長門がつくるスイカの味(仮題)   作:ふみ2016

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畑おこし

チュンチュン……。

 

早朝5時。

 

帝都ではもう珍しい雀のハーモニーが鎮守府に響き渡る。

 

鎮守府に面した海は青々と輝き、空に上ろうとする太陽を支えている。

 

水平線の向こうから少しずつ登っていく太陽は、自分を支えてくれる海に対してまるでお礼と言わんばかりに暖かい日の光を注ぎ込む。

 

自然が織り成す芸術。

 

この光景をツナギを着てクワを担いだ長門がひとり眺めていた。

 

「この景色を見てしまうと、町に戻るのをためらってしまうな。」

 

長門は景色の美しさに見とれていたがしばらくして再びクワで畑を耕し始めた。

 

黙々と畑を耕す長門。

 

クワは力強く振るわれ、まるで力のある男性が耕すように畑の土が掘り返されていく。

 

耕す度に香る土の独特なにおい。そして、姿を現す土の中の住人達。

 

「お、おぉぉ! ミミズが出てきてしまったぞ! 確か、ミミズは土にいい影響を与えると聞いたことがあるな……。このまま土の中へ戻してあげよう。」

 

いそいそとミミズを殺さないように丁寧に土へと戻す長門。

 

土を耕すとそれはもう様々な生き物が顔を出す。

 

ミミズをはじめとしてアリ、甲虫、そして甲虫の幼虫、というか名前がよくわからない虫がわんさか出てくる。昨日耕したときには穴からネズミが出てくるのを長門は目撃した。

 

突如として顔を出す彼らに新鮮な気持ちを抱きながら長門は今日もクワで土を耕す。

 

「うーむ、思った以上に小石が沢山出てくるな……。しっかりこれらも除いていかないといけないな。」

 

こうしておよそ2時間後。

 

家に面した畑をやっと耕し終えた長門は首に巻きつけていたタオルで顔の汗を拭い、自分が耕した畑を見つめる。

 

「ふぅ。やっと終わったか。やはり耕運機が欲しいところだな……。耕運機を頼むとなると、やはり明石に頼むことになるか……。いや、しかしこのくらいの畑で耕運機もいらないか?」

 

仕事が終わり、一息つく長門。

 

すると、家のドアが開きひとりの艦娘がコップいっぱいに注がれた麦茶を持ってきてくれた。

 

「お母さん、おはようございます。今日も早いんですね。」

 

「あぁ、不知火、おはよう。いや、早く自分の家でとれた野菜を食べてみたくてな。いてもたってもいられなくなってしまって……。」

 

そう言って照れ笑いしながらコップを受け取る。そんな長門を見た不知火が母である長門にしかわからないほどかすかではあるが頬を緩める。

 

「いくらなんでも早すぎます。まだ春になったばかりではありませんか?」

 

「ま、まぁそうなんだがな。何しろ初めて家庭菜園に挑戦するものだから、気負ってしまってな。」

 

ゴクゴクといっきに麦茶を飲み干す長門。

 

「ふぅ! ありがとう不知火、うまい麦茶だったぞ。」

 

「それよりお母さん。」

 

長門からコップを受け取った不知火が怪訝な顔をする。

 

「ん? どうした?」

 

「もう0730(まるななさんまる)です。」

 

不知火のその言葉に一瞬固まる長門。

 

「な、な、何!?」

 

「ですから、もう0730です。」

 

「ば、ばばばば馬鹿な!? スマホのアラーム機能を使っていたはずなのに!?」

 

驚いて長門はツナギのポケットに入れていた自分のスマホを取り出す。

 

「うおっ!?」

 

土で汚れた長門の手からスマホが地面に落ちる。大急ぎで取り出そうとしたため指がひっかかってしまったのだ。

 

ボトリと落ちる長門のスマホ。だが、そこはさすがはビッグセブンのスマホである。一切損傷せずまるで不動の心をもつがごとく堂々と地面に横たわる。

 

「お母さん、スマホケースをこれにしていてよかったですね。」

 

長門が落としたスマホを拾い上げる不知火。

 

aIphoneに戦艦の装甲のような頑丈な増加パーツに鎧われたそのゴツイスマホについた土を払ってから不知火は手渡した。

 

「あぁ。何しろこのガラスパネルは銃弾を跳ね返すからな! む、むぅ! も、もう0735(まるななさんごー)を回ってしまっている! ま、まずい!」

 

「今日は学校で定例の職員会議でしたか?」

 

「そ、そうだ! 鎮守府学校中等部副校長でありビッグセブンのこの長門が会議に遅れたとなっては他の教員に示しがつかない! 不知火、どうしてもっと早くに時間を教えに来てくれなかったんだ!?」

 

怒声を思わずあげる長門。すると不知火がこんどは誰にでもはっきりわかるくらい恥ずかしそうな顔をして消え入るような声で言った。

 

「お母さん、ごめんなさい。私も今日はアラームのセットをミスしてしまいました。今回は……、今回は不知火にも落ち度があります。ごめんなさい。」

 

ぺこりと頭を下げる不知火。

 

「そ、そうか……。いや、私も声を荒げてしまい申し訳ない。仕方がない。急いで準備をするとしよう!」

 

「はい、お母さん!」

 

こうしてバトルシップの魂とデストロイヤーの魂をもつ艦娘達は食パンをかじりながら大急ぎで登校する。

 

そんな彼女達を見送るように長門の畑に住むねずみが穴からひょこっと顔をだしていた。

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