『それで、何か申し開きは有りますか?』
「有りません・・・」『申し訳ない』『正直スマンかった』
日本では
『・・・良し。それでは、これからは補給が確保される事が確認出来るまで、可能な限り弾薬消費を抑える様に努力する様にお願いしますね。特に砲術科の『RAM』は』
『ハイ、ワカリマシタ。コレカラハ、ココロヲイレカエテ、エイイドリョクスル、ショゾンニゴザイマス、ハイ』
「・・・砲術妖精さん、大丈夫?目が死んだ魚の目になっているけど」
『・・・妖精さんの力関係は基本的に平等であるのですが、この様子ではしばらくの間は砲術科は主計科に対して頭が上がりませんね』
『艦長も、初陣で精神的に高ぶったのは仕方が無いとしても、あれだけのオーバーキルはもう止めてください。弾薬が勿体無いです』
「あ、はい。つい今までの勢いでやってしまったのは反省してます・・・これからは可能な限り自重します・・・」
つい先ほど深海棲艦の精鋭機動部隊を殲滅する戦果を挙げた矢先に、何故こんな『弾薬消費を抑えろ』などと言う戦場に有るまじき説教がなされているのか。それは『今の駆逐艦『桜風』は寄港先も燃料弾薬補給拠点も確保されていない状態』だからだ。
元々駆逐艦『桜風』は、最初に『軍籍も艦名も資料も抹消されていた状態で横須賀に置いていた日本帝国海軍から、君塚艦隊の魔の手から脱出する為にウィルキア王国近衛海軍に奪取される』という些か複雑な事情が有ったにせよ、最終的に所属していた国家は『ユーラシア大陸東端沿岸部を領有するウィルキア王国』である。その為『桜風』は、日本に対しては推定建造地であるためにある程度のシンパシーを感じてはいたが、自らの所属を尋ねられたら胸を張って飽くまで『ウィルキア海軍』と言い切る程度の国家所属意識でしかなかった。だが、その祖国である『ウィルキア王国』は、この世界には存在しない。つまり今の『桜風』は如何なる国家にも所属していない、無国籍の軍艦である。無国籍の軍艦からの補給要請に無条件で応じる様なお人よし国家は世界を探してもいる事は無いだろう。その為、どのような状況になろうとも対応出来るように『本来ならば』燃料、弾薬消費は抑える様にするべきだった。
『・・・でも主計科、そう言うならなんで戦闘中に言ってくれなかったんですか?』
『砲術科。・・・それは、無理だったんだ』
『それは・・・何ゆえに?』
『・・・気付いたのが戦闘終了してからだったから』
「それじゃ主計科妖精さんもあんまり偉そうな事言えないじゃない。あと主計科妖精も揃って砲術科を煽ってたような・・・」
だが実際にはこの始末である。『桜風』も妖精さんも、自沈処分される前の『無限装填装置』を搭載していたあの時の感覚のままに、空母棲姫と交戦している時は常時自動迎撃システムに任せて『RAM』と『40㎜4連装機銃』を敵艦載機に向けて発砲し続けていた。ただし不幸中の幸いと言うべきか、最初に『15.5㎝75口径4連装砲』の長距離対空射撃で敵艦載機を多数撃墜し、これに対して敵艦載機隊が『散開しての包囲攻撃を
「・・・まあ、過ぎた事はもう取り戻せないし、今はこれから交戦する敵艦隊との戦闘の事を考えようよ」
そう言って『桜風』は妖精さんの意識を切り替えさせつつ、通信妖精に対して傍受した敵艦隊の通信内容を尋ねる。本来は『魂』のような存在でしかなかった『桜風』が実体を持って現世に出現するばかりか、一切の説明なしに異世界に放り込まれておまけに戦闘もしていると言う異常現象のオンパレードだと言うのに、なんだかんだ言いつつもしっかりと『艦長』としての職務をこなす『桜風』には、やはり妖精さんの見立て通りに、前の世界で艦長だった『ライナルト・シュルツ』大佐のように『艦長』としての稀有の才能を持ち合わせていたようだった。
『先に撃沈した航空母艦から発せられた暗号を元に通信妖精を総動員して傍受した電文を解読した結果、敵深棲海艦の主力艦隊は戦艦3隻、正規空母1隻、駆逐艦2隻の小規模艦隊のようです』
『罠・・・と言う事は考えられませんか?確かに今のこの艦に搭載している電子機器は、搭載している兵装内容の割には過剰なまでに優秀な物ではありますが、情報偵察艦でもないわが艦がそう易々と暗号解読出来るのは・・・それに、こんな小規模艦隊が主力?』
『と言われましても・・・相手の暗号強度はかなり弱い状態でしたので。それに先に殲滅した空母機動艦隊の編成の事を併せて考えますと、この暗号の内容は事実である可能性は高いかと』
「副長。多分通信妖精の憶測は真実だよ」
副長があまりにも都合良く敵艦隊の暗号を解読出来た事、そしてその内容に対して罠の懸念を抱くも、顎に手を当てて考えていた『桜風』は通信妖精の話を真実であるとあっさり断定した。
『艦長?その理由は一体?』
「勘」
『・・・・・・艦長・・・?』
「アハハ、冗談だよ。・・・理由としては、さっき沈めた機動艦隊の旗艦の行動」
『・・・特段変わった行動は見られませんでしたが?』
「自身と僚艦が搭載していた艦載機が次々と叩き落され、飛び出して来た護衛の重巡と駆逐艦が砲撃と雷撃で瞬時に沈められたのに、あの空母は逃げる事もせずに敢えて『
『・・・つまりは、私たちの戦力を測定していたのですか?自分が沈められかねない状況で?』
「だろうね。『桜風』の速力も見えていたから、逃げる事も出来ないと悟っていたのかも。まあ、生憎彼女の勇敢な行動は我が駆逐艦『桜風』が誇る優秀な妖精さんに大きな手助けをする皮肉な結末になってしまった訳だけど」
とは言え、もし仮に空母棲姫の通信が『桜風』の元に届かなかったとしても、駆逐艦『桜風』が搭載している電波受信装置やコンピューターは、自沈処分される時の物より劣るとはいえ相当な高性能であり、データ収集に時間がかかりはしただろうが、確実に深海棲艦の暗号を解読する事は可能だった。前提として前の世界で急激に発達し、複雑高度化していたウィルキア解放軍が使用していた暗号と比べると、現在深海棲艦が使用している暗号強度は文字通り『紙以下』であった。最終的にウィルキア海軍では、公開鍵暗号レベルにまで発展していた軍用暗号を使用していたのだから、無限乱数方式も採用せず、未だに換字式暗号を使用している深海棲艦の暗号では話にならないのだから仕方が無い。
『それで艦長。この敵艦隊・・・どうします?』
「サーチ&デストロイ一択。今からの時間帯ならきっと優位なポジションに展開できるし。でも主計妖精さんに怒られるから出来るだけ無駄弾を撃たないようにしよう。無論、弾薬消耗を躊躇って皆を傷付ける訳にもいかないから、努力目標で」
『これから夜になりますからねー』『上手くやれば奇襲出来て雷撃一斉射にで敵艦隊撃滅出来るかも?!』『ハイハーイ、妄言吐く妖精さんは再教育しちゃおうねー』『御免なさい御免なさい!つい口走っただけで本当にそう思ってはいません信じてください!』『・・・あ、あいつ首根っこ捕まれた』『再教育場にしまっちゃおうねー』『NOoooooooo!!!』
『・・・全く。これから夜戦になるのだから身体を少しでも休めて置くべきだというのに、わが艦の妖精さんたちと言ったら・・・』
「・・・ふふっ」
『・・・艦長?どうしました?』
「・・・なんでもない、なんでもないよ」
・・・始めはウィルキアが存在しない事に絶望したりもしたけど、妖精さんと一緒なら、うん、大丈夫。『桜風』は、これからも勝ち続けていける・・・!
「副長」
『はっ!』
「これからも、勝ち続けよう。誰が相手でも、何が相手でも。絶対に」
『・・・もちろんです!』
駆逐艦『桜風』の艦橋で、妖精さんたちが大騒ぎをする中、この光景を絶対に守ると誓う『桜風』と、その声に力強く答える副長。日が水平線の向こうへ没する中、艦旗として掲げられている『ウィルキア王国旗』が、夕日の光を浴びて美しく輝いていた。
問.次の公式の答えを記載せよ
夜間戦闘補正×(駆逐艦+暗視装備+鋼鉄世界出身)-(戦艦棲姫×2+空母ヲ級フラグ)×夜間戦闘補正+駆逐ニ級後期型=?
答えは、今後の投稿にて