「夢は一攫千金です。」
開口一番に出た魔王のコトバ。またどこかでくだらない情報を得たようだ。毎度のことながら魔王は一体どこから情報を得ているのだろう。
キリトは半ば呆れ半分に魔王に問う。
「宝探しでもするのか?」
「違いますよ、一攫千金と言えばカジノ、カジノと言えばラッカランじゃないですか。」
そう言った魔王こと、絶世の美女は可愛らしく片目を閉じてみせる。
ようはギャンブルで借金を返そうと言いたいらしい。早くも嫌な予感しかしない。
娯楽島ラッカランは島主ゴーレックが数十年を費やし始めたカジノで、今やそれはアストルティアで一番の娯楽島となったものだ。
「ギャンブルで借金を返すとか、お前それは一番ダメな思考じゃないか?」
「キリトさん、あなたは英雄とか言われているクセに小さい男ですね、男なら時にはドーンと全てを運に任せてみるくらいの気概を見せてくださいよ。いわゆる神頼みです。」
「魔王が神頼みってどうなんだよ・・・」
「そんな小さな事を気にしてばかりだからキリトさんは闇の根源に取り込まれ英雄は災厄の王になったとか言われるんですよ。」
その取り込んだマサに闇の根源そのもののお前が言うのかと突っ込みたいのは山々だが、そこはグッと堪えたキリトは
「シズク、そもそもお前はコインを持っているのか?知ってるか?コインだって最初は金を出して買わないとならないんだぜ?」
「キリトさん私を馬鹿にしてるんですか?あなたの目の前にいるのは誰ですか?」
そう言って白銀の髪をサラッとかきあげ、赤い瞳で妖艶に微笑むその姿は正に女神そのものなのだが
「神魔王?」
「そうです、私は絶世の美女です!」
キリトの言った答えを華麗にスルーした魔王は、胸を張って答えたあとに頬を染める。
照れるぐらいなら自分で絶世の美女だなんて言わなきゃ良いのにとキリトは思う。
「で?金もコインもないのにどうするんだ?」
キリトが聞くと怪しい笑みを浮かべた魔王は辺り一面のカジノを楽しんでいる男たちに微笑みをふりまく。するとどうだろう、口コミが口コミを生んで瞬く間に老人から若者までよくもこんなに集まったなと思わんばかりに男どもが集まった。
キリトにしてみればあまり面白い話ではないが、魔王の魅了のステータスを考えれば無理もない。
魔王は数え切れない程のイイネ!と共に、とてつもないほどのコインが貢がれていく。
「見ましたか?キリトさん。私が本気になればこのくらい楽勝なんですよ。あなたもうかうかしていられませんね。」
そう言って笑う魔王に
「それだけあればもう賭けなくても良いんじゃねーか?」
キリトはぶっきらぼうに答える。
「バカですね、私たちの目標は海の見える丘に白い庭付きの家ですよ?もう少し必要です。」
「グランゼドーラ城を取り戻すのが目的だろ!!」
「え?城なんて別にいりませんよ?」
「城の無い魔王なんているのかよ。」
「別に良いじゃないですかそんなの。それよりカジノしますよ?」
大事な城をそんなの扱いする魔王は、迷わず3階のVIPルームへと歩を進めるのだった。
10分後
「神は死んだ・・・」
地面に膝を折り両手をついてガックリと項垂れる魔王。
「シズク・・・お前予想どおりすぎだよ。」
項垂れる魔王の頭にそっと手を乗せるキリト。2人で目分量で分けたとは言え、其々5万枚近くはあったはずだ。
どうやったらそんなに早く無くなるんだってのはさて置き、魔王のギャンブルの才能の無さはある意味驚愕する。
そんなキリトに魔王は
「キリトさんの方はどうですか?」
チラリと横目を向けて様子を伺う。
「目分量だが2万枚増えて7万枚ぐらいか?」
そう言ってキリトは手持ちのコインを入れた袋を見せる。
「凄いじゃないですか!まさかキリトさんにそんな才能があっただなんて。」
瞳を輝かせて素直に尊敬の眼差しを向けてくる魔王に、キリトもまんざらではない。
「俺は戦神だからな。勝負と名のつくものには強いのさ。さ、半分お前にやるからまた2人で頑張るぞ!?」
「はい!2人で頑張って海の見える丘に白い庭付きの家を建てましょうね。」
「ああ!」
1時間後
「「神は死んだ・・・」」
2人して同じかっこうで項垂れる。
キリトが増やしては全部無くなった魔王に半分渡しを繰り返す内に、キリトの手持ちは半分に出来ない1枚きりとなったのだ。
「仕方ありませんね、もう一度私の魅力で・・」
「いやいや、さすがに2度は可哀想だろ。彼等は善良なアストルティアの人民なんだぞ?」
「意外と優しいんですねキリトさんは。」
「意外とは余計だがな。」
「じゃあどうするんですか?夢のマイホームは。」
「借金は地道に働いて返すしかないだろうな。」
噛み合っているようで微妙にズレた会話をする2人が諦めかけたとき、盛大なファンファーレと共に7色に光るトーテムが2人の目に入った。
誰か運の強い者がジャックポットを引き当てたのだ。
大勢の歓声の中からキリトは聞き覚えのある声を拾った。
「グハハハハハ……!
見たか! これが余のチカラよ!!
まだだ……。これで終わりではないぞ!
ここまでくると自分の才能が恐ろしいな!」
ジャックポットを引き当てた男は、お酒を煽るように呑みながら高笑いしている。
「あれはマデサゴーラじゃないか?」
「マデ?なんですか?」
「確かに魔王軍は派閥やらがあって覚え辛いとは思うがシズク、お前もいい加減部下の名前くらい覚えてやれよ。あれでもそこそこな地位の男だぞ?」
そう言われて魔王は酒をたらふく飲んで騒ぐ男を改めてみるのだが、やはり記憶にない。
「それにしてもあのあご髭がムカつくんですよね。」
「あご髭に何か嫌な事でもあるのか?」
「別にありませんよ?何となく嫌いなだけです。」
要するにこれと言った理由が無いのに、ジャックポットトーテムではしゃいでいる男は嫌われているようだ。全く哀れな男だとキリトは思う。
その哀れな男はと言うと、まさか神魔王にそんな事を言われているとは露ほどにも考えていない。そんな彼は大当たりによるものだろうが、どんどん酒を煽り、そして気持ちが大きくなっていく。
「余は全てを手中に収めた大魔王である。……いや、全てを創造せしもの、創造神マデサゴーラである!!グハハハハハ……ブーーッ!!」
「素敵ですね大魔王さま♡」
「さすが創造神だな。」
上機嫌なマデサゴーラは飲んでいた酒を思わず噴き出した。行方不明な筈の魔王の中の魔王、神魔王シズクと、英雄キリトと呼ばれる最強の戦神エスタークが目の前に突然現れたのだ。
「し、しシし神魔王サま、お元気そうで何よりデす。エスターク様も相変わらズのイケメンで…うへへへ。」
マデサゴーラは両手を揉みながら声を裏返して腰を低くくする。全身からは嫌な汗が噴き出している。
「あら、光栄ですわ大魔王様に名前覚えててもらって私感激です。ねぇキリトさん?」
「ああ、アストルティアを創造した神に覚えてもらえて俺たちは幸せものだなシズク。」
「そ、そそそそんな滅相も無い!!私ごとき1魔将が大魔王や創造神だなんて・・・」
殺される。
マデサゴーラはいろんなパターンの謝罪を頭の中で組み立てるが、その全ての結果が死以外みえない。
みるみる涙目になっていくマデサゴーラに、魔王はまさかの微笑みを見せ、ン。と言って手の平を差し出した。
「は?あの?」
何だかよく分からないマデサゴーラは、頭の上に?マークを付けている。
「察しが悪いですね。」
「え?あの、神魔王様?」
「マデサゴーラ、シズクはその手のモノをご所望なのだ。」
「そ、そんなぁ・・毎日通い続けてやっとここまで貯めたって言うのに・・・。」
「早く献上した方が身の為だぞ。無へと還されたくないのならばな。」
その冷ややかな声が、余計にマデサゴーラの心臓を握り潰すかのようにプレッシャーを与える。
「でもこれはわたしの唯一の趣味で・・・」
「地獄の沙汰も金次第。後は貴方が決める事よ・・・」
魔王の紅い瞳が怪しく光っている。これを手放す以外に助かる道はなし、そう本能で理解したマデサゴーラは大粒の涙を流しながら手持ちのコインを全て魔王に差し出した。
魔王は大量のコインをマデサゴーラから奪い盗ると、再びジャックポットへと走ろうとしたのだが、キリトはそんな魔王のローブを掴みそれを止めた。
「待て待てシズク。いくらマデサゴーラが部下とは言え、大量のコインを献上させたんだ。褒美の1つくらいあっても良いんじゃねえか?」
キリトに言われてマデサゴーラに視線を移すと、跪き懇願する彼はウンウンと首を縦に振っている。
「生命を救ってあげたじゃないですか。言わば生命の恩人ですよ、私は。」
「シズク、一応言っておくが殺さないでやる事と救うってのはイコールじゃないからな?」
「え?違うんですか?生きてるじゃないですか。」
そもそも魔王とは言え、創世の女神である彼女が生きるとか死ぬとかを本当に理解しているのか疑わしい。キリト自身だって同じだ。しかしそれを差し置いても彼女は明らかにおかしい。先に述べた殺さないでやる事と救うの問題どころか、その斜め上を行き生命の恩人とまできた。
要するに殺さないでやるから恩にきろというのだ。
「なぁシズク。言いたい事は色々あるが取り敢えずマデサゴーラに何か褒美をやれ。それが良い女ってもんだろ?」
「まぁ、私は良い女ですから?褒美ぐらいあげますよ。」
自慢気に胸を張る魔王は、指先から爪の先程の大きさの光の球体を出し、それをマデサゴーラに授けた。
「それは私の魔力の欠片です。あなたはどうやら何かを創造したいみたいだから、ソレを授けます。あとついでに大魔王も名乗るのも許可してあげますよ。」
満面の笑みで魔王は言った。
「良いのかシズク。大魔王と言えばかつてお前の父親が名乗っていた事もある由緒ある称号だぞ?」
「そう言えばそんな事もありましたね。でも大魔王なんて名乗る者はジジイ(父親)もそうですが、クシャミで現れるヒトやナメクジみたいなヒト・・・まぁ振り返ってみてもロクなもんじゃありません。そこにこのあご髭のザコが入った所で何にも問題ないです。」
女神のような微笑みで悪魔も震え上がるような魔王の言葉。
もう許してやれよ。
言葉による痛恨の一撃をガスガスと受けているマデサゴーラのHPはオレンジ色ですよ?
キリトは心の中でそっと涙目の部下に優しい言葉を思い浮かべる。
そんな涙目のマデサゴーラは魔王から何を授かったのか理由も分からずボンヤリしている。その様子を悟ったキリトは話題変えの助け舟とばかりに話しかけた。
「マデサゴーラ、それはシズクの力の欠片だ。言わば闇の根源のほんの一部だ。ソレを上手く使えばお前にも何か望みのものを創ることが出来るだろう。有難く受け取れ。」
「そうですよマサなんとかさん。それに魔王なんてやりたいヒトがやればいいんです。さ、大魔王マサグランデさん、張り切って頑張ってくださいね。」
「マデサゴーラです神魔王様。」
「そんなのどっちでも良いです。それより手に入れたコインをどう増やすかが今の私には重要です。」
部下の名前をそんなの扱いする魔王は、マデサゴーラから奪い盗ったコインに目を輝かす。
しかし当のマデサゴーラも、まさかの神魔王お墨付きの大魔王の称号を貰え気が大きくなったのか、あわよくば神魔王とエスタークに近付き本当の意味での昇進を狙ってか、魔王とキリトの前に立ち
「カジノならわたくしめにお任せ下さいませ。必ずやお二方のご期待に応えてみせます。」
そんなマデサゴーラに対し2人は
「もう用は済んだから下がっていいですよ。」
「邪魔だ、下がれマデサゴーラ。」
マヒャド並みの冷たい瞳で切り捨てた。
しかしマデサゴーラも趣味のギャンブルについては自信がある。魔王軍の頂点の2人に売り込むチャンスなのだ。結局切々とギャンブルについて語るマデサゴーラに根負けした2人は、マデサゴーラのコインを必ず増やすと言う言葉を信じて仲間に入れることにした。
「神魔王様にエスターク様良いですか?ギャンブルは攻め時と引き時、そして勝利を導く力が必要なんです。」
なんで戦神である俺が今さらこんなザコに偉そうに教授されてるんだ?キリトは内心でちょっとだけ魔王の言うあご髭がムカつくって言葉の意味を知った気がした。
しかし魔王の借金を返す為には、イラッとくる殺意は取り敢えず抑え、マデサゴーラのギャンブルの才能とやらに賭けるしかない。
魔王は魔王で、自分が勝利の女神になるとか言って名前もマトモに覚えていないマデサゴーラの応援をノリノリでしている。
しかし数分後
「神は死んだ・・・」
両膝と両手を地につけガックリするマデサゴーラ。
言わんこっちゃない。魔王は自分が勝利の女神と信じて疑わないがキリトからすれば明らかに厄病神かなんかにしかみえない。
マデサゴーラのもつ30万枚ものコインがたったの数分でなくなると言う離れ業をやってのけたのだ。
「偉そうに御託を並べてこれか、マデサゴーラ。」
キリトの辛辣な言葉に
「エ、エスターク様これは違うんです!!」
マデサゴーラは真っ青になって言い訳をする。と言うのも英雄キリトの目は冷たく、声に殺気が込められているからだ。ギャンブルに負けた事からなのか、魔王との間に入ったのがまずかったのか、マデサゴーラは生命の危機をハッキリと感じとる。
「これはどこかに厄病神がいたのです!!私の勝利を崩すほどの強力な厄病神が。」
「あぁ?厄病神だと?」
そう言うとキリトとマデサゴーラはほぼ同時に魔王の方を見た。
「・・・なぜ今の話しの流れで私をみるのですか?」
明らかに不機嫌な厄病神もとい魔王は、足元から青白い炎のような魔力を揺らめかせている。
「ま、待てシズク。別に俺はお前が厄病神だとは・・」
「さ、左様でございます。神魔王様はお美しいのですから多少運がなくても・・・」
このあご髭バカが。それでは魔王が厄病神だと決め付けているようにしかとれない。魔王はゆらりゆらりと2人のそばまで来ると
「で?どうするんですかこの先。」
意外にも建設的に先の話をする。しかし無いものはない。全く無くなったコインではもうカジノは出来ないのだ。諦めるしかない事をキリトが進言すると、魔王は見るからに怒りを露わにし始めた。
見た目はまだ何とか変装したウェディの姿を取っているものの、髪の色は既に白銀色と既に半分は怒りで変装が解けている。
「ちょっと!私たちの夢のマイホームはどうするんですか!!」
魔王は怒りに任せて近くのジャックポットのマシンをグラグラと揺らす。キリトとマデサゴーラは慌てて魔王を宥めようとするのだが魔王の怒りは収まらず、途轍もなくエゲツない蹴りを繰り出した。
キリトは素早く身をかわした。
マデサゴーラは顔面に魔王の蹴りが当たり、勢いよくジャックポットのマシンへと吹っ飛んでいき、ぶつかった時の衝撃で壊れたマシンから大量のコインを被りながら気絶した。
「キリトさん見ましたか!?たくさんのコインが落ちてますよ!!きっと神様が可哀想な私たちに与えてくれたんですね!」
「どこの世界の神が魔王にコインを与えるんだよ!!落ちてるんじゃなくて壊したんだろーが!!」
目一杯ツッコミを入れるキリトと、大量のコインに瞳を輝かす魔王。
そんな2人に背後から声がかかる。
「キリトと言われましたかいま。」
名前を呼ばれて振り返ったキリトの目に入ってきたのは、初老のドワーフの男と、その背後にいる数十名のバトルマスター達だ。
「私の名はゴーレックです。娯楽島ラッカランの島主にございます。今あなたは伝説の英雄の名で呼ばれていましたな。そこの白銀の絶世の美女から。」
「・・・」
「私の記憶が正しければキリトさん、貴方はアストルティアの英雄で、そこの美女は魔王とお見受けしますが?」
変装が解けかけている魔王をしてこれ以上シラを切るのは不可能と判断したキリトは
「いかにも俺はエスタークのキリトでこいつは魔王シズクだ。俺達を相手にたかだか数十名のバトマス如きで挑むつもりか?」
「とんでもない。貴方1人を相手にだってできませんよ。しかし!」
「しかし?」
「VIPルームの超高価なマシンを壊されたまま帰す訳にはいきません。弁償していただきます。」
「なん…だと?」
「その特別製のマシンはオリハルコンで出来ています。負けてマシンを叩いたり蹴ったりされることが多いですからね。各大陸を代表するような大魔法使いが束になってメラガイアーを放ったところで傷一つつかない設計です。」
シズクは蹴り一つでアッサリ壊したがな。
キリトは心の中でツッコむ。
「その特別製のマシンを壊されたからには当然全額を弁償していただきます。しめて総額10億ゴールド、キッチリと収めていただきます。」
「なに?10億だと?」
あまりに予想を超えた額に言葉を詰まらす。
そんなキリトに代わって魔王がゴーレックに詰め寄る。
「なに言ってるんですか!弁償なんてしませんよ。こんな簡単に壊れるようなものを作るのが悪いんですよ!!」
「魔王様、あなた様の言い分は分かりましたが、それは女神セレシアの前でしていただこう。」
「セ、セレシアちゃんが何だと言うのですか!セレシアちゃんや引き篭もり(グランゼニス)如きを恐れるキリトさんではありません!!」
「俺かよっ!!」
当然振られて思わず突っ込むキリトを無視して話を続けるゴーレックは懐ろから笛を取り出した。
「そ、その笛は!?」
「そうです。これは神の群勢(星空の守り人)を呼び出す笛です。女神セレシアに2人を差し出してキッチリ賠償してもらおう。」
そう言うな否やゴーレックはピリリリリ!!
笛を思い切り吹いた。
「ほ、本当に吹きやがった。またイザヤール達が来たら面倒だ。逃げるぞシズ・・・ク?」
キリトの目に映ったは、気絶したマデサゴーラごと壊れたマシンと大量のコインを天井近くまで蹴り上げた。
一同の視線は天井近くに舞い上った機械とキラキラ輝く大量のコイン、それにボロ雑巾のような気絶してグッタリしているマデサゴーラに集まる。
キリトは瞬時に理解した。
魔王は逃げるつもりだと。
魔王とキリトはお互い目で合図を交わすと、魔王は振り上げた手を下げる
「ゴールドシャワー!!!」
ギャー!痛ててて!!
大量のコインやマシンの破片とボロ雑巾がゴーレックとバトマス達に降り注ぎ、様々な悲鳴が周囲に響き渡る。
魔王は混乱に乗じて逃げ出した。
エスタークは混乱に乗じて逃げ出した。
まてー!!
大勢の天使たちとバトマスたちがゴーレックを先頭に手に武器を携えて追ってくる。
その目は尋常じゃないほどの怒りの炎を燃やした悪鬼の如くだ。
「さっき置いてきたボロ雑巾は大魔王です。それあげるから許してくださいよー。」
「嘘つけー!!あんなんが大魔王なわけないだろうが!良いから魔王にエスターク止まれー!!」
「嘘じゃありませんよねぇ?キリトさん。」
「そうだぜイザヤール!あいつは大魔王だ。きっとソコソコに価値はあるから見逃してくれー!!」
「騙されるものか!何もしないから止まれキリト!!」
「嘘だ!絶対にソレは嘘だ!!」
魔王と英雄キリトは、どこまでもどこまでも走って逃げて行くのだった。
2人は一体何処へ行くのか?
何処へ向かっているのか?
一抹の不安を胸に、目の前を凄まじい速度で走って逃げる魔王の後をキリトは必死に追うのだった。
余談ではあるが神魔王シズクと英雄エスタークに借金の肩代わりに売られたマデサゴーラは、後に創世の女神に挑戦せしものを名乗るようになるのだが、それはもう少し後の話である。
2人の借金
1015093万 + 10億 =1115093万ゴールド
一部のキャラは前作のヘタレ勇者とヤンデレ僧侶の大冒険を引き継いでいます。お暇潰しに読んでいただけたら幸いです。