はくのんの受難 作:片仮名
まぁなんというか……うん、こうなった。
今後の更新についての報告があります。
次話は時間があれば今週の土日か週明けに。
時間が無ければ、恐らくは来週か再来週中に一話というペースになると思います。
えぇ、アホみたいに忙しいのです、来週と再来週。
なんでこうも予定が詰まるのかと不思議でしょうがないですぜ……。
まぁFGOにはログインするけどね!
なんだかよく分からないバケモノにモテモテだった所長を救助し幾ばくか。
三人でその場を離れて身を隠せば、未だに目をぐるぐると回す所長がいた。まさに混乱の極みと言わんばかりのその様子に、ほんの少し悪戯心が顔を出すが空気を読んで落ち着くまで待つことにした。
数分もすれば所長も現実に戻り、
「……貴方よりも取り乱してた自分が恥ずかしくなるわ」
と、忌々しげにつぶやいた。
何だか所長が現実に戻るにあたりダシに使われたような気がするがまぁよし。
「さて、ええと……そう、先ずはマシュ・キリエライトの状態ね。見ればわかるんだけど、デミ・サーヴァントになったってことでいいのかしら」
「流石です、所長。お察しの通り、現在の私はサーヴァントとしての能力を譲り受け、先輩と押し掛け契約中です」
押し掛け契約何それ可愛い。
私が知ってる押し掛けって、もっと切羽詰まったカオスなものだった。
「まさか、本当に適性があったなんて……今になってようやく納得できたわ」
どうやら所長、本当の意味で私がマスター適性があったということを認められたらしい。
確かに私の回路の数では一流には程遠く、そもそも魔術師としての心構えもあったものではないから認められないのも無理はないだろう。というか、月にいた当時、本当に私がマスターなのかと疑ってかかっていたのは自分自身である。
そこからマシュがデミ・サーヴァントとなった経緯に、今現在の状況を所長へと伝えていった。
今現在、遭遇できたのはバケモノと所長だけ。しかし、所長がいることでもしかしたら他のメンバーもこうしてレイシフトしているのではないか、そんなことを思いながら所長を見ると察してくれたらしい所長はため息をつく。
「……言っておくけど、私だってこっちで遭遇した人間は貴方たちだけよ。それに、恐らく私たち以外のメンバーはいないでしょうね――ここにいるの、全員がコフィンに入っていなかった人間ですもの」
そう言われて、マシュと目を合わせる。
成程それは確かにそのとおりである。
あの時私もマシュも外にいて、コフィン無しでレイシフトしてきたのだ。そもそも、コフィンの端末をいじっていた時に、起動に必要な電力が足りないという情報を目にしていた。あのレイシフト時、コフィンは起動しておらず休止状態だったのだ。
所長曰く、
「成功率が95%を切った時点で電源が落ちるわ」
との事で、そもそも傷を負っていたマスターたちのコフィンは電力が足りてもレイシフトは行えなかった可能性が高い。
まったく、所長が合流してからというもの疑問が次々に氷解していく。流石はこれまでカルデアを支え続けただけはある。
「……貴方、恥ずかしくないの?」
本音だからもーまんたい。
既に羞恥心など、『はかせない』のせいで薄らいでいる。
「調子が狂うわね……! まぁいいわ。礼装を持ち出せなかったのは残念だけど、マシュがいれば問題はないでしょ」
「自信はありませんが、お任せください。先輩の安全を第一に、頑張らせていただきます」
「貴方も変わったわよね、ええ、ホント変な方向に変わっちゃったわよね! 所長たる私よりそっちの草食動物を優先する辺りが特に! もし岸波白野がマスターでなかった場合、貴方は誰を優先して守るべきか分かってるでしょうね!?」
「先輩ですね。判断を間違えたりはしません」
「間違えてるじゃない、初っ端から全部間違えてるじゃない! はぁ、もう、なんで私の周りはこうもおかしなのばっかりなの。レフ、レフ、貴方だけよ。ホント」
所長、所長レフ教授とかどうでもいいから――ベースキャンプつくろ?
「ああ――――っもう! まともなの私だけ? 私がおかしいの? 誰一人私を慰めてくれないけどどうなってるのよ! いいわよ、さっさと終わらせて休ませてもらいます! 霊脈探して――ってここかァ!」
ああもう嫌だ調子狂う、そういって虚ろな目で私を見る。
おおう、ガラス玉のような無機質な目はちょっと怖い。というか、今のは私ではないと思うのだ。
「もう、疲れたからさっさとしましょ。マシュ、貴方の物騒なそのデカイ盾を置いて。触媒にして召喚サークル設置するわ。貴方はその間、しっかり周囲をマシュと一緒に見張ってなさい。一匹でも通したら、貴方の頭にガンドぶち込むわ」
ガンドって、あのガンドか。
よーし、しっかりと見張りをさせていただきましょう――黒い弾幕怖い。
そうして設置されたサークルは、カルデアで見たものと非常に酷似していた。
設置と同時にドクターとの通信が回復し、所長がドクターになんで貴方が仕切ってるのと突っかかった。
そしてドクターの口から語られたのは、あまりにも悲惨なカルデアの現状であった。
「――――貴方より階級が上の人間が、いない? え、でも、レフは……レフはどこ!?」
『――――レフ教授はあの爆発の中心で、レイシフトの指揮を執っていた。生存は絶望的だ。ただ、コフィンに入っていたマスターたちに関しては何とか一命をとりとめることができました。それと……岸波ちゃん、コフィンに凍結保存を命令したのは君だね?』
――その通りだ。
「……先輩、それは――――それは、了承なしに行えば犯罪行為に当たります」
――それも承知の上だ。例え本人たちに非難されようと、見捨てるという選択肢が浮かんでこなかった。それはきっと私に深く根付くあの選択肢が原因。だからだろう、マシュの口から犯罪行為だと伝えられようと、欠片も後悔なんてしていないのは。
「先輩……私は、先輩を攻めているわけではありません。寧ろその行動に、不謹慎ながら喜んでいる自分がいます」
『それは、僕も同じだよ。死んでさえいなければやり直せる。寧ろ、君にそんな役回りをさせてしまった自分が情けないよ……皆が起きたら、一緒に事情を話しに行こう。大丈夫、時間はかかるかもしれないけど、外部から応援が届けばすぐに治療を開始できる』
「取りあえず、生きていればそれでいいわ。珍しくファインプレーね……でも、レフがいないなんて。おまけにカルデアは機能の八割を失ってるですって? 取りあえず、レイシフトとシバの現状維持は絶対だから、そちらに人員を割くロマニの方針で問題ないとして……はぁ。納得はいかないけど、私が戻るまでそちらは任せます」
――と、言うことはこちらは。
「ええ、その通り。特異点Fの調査を続行します」
『ち、チキンが進化した……?』
「帰ったらぶっ飛ばすわよ。レイシフトの修理に時間がかかるんでしょ? 先ほどの戦闘で、マシュがいれば問題がないことは分かったからこのまま進みます。……これより岸波白野、マシュ・キリエライトの両名は捜索員として調査を開始……異論はないわね」
『ね、ねぇ岸波ちゃん。なんだか所長、やたらタフになってないかい?』
――激しく同意である。
「誰のせいだと思ってるの!? ほぼ一般人がこうものほほんとしてるのに、一流である私が取り乱すわけにはいかないでしょう! いい、今回の捜索は異常事態の原因の発見! 解析や排除はカルデア復興後、第二陣を送り込んでからの話よ――いいわね!」
――あいさー!
『了解です。健闘を祈ります、お気をつけて。岸波ちゃん、マシュも無理はしないこと。緊急事態にはぜひ連絡を』
それを最後にドクターとの連絡は途切れる。
これからはいつでも連絡は取れるのだから、心配はいらない。
「いい? 何が何でも結果の一つや二つ出さないと、カルデアが協会の連中に取り上げられる可能性があるわ。そんなことになれば破滅よ。連中を黙らせるには明確な成果が必要なの。ギリギリまでは付き合ってもらうわよ――白野、マシュ」
――おお、何気に初めて所長に名前を呼ばれた。フルネームでなく、貴方とかでなく。
「なんだか、先輩がやる気に満ちているような……呼び方ですか? 呼び方なんですか?」
「マシュ、落ち着きなさい。取りあえずは周囲の探索から始めます。いい、違和感でもなんでもいいから何か感じたら報告すること。貴方たちには違和感程度に見えても、私ならそれが本当にただの違和感か否か判断できます。経験の差、実力の差ね」
ふふんと胸を張る所長。
その姿は確かに頼りになる――大人の背中だった。
「では探索するにあたり、戦力を増強しましょう。幸い召喚サークルは設置できたし、新しいサーヴァントを召喚します」
新しい、サーヴァント……だと?
一体誰がマスターになるというのだろうか。私は既にマシュと契約しているし、所長はそもそも無理だし、マシュだって今ではサーヴァントなのだからマスターにはなれない。となれば候補は限られてくるのだが……フォウなの?
「……そんな訳ないでしょう、貴方よ貴方。安心なさい、マシュは非常に低コストでほとんど貴方のリソースを奪っていないから。おかげでカルデアのバックアップ無しでも一体くらいならサーヴァントを召喚しても問題はないわ」
そういいながら所長は先ほど設置した召喚サークルへと私を押し込む。
いやいや待ってほしい、本当に待ってほしい。そもそも召喚ってサークルあればできるほど単純なものなのだろうか。
本来ならば複雑な儀式なのだと聞いていたが。
「だから、それを改良したのがこの召喚サークルです。以前に説明したでしょう。このサークルがあれば触媒を用いることでサーヴァントの召喚は可能よ。本当はもう少し複雑な過程を得てからサーヴァントは召喚されるけど、貴方に言っても分からないだろうし」
――反論できねー。
「先輩…………」
「さ、それじゃあ始めるわよ。触媒はないから、聖晶石でも使いましょう……幸い、道中で拾ったものがあるわ」
――先生、質問です。
「……なんか薄気味悪いけど、まぁいいわ。それでなに?」
――聖晶石ってなんですか。
「召喚サークルを開発した前所長が見つけてきた触媒の代用品のことよ。比較的よく落ちてるし、召喚に必要な魔力をある程度肩代わりしてくれる優れものよ。まぁ使い捨てで狙いのサーヴァントを確実に呼べるわけじゃないから万能ではないけれど」
成程、プレミアロールケーキか。
「成程、わかりやすい例えですね」
「ごめんなさい、私には理解できないのだけど……一々気にしてたらキリがないわね。さっさと始めましょう。……私はここに至り、『流す』という生き方を手に入れました」
所長がレベルアップしたらしい。
それはとても素晴らしいことである――――特にそのテクは必須。
まともに取り合ってたらコチラの身が持たないなんてことよくあるから。
「元凶は貴方だって、直接言わないとわからないのかしら!? 早く召喚して、探索して、さっさと帰るの! これ以上貴方といたら致命的な何かが狂いそうだわ!」
ひ、ひどい言われようだ! 冤罪だ!
しかしさっさと帰るのには激しく同意するので召喚とやらをしてみよう。
何だかトゲトゲした虹色の石を四個受け取り、サークルの上に置く――――と、何故か後ろから視線。
「あの、先輩……私も、頑張りますので、新しい方が来ても、そのー、そのですね――――?」
――ああ、新しく仲間になるサーヴァントと一緒によろしく頼む。
召喚されるサーヴァントがどんなサーヴァントか分からない以上、最後の頼りはマシュなのだ。コチラに来てから長い時間を共にしたマシュは、私にとって最も信頼がおける仲間で、次いで所長とドクターと職員のみんな。だからこそ、この状況下で最後に頼るのはきっとマシュだろう。
「はい――――……はい、先輩。先輩の言葉一つで簡単に気分が高揚する自分が、単純で少し恥ずかしいですが、悪くないのだと思います」
ああ、身を少し縮めるマシュが可愛い。
たとえサーヴァントになったとしても、やはり可愛い後輩は可愛い後輩であった。
報酬に夜の時間をいただこう――――!(添い寝)
「わ、私でよければ喜んで。以前同様、サーヴァントになってはいるものの全身の筋肉に変化はなく……はい、変わっていませんので」
つまりマシュマロですね?
幸せいっぱいのマシュマロなんだね?
よし――――早く終わらせて帰ろう。
「単純で結構。少しうらやましく見えてくるわ」
さて、それでは最後に私の魔力を流し込むことで召喚が開始される。
――『
私を示す、起動ワード。
サークルに魔力が到達し、体を揺らすほどの風が巻き起こる。
特別な呪文なんていらない、ただこうして魔力を注ぎ願いを込めればいい。
――焼失していく人理を守りたい。
――共に過ごしたカルデアの皆を助けたい。
――何より、何度も頼りになる仲間たちに助けられたこの命、無駄に散らせるはずがない!
魔力の嵐が収束していく。
眩く目に焼き付く魔力の輝きは、一本の柱となって空へと延びる。
心のどこかで、期待もしていた。
昔の出来事、しかし今もなお色あせない、差し出されたその救いの手。
――剣を携えた男装の少女
――赤い外装に身を包んだ武人
――妖艶な半獣の女性
――黄金の輝きを持つ最古の王
私の手をつかんでくれた、その人は――――
ってこれ、誰選んでも角立つじゃんか!
選べないよ、これ選んじゃいけない奴だよ。
もっと別の――――よし、選択肢オールチェンジで。
「――――ほう、この我に助けを求め、挙句の果てにチェンジだと? は、随分と偉くなったものだな白野よ。少々会わぬ間に、この我に払うべき敬意を忘れたか――――よし、仕置きだな。この我が直々に躾けなおしてやろう。喜べ、仕置き道具の原点を味わわせてやる」
「またぬか金ぴか! ここは余と奏者の感動的再会の一幕であろう! 危機的状況の奏者の前に颯爽と現れ敵を薙ぎ払う余と、そんな余を見て奏者が頬を染め余に対する愛情を再確認するシーン……うむ、ミリオン余裕だな!」
「みこーん! お待たせしましたご主人様! はいよる良妻、タマモここに爆☆誕! さぁさ、その他大勢は放っておいて新婚生活の続きと参りましょう! もう二度とあの女狐どもには邪魔させねー!」
「……なんというか、流石だな君は。気づけば、簡単に命を落とすような戦場に立っている。挙句の果てに周りに集まるのは誰もかれもが曲者ぞろい……まともなのは私くらいではないか? 私ならば君にそう心労をかけることもないと思うのだが……?」
――あぁ、懐かしい声が脳裏に響く。
知らず知らずのうちに、彼らとの契約の印であった令呪へと手が触れる。
まぁギルガメッシュに関しては例外で、ほぼ全部持ってかれた上に渡されたのはギルガメッシュが保有していた令呪だったが。
と、まぁそれはおいておいて。
この状況はいかがなものか。
なんか目の前の魔力の柱が荒ぶってる、超荒ぶってる。
それはもう何か巨大な塊が内側から外に出ようと争っているかのように荒ぶってらっしゃる。
「セイバーさんと金ぴかさんが争っている内に失礼しますね。油揚げを掻っ攫うは狐の仕事……NTRとかやらせません! さぁ抱きとめてくださいましご主人様――って、何ですかこの鎖! 私のご主人様専用悩殺ボディーに絡みついて!?」
「ほざけ獣畜生が! 貴様に欲情する日が来ればその日こそこの世も終わりよ。獣は黙って野生か檻へと帰るが良い! それにしても、相も変わらずこの我を愉しませる人生を送っているものよ。此度も存分に足掻き、この我を愉しませよ。さすれば、そうさな。前回はこの世の愉悦を教えてやった……では貴様には、この我自らがこの世のありとあらゆる快楽をくれてや――――む、なんだこの粗末な布は。どこかで見覚えが……身体が、動かんだと!? 贋作者、貴様の仕業か!」
「英雄王、流石に聞き捨てならんぞ。君も気苦労が絶えないな、マスター。まぁ安心してくれ、ああいった手合いの者から君を守るのも私の役目だ。力不足ではあると思うが、ここは私を召喚して場を収めてしまうのも一手だと思うぞ。……失礼、少し待っていてくれ。どうしたのかね、セイバー。取りあえず、剣を収めないか?」
「ぐぬぬ、アーチャー貴様、赤いだけでなく余のポジションまで奪おうというのか! 奏者の剣は余が務め、奏者の嫁も余が務め、奏者の夫も余が務め! 取り合えず一番の障害はさっさと沈むがよい、うん、それがいい。赤は二人もいらぬ」
なんというカオス。
案の定こうなってしまったか――!
というか私、霊媒なんて一つも用意してないのにどうして皆がやって来たのか。
逆か、逆に私がサーチされたのか!
ということはこの後いくら召喚する機会があろうと現れるのはあの四人に限られるのか。いやまぁ別に嫌じゃない、むしろ嬉しいのだが新しい出会いというものにも少し期待があったりなかったり……いや、やめよう。下手するとヤンデレ一派が現れたときガチで監禁されかねない。
うん、出会いとかもうおなか一杯かな!
何だかガヤガヤと念話が脳裏に響いているが、もうカオスすぎて訳が分からない。
誰がやってくるのか――――安定ならアーチャーなのだが、リア充爆ぜるべしと悟った一件もあったところだし迷いどころ。キャスターはとても甲斐甲斐しく可愛らしいのだが、一度暴走し始めると世界を巻き込む規模で事件が起きる。となるとセイバーか。可愛いし、甘えられると離せなくなる……突拍子のない想像を超えた行動力は困りものではあるが。
ならば――英雄王か。
ない、それは、ない。
確かに心強いのだが――――彼は不味い。共にムーンセルを飛びだし、似た環境の場所へと乗り込み共に過ごした。三日後には征服完了。朝起きてギルガメッシュがいないからどうしたのかと外を見たら黄金の玉座を人々に担がせ、その上で尊大に笑う彼がいた。訳が分からなかった。
ギルガメッシュの行動は、常人である私には予測なんてできはしないのだ。
だからもう、
――――AUO以外なら誰が来てくれても大歓迎です。
「ふはははは! 雑種どもめ、この我を出し抜こうなど片腹痛いわ! 精々貴様らは負け犬のごとく、そこから我を見上げているがいい。そもそも、打ち捨てられたこの娘をもらい受けたのはこの我だ。この世全ての一部ならば、それはつまり我のものよ! さぁ白野よ、その生きざまその続き、この我に示すが良い! 我の満足度――AUOポイントによって褒美を取らす。最高位は純正ダイヤにも勝る我が裸体よ!」
――はい、フラグでした!
だよね、そうなるよね、あの王様を止められるわけがないよね!
「そう喜ぶな、白野よ。ふむ、その態度に免じ先ほどの仕置きは見送りとしよう。ゆめゆめ忘れるな、貴様は我の物であり我の者である。であればこそ、我を称え奉るが当然であり世の理よ。次は無いと胸に刻み、その歩みを以て我を興じさせよ。さぁ、我らが旅の続きとゆくぞ!」
魔力の渦より聞こえるは、耳をふさいでいても通るだろう王の声。
ああやっぱりこうなったかと苦笑いしながらも、次の瞬間にはきっと私の表情はだらしのないものになっていただろう。
眩い黄金。
堂々たるその姿。
圧倒的なその存在感に、懐かしさを感じ安堵する。
まさか再度力を貸してくれるとは夢にも思わなかった。
「ふん、言ったであろう。貴様に愉悦は教えたが、今だ足りぬものが多くあると。我のマスターたるもの、我に及ばぬは当然として求められる格がある。我の右腕という、本来なら身に余る場に貴様はいるのだ。であれば裁定者たる我の右腕は、我が裁定する世界を存続させる義務がある」
――な、なんという無茶ぶり!
「無茶だと? 貴様は一度、神を破り願いを叶えたであろう。未熟故、我が手を貸してやったとしても真実は変わらん。そして此度も貴様の未熟は変わりはせん。そも、完成された存在は天上天下にただ一人であるからな」
だから、力を貸してくれるというのか。
未熟な私が世界を救うために、完成された英雄の王が?
というか、何気にその立ち位置の話は初めて聞いた気がする……!
「我が今、ここで決めた。貴様はどうも、こう、地に足がつかん。放っておけば勝手に蔵から飛び出しどこに行くか想像もつかん。ならば――――我が直々に手綱を引いてやればよいと考え至った。これ以上の良案は他にあるまい。そら、称えよ」
その思い付きで世界救うことになったのか、私は!
「当然よ。無論、無様をさらせば直々に仕置きしてやる。殺さず、やり直す機会を与えてやるのだ。この我にしてはあまりに慈悲深いとは思わんか。まぁ、仕置きにかんしては手加減はせんが。我に仕える悦びというものを教えてやる」
いやまぁそもそもの話、こうして特異点と人理焼却は止めようと思ってたけど、ギルガメッシュに言われるとなんだか規模が違って見える。これは何が何でも人理の焼却を防がないと、どんな目にあわされるのか想像もつかない……!
彼はやると言ったらやる、間違いなくやる!
「ふはははは! よく理解しているではないか、白野。そら、手始めにこの特異点とやらを見事に治めて見せよ」
腕を組み、そういう黄金の王。
ただその無茶ぶりは懐かしく、自然と心の内が満たされていく。
その無茶ぶりが、信頼の裏返しだと分かってしまっては断れない。
――――ギルガメッシュが力を貸してくれるなら、出来ないことなんてきっとない。
その日、私は再び月の裏で出会った破格のサーヴァントと契約を結びなおした。
その後、何気なく地面を見てみると三枚の手紙が。
『今回は金ぴかにしてやられたが、次は余の番だ! 余は既に準備万端、いつでも奏者の呼び声に応えよう……いつでもと言ったが、なるべく、いや、可能な限り早くせよ。拗ねるぞ、遅いと余が拗ねるからな! 拗ねたら一週間は余と寝食を共にするのだぞ!』
『ご主人様と会えるせっかくの機会が――――! 流石は最古のジャイアニスト、あそこでアーチャーさん妨害のため、マグダラから解放しなければ……! よよよ、タマモちゃん反省。――と、言うわけで私正座をして粛々とお待ちしております。ですので、私の脚が痺れてしまう前にお呼びくださいまし! あ、部屋はご主人様と同じで結構でございます。というか、それ以外は認めねー!」
『すまない、マスター。私の力が至らぬばかりに、最も厄介な者を行かせてしまった。この失敗は、召喚され次第すぐに取り返す。恐らくあの英雄王と対抗できるとすれば、相性的に私くらいのものだろう。故に、手遅れになる前に呼んでほしい。それと、生活習慣には気を付けたまえ。君は放っておくと――――クドクド』
「なに、なんなの、本当になんなのよ! 英霊ってこんなのばっかなの!? まともだったのは二号だけか――――!」
「あぁ、落ち着いてください所長! 私も混乱していますが、今の所長を見ていると落ち着かなくてはと使命感が!」
――――取りあえず、この場を収めてから世界を救おう。
そういえば、今回のイベはアレですね。
礼装は取り合えず先生貰っとけば間違いないかなと至り先生をいただきました。
そして呼符で読んだらキスユアという。
取りあえず星5礼装より子ギルよこせぇ!