~転生者深海棲艦奮闘記~前世持ちの姫がチート鎮守府とか相手に頑張るお話~ 作:R.H.N
尚、完成したのは幕間の模様。
「・・・・・・・・・AIDAM、」
偽航戦姫達が去ったあと、一人工厰内にいた正成は工厰を片付けるといった行動には移らず、暫くの後に工厰内にあった近未来的デザインのリュックに向かって呼び掛ける。
「・・・・・・・・・今は【本性】でいたい頃合いか・・・、IF(イフ)!!」
【お呼びですか、お父様】
中の機械を取り出すときにいつも呼び出す存在の名前で呼んでも反応しないことに気づいた彼は、リュックの中の管理者の「もう1つの名前」を呼ぶ。
すると、すぐさまリュックの中から機械的なアームに乗せられてパソコンが彼の目の前に現れる。
その画面の中にはメイド服を着た白の短髪と
「今日は管理AIとしてではなく、
【その通りです、まぁ本当であればいつでもお父様の子としてあり続けたいのですがね、お父様が危険だからと止めなければいつでもこのあり方のままでいたいのが本心なのですよ?】
「それは知っとるが、そうとは言えど、
正成と会話をするパソコンの中の少女、正成の事を【父】と言い切る彼女と正成とはお互いを視認できてるらしく、異質な者同士の会話と言う、端から見れば不思議な光景が他に誰もいない所で行われる。
【まぁ、今ソレを話し続けてもキリが無いですし、取り敢えずおいておきましょう、でして、確認したいのというと・・・・・・】
「・・・ああ、まさかとは思うが、偽航戦姫は察知したのか?」
【非常に不味いことではありますが、
「そうか・・・・・・最後の1つ、【PUV】は基本的に起動させようが無いのは救いなのかもしれん、アレが露見すると面倒どころではないからな」
【《AFV》も、露見すると・・・って所ですからね、でもその取り敢えずアイデア浮かんだら作たい病どうにかならないんですか?日に日に危険物が倍々ゲームしてて私も管理が面倒なんですよ?】
【・・・・やっぱり沿岸部の誘導連装砲にしろ無人偵察機編隊にしろ倉庫の魔改造にしろなんにしろ、一度スイッチはいるとぶん殴ってでも止めないとノンストップで改造と新造を続ける性分をどうにかしない限り私の負担は増えるばかりな気がするのですが?】
「それは何度も言うが私の性分なんだ、許して、許してクレメンス・・・・・・・・・」
【まぁ、勢いをそのままに産み出したその他の[第壱級破滅機械]、[第弐級滅星機械]、[第参級究極超兵器][第肆級超機械兵器]、その他諸々の発明品群も一緒に察知されなかっただけマシと見ておきますか】
「その一言に尽きる・・・・・・か、」
物騒な会話を継続する正成と少女、その顔には既に達観してるかのような表情が浮かんでいた。
「まぁ、その辺は考えると長くなるから一旦置いておこう、IF、ハワイの深海棲艦と国連の動きはどうだ?」
【国連は概ね予想通りです、早期講話派の日本、ドイツ、イタリア、イギリス、ロシアと継戦派のフランス、アメリカ、カナダ、オーストラリアとで意見が対立しています】
【予想外と言えば、中国が中立状態であることと、深海棲艦の侵攻で実質的に滅びた各諸島国家の亡命政府は概ね早期講話派に回ってることでしょうか?、中東諸国もエジプトが早期講話派、イスラエルが継戦派な事を除けばおおよそ中立状態です】
【南米は完全に様子見ですね、正直どっちでもよさげな様子です、インドも様子見に徹していますが、日本政府首脳部との対談で早期講話に傾いています、又アメリカに関しても、世論から見るとハワイを取り返す事が出来るのであれば早々に講和派に転じる可能性が高いです】
「端から単純に見ると随分と不思議な対立構造だな、元枢軸+英露と北米+仏+オーストラリアって・・・・・・ってかコレ米国が早期講話に傾いたら一気に流れが決まる状態か、」
【大体そう見て違いないかと】
二人の話は続く。
「深海棲艦はどうだ?、ラティメリアの報告によるとハワイから殆ど動かずにいるとのことだったが」
【前回の大規模作戦の結果得た捕虜の取り扱いで四苦八苦してる様子です、恐ろしいことに、各深海棲艦が協力してハワイの送電設備の再整備を行ったり、占領されたミッドウェー方面から輸送されたと思われる魚が多数観測されたり、挙げ句の果てにいつのまにやら大掛かりな農業生産プラントが複数稼働してるのが確認されたりと人と、実のところ人と大差ない、或いは人を越えた技術力を有している模様でもあります】
「うっわぁ・・・・・・マジかよ・・・本土の
【その辺は大丈夫だと祈りたいところですが、いかんせん調査内容が内容ですからね、】
「お前が祈りたいといってる時点で大丈夫じゃない気が半端じゃないがな」
「【蛆虫】の件が
正成は本土で起こったとある事件の事を思い出しつつ、腹に手を当てて露骨に痛がる素振りを見せた、しかし、何か意を決したのか、直後にトレードマークとも言えた白衣を脱いでリュックの中にしまい、その状態のまま呟いた。
「いざとなったら・・・・・・覚悟は決めとくか。」
【いざとなったら・・・・・・ですか?竜王さんに【第陸級禁忌技術】の組合せ段階ですら本気で止められたのにですか?】
「そうだ、ただでさえ半端じゃない勢いで止められたのにも関わらず、だ」
【まさかお父様、アレ以上の段階の発明品を使用するおつもりですか!?少なくとも参級以上を使ったら間違いなく竜王さん含めた他の艦娘たちや本土の人々からの印象が壊滅的になりますよ!?】
「参級どっこじゃない、最終手段だが状況次第では《AFV》を使用する」
【ちょっと待ってください!いくらお父様相手と言えどそれは容認できません!思い直してください!】
「確かに、私が《AFV》を使用すればほぼ間違いなく【艦娘と深海棲艦両方を全面的に敵に回すことになる】し、【場合によっては創作と訣別することになる】だろうが、いかんせん相手が相手だ」
「竜王と交わした誓約もあるが、ヤツらが関わってるのなら容赦なく破る事になっても構わん!」
【博士!今貴方がこの場で何をのたまっているのかわかっているんですか!】
「スマンなIF、言いたいことはよーくわかる、だが私はこう言わざるを得ない・・・・・・」
「・・・これは確定事項だ!これ以上の反論は聞かん!!」
【そんな・・・わかりました、ですがお父様、後生ですからあまり無理はなさらないでください、いざとなったら私が咎を引き受けるくらいはしますから】
「・・・・・・そんなことが起きないことを願うよ、【あれらの咎】を背負うのは私と友たち位で十分だ、優樹菜にも、子供たちにも、ましてや他の人々にも背負わせるわけにはいかん、コレばっかり私のは下らん我儘だ、引き下がるつもりはない」
「IF、私が本当に間違ってると思ったらば、そのときは殺してでも止めてくれ、正直、私の性分ではそうせんと止められんだろう」
「その時がくれば、創作とアイツは協力する筈だ、まぁそんな事が起きなければそれに越したことはないがね」
「お父様・・・・・・・・・」
鉄の箱に張られた液晶から正成を悲しそうに見つめる虹目のメイド服少女。
彼女はその時、完全に覚悟を決めたと思われる正成の、なんとも返しようがない達観した表情をただ見つめることしかできないのであった。