艦娘の咆哮 ~戦場に咲き誇る桜の風~   作:陣龍

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秋刀魚釣りの季節ですが、自分は秋刀魚と共に松輪を釣り上げたいと思って近海の潜水艦を無数に海底送りにしている最中に御座います。ゲーム世界の日本は大丈夫なのだろうか

まあ一応択捉、国後、占守の三隻が居るんで何とかなると言えばそうなんですが


第五十話  舞台の幕は開かれた(The start of the dramatic stage)

 北アメリカ大陸西太平洋。半世紀以上の昔、この海にはドイツ海軍(Kriegsmarine)が放つ無数のU-ボートによる鯨食い(通商破壊)に対する、イギリス王立海軍(Royal Navy)アメリカ海軍(United States Navy)との激闘が繰り広げられ、大小様々な物語が生まれては消えていった。

 

 

 

「……来ないな、迎撃(The interception that does not come)

 

来ない方が良いだろ(You should not come)

 

そりゃそうだが(It is so)…」

 

 

 そしてその幾多のドラマに加えて多数の物資や人間を飲み込んだ21世紀初頭の大西洋上空を、全身を黒く塗装され、極めて特徴的な人類最高の戦略偵察機であるSR-71(Blackbird)が、同じく黒塗りステルス塗装が施されたF-22を御供として飛行していた。

 

 

上層部からいきなり命令が来た時は(When an order came from the upper echelon suddenly)一体何の冗談だと思ったが(I thought that on earth it was any joke, but)……」

 

ウチの企業や整備兵(Do not do good for our company and maintenance soldier)本当に良い仕事してくれるな(the truth work)少し前まで保管状態だったとは(It is good movement not to think that)思えない動きの良さだ(safekeeping was in a state a while ago)機器も最新の物に更新されているし(The apparatus is updated by the latest thing)

 

 

 SR-71に搭乗するアメリカ空軍(United States Air Force)の操縦士が呟いた様に、本来このSR-71はその特殊性ゆえの運用コストの高さと偵察衛星の発達により退役、モスボール処置で保管されていた物をアメリカ航空企業を総動員しての徹底改造によって、原型機より遥かに性能向上した上で再就役した代物である。

 

 

コレだけでなく(Modernization repair finishes not only)護衛のF-22も(this but also F-22)近代化改修されてるんだったっけな(of the guards)……」

 

ああ(Oh)。……知ってるか(Do you know it)この改修をした航空企業(I compete for this aviation company)先を争って(point that I repaired and seem to)自社の秘匿技術どころか(take even the fund let alone a)資金すらも持ち出しているそうだぜ(company's concealment technology)

 

どうしてそんな事したんだろうな、彼らは(They who would do such a thing that was why)……」

 

人参でもぶら下げられたんじゃねーの(Was even a carrot hung)?」

 

どんな餌ぶら下げられたら(If it is hung what kind of bait)自分のキングどころか(I reveal even a joker)ジョーカーすら曝け出すんだよ(let alone one's King)

 

 

 本来何の調整も無く投げつけられた仕事と言うのは嫌われる物である。特に現在は海上交通網が壊滅している為に、各種航空機の需要が極めて大きいのだから猶更でもある。だが唐突に下された命令に一切反発するどころか先を争って自社の全技術を投入する自国企業の姿に、整備兵曰く空恐ろしい物を感じざる負えなかったという。本土攻撃の可能性を知らされたとは言え、それに対する義務心等とはまた違った、どこか飢えた狼の様な姿勢であったそうな。

 

 

 

まあ(Oh)そんな事はどうでも良い(as for such a thing)仕事だ仕事(We return to work)……。と思ったら(If think so)早速だ(at once)

 

「……信じられねぇ(I can't believe it)……こんなのが(Can this really)本当に海に浮かんでいられるのか(float in the sea)……?」

 

残念ながら、紛れもない現実だ(Unfortunately it is obvious reality)。……迎撃機も飛ばさずに(I lick the interceptor with the cruise)悠然と遊弋とは(in a grand manner without spurting)舐め腐りやがって(and be corrupt)……!」

 

 

 SR-71の搭載した索敵装置が、通常想定されているよりも遥かに過大な反応を、そして映像からも既存の人類文明では先ず持って建造、保有する事は有り得ない、超巨大双胴強襲揚陸艦の存在を明確に突き付けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……物足りないな」

 

 物鬱げな表情と声色で呟く、白銀の長身美女。SR-71が上空を飛行している事等全く気にせず、自身が今の今まで沈めて来た多数の艦艇画像を繰り返し眺めていた。

 

 

Royal Navy(英国海軍)は全く持って期待外れ、深海棲艦と言う連中も名前負けする弱小艦ばかり。……物足りん。全く持って、ありとあらゆる物全てが全く足りん」

 

 

 深い溜息を吐く、超巨大双胴強襲揚陸艦の主たる長身美女……デュアルクレイター。現在ある程度勢力を衰えさせたとは言え、それでもそれなりの勢力を保っている大型ハリケーン『アレクシア』がアメリカ東海岸海域に存在している為にそれなりに波は荒れているのだが、大和型戦艦よりも遥かに大きい船体であるデュアルクレイターが揺れる事は無い。

 

 

 

「米軍の戦力集結を待つ間、基礎性能はそこそこある奴らであれば、ある程度は楽しめると思ったのだが」

 

 

 そう言いながら、目の前のスクリーンを操作し、映像を呼び出すデュアルクレイター。

 

 

「……ただただ突撃する他脳の無い、武装だけ誂えた獣程度の連中だったとはな」

 

 

 

 

 映し出された映像は、海中。機雷堰などで強固に防護された諸島攻略も運用目標とされていた関係上、デュアルクレイターに搭載されていた海中偵察カメラを用いて確認された映像には、無数の軍艦()()()()の存在が確認されていた。

 

 

 

 

 

 

 ブリテン島とフランス本土の海軍戦力並びに港湾施設、そして序の市街地攻撃にて英仏に対して軍民官問わずに甚大な被害を与えた後に悠々と大西洋へと離脱したデュアルクレイターは、ハリケーン『アレクシア』が米国本土東海岸近辺を北上している間、大西洋に蔓延る深海棲艦の群れを蹂躙していた。

 

 

 当然、人類に対する贖罪の為の攻撃だとか、そう言った心理は欠片も無い。目的は、深海棲艦と呼称される各艦艇の性能チェックであり、自身の持つ全ての武装の能力の再確認。それだけであった。

 

 

 

 

「だが……しかし……ククッ」

 

 

 ……()()()()()()()だった。

 

 

 

「ハハッ……。想像もしたことが無かったな。生まれて初めての体験だ。神がこの世に居るのならば、私は幾らでも祈って感謝でもしてやろう。望むのならば股でも何でも開いてやる」

 

 

 欧州軍に対する一方的な奇襲攻撃と民間施設を含む無差別攻撃、そして大西洋上で無数の深海棲艦を、自身の持つあらゆる武装で完膚なきまでに蹂躙し続けた事により生まれた感情。

 

 

「……楽しい!ハハッ、こんなに一方的に叩き潰す事が楽しいなんて!最高だ、こんな、こんな楽しい事がこの世にあるなんて!!」

 

 

 無機質な戦闘指揮所にて一人、心底楽しそうに呵々大笑する白銀の美女。本来は軍人らしい超然たる性格であった筈なのだが、この世界に現れ、様々な形で情報収集を続けた結果、異常なまでの変貌を遂げていた。

 

 

「ハハッ、ハハッ……全く。私は不要な事を考え過ぎていたな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから、私の思うが儘に生きれば良いのだ。そうだそれで良いのだ!」

 

 

 血を吐くような絶叫と共に、壊れた様な大きな笑い声をCICに響かせるデュアルクレイター。事はある種単純であった。司令官が座乗する巡洋戦艦基幹の艦隊を蹂躙した直後に、最弱で有る筈の駆逐艦によって叩き沈められた直後に、原因不明ながらに完全なる無傷の状態で海上に遊弋しており、しかもこれまた全くの原因不明で自身も人としての肉体を、艦を指揮する能力と共に保持しており、最後に傍受した情報だけでは信じられずにイギリスを強襲してまで得た情報全ては、自身の故郷がこの世界に存在しない事を明示していた。

 

 

「ウィルキア帝国が、ウィルキア解放軍が存在しない?!それがどうした、それがどうした!?そんな、そんな事が……超兵器『デュアルクレイター』に関係など無い!」

 

 

 

 軍人らしい超然たる性格という事は、この女性(デュアルクレイター)の場合は即ち自身の寄って立つ柱が()()以外には存在しない事の裏返しでもある。そして精神的強さと自身の持つ武力が比例する事は先ず有り得ない。特に、一度足りとて精神鍛錬などした事のない者ならば、猶更である。

 

 

「次は……そうか、最早私に命令を下す母国はもう居ないのだ。通信で指示を仰いだところで、何の意味も無い。何をやっているんだ、ハハハ……!」

 

 

 

 事実誤認から誤って無関係の米海軍に攻撃を仕掛けたドレッドノートは、現実への理解が追い付かないままに、一縷の望みに賭けてこの世界に存在しないウィルキアを探して南太平洋まで流れた。アメリカ本土西海岸へ艦砲射撃を仕掛けたヴィルベルヴィントは、何処か曖昧な精神状態のまま行動していた。『桜風』はそもそも()を済ませていた上にそんな事(肉体を持った自己の存在と母国の消失)は深刻に考える事等も無く簡単に受け入れていた。

 

 

「……さて、どうすれば良いのだか……。こういう場合の対処は、インプットなどされていないから、私が判断するしか無いのだが……どうすれば……どうすれば、良いのだ……?」

 

 

 三者三様。特に駆逐艦『桜風』(超特級の例外事項)とは違って目の前の現実を受け入れる事も受け流す事も出来ずに寄って立つ柱が存在しない事実に打ちのめされた彼女の、外見年齢や口調からは程遠い程度に幼く、脆い心が砕け散るには、十分過ぎた。

 

 

 

 

「……そうだな……この世界でも、アメリカは有数の艦隊戦力を保有している様だな。ならば、やる事は決まった」

 

 

 脳内にて決めた言葉を紡いだ直後より、超巨大強襲揚陸艦『デュアルクレイター』はその巨体を揺らめかし、大海原を歩み出す。

 

 

「さて……世界帝国の守り人たる合衆国海軍は、一体どれだけ足掻いてくれるのだろうか。楽しみだ」

 

 

 

 針路、アメリカ合衆国本土東海岸。薄ら笑いを浮かべる『デュアルクレイター』が内心一体何を思っているのか……それを、推し量る事は出来ない。当の本人も、分かってるのかも分からないだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……想像以上の好待遇ね」

 

「同感です、提督。恐らく配備されたばかりの新型輸送機を、わざわざ大和たちの為に寄越すとは……」

 

「見た感じだと超音速型じゃ無いんですね、この輸送機。もっと性能向上出来る筈なのに何でなのかな」

 

「音速による衝撃波とか色々有ったのよ、『桜風』……向こうも困ってるから、余りそう言う事言わないの」

 

「あっはい。陽炎がそう言うなら」

 

 

 日本国東京都。深海棲艦の出現後も自衛隊時代から大して変わらずに存在している、航空自衛軍と在日アメリカ空軍の共用基地たる横田飛行場。本来如何に深海棲艦に対する唯一の友好的存在である提督と艦娘であろうともそう易々と侵入する事は不可能である筈のこの場所には、一人の提督(深山満理奈)とその護衛の駆逐艦娘(不知火)高速戦艦娘(金剛)対超兵器部(『桜風』・大和・長門・)隊の七隻(加賀・瑞鶴・青葉・陽炎)、それと多数の米軍人が居た。

 

 

「因みに『桜風』の世界には、こういう輸送機はどんな風に開発されてたの?」

 

「えっと、少なくとも落とされない様に頑丈にするのが前提条件だったね。具体的には対空ミサイル五、六発や10㎝砲10発程度じゃ平然と飛べる位。で、それから…」

 

「……うむ、『桜風』。そう言った話は機内に入ってからにするか」

 

「そうですねー。ただでさえ技術者さんが目の色変えてますから、絡まれない間に早く行った方が良さそうです」

 

「あっはい。すみません、長門さん。青葉さん」

 

 

 彼女達の前に存在する双発大型輸送機・KC-46。深海棲艦の出現や激戦の末のハワイ諸島陥落、そして海上通商路の寸断常態化等の様々な混乱によって各種新型機の開発と輸送機の配備は急激に低速化していたが、その中でも大陸間無着陸飛行可能な大型輸送機の開発だけは精力的に進められていた。無数の水上艦や潜水艦が跋扈する海上を低速の輸送艦を多数引き連れて突破するよりも、高速輸送機の方が比較的安全なのは自明の理である。コストが酷い事になるが。

 

 そんな風に色々と四苦八苦している最中に突如出現したのは、異世界のテクノロジーを保有する、人類に対して極めて強力的かつ従順な一隻の駆逐艦娘『桜風』。今回アメリカ本土防衛戦に参入するに及び、『桜風』の希望を通す交換条件として日米政府で極秘に行われた交渉と対話の結果、『桜風』達が乗り込むC-46にはアメリカから多数の学者や技師が来日していた。

 

 

「でもまさか此方の()()について()()してくれるって明言と確約してくれるとは思いませんでしたね。言うだけ言ってみる物です」

 

「それ遠回しに()()()()()()()()()()()()()()()()()()って言ってる様な物でしょ……聞いた時は頭抱えたわよ、全く」

 

「そこまで深刻に考える必要もないでしょ、陽炎。此方は要望を日本政府を通じて言っただけ。交渉して責任持つのは上の方だから、『桜風』達には何も無いわよ。多分ね」

 

「提督は豪胆過ぎるぞ、幾ら何でも……」

 

 

 『桜風』の要望は言葉の綾を取っ払えば事実上の()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その交換条件は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その為に『桜風』の戦闘映像を見て血相を変えて来日し、少しでも異世界の話を目の前に居る『桜風』から話を聞こうと目の色を変えて押し寄せる技術者や科学者を必死に抑制する在日米軍人の後ろ姿は、無駄にのほほんとしている当事者(『桜風』)殆ど気にしても居ない淑女(深山満理奈提督)除きとても頼もしく思える姿であった。

 

 

「……あ、そうだ。コレ配っておきますね」

 

「……すまない、このインカムは一体……?」

 

 

 そうした最中、思い出したように皆にワイヤレスのインカムを配り出す『桜風』。片耳に掛けるタイプのインカムであり、しかもとても軽くて耳に掛けても殆ど違和感を感じさせない良質な設計の代物であった。素材に関しては少し触った程度では良く分からない物だったが。

 

 

「自動翻訳機です。普通に日本語喋るだけで英語に翻訳されますし、相手側の英語も日本語に聞こえる様になってます。こうした方が戦闘中でも言語の戸惑いとか無くなりますよね?翻訳のデータリソースは私のCPU使ってますんで負荷とかは気にしなくて大丈夫です」

 

 

 事も無げにサラッとそんな事を言い残し、配り終えたら苦笑いする深山提督とため息を吐く陽炎と不知火の姉妹艦コンビ、インカムを持って固まる深山艦隊対超兵器部隊の面々を残してKC-46のタラップを駆け上がる『桜風』。相変わらず紺色のジーンズと灰色のスウェットと言う色気の欠片も無い地味な単色衣装を纏ったその後ろ姿は、完全に海外旅行を楽しみにしていた少女の雰囲気がありありと滲み出ていた。

 

 

 

「本当、あの娘と居ると平穏や退屈と言う概念とは無縁ね」

 

「その分、私達の胃などにダメージが飛び込んでくるけんですけどね……」

 

「大丈夫です。その内きっと慣れます、陽炎姉さん」

 

 そんな感想を残しつつ『桜風』に続いてKC-46に乗り込む深山提督と陽炎、不知火の後ろを慌ててついて行く深山艦隊の艦娘達。漏れ聞こえた自動翻訳機の言葉を目敏く聞き取った科学者が先よりも増して屈強な米兵を薙ぎ倒す勢いで攻め寄せようとするのを死ぬ気で押しとどめる米兵との無意味に巧妙かつ熱い激闘が繰り広げられているのを尻目に、多種多様な少女と女性(米国の命運を握る女性指揮官と軍艦)を載せたKC-46は動き出す。

 

 

 

「予定では……ニューヨークに到着するのは、現地時間だと昼過ぎよね?」

 

「そうなりますね、大和さん。……先行して送った指示に、従ってくれてると良いんですけど」

 

「そう言えば、二式大艇をアンカレッジ経由でアメリカ東海岸に送ってたね。……また無茶な事しようってつもりじゃ……」

 

「陽炎、陽炎。お願いだからその握り拳収めて。『桜風』またタンコブの団子山作りたくないから」

 

「待ちなさいそんな事私は一度もしてないわよ?!」

 

 

 機外では嘆きの声無き叫びを上げ続ける母国の一部科学者や技術者を呆れと鬱陶しさとその他諸々の感情満載の表情をした米兵と御同輩が横田飛行場の外へと引き摺り出しているのを他所に、KC-46に乗り込んだ乙女たちはやいのやいのと騒ぎ立てる。

 

 

「Hu-……本当に、Native級のEnglishとして聞こえるぜ」

 

「全く、コイツはAmazingだぜ。なあ一個くれないか?」

 

「えーっと、青葉に言われましても。それに、コレって『桜風』さんの傍に居ないと効力ないそうですよ?」

 

「Oh、My God……それでは、ロシアの少女を口説けに行けないな、HAHAHA!」

 

「MP、Coming now!変態が此処にいるぞ!」

 

「Hey、Stop Stop Stop!Joke!It's American Joke!」

 

「……『桜風』。一体幾つ、こういう革命的な爆弾を溜め込んでいるんだ」

 

「長門さん。『桜風』さんの存在全てが革命的爆弾ですから、心配はもう手遅れです」

 

 

 面子云々以前に当然の義務と言う事で護衛として同乗していたアメリカ兵の英語が全く違和感なく聴こえ、自分たちの言葉も何のずれも無く通じている事に、相手の気持ちとノリの良いアメリカンとの会話を楽しみつつも、最早何回目か分からない溜息と遠い目をする艦娘でも大人勢の二隻。因みに中途半端に英語になっているのは相手が何の言語を話しているのか分かる為、だと言う。

 

 

 

 

「私の……私のEnglishの存在意義ガー……テートクー……」

 

「はいはい。良い娘だから泣かないの」

 

「司令官。暫くの間『桜風』にかかりきりでしたから、移動中は金剛さんの充電器になって下さい」

 

「もしかして不知火、あんまり他の娘と最近関わって無かった事。怒ってる?」

 

「……不知火に落ち度でも?」

 

「テートクー……コッチ向いてクダサーイ……」

 

「はいはい。よしよし、頼りにしてるから」

 

 

 母国の同盟国とは言え、他国へと突入するのに何の気負った様子も無く……と言うより、それどころでなくおいおい泣く栗毛電探風カチューシャの女の子を慰める大和撫子をジト目で眺める桃髪少女がやいのやいの騒ぐ、これから戦場に飛び込む緊張感も何もない気の抜けた光景。原因は艦娘の中でも提督大好き勢筆頭の金剛を相当な期間を放置していた深山提督に責任があるのだが。

 

 

 

「そろそろね、瑞鶴」

 

「うん、そうだけど……加賀さん」

 

「……何?」

 

「手を、強く握り過ぎててちょっと痛いです……」

 

「……御免なさい。暫くだけ……」

 

「まあ、私は大丈夫ですけど……」

 

「……ありがとう」

 

 

 

 一方では、両眼を閉じて表情こそ平静なポニーテール美女が、隣に座っているツインテール美女の左手を握り締め、よくよく注視すればほんの僅かな微細振動が見えている。要は他者の操る航空機に乗る事に大きな不安を抱いているから行う自衛行動なのだが、ツインテール美女は予想外の先輩の行動と感謝の言葉に手で覆ったうえで茹蛸の様な顔を背けている。つまりは普段では決して見る事の出来ない先輩の姿に悶えていた。着陸後はきっと記憶消去の為に云万馬力の全力で絞め落されるだろうが。

 

 

 

 

「……大丈夫か、本当に……」

 

「I didn't know that。俺らはorderに従うだけだ」

 

「だがな、彼女達にStatesを託すんだぞ……」

 

「信じるしかないだろう。Battlefieldに行けばきっと変わるさ……Maybe so」

 

 

 

 そんな賑やかな機体の中には日本の艦娘と盛り上がってるお調子者兵士とは別に、多種多様な女子特有の自由な会話の中に飛び込めずにいた真面目属性の護衛兵士が、小声でこれからの先行きへの不安を口にし合っていた。超兵器とか言う化物相手に正面から戦える艦娘と事前に聞いていて、歴戦の戦士と言う姿を予想して居たら現れたのは、全員優し気だったり穏やかだったり泣いていたりと、自分達の勝手な予想とはかけ離れた女の子だらけだったのだから。

 

 

「……信用出来ないな。あんなkidsは」

 

「Do not say。俺達は仕事をするだけだ」

 

 

 しかも、超兵器に対する最重要護衛目標と聞いた娘は、目を輝かせて物珍し気にC-46を見続け、御同輩と楽しそうに話している飾り気無しなJunior high schoolにでも通っていそうな娘と言う、歴戦の戦士の雰囲気とはかけ離れた少女だった。一言言いたくなるのは仕方が無いだろう。

 

 

 

「あ、すみません。ちょっと良いですか?」

 

「What!?」

 

「Oh……OK、What happened?」

 

 

 そうして好き勝手に私語を交わす男二人にいきなり声をかけたのは、二人が交わす話題の渦中にあった当人の『桜風』。噂話をしていたらその本人が前触れなく現れれば誰でも驚くのは当然だろう。この二人も御多分に漏れずに驚いていた為に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事実に気付く事は出来なかった。

 

 

「えっと……私自身に対する悪評と言うか、そう言うのは甘んじて受け入れますけど……」

 

「……Oh?」

 

「What's wrong……?」

 

 

 軽く小首を傾げ、頬を指で軽く掻きながら言いよどむ『桜風』。一体何が有ったのかと、先程の不信感を毛ほど感じさせない態度で応対する護衛のアメリカ人兵士。大人らしい行動である。

 

 

「……もしもの話ですが。……もし、私の友達の悪口を言いよう物ならば」

 

 

 ……そう言った直後、目の前の少女より()が生み出された。

 

 

 

「……What……?!」

 

「……A……a……y、you……?!」

 

 

 龍など存在しない。そんな常識程度、頭では理解していた。理解していたが……目の前には、()()()()()()()()()()()を現出させている少女が居た。先程の色のある苦笑とは打って変わって、無表情に佇んでいるだけの筈の少女。その少女を守る様に、東洋型の龍が冷たい相貌をガタイの良きアメリカ軍人へと向けていた。

 

 

「……私は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何やってるのよこのお馬鹿ーー!?」

 

「うごっぴゃあ?!」

 

 

 その異常な空間が、オレンジ髪の少女が()()()()()を蹴り飛ばす事で掻き消えた。同時に、一生に一度有るか無いかの少女の奇妙過ぎる声と共に『桜風』も吹き飛んでいったが。

 

 

「きゅぅ……」

 

「すみませんすみませんウチの馬鹿娘が本当にすみません!」

 

「O……Oh、Yes?」

 

「N……No problem。OK」

 

 

 突風の様に現れて水のみ鳥の如く頭を下げたと思ったら、目と頭の上のお星さまをグルグル回して伸びている『桜風』を小脇に抱えて来た時と同じく突風の様に去っていった護衛対象の少女。正しく怒涛の如き流れに、アメリカ人兵士達はただただ目を白黒させるしか無かった。同程度の体格の少女を小脇に片手で抱えて何の苦もなく歩いて行った少女のある意味とんでもない後ろ姿にツッコミを入れる暇も無かった。

 

 

 

 

「……取り敢えず、これ以上何か言うのはやめるか」

 

「……そうだな。……と言うか、あの娘は1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を聞き取ってたのか……?」

 

「それを言い出すなら、俺達の目の前に来る時に一切こっちに気付かせなかった事とか……」

 

 

 

 そこまで言った二人は、顔を向け合い一秒だけアイコンタクトを交わし、それ以後自分たちの任務を遂行する事に集中する事にした。この世界には理解出来ない事が山ほどある。その事を本当の意味で理解した以上、理解出来ない事は敬して遠ざけるのが基本なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「……すまない、流石に会話中不意に挟まれる英語は、違和感が強いのだが。変えられないのか?」

 

「説明書を見ると、設定で変えられる見たいですね……あ、出来ました」

 

「ふむ……おお、しっかりと変わったな。ありがとう青葉。私は、こう言う物は苦手でな……」

 

「機能を沢山付け過ぎているせいで説明書も事細かい説明がびっちりですしね。コレ一つで英語やフランス語、ドイツ語スペイン語ロシア語と欧州の主要言語だけでなくて、アラビア語や中国語にも対応可能と言う詰め込み具合ですし」

 

「……無理していないだろうな、『桜風』」

 

「その時は青葉と陽炎さんで制裁してでも止めますから安心してください」

 

 

 

 因みに『桜風』が良かれと思って初期設定としていた会話中英語挟み込み機能(通称:〇ー語仕様)は、余りにも会話中の違和感が強い為に通常の高速翻訳モードへと例外無く変更され、復活してその事を知った『桜風』は飛行機の隅っこで三角座りして落ち込んだりしたのだが、慰め終わるのに暫くの時間を必要としたのは言うまでもない。




順調に主人公の『桜風』が壊れてきていますね。良きかな善きかな。もっとぶっ壊していかなければ(使命感)

後これで日本勢と米国人が会話する時は通常の日本語表記で行ける事になると思います、はい。英語部分は9割以上翻訳サイト依存なのは変わる事は無いでしょうが(遠い目)
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