はくのんの受難   作:片仮名

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ようやく一息。
ここ数日の忙しさと言ったら。
切羽詰まって胃が痛む、そんな数日でした(;´・ω・)

いやぁ、それにしてもコラボが始まりましたね!
式さんは回しても出ないね!出てくるのは赤雑魚とスプリンターばっかりだね!
赤雑魚が凸ったよ……便利だからまだいいですけど。

というか、今回はモニュメントが交換じゃないという。
アーチャーモニュメント交換できるかと期待してたんですけどね。
故にミッションをかんばります。

後は必死にゴーストランタンかき集めねば(使命感


四話

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日、私に課せられた戦闘訓練は苛烈を極めた。

 あの暴走した訓練用のドールと同型のものを相手に体術をメインとした訓練を行いボコボコにされ、終わったと思ったら魔術で傷を治され体力の回復と共にもう一戦。その後は同じ型のドールを二体用意し、片方は私の味方という設定で支援魔術の重ね掛けと戦闘を行った。

 これを一日に三セットである……つらい。

 特につらいのは体術の訓練だ。私の記憶にある通りの動きが実現できず、以前の自分ならできたなどと歯がゆい思いが胸を占める。やはり今の私の体は目覚めたばかりなのか全体的に能力が低下しているようだ。それはさび付いた魔術回路にも言えることである。

 

 ――また、最弱からやり直しかー!

 

 なんという理不尽!

 月で命を懸けて戦い続けた末に、マスターレベルはMAXに身体だって鍛えられていたというのに!

 それが裏に落ちた途端にリセットとか、そして今回もとか悪意しか感じられない!

 確かにこの体は現実のものであるから仕方がないと言えば仕方がないが、そう簡単には割り切れない。唯一の救いは今まで必死にかき集めた礼装が魔術刻印という形で残っていることくらいだろう。残念なことに、プレミアロールケーキはなかった。あと桜弁当の空箱。

 それともう一つ、引き継がれているものはあった。

 それは私が今まで生き抜いてきた末に手に入れた、戦いの経験である。相手は毎回のように格上で、私たちは常に情報を集め使えるものを利用し仲間の協力を得て戦ってきた。その中で培ってきたこの『眼』だけは今もなお失われてはいなかった。

 そのおかげか魔術による支援は所長のお墨付きをもらえたのである。

 

『なに、なんなの、何も考えてない脳内お花畑みたいなのほほんとしたこの子が、こうまで……突然変異かなにかなの?』

 

 とお褒めの言葉をいただいた。

 これにより次回からは後半は少し緩くなる予定である。

 ……前半はマシュと一緒に筋トレが追加されることとなったが。

 と、そういえば最近になってカルデア内にもう一人知り合いができた。名前はレフ・ライノールという男性でとても紳士的な人であった。

 

 ――紳士的ではあったが、見た目と態度の裏に何が隠れているのかはわからない。

 

 かつての魔性菩薩のような最悪のパターンもあれば、レオのように本性さらけ出すとあれこれ誰だっけと知らない人、と早変わりするパターンもある。凛とラニの場合はちょっと特殊な性癖というかなんというかごにょごにょ。

 兎に角、私は今まで人の裏に隠れたSGを暴いたりする過程で、その人の表面だけを見ていても分からないことばかりだということを学んだ。

 だからだろうか、敵意のない笑みの裏からこちらを見定めるガラスのような目を幻視したのは。

 私は彼から差し出された手を取るのに、一瞬の間を空けてしまったのである。慌てて手を取ればにこやかに笑ってくれはしたが、なぜだか腑に落ちなかった。そこでドクターなどにレフという男性について聞き込みをしてみたが、どうやらドクターは彼と学友であるらしく信頼しているようだった。

 所長にも聞いたがのろけにも近い何かが延々と放たれ続けたので、偶然通りかかったドクターに擦り付けておいた。

 結論から言えば、私は魔性菩薩などの一件から少々人の本性に過敏になっていたのだろう。実を言えば刻印として刻まれる礼装の中に、純粋な礼装ではなく私が月で渡された万色悠滞という最悪のコードキャストも入っている。これを使えばもしかしたら対象の本性を暴けるかもしれないが、万色悠滞の本来の使い方を知ってしまった今では選択肢から除外するほかない。というか、桜たちのサポートなしで使えるものじゃない。

 それにカルデアにあるシバという設備を作ったのはレフ教授であるというし、味方であるのは違いないのだから。

 というわけでこの話はここで終了である。

 

 続けて私が気になって調べていたことである。

 それは勿論、この世界には月で出会った友人たちが存在しているのかどうかである。

 まず調べたのは当然ながら西暦である。当時の月は確か2030年代のことであり、私が罹患していたアムネジア・シンドロームのワクチンを発見したトワイスが死んだのが1999年である。それを踏まえてマシュに聞いてみたところ、

 

『今は西暦2015年になります……先輩? 顔色が優れないようですが……』

 

 うん、過去だった。

 この世界と月での戦いがあった世界が並行世界であることは理解しているものの、これはちょっと厳しいんじゃないだろうか。確かにこの世界に遠坂凛は存在しているのだろうが、まだまだ子供で会話が成り立つ年齢ではないだろう。ラニに至っても同様である。

 ちなみに西欧財閥はアトラス院と同様に存在しているらしい。

 他にも『遠坂家』や『間桐家』といった魔術師の家系は存在しているようだ。もしかしたら桜の再現元である人物が実在しているかもしれない。非常に気になるのでよく調べてみようと思う。これでも電脳世界を駆け抜けたウィザードの端くれであるから、意外とハッキングなんてものもできてしまう事実が判明した一件である。確かに月の戦いで何度かハッキングモドキもしたけど、こうもうまくいくとは。

 岸波白野のターンが来たか。

 

 ……いや、フラグになるのでやめておこう。

 

 そんなこんなで充実した生活を送り早数週間。

 私は習慣となった戦闘訓練を終え、余った時間をドクターの手伝いに充てる日々である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなドクターの仕事のお手伝いであるがその前に。

 

 ――このゆるふわ系、何気に医療部門のトップだった!

 

 ゆるふわで仕事をさぼってアイドルにはまるマダオ一歩手前かと思っていただけに驚きである。

 以前に訪れたドクターの仕事部屋に一人しかいなかったのは、たいていの事なら一人でことがなせる程の腕を持っていたからなのだという。まぁ最近はさぼりがよく見られるので監視役でも派遣しようかと思ったところに――私が来てしまった。

 つまり私の仕事はドクターの手伝い兼さぼらないように見張ること。

 

『あはは……ま、まぁわざわざ僕のところまで診察に来る人は少ないし、デスクの仕事が多いんだ。だから息抜き程度にね? いやぁほら、どうせなら各フロアにあるラボに行ったほうが効率いいでしょ? ……え、それを考えたうえでここにラボを置いたのかって? ――――まっさかー』

 

 とのことである。

 実際にドクターの手伝いを始めた数日の間はデスクの仕事が大半で、報告書やらを医療部門のトップとしてまとめている場面が多かった。その手伝いの一環で端末を借り受けることができたおかげで、『遠坂家』やら『間桐家』などの情報を集めることができたのである。

 と、まぁその一件は置いておいて。

 前述のように、最初の数日間はそうして端末を使って資料を纏めるお手伝いが大半だった。

 しかしそんな日々に変化が起こり始めたのが、たまたま疲れ果てげっそりとした一人の職員が運び込まれてきた一件があってから。

 疲れ果てたその職員の青年は、ブラックってなんだっけとケタケタ笑いながらベッドにダイブして動かなくなった。こっそりとベッドを除いてみればピクリとも動かない青年の姿が。いったい何があったのかとドクターに聞いてみれば、

 

『ああ、近いうちにマスター候補が到着するんだ。その際に使用する機器の設定に連日連夜と時間をかけててね。流石に限界だったんじゃないかな……』

 

 そりゃあこうなるよね、と乾いた笑みをドクターは浮かべていた。 

 ああ、これは近いうちにドクターも駆り出されるやつだと察しながらピクリとも動かない青年にこっそりと魔術を行使した。勿論コードキャストは癒しの香木のcureである。さすがに魔術でスタミナは回復させられないので、疲れをとるという意味でこちらにした。

 それから数時間後、青年は目を覚ますとどこか驚いたようにこちらを見た。

 どうやら彼には私の仕業だと分かったらしく、流石はエリートと思いながらもどうしたものかと考え、

 

 ――内緒でお願いします。

 

 ドクターにバレぬようジェスチャーで返した。

 だってこの魔術が効果的だってわかったら、絶対にドクターが目の色を変える。探求心がうずきだすか、より仕事が増えててんやわんやになるかのどれかだ。所長に漏れでもしたら人権何それおいしいのってレベルで酷使されるに違いない。

 へまして自分を追いつめない程度に、岸波白野は賢くなったのである。

 青年はジェスチャーを理解してくれたらしく、首をやたら激しく振りながら早足に去っていった。その際にドクターがほほうと興味深そうに私を見ていてバレてしまったのかと一瞬冷や汗をかいたが、いやぁ青春だねぇとかいいつつ自分の仕事に戻っていった。

 今までの一連の流れのどこに青春要素があったのか。

 ちなみに私の青春は間違いなく殺伐としていて選択肢を間違えると開始数分でバッドエンド確定のクソゲーである。もしくは相手方と仲良くなってもヤンデレライバルに無残に惨殺されるか、私のストーカーに拉致監禁されるか。

 そのすべてを乗り越えた先に私の幸せがある――と思ったら、一部のルートでは嫁が分裂したりするのだ。

 行きつく先は、先の見えないカオスである。

 ……他にも数パターンがあるがやめておこう。

 

 

 話を戻す。

 

 

 その数日後から、ラボに訪れる職員に変化があった。

 

 

 

 ――なんか、数が増えてたのだ。

 

 

 

 一人二人ならばまぁ分からなくはない。

 しかしそれが十や二十ならば話は別で、何かしら原因があるに違いないと私だって理解する。しかし原因に予想がつかなかった私はドクターと共に勤務時間終了後に原因の究明をしようと考えた。ドクターも同じだったらしく快諾を得てラボに残り会議が始まった。

 そして、始まると同時にドクターが、

 

「さて岸波ちゃん。今日来た職員が結構いたけど……リピーターがいたことに気づいた?」

 

 そういわれて、数日前にも来ただろう職員が中に混じっていたのを思い出す。

 うなずいた私を見てドクターはやっぱりかーと頬を描きながら笑っていた。

 

「今日来た職員に対して、岸波ちゃんがしてあげたことを思い返してごらんよ」

 

 と言われて思い返すものの、私がやった事なんて魔術の一つも使わず話を聞いて相槌を打って、素直な感想を返したに過ぎない。たまに意見を求められるから、私ならばこうするだろうということを伝えただけ。後はドクターにコーヒーを入れるタイミングでお客が来たからついでにもう一つ追加したくらいか。

 

「そう、それそれ。いやぁ、岸波ちゃんって話を聞くのがうまいから、彼らも思いのたけを話せてしまうみたいだね。あのプライドの塊たちがポロポロと不満や不安をぶちまけてさっぱりして帰っていく姿には目を見張ったよ!」

 

 いや、しかし、それだけでリピーターになんてなるものだろうか。

 

「彼らには十分すぎる理由になるんだよ。ここにいる魔術師たちはエリートだからね、たとえ同じ職場の人間であろうと周りは全員ライバルみたいなものなんだ。だからこそ本音をさらけ出せる相手は少ないから、日を追うごとに鬱憤はたまってく。仕事の疲れと一緒にね」

 

 加えてドクターは続ける。

 

「それに岸波ちゃんと話すと体が軽くなるってもっぱらの噂だよ。おまけに岸波ちゃんって結構美人さんだからね。男性職員のリピーターが多いのはそれもあると思う。まぁ、不思議なことに女性職員も同じくらいいるんだけどね? 普通、自分よりかわいい子がいたら妬みの一つは抱くと思うんだけど……これが人徳かなぁ」

 

 さらりと美人と褒められた。

 何気にこうはっきりと容姿について褒められるのは初めてではないだろうか。

 ウチの男どもは貧相の一言で片づけてきた記憶しかない。

 これが、悪い気はしない、というやつだろうか。

 

「まぁかくいう僕も岸波ちゃんに淹れてもらったコーヒーが美味しくて手放せなくなってるんだけどね。不思議だよね、本当に同じインスタント?」

 

 ふふふ、どうやらアーチャーから学んだかいがあったようだ。

 本当なら華麗においしい紅茶でも淹れたいところではあったが、どうも私は紅茶を入れるのが苦手らしい。アーチャーに教えてもらい挑んでみたものの、どうも中途半端になってしまいイマイチだったのだ。じゃあ別のはどうかと始めたコーヒーの方が適性はあったらしい。

 アーチャー曰く、

 

『……やはりか。朝食を作る私の隣で、静かに笑って新聞を片手にコーヒーを淹れる君を幻視したときはもしやと思ったが』

 

 それ、普通は逆じゃないか。その立場って朝食を作るほうが私で、コーヒー淹れて新聞読んでるのがアーチャーじゃないだろうか! 

 嫁か、アーチャー!

 

 ……まぁ、アーチャーなら問題はないのか。基本的にアーチャーはおかん気質だし。

 って、あれ、キャスターの時も良妻賢母はキャスターの方で私はどちらかというと……あれ。

 いやいや、セイバーの時は……ああ嫁王だった! 私どちらかというと新郎だった!

 愕然とする私を前に、ドクターは言った。

 

「いやぁ、岸波ちゃんはいい旦那さんになれるよ! ……って、あ、岸波ちゃんの場合はお嫁さんか。あはは、違和感を全然感じなかったね!」

 

 ――――………………ほう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日、コーヒーを差し入れるのは自重した。

 以降ドクターは稀にだが、診察を終えた職員の人にラボの外に連れていかれ、帰ってくるとボロボロだったりしたが私は関与していない。

 それと以前に魔術を使用した青年がラボでの診察を終えるとこちらを見ているので手を振るとこれまた全力で頷いて早足で去っていった。

 ……なんの儀式だろうか、これ。

 

 

 

 






青年はもう二度と出てこないでしょう……。
いろんな意味で。


そろそろ本編に入りたいころ。
次か次の次か辺りには入れればと思ってます。

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