ウィザーズ・ブレイン同盟で行いましたがウィザーズ・ブレイン要素は一切ありません。
改訂してみました。ちょっとした実験ですので、元の作品は雷師さんのサイトでどうぞ。
ラスト部分を大幅に変えました。
「うわー!きれいだねえ!」
そういいながら花畑を駆けていく「彼女」
黄色い菜の花によく栄える白のTシャツとジャケット。
七部丈のパンツは黒。
冬の間は飾り気のないトレーナーに暖かそうな長い丈のズボンだったのでいきなりの服装の変化にどぎまぎしてしまう。
可能な限りそれを隠そうとしているが、目が泳いでしまっているので彼女にはもはやばれてしまっているだろう。
曇り空のためか、菜の花畑には人は少ない。
少ないとは言っても、連休中かつシーズンど真ん中ではあるためかちらほらと人はいる。
あまり有名ではない、というのも関係しているのだろうか。
どれにせよ「人のかたまり」の中で身動きもできず、花も見えないような状況よりよっぽどいいだろう。
何より「彼女」の着飾った服装なんて物はほかの男に見せたくはない。
そんな心理が働くくらい今日の「彼女」は可愛らしかった。
「どうしたの?そんなに考え込んで。
悩み事でもあるの?」
そういいながら顔をのぞき込んでくる仕草すらいとおしく思えてくるあたり、相当イカレていると思う。
しかし、そんな自分も悪くない。
「いや?何でもないよ。ただちょっといつもと服装が違うからとまどっただけ」
にっこりと笑いながらそう返す。
そのままお互いに他愛もない話を続けながら菜の花畑を歩き回る。
彼女は至る所に「感動」を見つける。
花にとまっている蝶。
茎から今にも飛び立とうとするテントウムシ。
親に連れてこられたのだろうか、小さな子供が笑い声を上げながら駆け回る姿。
普通の人なら気がつかないような細かいところにも気づき、感動し、その感動を他者に分け与える。
これはもはや天性だろう。
彼女といるだけで心がこんなにも弾む。
天気が悪くても関係なく、心は晴れやかになる。
反対に彼女がいないときの自分はいつも曇り空の中にいるようだ。
「あ!!」
突然彼女が大声を上げる。
はっと顔を上げると雲の隙間から太陽がのぞいていた。
呆然とする。何もわからない。なぜ? 何故雲が晴れる?
彼女を見やる。一瞬の驚いた顔。そして、彼女の表情は穏やかな微笑みへと変わる。
ゆっくりと花の中に歩き出す彼女。その姿は、尊く、優しく、柔らかく。なによりも―――儚かった。
「――――――」
振り向いた彼女がつぶやく。
なんて言ったのだろうか。聞き取れない。
雲の切れ目からだったはずの太陽の光が、世界を満たしていく。
ああ、なんということか。
だんだんと薄れていく彼女。
死んでなお、この世に残り、自分の彼女となってくれた人。
「待ってくれ!」
思わず一歩踏み出し、声をかける。
「消えないでくれ!まだ、俺のそばにいてくれ!」
それを聞いて。彼女はほんの少しだけ、今度は困ったような微笑みを浮かべた。
『大丈夫だよ』
もはや耳に残る音は発せられていない。それでもなお、彼女の声が聞こえる。
耳ではなく、心に。彼女の言葉が響く。
『私みたいな、死人じゃなくて。君ならきっともっと、君にピッタリの人が見つけられる』
「そんなこと無い!俺の、俺にとっての一番は、君以外にあり得ないんだ!だから、お願いだ、消えないでくれ…!」
みっともなく顔をぐしゃぐしゃにしながら彼は言う。魂からの言葉を。
だけど彼女はそれを拒絶する。
『君は私と違って生きているんだ、だから―――』
遮るように、彼は叫ぶ。
「生きているから何だって言うんだ、君がいないなら、何の意味も―――」
『ふざけないで!』
一喝。
強い口調で、そのくせ泣きながら、彼女は言う。
『私の肉体は死んだ、今の私を覚えていてくれるのはあなただけ。
そのあなたに意味がないなら―――今の私も、意味がなくなっちゃう。
だから、お願い。生きて? あなたが忘れない限り、私はあなたの中で生きていける』
生きているとは記憶に残ると言うこと。
どこかで見た話を彼女にした過去の自分をたたきのめしたい。
だが、それはかなわない。彼女はもうすぐ離れて行ってしまう。
彼はその言葉を聞いて泣き崩れ、
「わかった…わかったよ…、今まで、ありがとうっ…」
絞り出すようにそれだけ言い…
彼女は今度こそ、泣きながらも笑い、空へと消えていった
二人の運命は別離を告げ、彼は明日へと踏み出した。
彼と彼女は偶然に知り合い、そしてここにて分かれた。
二人の運命が次に交わるのはいつなのだろうか、ああ、せめて…せめて来世で出会うときには二人が幸せな生を、送れますように…。