に死にそうだったから、魔術をガン積みして耐えきった。

 アトラス使って赤原使って、ロールケーキ食べて……。

 回復アイテム買い忘れ、挙句の果てに魔力切れの時にふと思いだしたロールケーキがなかったら危なかった。

 

「まぁ我にかかれば決着がつくのは一瞬であったがな」

 

 よく言う。

 あの炎壁に興味を取られて、強制テレポートで私と離されたくせに。かといって私が外からギルガメッシュを中に引き入れようとしても炎壁に遮られるのだ。向こうはいいけど私はダメとか本当に絶望的だった。

 そして対魔力はどこへいったのか。

 

「あの程度の距離、あってないようなものだ。事実、お前に傷一つつけさせなかっただろう」

 

 実際はいきなり赤い奔流が炎壁ごとガウェイン削り取ったんだけど。

 右上半身を削られ、霊格が破壊されながらも最後にレオの元へと戻ったガウェインはまさに騎士の鏡だった。

 

「……む? 何やら我より、アヤツの方が評価が高いような?」

 

 気のせい気のせい。

 そんなことよりも先に進もう。何気に禍々しい気配が近づいてきている気がする。

 ただなんというのだろうか、今まで私が相対してきた『悪』に属する英雄たちとは何かが違う。

 気が狂っているかのような寒気も、背筋を凍らせるような殺意も、圧倒的な暴力にも感じ取れるその存在感も感じ取れない。ただ何かがそこにある。厳かで、波のたたない静かな水面のような魔力の塊がそこにある。

 初めての経験だったのかもしれない――敵として相対しているのに、こうまで落ち着いてしまっているのは。

 

 ――いや、敵として私が認識できていないのか。

 

 口にしてみて、ストンと胸に落ちる。

 しかし同時に、何故という疑問が浮かび上がるが……ギルガメッシュの笑い声にかき消される。

 

「どうやら此度の戦い、予想以上の収穫が得られそうではないか。流石は我が見込んだセイバーよ。いいか白野、今回は許すが次は許さん。ソレを次に向けるのは――他の誰でもないこの我と心得よ」

 

 そういうと彼は先ほど以上に愉快愉快と歩き出す。

 もうなんというか流石というか、彼は私が抱いた疑問の答えを理解してしまったらしい。

 こういう場面を見ると、本当に彼は偉大な偉人の一人であるのだと再認識できる。

 普段はただの我様だけど。

 

「おい嬢ちゃん、考え事もかまわねぇが到着するぞ――――ほれ、あれが大聖杯ってやつだ」

 

 キャスターの声で我を取り戻し、視線を前に向ければそこは大空洞の入り口だった。

 そしてその正面にある巨大な物体――――何と表現するべきなのか分からないソレは、表現こそできないがあれこそが聖杯なのだと理解できる代物だった。私の知っている聖杯――ムーンセルとはまた別の神秘の塊。

 

「もう驚かないとは思ってたけど、何よこれ。超抜級の魔術炉心じゃない……なんでこんなとこに置いてあるのよ……」

 

 所長の隣ではマシュも愕然としている。

 ぽかんとした表情は可愛らしいが、それを眺めていられるほど余裕はないらしい。

 ガシャリと金属のぶつかる音がした。

 経験上、それは鎧の音であると知っている。

 

 ――来た。

 

「――――――――」

 

 一目で、その存在に魅入られた。

 言葉を発さず佇むその姿に、私の目は釘づけにされていた。美しい金色の髪、白い肌、華奢な体、人間とは思えないような美しさ。それを飲み込むがごとく溢れ出る覇者の風格。身にまとう魔力は可視化され、黒となって彼女の周りに浮遊する。

 太陽の騎士たるガウェインとは真逆の月を思い浮かべてしまう。静かに全てを見下ろし包み込む王。

 彼女の瞳を目が重なり――――『王』という存在を知った。

 ギルガメッシュとも違う、セイバーとも違う、初めて出会う新しい王様。

 しかし、

 

 

 

 

 ――――でも、なんかうちのセイバーとそっくりなんですけどー!

 

 

 

 

 

「女だとかソッチに驚くんじゃないのが貴方よね、知ってた」

 

 そんな驚きで全部吹っ飛んだ。

 いやだってあれそっくりさんとかいうレベルじゃないんですけど。

 パーツとかほぼ一緒だよね?目の色違うくらいじゃない?

 あ、でもスリーサイズが違うのか……? 赤王はB83・W56・H82だったはず。

 何で知ってるかって? 言わせるなよ恥ずかしい。

 ちなみに正面にいるアーサー王より間違いなく胸は大きかった。

 

「――――面白いサーヴァントがいると思えば、何だ貴様は。いきなり喧嘩を売られるとは思わなかったが――買ってやろう」

 

 あ、地雷だった。

 というか思ってたより物騒な人だった!

 誰だ波立たない水面とか言ったのは……!

 

「つうか喋れたのか、アイツ……」

 

「いえ、流石に今のは先輩が……」 

 

「ふはははは! 流石のアヤツも貴様には言われたくは無かろうよ! 貧相さはいい勝負なのではないか……?」

 

 よし、言ったな、言っちゃったな――戦争だ。

 私のは貧相というのではない、スレンダーだ!

 

「その通りだ。別に私が貧相であることを認めるわけではないが――――む、まさか貴様、その忌々しい黄金は……」

 

 先ほどまで私に殺気を向けていたセイバーのソレが全てギルガメッシュに移る。

 もしかしてわざと殺気を逸らすために、なんて考えもしたがそれはないなと愉悦を浮かべるギルガメッシュを見て考え至る。

 

「英雄王……忌々しい貴様が何故ここに。一度この聖剣の餌食となったはずだが……?」

 

 どうやらこの聖杯戦争に別のギルガメッシュもいたらしい。

 そして不意打ちを食らって聖剣の光に飲み込まれたと。

 

「いえ、正面から戦った可能性も……」

 

 正面から戦ったのなら、ギルガメッシュに敗北はない。

 彼の蔵の中には、聖剣の光すら切り裂くあの宝具だってある。そんなギルガメッシュが敗北するのだとすれば、戦闘中に横から宝具を撃たれるなどという意識外からの攻撃くらいだろう。彼の認識外からの聖剣による一撃ならば、自動防御の宝具が稼働していたとしてもそれごと飲み干せるだろう。

 

「先輩は、英雄王を本当に信頼しているんですね」

 

 何だかんだ言って長い付き合いだ。

 そして多くの修羅場を潜り抜けていたパートナーでもある。

 彼の性格こそああではあるが、惹かれるところはとても多い。

 

 ――あんなふうに生きられたなら、なんて思ったことだってある。

 

 勿論、ただの血の迷いである。

 あんな風に生きられるのは彼だけの特権であり、そもそも私は彼のように世界を背負えない。

 だからこうして彼を眺めているのは、実は結構楽しかったりするのだ。

 

「嬢ちゃん……変わってるとは思ったがそこまでか! 懐が広いというか広すぎて際限ないというか……時代さえ違えばコッチに来てるんじゃねぇか?」

 

 キャスターの言葉に同意するように、所長がうなずきため息をはく。

 そして彼女は私を見ながら真剣な表情で言う。

 

「何にせよ、貴方、今のは英雄王に言わないこと。とんでもないことになるわよ?」

 

 同時に、私以外の皆がうなずいた。

 当然私も先ほどの話をギルガメッシュ本人に話すつもりはない。

 最悪、針山にされかねないし。

 

 ――と、こんな話をしている暇はない。

 

 視線をギルガメッシュとアーサー王に戻す。

 しかしそこには予想外ともいえる光景が写っていた。

 ギルガメッシュが私を見て笑い――――アーサー王が私の方へと歩いてきていた。

 

「……ちょっと、ねぇちょっと。どういうこと」

 

「申し訳ありません所長、流石に私も状況が読み込めず……ですが、アーサー王から敵意は感じません」

 

 マシュ、そしてキャスターはいぶかしみながらも動けるようにと武器を構える。

 私はこっそり回路を起動しておき、不意打ちに耐えられるように魔術をピックアップ、待機させておく。そんな私を見ながらアーサー王は感心するようにうなずき――地面を蹴った。いや、蹴ったという表現は適切ではない。彼女が立っていた地面は、彼女を中心にクレーターができていた。

 早い、速い、そんな次元のものではなかった。

 

「先輩、逃げ――――ぐぅっ!?」

 

「ち、あの金ピカは何考えてやがるッ」

 

 その一瞬で彼女は私たちの懐に踏み込み、そして聖剣を一閃していた。

 流石、サーヴァントであるマシュとキャスターは何とかその一撃を凌いでいたが大きく吹き飛ばされてしまう。

 

 ――――所長! move_speed()!

 

 アーサー王の速度に対し、強化したところで意味なんてないかもしれない。

 それでもほんの少しでもプラスになるのならば良し。

 光の骨子が足を包み、所長を回収して下がる――――

 

「――――判断は早かったが、この危機に際しその女も救おうとするか。傲慢だな」 

 

 ことは出来なかった。

 彼女は静かに、私と所長の間に立っていた。

 

「理解はしているはずだ。この場において、貴様が死ねばすべてが終わる。何があろうと貴様一人は生き残らればならないと」

 

 驚きはしない、これが英霊だ。

 凛のランサーなんてもっと早かったかもしれない。

 更に待機させておいた魔術を起動させる。

 

「わ、わわ私の事なんて放っていきなさい! 貴方が死ねば必然的に私たちも死ぬんだからっ!」

 

 そんな声が耳に届く。

 精一杯の虚勢、それが何よりも温かい。

 怖いのに、死にたくないのに、大人だからと気丈に立つその姿が眩しく映る。

 そんな所長が好ましい。

 

 ――――でも、あんな思いはもうごめんだ。

 

 白い骨子で出来た小刀。

 それは魔力放出を持たないサーヴァントにその効果を付与する魔術。

 しかしその対象は、別に自分でもいい。

 素人の適当な一振り――――当たらないとは理解している。

 

 だから、一撃に全部込めて私の正面全部ぶった斬る。

 

「神代ならばいざ知らず、現代の魔術師の一撃が対魔力を越えられるはずが――――む!?」

 

 そう、越えられないはずなのである。

 こちらの世界の知識では。だが、月では違うのだ。

 対魔力があろうと――――ダメージはともかく状態異常は叩き込める。

 

 ――確かにダメージは通らないけど、『スタン』なら入る。ガウェインでも経験済みだ。

 

「貴様、最初から時間稼ぎが目的で……恐れしらずか?」

 

 別に怖いものがないわけじゃない。

 ただ私は近しい誰かが消えてしまうのが、人一倍怖いだけだ。

 私に多くは救えない、だから手の届く人たちだけは全力で守りたい。三流の魔術師である私に出来ることなんて限られすぎていて泣けてくるけど、何もしないよりはマシだと信じてきたのだ。

 一人では無理だが、二人なら話は変わる。

 私一人でサーヴァントには勝てないが、マシュとならば勝てるかもしれない。

 月だって、生徒会の仲間がいたからこそ、あの場までたどり着くことができた。

 

 負けるその時まで、命断たれるその時まで、私は勝つつもりで立ち続ける。

 そこの黄金の王との旅路に恥じぬように、これまでで得た仲間との旅路を汚さぬように。

 

 

 

 

 ――例え相手が神であろうと、そう簡単に私を折れるなんて思うなよ。

 

 

 

 

 この状況でアーサー王に啖呵きるとか馬鹿じゃないの!?

 そんな声を聞きながらも、アーサー王は動かない。

 駆け付けるマシュ達を見て、彼女は静かに笑みを浮かべていた。

 

 

 

 






追伸:骨折しました。


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