まえがき
うだるような暑さの中、メールの着信音で目が覚める。何故そんなに暑いのかと言うと今が夏だからだ。夏とは暑いから夏なのであり、夏が暑い訳では無いのだがまぁ、いいだろう。
メールは後輩からのものだった。
『おはようございます。起きてますか?てゆーか起きてなかったら補習に遅刻してしまいますよ?というわけで起こしに来たので起きているなら超早くこの扉を開けてください。でないと勝手に扉が開きますよ?』
読み終わって少し意味を考え、次の瞬間完全に目が覚める。
これは不味い!!そう思いながら扉に向かって駆け出したが既に遅かったようだ。扉が轟音とともにこちらに吹き飛んでくる。一般人である俺がこんなもの避けられるはずも無く直撃を食らってしまい、意識が暗転した。
本日2度目の目覚めは、メールの着信音ではなく、聞き覚えがあり、愛おしい存在によるものだった。まぁ、片思いなのだが……
「ちょっと大兎!?超何で倒れてるんですか!?もしかして死んじゃいましたか!?どうしましょう!?死体を早く始末しなくちゃ!!」
おかしい。確かにこれは俺にとって愛おしい存在が発している声のはずだ。だとすればこんな物騒なことを言うはずが―
あるな…
そろそろ起きないと本当に消されてしまいそうだ。
「おはよう絹旗」
「おはようございます大兎。本当に遅刻しますよ?」
まるで先程の事が嘘のように普通に反応してきた。もしかしてわざと俺が起きるようにあんな事を言ったのだろうか。まぁ、いいか。急がなければ本当に遅刻してしまう。
「わざわざ起こしてくれてありがとう。でも、もう少し優しく起こして欲しかったな。」
「超優しかったじゃないですか!わざわざメール送ったんですよ!」
「そこから扉が開くまでが短けーよ!」
「何で、大兎そんなに態度が超大きいんですか!?私が起こさなかったら絶対遅刻してましたよね!」
確かにそれは一理ある。むしろそれしかない。
「よし、本当に急がないと遅刻しちゃうから―」
「あ、朝御飯なら作ってきましたよ。」
「流石絹旗。できる後輩を持った、俺は幸せ者だぜ!!」
「はいはい。大兎の態度が大きかった事は気にしないであげますから早く準備してください。」
「りょーかーい」
早めに着替えを済ませご飯を頂く。
「ご馳走様ー」
「片付けておくので置いといてください。」
「ホント、いつも助かる」
「気にしなくていいですから!行ってらしゃい!」
「お、おう。行ってきます。」
そう言って俺は学校に補習を受けに寮を出た。
学校に着いたのは補習が始まるギリギリの時間になってしまった。だが間に合ったことに代わりはない。絹旗には感謝しないとな。
教室には土御門と、青髪ピアス、゛不幸の権化゛上条当麻がいた。とりあえず挨拶だ。
「ぉは(σ。ゝω・)σYO!!」
「「ぉは(σ。ゝω・)σYO!!」」
「おはよー」
「「「上条(上やん)のり悪っ!」」」
どうやら今日の上条はダメらしい。しかし土御門と青ピは平常運転。いや、考えてみれば上条はいつもこんなもんか。
そんな事を考えていると小萌先生がやって来て補習が始まった。俺は無能力者なので、別に授業の内容にはそこまで興味はない。なので、この後の予定をしっかり考えておかないとな。
まず、この後に絹旗と遊びに行く約束をしている。普段バイトが忙しいらしく、遊べるのは珍しいので正直言って楽しみだ。はっきり言うと俺は絹旗の事が好きだ。だが、世の中はそんなに上手く行くものではないので告白なんかしたって今の関係を崩してしまうだけだろう。それは嫌だ。
とりあえず、映画を見に行くのは確定として他に何をするか……朝ごはんのお礼に晩飯でも奢るか!!よしそうと決まれば夜のためにねるか!
夕方補習という名の睡眠時間が終わり絹旗に連絡を入れて駅に集合して映画館に向かう。
「なぁ絹旗」
「何ですか?」
「映画始まるのいつからだったっけ?」
「後10分ですね」
「間に合わなくね!?」
「大兎の補習終わるのが超遅かったんですよ!」
「いや、俺駅で20分は待ったからね!?」
「こっちにだって色々あるんですよ!」
「お互い様じゃね…」
「こんな言い合いしてる暇あったら超急ぎますよ!」
そう言って裏路地に入って行く。どこ行くんだよ…
「こっちの方が近道ですから早く行きますよ。」
「あ〜なるほどね。りょーかい。急ぐか」
続いて裏路地に入ろうとすると丁度消防車が後ろを通って行った。火事かー怖いなー……
別に俺には関係ないけど。
路地を進んでいくと少し開けた場所に武装無能力集団の方々が道を塞ぐようにいらっしゃった。正直俺1人だったらここでお金を取られてさようなら~となる所だが今は頼りになる絹旗がいる。絹旗は窒素装甲という能力でレベルは4だ。絡まれたらどうにかしてくれるだろう。そう思いながら武装無能力集団の間を通り抜けていると声をかけられる。
「通行料払っていけよ。」
「やめといた方がいいぜ?仮にもこの子はレベル4の能力者!!下手したら死んじゃうぜ?」
ドヤ顔をしながら隣にいる絹旗を示す。
「はいはい。そうだとしたら、尚更好都合がいいぜ。」
「は?何いってんの?もしかしてマゾですか?」
「ちげーよ!調子乗ってられんのも今のうちだからな!おい、やるぞ。」
地面においてあった鉄パイプや、ポケットからナイフを取り出す。いや、こいつら殺る気があり過ぎだろ。
「あっはっは。ごめん絹旗助けて。」
すると少し面倒くさそうだが嬉しそうな、そんな表情の絹旗が俺の前に出る。
「超しょうがありませんね。これは貸一つです!」
「じゃあ、晩御飯奢るわ」
「いえいえ、それは最初から奢ってもらう予定だったので今度服でも買いに行きましょう。」
「マジかよ。しょがない。それで手を打とう。」
「超約束ですよ!じゃあ、ちゃっちゃとやっちゃいますか。」
そう言って絹旗が能力を使おうとした瞬間モスキート音のような音が鳴り響く。
その音が原因なのかは分からないがいきなり頭痛がしてきた。しかもかなり酷いものだ。前方で何か倒れた様な音がした。確か前には絹旗がいたはずだ。視線をそちらに向けると思った通り絹旗が倒れていた。だが、なぜ倒れたのかまで考えれるほど頭が回らない。
「何だよ。この女だけじゃなくてお前も能力者かよ。」
こいては何を言ってるんだ?
「コイツもやっとくか。」
今、コイツはなんと言った…゛コイツも゛と言わなかったか?俺以外に誰をやるっていうんだよ。答えは既に出ていた。何故ってこの場にいて、自分の側にいるのは一人しかいなかったから。
「絹…旗…?」
絹旗が倒れている場所をにもう一度目をやる。するとそこにはさきほど気づかなかったが頭から血を流して倒れている絹旗がいた。
「絹旗!!」
ふらつきながら絹旗に近づいていくと横から殴り飛ばされ倒れる。
「おいおい。人の心配してる場合じゃないぜ。」
立ち上がるのも困難なほど頭が痛い。体を這って絹旗の方に向かう。すると今度は腕にナイフが突き刺さり地面に縫い付けられる。
「だからさー、お前何人の心配ばっかしてんの?」
頭の痛みで刺された痛みをあまり感じないようだ。傷口が広がるのを気にせず一気に手を引き抜く。
「いってぇぇえ!!!」
「うるせえよ」
そう言って足を刺してくる。
「ぐぁぁぁ!!」
「だからうるせーってば」
今度は鉄パイプで横腹を殴られる。あ、これはやばいかも…体に力が入らなくなってきた。痛みもあまり感じない。
「おい、こいつの腕ほとんど裂けちゃってるぜ。」
「マジかよ。」
「あぁ。出血も凄いしとっととずらからねーとやべって!!」
「くっそ、やりすぎた!」
「いいから行くぞ!」
そう言って武装無能力集団はいなくなった。
俺の体ももう動かない。しかし、絹旗をどうにかしなければ!!その一心で携帯を取り出し119を押す。そこで俺は完全に意識がなくなる。どうやら血を流しすぎたようだ。
あとがき