君に気持ちを伝えたい 作:世嗣
シュテルはある。
レヴィもある。
ユーリもこの前見つけた。
しかし、ディアーチェだけ二次創作がほとんど無い!
可愛いじゃんディアーチェ!
なのに何で無いんだ?
じゃあ、書こう。
といった感じ。
四月十七日
別に何か特別な感情があった訳ではなかった。
別にほっておいてしまってもよかった。しかしでは何故そうしなかったのか、と聞かれると自分でもよくわからぬ。
強いて言えば、興味というやつだったのだろう。
毎日誰かと群れる訳でもなく、昼休みが始まると一人でふらっと何処かに行くあやつが気になったのだ。
こういうと何か我があやつを気にかけているようにも見えるがそれは断じて違うと言わせてもらいたい。
現に我はあやつの名前しか知らなかったのだ。
だから、これは決して必然でも運命でも何でもない。
我、ディアーチェ・K・クローディアとあやつが出会ったのはただの偶然が積み重なったことだと、ここに言っておきたいと思う。
もう一度言っておこう。
これは決して必然でも運命ではない。
ただの偶然が重なった結果だ。
まあ、その偶然に感謝してない訳でもないのだが。
■■■■■■
「で、貴様はそこで何をしているのだ」
カロリーメイトを片手に屋上の地べたに胡座をかいている僕の前に一人の少女が現れた。
昼休みに僕が何をしようと勝手だと思わない訳でもないが、問われたので答えるのが義理だろうか。
「何って、昼ごはん」
ひらひらとカロリーメイトを振ってみせると眼前にいる委員長(号令を掛けていたので多分そうだ)はその端正なお顔を僅かに歪める。
「おっと、いーんちょー殿どうかした?」
「委員長殿、とは何だ」
地面に腰を据えた僕を見下ろしながら委員長(名前なんだっけ)は言葉を漏らす。
屋上の強い風は委員長の綺麗な灰色の髪をさわさわと揺らしている。
ふむ、よく見ればなかなかに可愛い子だ。
「確かに我は仕方なく学級の長などを務めてはいるがそれを呼び名にされるのは甚だ不本意だ」
むむ、そう言われては委員長の名前を思い出さねばなるまい。
確か、ディからはじまったような気がしない事も……。
「で、ディ、ディ〜〜、ディエチ!」
「ディアーチェ!ディアーチェ・K・クローディア!貴様クラスメイトの名前も覚えておらんのか!」
残念。違ったようだ。それによく考えればディエチは中島さんとこの妹ちゃんだった。
「そういう委員長殿、失礼、クローディアさんは僕の名前を覚えてんの?自分で言うのも何だけど僕、クラスで空気だと思うけど?」
委員長殿、と言ったらところで激しく睨まれたので苗字で呼び直す。可愛い顔なのになかなかどうして苛烈な子だ。
「馬鹿にするでない。それくらい覚えておるわ。
「おお、正解」
パチパチと手を叩いて正解を祝う。
さすが委員長は伊達じゃない。
「茶化すな、いつまでたっても本題に入れん」
どうやら委員長殿には本題があったらしい。
僕はもそもそとカロリーメイトを齧りながら続きを促す。
「貴様は学級の副委員長だろう。ならばするべき仕事は多くあるはずだが?」
「ーー?」
何のことだ。そんな事実は寡聞にして知らないぞ。
「貴様が休んでいた昨日に決定した。なかなか副委員長の名乗りがなかったのでな、我がクラスの担任が決定した」
何してくれてるんだあのヒゲダルマ。
くそぅ、人の良さそうなダルマ顔に騙されたぜ……。
「つまりだ貴様には副委員長としての責務が僅かに存在するのだ。まあ、我もいることだし二人で分ければそれ程の分量ではない。だから、貴様も……」
「ストップ、委員長」
僕はとりあえず長々と話を続けていた委員長の言葉を遮る。
「それって決定?」
「うむ。もう、サインもして執行部に提出した」
「誰が?」
「我が」
「変更は?」
「不可だ」
「ふぅ…………」
僕は目を閉じてため息をつく。
OK、現状は把握した。
「そんなこと認められるかぁ!」
僕が急に大声を出して突っ込むと委員長はビクッと体を僅かに震わせた。
「なんだよ、それぇ!僕の意思ゼロじゃん!それに僕は日々のバイトで忙しいんだよ!」
厄介なことなんか背負えるか!
「し、しかしこれは決定事項でだな……」
「僕の意思/Zeroのね!」
とりあえず残りのカロリーメイトを口に押し込みザクザクと咀嚼する。
「とにかく、僕はそんなことやりたくないよ!」
「したい、したくないなどではない。これは決定事項なのだ」
くぅ、委員長はなかなかに責任感が重いらしい……。
ならば僕も切り札を使うしかないようだ。
「委員長、日本にはこういう言葉がある」
ゆらり、と立ち上がった僕をみて委員長は小首を傾げる。
その仕草がたまらなく可愛いのは脇に置いておいて……。
「三十六計逃げるに如かずってね!」
そういうと僕は勢いよく走り出す。
「あ、ま、またぬか!」
「待てと言われて待つ奴なんていないさ!」
僕は屋内へ飛び込むように入るとそのまま教室に向かって駆け出した。
あばよー、委員長!
支配からの卒業だ!
え?そのあと?
教室に帰ってきた委員長と鉢合わせして仕事する事になりましたけど?
◆◇◆◇◆◇
時刻は夕暮れ。
僕のような部活に精を出すでもないただの一般生徒は早々に帰宅すべき時間。
「はぁーあ、なんでこんなことしてるのかなぁ」
「理由など一つしかなかろう」
委員長はカリカリと小気味よく鳴らしていたシャーペンを止めて僕のつぶやきに答える。
「我が委員長で貴様が副委員長だからであろう」
そういうと委員長は再び目線を日誌に落としシャーペンを動かし始める。
ふむ、見習いたいほど優等生だね。
僕は小さくため息をつくとクラス名簿の名前をプリントに写し始める。
クラス担任通称ヒゲダルマの言うことでは今度クラス紹介冊子を一年生の間で作るらしく今はその雑用だ。
こういう事は普通教師がするのではないか、とも思ってしまう。
だが、ウチは「生徒の自主性」を重んじる校風らしく何かにつけて生徒に仕事をやらせるのだ。
僕は密かに教師が仕事を減らしたいだけなのでは?と疑ったりしてる。
「こら、雉咲先程から手が動いておらん用だが?」
「でも、委員長もうこれ始めてから一時間だよ?僕としては休憩を要求したい」
ついでに残業代も。
委員長は呆れたようにため息をつくとカタリとシャーペンを置いた。
「本当に貴様は困った奴だ」
そう言うと辺りの書類を四つくらいくっつけてた机の端に寄せてしまう。
「あれ?ホントに休憩くれるの?」
「む?いらなかったのか?貴様が休憩を欲したからその要求を聞き入れたというのに」
「いや、いるいる!」
委員長はそうか、と一言言ってカバンを漁りだした。
「疲れたぁ」
椅子に寄っかかってギコギコと椅子漕ぎをする。
「やめぬか、床が傷つく」
ぴしゃりと言った委員長の言に従い仕方なく椅子に寄っ掛かるまでに留める。
「まったく貴様という奴は……」
コトリと僕の目の前に紙コップが置かれた。
僕な視線をほかほかと湯気を上げているそれと委員長の顔とを何度か行き来させる。
「えと、コレ、僕にでいいの?」
「ふん、貴様以外ここに誰がいる。この戯け」
委員長が水筒を持っているところを見るとそれを注いでくれたのだろう。
なんと高い女子力か。
それにしても、あの戯け、という言葉に添えられた笑顔。
その笑顔は大人びている委員長らしからぬとても子供っぽいもので、普段のクールな顔とのギャップも相まり、
ーーこの破壊力はやばいね。
思い出すだけで自分の顔が紅潮するのがわかる。
そもそも委員長は美少女なのだ。
日本人離れした整った顔(外国人だから当たり前か)に薄い灰色の髪。中学生らしからぬ大人びた態度にこうして僕にお茶を出すような甲斐性。
どこを取っても完璧美少女だ。
「む、雉咲」
「な、なに委員長?」
ちびちびと委員長のくれた紅茶(名は知らない)啜っていると委員長が問いかけてくる。
色々と考えていた(やましくない)ので反応がぎこちないものになってしまった。
「先程からちと顔が赤い。どうした熱でもあるのか?」
「な、ないない。僕は至って健康。問題ないよ」
「そうは言ってもだな……」
そう言って手を机についてぐいっと体を寄せる。
委員長の端正な顔が僕に近づく。
委員長からふわりといい匂いがした。なんの匂いかはわからないが大方シャンプーか柔軟剤か。
「やはり顔が赤い」
委員長の綺麗なグレーの瞳に僕の顔が映り込む。
僕が委員長の視線から逃げるように視線を下ろすとそこは委員長が前傾姿勢になっているせいで緩んだ襟元で。
緩んでいるってことは委員長の異常に白い美しい肌と鎖骨がばっちり、そしてその奥がチラチラと……。
「どわぁ!」
椅子から転がり落ちて委員長から距離をとる。
ストップ僕!負けるな理性!
エンジェルよ頑張って!
「何しておるのだ、貴様は」
「い、いや、急に椅子から転がり落ちたくなっただけ。うん、それだけ。やましいことなんて何もないさー」
慌てたせいか口調がおかしい。
「おかしな奴だ」
ふふ、と委員長が口元を綻ばせる。
なぜにこの委員長はいちいち言動がかわいいのか。
というか、おかしいのはそちらもだろう。もう中学生なのだし自分の体のことも自覚してほしい。
あそこまでノーガードだとこちらとしても色々と困ってしまう。
何がとは聞くな男には色々あるのだ。
「さて、雉咲。そろそろ休憩も充分だろう。業務に戻るぞ」
「え、もう?」
委員長の言葉で時計を見ると休憩を取り始めた時間から時計の針は180度ほど回っていた。
「早く席に着かぬか。我とて早く帰りたいのだ。皆の夕餉の準備がある」
「心得ました、委員長」
少し戯けた風に返事をして席に着く。
「なぁ、雉咲」
僕が席に着くとやや不満げな委員長。
これは何処かで何かやらかしたらしい。しかし、全く身に覚えがない。
「貴様はいつまで我を委員長と呼んでいるのだ」
なるほど。そのことか。
委員長は委員長だけど委員長って呼ばれるのは嫌なんだったか。
というか、今のセリフ早口言葉みたい。めちゃくちゃかみそう。
いや、そんな事ないな。すごい言いやすかった。
閑話休題。
「えー、いいじゃん。別に変な名前で呼んでるわけじゃ無いんだし」
「貴様が良くても我は嫌だ。我を名で呼ばぬのは貴様だけだぞ」
そんな事言ってもなぁ。
もう、あれだ僕の好きに呼ばせてほしい。
「誰がなんと呼ぼうが委員長は委員長じゃん」
む、と言って委員長が下を向いて黙り込む。髪の隙間から覗く顔が僅かに赤いのは僕の見間違いか。
え、何この反応。
なんか、委員長黙り込んで静かになっちゃったんですけど。
あたふたと僕が焦っていると委員長が顔を上げた。少し恥ずかしそうな表情だが顔は赤く無い。
やはり先程のは夕日の角度でそう見えただけっぽい。
「ならば良い」
「え?」
突然言われた言葉にアホ面で返してしまう。
「ならば良いと言っている!」
そう言うとふいっと僕から顔を背けた。
「本来ならば認めぬが貴様だけ特別だ。我は寛大だから許してやる」
よくわからないが委員長と呼んでいいらしい。
「ほら、急いで仕事を終わらせるぞ」
そう言ったきり黙り込んでしまった。
僕が話すチャンスはもう無いらしく、委員長は下を向いてただひたすらにシャーペンを動かし続けていた。
アホのように委員長を見ていても仕方が無いので僕もシャーペンをもち再び名簿を写し始める。
…………やばい。
これは委員長の名前を忘れてしまって委員長と呼ぶしか無い事がバレたら死ぬ気がする。
「なんとかなるか?」
「ん?何か言ったか」
「いや、何にも無いさぁ」
うん、明日にでも調べるとしよう。
おかしいなぁディアーチェがメインなのにディアーチェという単語がびっくりするほど出てこないなぁ。