艦娘の咆哮 ~戦場に咲き誇る桜の風~   作:陣龍

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今回で(ようやっと)起承転結が終了し、対『ドレッドノート』戦へと移行可能になりました。

……さー明後日へと迫りました艦これイベント。恐らく攻略出来ても仕事上祭りが有るので、次話投稿はこれまで以上に不明です。アーケードもやりたいですし…


第三七話  対超兵器『ドレッドノート』戦の準備期間 結

深山提督たちがデパートの駐車場にてチンピラに絡まれて『桜風』の手、いや足?によってぶっ飛ばされた日から二日後。カンカン照りの青空が綺麗なここ東京都千代田区永田町2丁目3−1では、外の熱い熱気とは真逆の凍り付く様な寒気で覆いつくされていた。冷房が効きすぎている訳では無い、単にこの住所の主である男が放つ絶対零度の威圧感からであった。

 

 

「……それで、君たちの言い訳を纏めると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……と、言う事か?」

 

「はっ……はい」

 

「……まあ、公安部に関しては未だに、以前の打撃から抜けきっておりませんからなぁ。確かに不手際である事には違いありませんが、その点に関しては考慮出来なくも無いと思いますが、首相」

 

「……そうだな。一時半壊した人材育成に今なお苦しんでいるのは事実だ。……次回以降は、本当に止めて貰いたいものだ」

 

「……あ……有難うございます」

 

 

 財務大臣の助け舟で出された浅野首相の言葉に対して冷や汗を滝の如く流すスーツ姿の男は、何とか言葉を絞り出した後に退室した。その後、『次は無い』と言う言葉と共に送られた予算増額と、海軍庁や自衛軍からの冷たい視線によって組織としての面目も面子も完璧に丸つぶれな警視庁公安部に怒号染みた訓示が響き渡ったのだが、この話は『桜風』とは大して関係ないために割愛する。

 

 

「……それで、山本長官。()()の様子はどうなっているか?」

 

「深山少将からの報告によれば、特にあの襲撃から変わった行動や発言はしていないようです。今は『ドレッドノート』の事が気にかかっているのでしょう」

 

「……そうか。何かあったら報告してくれ。最悪、私の首が必要ならば……」

 

「総理。……いくらなんでも、その様な言葉は……」

 

「……失言だった。忘れてくれ」

 

 

 駆逐艦『桜風』への襲撃未遂から僅か二日で5年は老け込んだ様に疲れ切った浅野首相の言葉を遮る山本蒼一長官。一国の首相閣下が弱気と言うかとんでもない言葉を発していたが、この場に居る首相の腹心達には首相の心情が理解出来ていた為に、誰も彼もが聞かなかったことにしていた。

 

 

 

 

 

 

 当時打撃を受けて敗走だった日米艦隊を追撃する深海棲艦に前触れも無く割って入り、下手すれば全滅する未来図を書き換えた5隻の駆逐艦娘(始まりの艦娘)は、深海棲艦を追い払って救助活動にて多数の日米海軍人を救出して横須賀に入港した後に、当時の自衛隊、並びに在日米軍によって厳重に保護と言う名の軟禁を受けた。本来存在しない筈の第二次世界大戦ごろの軍艦と、それに乗り込んでいた()()()()()()()()()()()()()と言う突っ込みどころ満載のまるで意味が分からん何か(UMA)に対する対応としては、割と普通と言うより穏当な方だろう。

 

 

 その後『取り敢えず危険性は無い』と判断された末に、監視付きで解放された直後に横須賀の海岸部の空き地に駆逐艦娘にくっついていた妖精さんが勝手に工廠を建立したのが、現在日本や東南アジア各地に存在する鎮守府の始まりである。工廠の艦娘建造、装備開発システムや資源の異常に少ない消費量、そしてワラワラ簡単に増える艦娘に艦艇仕舞い込み機能の存在で当時の自衛隊を含む関係各所の官僚達は、控えめに言ってパニック状態だったが、その艦娘の存在を当時『公務員と国家から国民と民間に!』のスローガンの元、一律で警察や自衛隊含む公務員の削減に移民や入国審査基準の弛緩化によって一年たたずに諜報員だらけでボロボロになった防諜体制では防げずに殆どスルーパス状態で諸外国に渡り、何時もの国家から何時もの通りな威圧を受ける事になってしまっていた。現場は情報隠匿に努力はしていたのだが。

 

 艦娘の情報を知れば知るほど、その特性の破壊力が野放図ともなれば、日本との関係が悪くなっていた国家は恐怖し、可能な限り自身の制御下、そうでなくとも出来る限りの可視化を、日本に対して要求していた。その気になれば艦娘は気に入らない国の沿岸都市に一瞬で戦艦や重巡洋艦(水上要塞)を召喚して艦砲射撃を行い壊滅させる事が可能なのだ。前政権下で施行された『艦娘管理法』も、諸外国に対する配慮と言う点ではある意味間違った物でも無かった。『兵器は確実に管理して野放しにしない』事を明言したのだから、少なくとも日本に文句をつけてきていた一部国家は溜飲を下げる事が出来た。代償に戦局不利や艦娘を()()()()事をマスコミに叩かれた末に政党が壊滅的打撃を受けたが。

 

 

 第二次世界大戦頃の艦娘の装備ですらコレなのだ。一見すればただの綺麗な少女や女性で、一般の人間と見分けは付かない。どんな検査でも普通に通過する。だがその気になれば、艦艇が浮かべる水場、海上限定とはいえ何時でも自身の艦艇をその場に召喚できる。しかも有り得ない程のローコストで。今の時点ですら戦略的、戦術的破壊工作にはもってこいの逸材なのに、『桜風』の存在が艦娘の()()をさらに加速させた。RAMやAH-64D アパッチLB(Apache Longbow)を持った艦娘など、戦力的価値は計り知れないにも程が有る。

 

 

 

「……深海棲艦だけですら頭が痛いと言うのに、この上超兵器などと言う化物と戦うには、今の日本……否、人類にはあの少女(駆逐艦『桜風』)の存在は絶対必須だ」

 

 誰も浅野首相の言葉に口を挟む者はいない。既存の第二次世界大戦時代の装備しか持たない艦娘の能力では、どうあがいても超兵器に対しては一撃入れる事すら至難の業である。現在の政府に『桜風』の存在を深く刻み込んだ『ヴィルベルヴィント』でも、元々の世界では最弱の超兵器と陰口を叩かれた性能と聞いていたが、驚異的な足の速さで好き放題に通常艦娘を蹂躙する事は可能だったはずだ。これから現れる可能性の高い後続の超兵器ともなれば、正直時間稼ぎに成れば奇跡と言える。

 

その為に、駆逐艦『桜風』の協力が絶対必須なのだが……。そのチンピラが『桜風』を襲撃しようとした時の『桜風』の対応が、深山少将によって伝えられた上層部に破壊的な衝撃を与えていた。具体的には、書記や秘書は全て外された上に首相の本当の腹心だけにこの情報が伝えられ、緘口令が敷かれたくらいに。

 

 

「……()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う事は、つまりは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……と、言う事でも有りますからなぁ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事は、つい先日、首相が国会で言った通りだが、この法則は彼女にだけ通用しない。……下手をすれば、彼女にこの国に見切りを付けられて見捨てられるだろう。いや最悪の場合、彼女に日本が攻撃…」

 

「っ、それだけは、最後だけは有り得ないと深山少将は断言しています!」

 

「……前者に関しては、否定していないのだな。山本長官」

 

「……まあ、はい。彼女の生きた世界と、今我々が生きている世界は違います。……自身の母国ですらどうでも良いと考えて動く様な人間が居るのです。縁も所縁も無い完全な他国に身を寄せたとして、その国から手酷い扱いを受ければ、余程の聖人でなければ失望して見捨てるのが普通です」

 

 

 駆逐艦『桜風』は異世界で建造され、自沈処分された艦娘である。その為か、今回の襲撃事件では提督に明確に指示される前にチンピラに対してスチール缶を蹴り飛ばして攻撃した。以前深山艦隊の那珂のコンサート中に投石を受けた上にライブ会場をぶち壊すデモ部隊の突入を受けたが、那珂は逃げるだけで反撃はしなかった。一般的な艦娘は那珂の様に、人類から攻撃されても逃げはすれど反撃はしない。本能なのか何なのか、絶対しないように刷り込まれている。だが、『桜風』にはそんな制約など一切ない事が、今回の事件で判明した。今の日本によって『桜風』にかけられた首輪は、実質深山少将とその艦娘の関係しか無い。その気になれば、『桜風』は命令無く何処へでも行こうと思えば行けるのだ。

 

 

 

「山本長官」

 

「はっ」

 

「……駆逐艦『桜風』、それに彼女の友人たちに()()()、と……。そう言っておいてくれ」

 

 口先は兎も角やっている事は効力が殆ど無い事実上の無為無策な状態だった前政権から政権を奪取して以降、日本国史上でも元寇や第二次世界大戦頃に匹敵するか凌駕するであろう国難に正面切って立ち向かっている男の言葉や姿は、数年前と比べてもくたびれている様に、山本長官は思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 永田町にて最近胃薬等の消耗が激しくなりつつある男達が話し合っていた日の夜。その男達の胃痛や毛根破壊の原因である一人の少女は、自身が身を寄せている深山艦隊の艦娘宿舎の屋上に来ていた。同室の陽炎や不知火、黒潮には何も言わず、熟睡している三人を起こさない様にこっそりと抜け出していた。

 

 

 

――――もうしばらくで、『ドレッドノート』との決戦する日が来る。……結局、あの買い物の後は殆ど休養日に回されちゃったなぁ……

 

 

 日本海軍伝統の銀蝿など現在ではただの窃盗でしか無いのでするわけも無く、以前黒潮に「親善の記念や」の一言と共にプレゼントされてそのままだった日本酒と御猪口を持ち込み、月見酒と洒落込んでいた。因みに『桜風』が暴走するスイッチは()()()()()()()()()()()()であり、ほんの少しずつ飲用するのなら問題は見られない。そうなる前に飲むのをやめるからだ。

 

 

――――……結局開発でも対戦ヘリ以外対して良い物出来なかったし、最終的な武装は『RAM』と『40㎜4連装機銃』をいくらか下して『5連装新型対潜誘導魚雷』を二基追加した程度。……不安しか無い

 

 

 後部主砲二基を前部に背負い式に移設し、船体を埋め尽くす対空火器をある程度まで削減し、空いたスペースに『5連装新型対潜誘導魚雷』を二基捻じ込む。防御装甲は速度重視の為にそのままであったが、この火力でも満足等していない『桜風』であった。因みに『5連装新型対潜誘導魚雷』は、硫黄島沖大演習で陽炎が搭載していた物である。

 

 

 

――――……まあどちらにしても、逃げると言う選択なんて端から無いし、後は突撃してから流れに任せてどうにかする。うん、何時も通り、何も問題無い

 

 

「…………隣、良いかしら?」

 

「問題無いよ……霞」

 

 屋上のベンチに座り、手酌でぐいぐい飲み干す『桜風』に銀髪サイドテールの髪形をした少女の声が投げかけられる。朝潮型駆逐艦の10番艦、そして朝潮型駆逐艦として一番最後まで生き残り、沈んだ駆逐艦である。

 

 

 

「…………もう一度聞くわ。……アンタ、一隻で行く気?」

 

「当然。あ、この御猪口使って?注ぐから」

 

「え、あ……ありが、とう」

 

 

 深刻そうな表情で語りかけた霞を他所に、『桜風』は能天気な表情で霞に御猪口を渡して酌をする。いきなり機先を制された霞が手渡された御猪口に注がれる酒と『桜風』を注視するが「はい、どうぞ」の『桜風』の一言に、軽く頭を下げて無言で呷った。

 

 

「……結構、美味しいわね」

 

「黒潮がくれたんだ」

 

「……そう。意外と良い趣味しているじゃない」

 

 

 ポツポツと話す霞と共に、『桜風』は月を見ながら日本酒を飲み続ける。今の月は満月よりやや欠けているが、『ドレッドノート』と交戦する予定日には満月になる事であろう。夜間に戦う訳ではないが。

 

 

「……『桜風』」

 

「何、霞?」

 

 

 そうして少し時間が経ってから、霞はとうとう意を決して『桜風』に対して本題を切り出した。

 

 

「対『ドレッドノート』戦、私もアンタと行くわ!」

 

「却下」

 

「……どうして?」

 

 

――――……アレ?霞って、こんな風に説明も無しに否定されるのが大嫌いっていう話じゃ……?

 

 

 そんな心中の疑問を他所に、『桜風』は霞を『ドレッドノート』戦に連れて行かない理由を、もう一度手酌で酒を呷ってから語り出す。因みにこの『桜風』の霞情報は、深山艦隊のこれまでの戦闘詳報を読み漁って知った情報である。某敏腕美少女新聞記者からの情報は一切受けていない。

 

 

「対超兵器戦の場合、この前の演習の時みたいに物見遊山気分で非戦闘員を連れて行ける様な戦闘になる可能性は零。だから、戦闘海域外で霞たちは見ていて欲しい」

 

「……その言葉、本当ね?()()()()()()()()()()()()って」

 

 

――――ん?……雲行き、何かおかしくない?

 

 

 コクンと頷きつつも、霞の真剣な眼差しと言葉に疑問を抱く『桜風』。その疑問は、正しく『してやったり』と言わんばかりの黒く小さい笑みを浮かべた霞の肩に、見覚えのある妖精さんが飛び乗った事で直ぐに氷解する事になる。

 

 

「…………まさか、霞。…………本気?」

 

「当たり前よ。……覚悟は完了してる。後は、行くだけ!やるわ!」

 

『許してやってくれねえかな、艦長?霞ちゃんのパッシブソナーでの聴音能力、本気で使えるレベルなんだわ』

 

 

 決意の炎を目に宿らせた霞の肩に乗る、苦笑いした表情の駆逐艦『桜風』のソナー員を纏める水雷妖精。艦長である『桜風』の鋭い目線に対してそう答えた以上、この妖精さんの言葉は嘘では無い。

 

 

「……良いでしょう。……が、深山提督には霞から話を通して、許可を……」

 

「問題無いわ。もう許可は取り付けているから」

 

『後艦内の妖精さんズも既にこの件は了承済みです』

 

 

 明日にでも書類は来る筈よ。そう事も無げに言い放った朝潮型10番艦に寝耳に水の事を言った水雷妖精。あの太平洋戦争で発生した日本海軍の組織としてのどす黒い闇、そして劣化の一途を辿る過酷な戦場を戦い抜いた彼女のため込んだ経験は、基本的に()()()()()()()()()()()()()()()はマトモな上司や戦況に恵まれた『桜風』に無い物だった。つまりは裏の手回し等の手腕に劣っていると言う事である。そもそも艦としての年季が違う。

 

 

 

「…………ああーもう!分かった、分かったわよ!駆逐艦娘の霞!乗艦を許可します!そしてお酒飲もう!艦長命令!」

 

『おおー!艦長有難うございます!』

 

「……水雷妖精に誰が飲ますと言いましたか?」

 

『ファ!?そ、そんなご無体な!?』

 

「……ええ、頂くわ。……フフッ」

 

 

――――……やっぱり、一方的な先入観は良くないわね。……あの時の目は、忘れないと。アレは、()()()()()()()だから

 

 

 

 艦長と水雷妖精がやいのやいのと騒ぐ中、小さい笑みを浮かべながら御猪口を煽る霞。対超兵器対策会議にて直視した『桜風』の異様な価値観、死生観は、ただの気の迷い、何かの間違いでしか無い。そう思い込む事で、『桜風』の恐怖感は抑え込まれた。言葉では死ぬ事を恐れなくとも、自身の命を実際に賭けの代金にするだけでなく、何の恐怖も無く死地に赴く艦娘が居る筈が無い。霞は、今なお『桜風』の事を自身の常識に則って買いかぶり過ぎていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……良き月よのう」

 

 

 日本本土にて夜回り中だった妙高に『桜風』が酒盛りしていたのが発見され、気配を察知して一隻だけ上手く身を隠した霞を他所に「うらぎりものー」の『桜風』の悲鳴が艦娘宿舎の屋上に木霊して、妙高からの有りがたい一撃に『桜風』が沈んでいた頃、此処南洋の海でも、超巨大潜水艦『ドレッドノート』が、自身の艦艇にて月見酒をしていた。

 

 

「……艦長は、どう思うかのう?我が、この世界でやった事に」

 

 そう言いながら、此方も漆塗りの杯を手酌で呷る『ドレッドノート』。『桜風』との違いは、この場に存在するのは『ドレッドノート』ただ一隻であると言う事。そして、二人分のお膳に料理が作られている事だった。

 

 

「……我は、勇気有る者。じゃが、この世界でやって来た事は、ただ逃げていただけじゃな……」

 

 

 そう自嘲する『ドレッドノート』。この世界に来て目覚めた当初、乗員が誰も居ない事や、完全に周波数全てがオープン状態でも今までロクに稼働しなかった電子機器から流れ込む大量の情報に、『ドレッドノート』はパニックになっていた。

 

 

――――自身は沈んだはず、なのに何故人間の身体を持っている?今大量に流れ込んでいる電波は一体どういうことだ?そもそも何故乗員が誰も居ない?なんで?どうして?

 

 

 転移したばかりの『桜風』には、妖精さんと言う心強い存在(雑に積まれた二等身饅頭の山)が居たのに対して、『ドレッドノート』には何も無かった。誰も想定などしていないこの環境化に置いて、双方にとって不運極まりない事に、アメリカ本土から欧州諸国に向けて進発していた米英合同輸送艦隊と遭遇。よくよく観察すると自身の知っている米英艦隊とは似ても似つかない艦艇が混ざって居たりしたのだが、怒涛の展開でそんな考察をする余裕が掻き消えていた『ドレッドノート』は、事前にウィルキア帝国海軍から与えられた通商破壊命令に従って攻撃を開始。

 

 

 

「……我にとって、最大の汚点じゃな……。何故、何故あの時攻撃してしまったのか、何故、あの時救助活動せずに逃げ出してしまったのか、何故、もっと慎重にならんかったのか……」

 

 

 超兵器機関の放つ異常なノイズによる通信、索敵妨害、そして『ドレッドノート』自体が持つハイスペックな戦闘力、止めに完璧な真夜中で名実ともに完全に奇襲された事も有って、米英艦隊は多数の艦娘、通常艦艇を含む戦力を戦力外とされた。応急修理要員を載せていた物が多かったアメリカ海軍の艦娘での轟沈艦は比較的少なかったし、38.1㎝砲も威力過大で現代の駆逐艦の装甲を貫通して爆発した為に艦砲で撃沈された現代駆逐艦は極めて少なかったりしていたが、撃沈率74%と言う異常な数字の前では大した意味は無かった。

 

 

 その後『ドレッドノート』は潜水艦のセオリーとして、重量物と認識した多数の救難ボートを艦内から放棄して戦闘海域から逃走した。乗り込むべき乗員も居ないのだから当たり前である。それに、この逃走時点での『ドレッドノート』は、今いる世界は()()()()と誤解していたのだから、すぐに追撃の艦が多数来ると考えていた。それが勘違いで有り、この世界が別世界であると気付いたのは相当後だったのであるが。

 

 

 

「……そして、我の故国ウィルキア帝国が存在しない事を信じられずに太平洋からウィルキア……この世界で言うウラジオストクとやらに向かい……あの艦(駆逐艦『桜風』)と出会った」

 

 

――――救い様の無い臆病者で、屑の極み以外の何物でもないな、我は

 

 

 酒に酔って居る為か、自身の奥底に無理矢理押し込んでいた感情が沸々と湧き出てくる『ドレッドノート』。今いるこの世界で行った行動は、全て『ドレッドノート』自身にかかってくる。母国であるウィルキア帝国が存在しないのだから当然である。そして、本来であれば『ドレッドノート』は誤って攻撃し、多数の人員を殺傷したアメリカ合衆国やイギリス連合王国へと出頭し、処罰を受けるのが筋である。だが『ドレッドノート』は駆逐艦『桜風』と決闘する道を選んだ。自身の()()()()()()()()()と言う欲望に負け、筋を通さない。『勇気有る者』に有るまじき行動であるが、心底ではこの行動を喜んでいる自身には嫌悪するしか無かった。

 

 

 

 

 

「……じゃが、最早既に賽は投げられた。艦長たちに殴られるのは、沈められてからのお楽しみじゃな」

 

 『ドレッドノート』の艦長は、先祖がロシア貴族だったためか『正面切っての誇り有る戦い』と言う物を先天性的に好んでいた。奇襲戦法が常套手段の通常潜水艦だと先ず相性的に有り得ない配置なのだが、配属先の『ドレッドノート』の場合は()()()()とも言うべき装甲や武装を誇る超兵器である。単独行動で艦隊に殴り込んだりする事が求められる『ドレッドノート』とは意外と相性が良かった。超兵器機関を稼働させていればノイズで必然的に戦いのゴングを鳴らしてしまうのだから、奇襲も何も有ったものでない。

 

 

 『一対一での決闘』自体には、『ドレッドノート』の艦長も賛同はするだろう。だがそれに至る経緯に対しては多分認める事は無いだろう。『全てを清算してからやれ』と言うのが目に見えている。

 

 

 

――――すまぬのう、艦長。そして乗員の皆。『ドレッドノート』の依代が、この様な惰弱な女子と成って。……じゃが、せめてあの駆逐艦(『桜風』)との海戦だけは、全力を持ってやらせてもらうでな

 

 

 

 

 そう心に決めた『ドレッドノート』は、この世界に亡き艦長や乗員たちへの膳を、少しでも艦長や乗員全て(みんな)に届くことを願い、海へと捧げる。世界が違う上に、自身が沈んだ場所からも何千キロも離れた場所での捧げ物が到底届くとは思えないが、やらないよりはやったほうが断然確率は高い。やらなければ、届く確率は零なのだから。

 

 

「……さて、我、は………」

 

 そして捧げ終わった『ドレッドノート』は、自身が使っていた漆塗りの杯に、最後の一杯を並々と注ぎ、一息に飲み干し……

 

 

「……天地天命御照覧有れ、愚かしく醜くも武人足らんと足掻く、異界の軍艦の生き様を」

 

 

 自身の杯を、膳に叩き付けて砕く。

 

 

「……さて、では寝るか。身体的不調を抱えて『桜風』(彼女)と戦うのは、無礼極まる」

 

 

 そう呟いて、膳を片付けて艦内に戻る『ドレッドノート』。既に彼女の中には、先ほどまでのウザウザとした余計な感情や思考は存在していない。軍艦として、戦士として、誇り有る武人として戦う為の『ドレッドノート』へと、戻っていった。

 

 

 

 

 ……最後に行った、自身の杯砕き。それは、ウィルキアの同盟国であった日本に伝わる古い風習の一つ。

 

 

 

 

 

 死地に赴く、別れの盃。『ドレッドノート』は、『桜風』と交戦して生きて帰るつもりなど、毛頭無かった。




終わった……(今の所)終わったぜ…………(本題に関係ない政治系裏話が)真っ白にな…………

と言う訳で、しばらくは艦これイベントと仕事関係で次回投稿は冒頭で言った通り未定です。気が向いたら活動報告に何かを投げ書くかも知れませんけど…
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